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三章「遭遇」
#18
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秘密基地へ、さらに進む。
しばらく行くと、少しずつ見慣れた、つまり秘密基地から近いため何度も通った、見覚えのある通路に到着する。
「もうすぐ、出口です」
ケンゴが説明すると、カインは肩をすくめて見せた。
「その前に、ボクの見せ場がやってきたみたいだよ」
先を見れば通路の先にコウモリ、蜘蛛、サソリのお馴染みの組み合わせのモンスターが出現していた。
数も先ほどとほぼ同じ。コウモリが撹乱し、蜘蛛が追い詰め、サソリがトドメを指すという意図が見える。
「じゃ、ちょっと言ってくるから」
カインはそう言うと、無手のまま走り出す。
「ちょ、け、剣は?!」
アリサが慌てる。
「まぁ、見とけ。王国騎士が戦うところなんて、なかなか見られるもんじゃないぞ」
オレがそう言うと、皆はゴクリと喉を上下させた。
あっという間に接敵したカインは、「しゃらん」と音をさせて、剣を抜き――
「「「「……は?」」」」
その瞬間モンスターが全て2つになり、カランカラン……と大量の魔石が降る音が聞こえてきた。
「な、なにぃーーーー!?」
「ま、魔法?魔術?」
「いいや、あれはただの剣戟だ。早すぎて一撃に見えるけど、単純に一匹ずつ丁寧に半分に切り捨てただけだ」
オレの説明に、皆は納得いかないようで、
「いやいやいやいやいや……」
と、ドン引きした様子だ。
「やー、大量大量。ほら、魔石。ボクはそんなにいらないから、山分けね」
カインはそんなことを言いながら、気楽そうな顔で戻ってくる。
「カインさん、一体何をやったんですか?」
カナが慄いた顔で問うと、
「ん?ただ斬っただけだよ」
「……本当に?」
「うん。……そこの彼は見えてたみたいだけど」
カインはそう言って、オレとケンゴをチラリと見た。
「ええ、何とか「斬った」ということだけはわかりました。多分、動きの早いコウモリを先に5匹、蜘蛛2匹、サソリ、残りのコウモリの順……ですか?」
「よく見えてるね」
「……それより、サソリをどうやって斃したのかわかりませんでした」
「ん?単純に関節を斬っただけだよ。ひっくり返す方法がなかったからね」
「あのスピードで、ですか……」
皆の呆れ顔に、カインは満足したようで、ちょっと得意気に
「まぁ、騎士ならばこのくらいのことはできないといけないのさ。「他の階層」なら、私が苦戦するようなモンスターがゴロゴロしているが、この程度の低レベルモンスターなら問題ない」
騎士の強さを目の当たりにした皆は、それでもカインのことは怖くなったりはしないらしい。
(昔から、強さの割に人に好かれるやつだったからな)
ドヤ顔のカインを見ながら、俺はそんなことを思い出していた。
「さあ、次は出口とやらだね。本当に外界につながっているのなら、ちょっと問題だからね」
カインの言葉に、コータが意を決して言う。
「あの、カインさん」
「なんだい」
「本当に塞いじゃう、んですか?」
「ん、そりゃあね。万一モンスターが外に出てきたら困るだろう?」
その言葉に、カナがピクリとする。
「あの、モンスターが外に出てくることはないと聞いたんですが」
「ん、誰にだい?」
「……」
カナの視線で、それが俺のことだと伝わったようだ。
「ダイチくんが言うには、魔力量が少ないので、モンスターが外に出てくる可能性は、あと数千年はないだろうって話でした」
「なるほどね」
カインは頷いて、
「確かに、現実的にはそうだろう。階層は混じり合うことなく独立しているし、この階層には魔力が極端に少ない。つまり、スタンピードは起きない」
「じゃあ……」
「でも、それはあくまで「自然には」ということだ」
