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四章「帰還」
#12
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「……どうするよ」
「そんな事言われても」
「じゃあさ、二手に分かれて左右から攻撃するってのはどう?」
「……………………こわい……………………」
「その前にみんな」
まごまごしている皆に釘を刺す。
「みんな、ガラハドの耳の良さをなめたらだめだよ。ここでのコソコソ声も全部聞かれていると思っていいよ」
「ええ?!」
「じゃあどうやって戦えばいいのさ!」
「別に勝つ必要はないよ。ただ実力を見せればいいんだから」
「と言ってもなぁ……」
離れたところで不敵に笑う筋肉だるまを横目に、秘密基地グループの面々はコソコソと話し合う。
が、そもそも敵の前で話し合うという状況がもうよろしくない。
一応はそれぞれ手に合いそうな武器を持っているが、なんとも心もとない。
勝つ必要はない。
必要はないが……。
(だからといって勝っちゃいけないってことでもないよな)
ガラハドには世話になった。
だからこそ、秘密基地グループ………いや、秘密基地パーティの実力を示しておきたい。
「聞け、お前たち」
「あ、ダイチさんだ」
「ダイチさんだ」
「え、ダイチさんってことはもしかして危険? 危険なの?」
「……………………こわい……………………」
「いいから聞け。お前たち、ガラハドを攻略するぞ」
俺が言うと皆は「えっ」と言って顔を見合わせる。
ガラハドが獰猛な笑みを深めたのが気配でわかる。
「……あんなのに勝てるの?」
「先程も言ったが、勝つ必要はない。ガラハドは『実力を見せろ』と言った。なら見せるまでだ」
俺はすぅっと空気を肺に送り込み、鋭く叫んだ。
「ポイズンタラテクト2! ファングフロッグ1! レッサーニードルスコーピオン1! ホーンボア2! 来るぞッ!!」
「「「「!!!!!」」」」
バッと臨戦態勢に入るパーティメンバーたち。
「アリサッ!!」
「ほいなっ!!」
間髪入れずケンゴがアリサに指示を出しながら同時に飛び出す。
驚きで目を見開くガラハド。しかしすぐに嬉しそうにそれを迎え入れるように木刀を構えた。
「コータッ! 行けッ!」
「『Ventus(風よ!)」
ケンゴの指示にコータが即座に応える。ドバッ、と風が舞い上がる。しかしガラハドは超ヘヴィー級だ。びくともしない。だが砂が舞い上がるので薄目になっている。一部とはいえ視界を奪えた! 好機!
「『Ignis(火よ!)』
ガラハドの顔の左右に2つ同時に火の玉が生まれる。
カナの好判断だ。直接当てようとしても防がれるだけだ。火を嫌ったガラハドがウッと呻いて後ろに下がろうとしたところに、
「『Thorn(穿て)!」
カナの猛追だ。気配を感じたガラハドは後ろに下がるのを止めて前に一歩踏み出そうとする。そこに、
「ホーーーーーームランッ!!!!」
アリサの力ずくのフルスイング! 難なく木刀で弾かれるが態勢は崩せた。そこに、
「「『Stiria(氷の槍よ!)』」」
コータとカナの同時詠唱! 巨大な氷の槍が2つ宙に浮かぶ。
「おいおいおいおいおい……!!!」
ガラハドの顔に焦りが生まれる。
「「いっけぇええええええええ――――ーッ!!!」」
両手を振り上げたコータとカナが、その手を勢いよく振り下ろす!
