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「き、貴族を追い返したぁ!? リンあんた、何考えてんだ?!」
「そ、そんなに怒らなくったって……」
その夜、あたしはニコが寝静まってから、ペトラに事情を説明すると、ペトラが慌てふためいた。
正直、あたしは姫さまの遣いなんかより、ペトラのほうが百倍怖い。
「……まずかった?」
「そりゃ、まずいだろ。 貴族、それもオルヴィネリの皇太子妃からの招聘を断るなんて、普通はしない。しかも、そっちが来いだなんて、下手すると侮辱罪でしょっぴかれるよ」
「そっかぁ……」
どうやらあたしは、思ったよりも相当まずいことをしてしまったらしい。
小さくなっていると、ペトラは頭を抱え、眉間に深く皺を寄せながら長々と大きなため息を吐いた。
「はぁぁ……まぁサーヤのことだから、問題にはならないだろうけど」
「ペトラ、姫さまのことを知ってるの?」
「ああ……こうなりゃしかたないね。あんたにも教えておこう。でないと黙ってるとどんな騒ぎを起こすかわかったもんじゃないからね」
「………すみません……」
「サーヤは……ニコを拾う少し前まで、ここで働いていたんだよ」
「えええええええ」
マジで?
じゃあ、サーヤ姫って『はぐれ』としても、ハイジとの関係についても、このお店についてさえも、あたしの先輩ってこと?
「まぁ、想像はつくだろうけど、ハイジに頼まれてね」
「あー……」
ハイジは留守にすることも多い。
徴募があればすっ飛んでいくが、あたしならともかく、普通の女の子をあんな森深くに放置はできないだろう。
つまり、ハイジが戦っている間、ペトラが姫さまを預かっていたというわけだ。
ということは、この街の皆は姫さまのことをよく知っていたわけで、ギルドでも、客たちの間でも、やけに姫さまが人気者だったのは、そういう理由だったのか。
「ごめん、ペトラ……厄介事に巻き込んで」
「全くだよ……」
「もし侮辱罪がどうって話になったら、その時はあたし一人が……」
「リン。そうじゃないよ。そういうことじゃなくて……」
「何? ペトラ」
「……あの子……来るんだろうなぁ……たぶん……いや、絶対に来る」
「来る、って、サーヤ姫?」
「ああ。サーヤは体は弱かったが、意志の強さは……リン、あんたを超える。こうと決めたら、何が何でも実現しようとする。行動力の化け物さね」
「なんか思ってたのと違う!」
「なんだい、深窓の令嬢みたいなのを想像してたのかい?」
あのハイジに育てられて、そんな子に育つわけ無いだろ、とペトラは言った。
……ごもっとも。
「色々あってねぇ……ハイジと引き離すのにも、えらく苦労させられたんだよ……ひょっとして『はぐれ』には頑固者しか居ないのかい?」
「えっと、あたしは素直だと思うけど……」
「はぁ?! あんたが素直ってんなら、ハイジは優男だよ!」
「ぶっ」
どういう表現だ。
「とにかく、こうなってしまえば、サーヤは来る。間違いない」
「そうですか……体よく断ったつもりだったんですが」
「その程度で諦めるタマかい。はぁ~……厄介だね……」
「すみませんすみません」
あたしは必死で頭を下げた。
* * *
それからたった三日後のことだった。
閉店間際の遅い時間に、どう見ても怪しい一団がやってきた。
この短時間で到着したということは、護衛たちから事情を聞いてすぐに決断し、すぐにオルヴィネリを発ったのだろう。
ペトラの言う「行動力の化け物」というのは本当のようだ。
一団のうち四人は見覚えがある。
あたしに叩き切られた剣は、新しいものに新調されたようだ。
