彷徨うペンギン

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意地と謝罪と泣き声と

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 一通り説明を終えたペンギンは、キリンに向かって言い放った。

 「さぁ、私を問答無用で蹴り飛ばしたのだ。謝罪のひとつでも貰おうじゃないか?」

 ペンギンは苛立っていた。
 自分は何もしていないというのに、後ろからいきなり蹴り飛ばされたのだ、怒らない方がおかしい。
 そんな心境を抱えたペンギンに対して取ったキリンの威圧的な行動が、ペンギンの闘志をさらに燃やしていた。

 「謝罪って…」

 キリンは戸惑っていた。
 こんな自分よりも小さく弱そうな生き物に、謝罪をすることが本当に必要なのかという事を。
 今からでも、蹴ってしまえばこんなペンギン殺せてしまうのではないか?と。

 「そうだ。早くしたまえ」

 両者の意地がぶつかり合い、時間だけが無駄に過ぎていく。
 そんな感覚に耐えられなくなったかのように、部屋の奥から泣き声が聞こえてきた。

 「まずい!」

 その声を聞いて、キリンは目の前のペンギンのことなど構わずに、部屋の奥へと真っ先に駆けていった!

 「やれやれ、これだから野生動物は。私への謝罪がまだだというのに」

 ペンギンはあきれながら、部屋の奥へと足を進めた。
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