「舐めるなっ!」
ガラハドは跳ねるように後ろに下がるが、氷の槍のその真下をケンゴが鋭い足さばきで突進してくる。
「坊主ッ?!」
このままではケンゴに『Stiria(氷の槍よ)』が直撃する……と焦るガラハドだったが。
「……は?」
氷の槍はそのままピタリと止まったまま動かない。カナとコータのフェイントだ。
ケンゴがニヤリと不敵に笑い、叫んだ。
「ん面ぇええええええーーーーーーーーーーーーーんッツ!!!!」
▽
「殺す気か?! 殺す気なのか?!」
冷や汗でひどい顔になっているガラハドが肩で息をしながら怒鳴った。
「なんだよ、実力を見せろって言ったのはガラハドだろうが」
「や・り・す・ぎ・だッ! バカ者!!」
「負けたからって八つ当たりは良くないな」
「負けてはおらんよな?!」
そう、残念ながら一撃を入れるには至らず、ケンゴの攻撃はあっさりといなされてしまった。
剣が通用しなかったアリサとケンゴは拗ねているが、ガラハド相手にあれだけやれれば十分すぎる。
試合には負けたが、おれは秘密基地パーティの勝ちだと思っている。
コータとカナはフェイントがうまくハマったことが嬉しかったらしく、ハイタッチなどしている。
「で? 実力は見せられたのか?」
「ああ、十分である。初級から始めさせるのが申し訳ないくらいの練度である」
ガラハドの実感のこもった言葉に、子どもたちがワッと湧いた。
「なら、合格ってことでいいな?」
「いいや、まだだ」
ガラハドはゆらりと立ち上がる。
「まだお前の実力を見ておらん」
「……できれば遠慮したいんだけど……」
「グレン。――なぁ『罰当たり』のグレアムよ。お前が死んだと聞いたときは、目の前が真っ暗になったぞ」
「そうかい」
「剣の実力は……吾輩とどっこいどっこいだったか。だが結局一度も『罰当たり』には勝てないままだった」
「そうだったか? 剣の腕ならガラハドのほうが上だったろ。俺、細っこかったし」
それに今は子供だし、と華奢な体をアピールするが。
「だが勝てん。何をどうしても貴様には勝てなかった。勝ち逃げされたと思っておったが、こうして好機が訪れた! これを逃がすつもりはないぞ、グレアムッ!!」
「相変わらず暑っ苦しいな!?」
後ろでは「え、ダイチとガラハドさんが戦うの?」などと子どもたちがざわついている。
「やめといたほうがいいよ、その体格差じゃ無理だって!」
「ダイチくんが怪我しちゃう!」
「えー、でもダイチさんの実力は本物でしょ」
「いけいけ! オレたちの仇を打ってくれ!」
コータとカナは止めているが、アリサとケンゴが囃し立てている。
「仲間はああ言っておるぞ。それに吾輩には貴様を逃がすつもりはない!」
「わかったよ……やるよ。ただしこの体格差なんだ。そちらは寸止め、こちらは何でもありってことでいいか?」
「よかろう! そのくらいのハンデはくれてやろう! 来いッ!! グレアムッ!!!」
「そんな事言われても」
「じゃあさ、二手に分かれて左右から攻撃するってのはどう?」
「……………………こわい……………………」
「その前にみんな」
まごまごしている皆に釘を刺す。
「みんな、ガラハドの耳の良さをなめたらだめだよ。ここでのコソコソ声も全部聞かれていると思っていいよ」
「ええ?!」
「じゃあどうやって戦えばいいのさ!」
「別に勝つ必要はないよ。ただ実力を見せればいいんだから」
「と言ってもなぁ……」
離れたところで不敵に笑う筋肉だるまを横目に、秘密基地グループの面々はコソコソと話し合う。
が、そもそも敵の前で話し合うという状況がもうよろしくない。
一応はそれぞれ手に合いそうな武器を持っているが、なんとも心もとない。
勝つ必要はない。
必要はないが……。
(だからといって勝っちゃいけないってことでもないよな)
ガラハドには世話になった。
だからこそ、秘密基地グループ………いや、秘密基地パーティの実力を示しておきたい。
「聞け、お前たち」
「あ、ダイチさんだ」
「ダイチさんだ」
「え、ダイチさんってことはもしかして危険? 危険なの?」
「……………………こわい……………………」
「いいから聞け。お前たち、ガラハドを攻略するぞ」
俺が言うと皆は「えっ」と言って顔を見合わせる。
ガラハドが獰猛な笑みを深めたのが気配でわかる。
「……あんなのに勝てるの?」
「先程も言ったが、勝つ必要はない。ガラハドは『実力を見せろ』と言った。なら見せるまでだ」
俺はすぅっと空気を肺に送り込み、鋭く叫んだ。
「ポイズンタラテクト2! ファングフロッグ1! レッサーニードルスコーピオン1! ホーンボア2! 来るぞッ!!」
「「「「!!!!!」」」」
バッと臨戦態勢に入るパーティメンバーたち。
「アリサッ!!」
「ほいなっ!!」
間髪入れずケンゴがアリサに指示を出しながら同時に飛び出す。
驚きで目を見開くガラハド。しかしすぐに嬉しそうにそれを迎え入れるように木刀を構えた。
「コータッ! 行けッ!」
「『Ventus(風よ!)」
ケンゴの指示にコータが即座に応える。ドバッ、と風が舞い上がる。しかしガラハドは超ヘヴィー級だ。びくともしない。だが砂が舞い上がるので薄目になっている。一部とはいえ視界を奪えた! 好機!