そしてそんな男たちに守られるように、前回いなかった女性が混じっている。
ラフな格好のつもりなのだろうが、あきらかにわざとらしい「街娘風」の服装の人物––––だというのにベールをかぶっていて、目立つことこの上ない。
(この人が『姫さま』––––『サーヤ姫』、ね)
見るからに怪しい一団に、他の客たちもソワソワし始める。
いつもの元気な乾杯合戦も鳴りを潜めている。
ついでにニコまでも、不穏な空気を感じているらしく、妙に緊張して静かになってしまっている。
しかたなく、あたしはオルヴィネリからの御一行に「いらっしゃいませ!」と元気よく声をかけた。
「こちらへどうぞ! 閉店が近いんで早速注文を取りたいんですが、何にされますか?」
すると、男たちが返事をする間もなく、ベールの女性が真っ先に声を上げた。
「では、こちらのお店のお勧めを」
その声は鈴のようで、あー、ハイジってばこういうのが好みなのかしら、などと考えてしまう自分は、ちょっと感じ悪いなー、と思った。
「では、店主特製のポトフでいいですか? 今日の肉は鶏肉と腸詰めです。美味しいですよ」
「ええ、ではそれを」
「喜んで! ポトフ一丁!」
「あいよ」とペトラ。
お忍びの旅ならできるだけ時間を節約したいに違いない。その点、ポトフは装うだけなのですぐに出せる。
料理を出すと、姫様はベールを半分だけめくって、嬉しそうにパクパクと食べはじめる。
貴族の姫ともあろうものが、こんな庶民の食べ物でも美味しいのだろうか? などと思うが、考えてみればあたしと出自は似たようなものだ。あたしが美味しいと思うものは、たいてい美味しく感じるだろう。
姫さまがこの世界に来たのはまだ小さい頃だと聞いたが、DNA は日本人なのだから。
それにしても。
(他の客たちが落ち着かん)
いつもなら、なにか理由をつけては乾杯を繰り返す酔いどれたちが、この妙にミステリアスな雰囲気の集団が気になって、おとなしくなってしまっている。
見かねたのか、ペトラは姫さまがポトフを食べ終わると、
「リン、アンタさえよければ、部屋で話してきな」
と、あたしたちを店から追い出しにかかった。
「……そうね。えーと、お客さん、よかったらあたしの部屋に招待させてもらいますけど、どうされます?」
「あら、喜んで伺わせてもらうわ」
楽しみね、と鈴が鳴るような声で喜んでいる。
「あー……それじゃ、奥へどうぞ。お付きの皆さんもどうぞ」
「いえ、我々は……」
「着いてくるなと言われておりますゆえ……」
「そう。じゃあ、悪いけどここで飲んでて」
「承知」
(先日あんな事があったというのに、警戒しなくていいのか、アンタたちは)
アンタたち護衛だろ、と思ったが、まぁあたしがどうのこうの言うことじゃない。
「じゃ、ニコ、悪いけど……」
「大丈夫! お店のことは任せて、あたしのことは気にしなくていいからっ!」
ニコはガチガチになりながらも、あたしに気を使ってくれる。
申し訳ない気持ちのまま、姫さまを奥へ通そうとすると、姫さまがペトラに話しかけた。
「すごく美味しかったわ。……昔と同じ味ね」
「そうかい?」
「久しぶりにペトラの料理を食べられてあたし、嬉しかったのよ。お義父さまのとこの料理も、オルヴィネリの料理も美味しいけど、やっぱりペトラの料理が一番ね」
社交辞令ではないのだろう。その言葉には熱がこもっている。
「お褒め頂き光栄だね。ま、あたしはアンタが誰だか皆目わからないんだけどね」
ペトラはそう言って、ニッと笑ってみせた。
姫さまはベールをしているから表情は見えないが……たぶん同じように笑っているのだろう。
