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いつもと同じ朝
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まだ目が醒めていない住宅街を進む。
肌に当たる冷たい風で、ぼんやりとしていた意識がはっきりしていくのが分かる。
そのまま、人の少ない電車に乗り、目的の駅に着く。
昨日の騒がしさが嘘のように、駅のホームは静まり返っていた。真っ赤に染まった電車も元通りになり、また人を運んでいることだろう。
駅からしばらく歩き、会社に到着する。
鍵を開け、照明を着け、デスクにあるパソコンの電源をつける。
まだ、誰も居ない社内で1人画面に写るニュースを眺める。
"誰のせいなのか?株価の暴落"、"あの有名夫婦が離婚?"、"通り魔殺人の目的は何か?"、"あなたの夢の意味は?"等、興味をそそられるタイトルが陳列している。
タイトルのページを開き、書き記されている文字を流し読みする。内容に関して言えば、やはり面白いものが多い。株価の暴落に関しては、あの政治家が悪いだの、時代の問題だのとよく分からないいちゃもんを真剣に述べたてている。離婚の話では、テレビで出ていなかった本当の姿が暴露され、今まで見ていた偶像と真実のギャップに驚かされる。通り魔殺人はこの国では珍しい。それだけでニュースになる。また、被害者の家族がかわいそうだと思うばかりだ。夢の話に関しても、当たり障りのない曖昧なものが書かれている。これを信じろと言う方が無理に決まっている。
全てのタイトルを読み終わる頃には、同僚や部下が社内に入ってくる時間帯になっていた。
全員が出揃い、朝礼が始まる。
「では皆さん。今日も1日頑張りましょう!」
その言葉と共に今日の仕事が始まる。
仕事に関して言えば、長年やり続けたこともあってか、そこまで難しいものはない。
書類を作成し、サインを貰う。必要があれば、営業のために誰かに会いに行く。その程度の仕事だ。
「だと言うのにお前は……」
「いやぁ、参りましたね。先輩……」
「だから、どうしてそうなるんだ!」
「 どうしてでしょうねぇ?」
俺の怒鳴り声も虚しく、部下はやれやれと両手をあげる。
今回、この生意気な部下に任せた仕事は書類の整理だった。
営業に出た時、会社名義で何かを買った時、メールがやってきた時、どんな時であっても書面上に残すという会社の決定で書類を作ることになっている。
ただ、いちいち書類を作成するということもあり、棚には大量の整理されていない書類が大量に溢れかえる。そして、外れくじとして誰かがその書類の整理を行う。
溢れかえるような大量の書類はゆうに1000枚を超えることだろう。そんな仕事なだけに、簡単にこなせるようなものではない。
だが、仕分けるだけの仕事なのだ。さして、難しい仕事でもないことは確かなはずなのだ。
だと言うのに……。
「ただ書類を種類ごとに分けて並べ替えるだけで、何をどうしたら書類が燃えるなんていうことになるんだ!」
俺は腹の底から沸き上がる怒りに身を任せて怒鳴った。
どうやら俺の後輩は、書類整理をさせると火事を引き起こすほどの逸材だったようだ。
肌に当たる冷たい風で、ぼんやりとしていた意識がはっきりしていくのが分かる。
そのまま、人の少ない電車に乗り、目的の駅に着く。
昨日の騒がしさが嘘のように、駅のホームは静まり返っていた。真っ赤に染まった電車も元通りになり、また人を運んでいることだろう。
駅からしばらく歩き、会社に到着する。
鍵を開け、照明を着け、デスクにあるパソコンの電源をつける。
まだ、誰も居ない社内で1人画面に写るニュースを眺める。
"誰のせいなのか?株価の暴落"、"あの有名夫婦が離婚?"、"通り魔殺人の目的は何か?"、"あなたの夢の意味は?"等、興味をそそられるタイトルが陳列している。
タイトルのページを開き、書き記されている文字を流し読みする。内容に関して言えば、やはり面白いものが多い。株価の暴落に関しては、あの政治家が悪いだの、時代の問題だのとよく分からないいちゃもんを真剣に述べたてている。離婚の話では、テレビで出ていなかった本当の姿が暴露され、今まで見ていた偶像と真実のギャップに驚かされる。通り魔殺人はこの国では珍しい。それだけでニュースになる。また、被害者の家族がかわいそうだと思うばかりだ。夢の話に関しても、当たり障りのない曖昧なものが書かれている。これを信じろと言う方が無理に決まっている。
全てのタイトルを読み終わる頃には、同僚や部下が社内に入ってくる時間帯になっていた。
全員が出揃い、朝礼が始まる。
「では皆さん。今日も1日頑張りましょう!」
その言葉と共に今日の仕事が始まる。
仕事に関して言えば、長年やり続けたこともあってか、そこまで難しいものはない。
書類を作成し、サインを貰う。必要があれば、営業のために誰かに会いに行く。その程度の仕事だ。
「だと言うのにお前は……」
「いやぁ、参りましたね。先輩……」
「だから、どうしてそうなるんだ!」
「 どうしてでしょうねぇ?」
俺の怒鳴り声も虚しく、部下はやれやれと両手をあげる。
今回、この生意気な部下に任せた仕事は書類の整理だった。
営業に出た時、会社名義で何かを買った時、メールがやってきた時、どんな時であっても書面上に残すという会社の決定で書類を作ることになっている。
ただ、いちいち書類を作成するということもあり、棚には大量の整理されていない書類が大量に溢れかえる。そして、外れくじとして誰かがその書類の整理を行う。
溢れかえるような大量の書類はゆうに1000枚を超えることだろう。そんな仕事なだけに、簡単にこなせるようなものではない。
だが、仕分けるだけの仕事なのだ。さして、難しい仕事でもないことは確かなはずなのだ。
だと言うのに……。
「ただ書類を種類ごとに分けて並べ替えるだけで、何をどうしたら書類が燃えるなんていうことになるんだ!」
俺は腹の底から沸き上がる怒りに身を任せて怒鳴った。
どうやら俺の後輩は、書類整理をさせると火事を引き起こすほどの逸材だったようだ。
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