「『Ignis(火よ!)』
ガラハドの顔の左右に2つ同時に火の玉が生まれる。
カナの好判断だ。直接当てようとしても防がれるだけだ。火を嫌ったガラハドがウッと呻いて後ろに下がろうとしたところに、
「『Thorn(穿て)!」
カナの猛追だ。気配を感じたガラハドは後ろに下がるのを止めて前に一歩踏み出そうとする。そこに、
「ホーーーーーームランッ!!!!」
アリサの力ずくのフルスイング! 難なく木刀で弾かれるが態勢は崩せた。そこに、
「「『Stiria(氷の槍よ!)』」」
コータとカナの同時詠唱! 巨大な氷の槍が2つ宙に浮かぶ。
「おいおいおいおいおい……!!!」
ガラハドの顔に焦りが生まれる。
「「いっけぇええええええええ――――ーッ!!!」」
両手を振り上げたコータとカナが、その手を勢いよく振り下ろす!
「舐めるなっ!」
ガラハドは跳ねるように後ろに下がるが、氷の槍のその真下をケンゴが鋭い足さばきで突進してくる。
「坊主ッ?!」
このままではケンゴに『Stiria(氷の槍よ)』が直撃する……と焦るガラハドだったが。
「……は?」
氷の槍はそのままピタリと止まったまま動かない。カナとコータのフェイントだ。
ケンゴがニヤリと不敵に笑い、叫んだ。
「ん面ぇええええええーーーーーーーーーーーーーんッツ!!!!」
▽
「殺す気か?! 殺す気なのか?!」
冷や汗でひどい顔になっているガラハドが肩で息をしながら怒鳴った。
「なんだよ、実力を見せろって言ったのはガラハドだろうが」
「や・り・す・ぎ・だッ! バカ者!!」
「負けたからって八つ当たりは良くないな」
「負けてはおらんよな?!」
そう、残念ながら一撃を入れるには至らず、ケンゴの攻撃はあっさりといなされてしまった。
剣が通用しなかったアリサとケンゴは拗ねているが、ガラハド相手にあれだけやれれば十分すぎる。
試合には負けたが、おれは秘密基地パーティの勝ちだと思っている。
コータとカナはフェイントがうまくハマったことが嬉しかったらしく、ハイタッチなどしている。
「で? 実力は見せられたのか?」
「ああ、十分である。初級から始めさせるのが申し訳ないくらいの練度である」
ガラハドの実感のこもった言葉に、子どもたちがワッと湧いた。
「なら、合格ってことでいいな?」
「いいや、まだだ」
ガラハドはゆらりと立ち上がる。
「まだお前の実力を見ておらん」
「……できれば遠慮したいんだけど……」
「グレン。――なぁ『罰当たり』のグレアムよ。お前が死んだと聞いたときは、目の前が真っ暗になったぞ」
「そうかい」
「剣の実力は……吾輩とどっこいどっこいだったか。だが結局一度も『罰当たり』には勝てないままだった」
「そうだったか? 剣の腕ならガラハドのほうが上だったろ。俺、細っこかったし」
それに今は子供だし、と華奢な体をアピールするが。
「だが勝てん。何をどうしても貴様には勝てなかった。勝ち逃げされたと思っておったが、こうして好機が訪れた! これを逃がすつもりはないぞ、グレアムッ!!」
「相変わらず暑っ苦しいな!?」
後ろでは「え、ダイチとガラハドさんが戦うの?」などと子どもたちがざわついている。
「やめといたほうがいいよ、その体格差じゃ無理だって!」
「ダイチくんが怪我しちゃう!」
「えー、でもダイチさんの実力は本物でしょ」
「いけいけ! オレたちの仇を打ってくれ!」
コータとカナは止めているが、アリサとケンゴが囃し立てている。
「仲間はああ言っておるぞ。それに吾輩には貴様を逃がすつもりはない!」
「わかったよ……やるよ。ただしこの体格差なんだ。そちらは寸止め、こちらは何でもありってことでいいか?」
「よかろう! そのくらいのハンデはくれてやろう! 来いッ!! グレアムッ!!!」
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