街の酒場のおかみと、大領地の皇太子妃。
立場は違えど、そこには確かな友情のようなものを感じた。
「さ、他の客の邪魔だから行った行った」
ペトラは手をひらひらして、あたしたちを追い出す。
姫さまが何の用事かはわからない。
もう逃げ場はない。
* * *
階段を上り始めると、階下はすぐに騒がしくなった。
先程の一連の謎のやり取りを肴に一杯やるのだろう。
「階段、急だから気をつけて」
「ええ、ありがとう」
姫様は、一切警戒することもなく付いてくる。
(なるほどね。ペトラの店に居たってことは、この場所のことも良く知ってるってことか)
ならば遠慮はいらないだろう。
屋根裏部屋まで通ってもらい、明かりに火を灯す。
「適当にベッドにでも座って」
「ありがとう」
姫様はそう言って、ベールを脱いだ。
顔が顕になる。
三十代くらいの、黒髪・黒目の美人。
なんとなく深窓の令嬢みたいなのをイメージしていたけれど、クリクリとした目がいたずらっぽく、愛嬌のあるかわいらしい女性だった。
ついでに栄養状態がいいのか、細いくせにずいぶんグラマーだ。
姫様は魅力的に微笑むと、嬉しそうに話しかけてきた。
「改めて、はじめまして。えーと、リンさん、よね?」
姫さまはそう言ってペコリと会釈する。
「先日は、うちの者たちが失礼したわ」
「いえ……こちらこそ失礼してしまって……」
「そんなにかしこまらないで? 話を聞いて、わたし、顔が赤くなっちゃった。身分とか立場とか、そんな下らないものを持ち出すなんて……ちゃんと叱っておいたから、許してもらえると嬉しいな」
「はぁ……」
なるほど、男たちがおとなしかったわけだ。
「あたし、ずっとリンさんに会ってみたかったの。……彼は元気?」
「ハイジなら元気よ」
「そう。よかった……。えーと、リンさんは、日本人よね?」
「ええ」
「やっぱり! 名前を聞いた時からそうだと思ってたわ」
「あなたは?」
「あたしも日本人よ。ねえ知ってる? 『はぐれ』って、ほとんどが日本人かイギリス人なの。あとは、北欧の人かな。フィンランドとかスウェーデンとか」
「ふうん……?」
(日本とイギリスや北欧になにか共通点があったっけ)
(島国だとか、立憲民主主義だとか……あっ、土着信仰が似てるって聞いたような)
「あ、自己紹介が遅れたわね。私は「ヤマシタサヤ」。昔、ここに居た頃には、みんな、あたしのことを「サーヤ」って呼んだわ」
「そ、そんなに怒らなくったって……」
その夜、あたしはニコが寝静まってから、ペトラに事情を説明すると、ペトラが慌てふためいた。
正直、あたしは姫さまの遣いなんかより、ペトラのほうが百倍怖い。
「……まずかった?」
「そりゃ、まずいだろ。 貴族、それもオルヴィネリの皇太子妃からの招聘を断るなんて、普通はしない。しかも、そっちが来いだなんて、下手すると侮辱罪でしょっぴかれるよ」
「そっかぁ……」
どうやらあたしは、思ったよりも相当まずいことをしてしまったらしい。
小さくなっていると、ペトラは頭を抱え、眉間に深く皺を寄せながら長々と大きなため息を吐いた。
「はぁぁ……まぁサーヤのことだから、問題にはならないだろうけど」
「ペトラ、姫さまのことを知ってるの?」
「ああ……こうなりゃしかたないね。あんたにも教えておこう。でないと黙ってるとどんな騒ぎを起こすかわかったもんじゃないからね」
「………すみません……」
「サーヤは……ニコを拾う少し前まで、ここで働いていたんだよ」
「えええええええ」
マジで?
じゃあ、サーヤ姫って『はぐれ』としても、ハイジとの関係についても、このお店についてさえも、あたしの先輩ってこと?
