彷徨うペンギン

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炒めるということ

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 キリンの一言は、ペンギンに嫌な予感をさせるには十分すぎるものだった。
 キリンは、そんなペンギンのことなど構わずに続けた。

 「頼む!さっきの“やさいいため”とかいうやつを俺に教えてくれ!」
 
 どうやらキリンは、ペンギンが腹ごしらえに作っていた野菜炒めをたいそう気に入り、其の作り方を教えて欲しいというのだ。

 「あんなの簡単だ。野菜を洗って、切って、油と塩コショウとともに火にかける。それでおしまいだ」

 キリンは、ポカンとしていたが、無理やり頭の中で理解した。

 「分かった!やってみる!」

 そう言ったキリンは、台所に駆け込んでいった。

 「“やさいいため“って何ですか?」

 ペンギンに向かって、小さなキリンが訪ねてくる。
 どうして、小さなキリンは言葉遣いがしっかりしているのに、あのごついキリンはそれが出来ないのだろう?という疑問が頭によぎったが、ペンギンは小さなキリンをそれなりに認めているため、答える。

 野菜を炒めたものだよ。

 「いためる?」
 「火を通すともいえるね」
 「焼くんですか?」

 全く、意味が通じないという事が分かったペンギンは、説明を諦める事にした。
 そんな諦めたペンギンの鼻に、何かが焦げた匂いが入り込んだ。
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