「まぁ、想像はつくだろうけど、ハイジに頼まれてね」
「あー……」
ハイジは留守にすることも多い。
徴募があればすっ飛んでいくが、あたしならともかく、普通の女の子をあんな森深くに放置はできないだろう。
つまり、ハイジが戦っている間、ペトラが姫さまを預かっていたというわけだ。
ということは、この街の皆は姫さまのことをよく知っていたわけで、ギルドでも、客たちの間でも、やけに姫さまが人気者だったのは、そういう理由だったのか。
「ごめん、ペトラ……厄介事に巻き込んで」
「全くだよ……」
「もし侮辱罪がどうって話になったら、その時はあたし一人が……」
「リン。そうじゃないよ。そういうことじゃなくて……」
「何? ペトラ」
「……あの子……来るんだろうなぁ……たぶん……いや、絶対に来る」
「来る、って、サーヤ姫?」
「ああ。サーヤは体は弱かったが、意志の強さは……リン、あんたを超える。こうと決めたら、何が何でも実現しようとする。行動力の化け物さね」
「なんか思ってたのと違う!」
「なんだい、深窓の令嬢みたいなのを想像してたのかい?」
あのハイジに育てられて、そんな子に育つわけ無いだろ、とペトラは言った。
……ごもっとも。
「色々あってねぇ……ハイジと引き離すのにも、えらく苦労させられたんだよ……ひょっとして『はぐれ』には頑固者しか居ないのかい?」
「えっと、あたしは素直だと思うけど……」
「はぁ?! あんたが素直ってんなら、ハイジは優男だよ!」
「ぶっ」
どういう表現だ。
「とにかく、こうなってしまえば、サーヤは来る。間違いない」
「そうですか……体よく断ったつもりだったんですが」
「その程度で諦めるタマかい。はぁ~……厄介だね……」
「すみませんすみません」
あたしは必死で頭を下げた。
* * *
それからたった三日後のことだった。
閉店間際の遅い時間に、どう見ても怪しい一団がやってきた。
この短時間で到着したということは、護衛たちから事情を聞いてすぐに決断し、すぐにオルヴィネリを発ったのだろう。
ペトラの言う「行動力の化け物」というのは本当のようだ。
一団のうち四人は見覚えがある。
あたしに叩き切られた剣は、新しいものに新調されたようだ。
そしてそんな男たちに守られるように、前回いなかった女性が混じっている。
ラフな格好のつもりなのだろうが、あきらかにわざとらしい「街娘風」の服装の人物––––だというのにベールをかぶっていて、目立つことこの上ない。
(この人が『姫さま』––––『サーヤ姫』、ね)
見るからに怪しい一団に、他の客たちもソワソワし始める。
いつもの元気な乾杯合戦も鳴りを潜めている。
ついでにニコまでも、不穏な空気を感じているらしく、妙に緊張して静かになってしまっている。
しかたなく、あたしはオルヴィネリからの御一行に「いらっしゃいませ!」と元気よく声をかけた。
「こちらへどうぞ! 閉店が近いんで早速注文を取りたいんですが、何にされますか?」
すると、男たちが返事をする間もなく、ベールの女性が真っ先に声を上げた。
「では、こちらのお店のお勧めを」
その声は鈴のようで、あー、ハイジってばこういうのが好みなのかしら、などと考えてしまう自分は、ちょっと感じ悪いなー、と思った。
「では、店主特製のポトフでいいですか? 今日の肉は鶏肉と腸詰めです。美味しいですよ」
「ええ、ではそれを」
「喜んで! ポトフ一丁!」
「あいよ」とペトラ。
お忍びの旅ならできるだけ時間を節約したいに違いない。その点、ポトフは装うだけなのですぐに出せる。
料理を出すと、姫様はベールを半分だけめくって、嬉しそうにパクパクと食べはじめる。
貴族の姫ともあろうものが、こんな庶民の食べ物でも美味しいのだろうか? などと思うが、考えてみればあたしと出自は似たようなものだ。あたしが美味しいと思うものは、たいてい美味しく感じるだろう。
姫さまがこの世界に来たのはまだ小さい頃だと聞いたが、DNA は日本人なのだから。
それにしても。
(他の客たちが落ち着かん)
いつもなら、なにか理由をつけては乾杯を繰り返す酔いどれたちが、この妙にミステリアスな雰囲気の集団が気になって、おとなしくなってしまっている。
見かねたのか、ペトラは姫さまがポトフを食べ終わると、
「リン、アンタさえよければ、部屋で話してきな」
と、あたしたちを店から追い出しにかかった。
「……そうね。えーと、お客さん、よかったらあたしの部屋に招待させてもらいますけど、どうされます?」
「あら、喜んで伺わせてもらうわ」
楽しみね、と鈴が鳴るような声で喜んでいる。
「あー……それじゃ、奥へどうぞ。お付きの皆さんもどうぞ」
「いえ、我々は……」
「着いてくるなと言われておりますゆえ……」
「そう。じゃあ、悪いけどここで飲んでて」
「承知」
(先日あんな事があったというのに、警戒しなくていいのか、アンタたちは)
アンタたち護衛だろ、と思ったが、まぁあたしがどうのこうの言うことじゃない。
「じゃ、ニコ、悪いけど……」
「大丈夫! お店のことは任せて、あたしのことは気にしなくていいからっ!」
ニコはガチガチになりながらも、あたしに気を使ってくれる。
申し訳ない気持ちのまま、姫さまを奥へ通そうとすると、姫さまがペトラに話しかけた。
「すごく美味しかったわ。……昔と同じ味ね」
「そうかい?」
「久しぶりにペトラの料理を食べられてあたし、嬉しかったのよ。お義父さまのとこの料理も、オルヴィネリの料理も美味しいけど、やっぱりペトラの料理が一番ね」
社交辞令ではないのだろう。その言葉には熱がこもっている。
「お褒め頂き光栄だね。ま、あたしはアンタが誰だか皆目わからないんだけどね」
ペトラはそう言って、ニッと笑ってみせた。
姫さまはベールをしているから表情は見えないが……たぶん同じように笑っているのだろう。
街の酒場のおかみと、大領地の皇太子妃。
立場は違えど、そこには確かな友情のようなものを感じた。
「さ、他の客の邪魔だから行った行った」
ペトラは手をひらひらして、あたしたちを追い出す。
姫さまが何の用事かはわからない。
もう逃げ場はない。
* * *
階段を上り始めると、階下はすぐに騒がしくなった。
先程の一連の謎のやり取りを肴に一杯やるのだろう。
「階段、急だから気をつけて」
「ええ、ありがとう」
姫様は、一切警戒することもなく付いてくる。
(なるほどね。ペトラの店に居たってことは、この場所のことも良く知ってるってことか)
ならば遠慮はいらないだろう。
屋根裏部屋まで通ってもらい、明かりに火を灯す。
「適当にベッドにでも座って」
「ありがとう」
姫様はそう言って、ベールを脱いだ。
顔が顕になる。
三十代くらいの、黒髪・黒目の美人。
なんとなく深窓の令嬢みたいなのをイメージしていたけれど、クリクリとした目がいたずらっぽく、愛嬌のあるかわいらしい女性だった。
ついでに栄養状態がいいのか、細いくせにずいぶんグラマーだ。
姫様は魅力的に微笑むと、嬉しそうに話しかけてきた。
「改めて、はじめまして。えーと、リンさん、よね?」
姫さまはそう言ってペコリと会釈する。
「先日は、うちの者たちが失礼したわ」
「いえ……こちらこそ失礼してしまって……」
「そんなにかしこまらないで? 話を聞いて、わたし、顔が赤くなっちゃった。身分とか立場とか、そんな下らないものを持ち出すなんて……ちゃんと叱っておいたから、許してもらえると嬉しいな」
「はぁ……」
なるほど、男たちがおとなしかったわけだ。
「あたし、ずっとリンさんに会ってみたかったの。……彼は元気?」
「ハイジなら元気よ」
「そう。よかった……。えーと、リンさんは、日本人よね?」
「ええ」
「やっぱり! 名前を聞いた時からそうだと思ってたわ」
「あなたは?」
「あたしも日本人よ。ねえ知ってる? 『はぐれ』って、ほとんどが日本人かイギリス人なの。あとは、北欧の人かな。フィンランドとかスウェーデンとか」
「ふうん……?」
(日本とイギリスや北欧になにか共通点があったっけ)
(島国だとか、立憲民主主義だとか……あっ、土着信仰が似てるって聞いたような)
「あ、自己紹介が遅れたわね。私は「ヤマシタサヤ」。昔、ここに居た頃には、みんな、あたしのことを「サーヤ」って呼んだわ」
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