カインはそう言って、真面目な顔になる。
「もし、誰かがわざとモンスターを外に連れ出そうとすれば、もちろんモンスターは外に出てくる。まぁ、コウモリや蜘蛛程度ならさほど危険はないけれど、それでも小さな子どもが――キミたちのように戦える子供ではなく、戦う術のない子供が襲われたら?あるいは老人。あるいは女性。妊婦が襲われたら?」
カインの言葉に、皆は蒼白になる。
そこまでは考えていなかったのだろう。
「だから、我々騎士団は、万が一でも王国民が危険に晒される可能性があれば、それを決して見逃さない。これに例外はない」
きっぱりとカインはいい切る。
「さて、そろそろ出口、なのかな?」
しばらく行くと、少しずつ見慣れた、つまり秘密基地から近いため何度も通った、見覚えのある通路に到着する。
「もうすぐ、出口です」
ケンゴが説明すると、カインは肩をすくめて見せた。
「その前に、ボクの見せ場がやってきたみたいだよ」
先を見れば通路の先にコウモリ、蜘蛛、サソリのお馴染みの組み合わせのモンスターが出現していた。
数も先ほどとほぼ同じ。コウモリが撹乱し、蜘蛛が追い詰め、サソリがトドメを指すという意図が見える。
「じゃ、ちょっと言ってくるから」
カインはそう言うと、無手のまま走り出す。
「ちょ、け、剣は?!」
アリサが慌てる。
「まぁ、見とけ。王国騎士が戦うところなんて、なかなか見られるもんじゃないぞ」
オレがそう言うと、皆はゴクリと喉を上下させた。
あっという間に接敵したカインは、「しゃらん」と音をさせて、剣を抜き――
「「「「……は?」」」」
その瞬間モンスターが全て2つになり、カランカラン……と大量の魔石が降る音が聞こえてきた。
「な、なにぃーーーー!?」
「ま、魔法?魔術?」
「いいや、あれはただの剣戟だ。早すぎて一撃に見えるけど、単純に一匹ずつ丁寧に半分に切り捨てただけだ」
オレの説明に、皆は納得いかないようで、
「いやいやいやいやいや……」
と、ドン引きした様子だ。
「やー、大量大量。ほら、魔石。ボクはそんなにいらないから、山分けね」
カインはそんなことを言いながら、気楽そうな顔で戻ってくる。
「カインさん、一体何をやったんですか?」
カナが慄いた顔で問うと、
「ん?ただ斬っただけだよ」
「……本当に?」
「うん。……そこの彼は見えてたみたいだけど」
カインはそう言って、オレとケンゴをチラリと見た。
「ええ、何とか「斬った」ということだけはわかりました。多分、動きの早いコウモリを先に5匹、蜘蛛2匹、サソリ、残りのコウモリの順……ですか?」
「よく見えてるね」
「……それより、サソリをどうやって斃したのかわかりませんでした」
「ん?単純に関節を斬っただけだよ。ひっくり返す方法がなかったからね」
「あのスピードで、ですか……」
皆の呆れ顔に、カインは満足したようで、ちょっと得意気に
「まぁ、騎士ならばこのくらいのことはできないといけないのさ。「他の階層」なら、私が苦戦するようなモンスターがゴロゴロしているが、この程度の低レベルモンスターなら問題ない」
騎士の強さを目の当たりにした皆は、それでもカインのことは怖くなったりはしないらしい。
(昔から、強さの割に人に好かれるやつだったからな)
ドヤ顔のカインを見ながら、俺はそんなことを思い出していた。
「さあ、次は出口とやらだね。本当に外界につながっているのなら、ちょっと問題だからね」
カインの言葉に、コータが意を決して言う。
「あの、カインさん」
「なんだい」
「本当に塞いじゃう、んですか?」
「ん、そりゃあね。万一モンスターが外に出てきたら困るだろう?」
その言葉に、カナがピクリとする。
「あの、モンスターが外に出てくることはないと聞いたんですが」
「ん、誰にだい?」
「……」
カナの視線で、それが俺のことだと伝わったようだ。
「ダイチくんが言うには、魔力量が少ないので、モンスターが外に出てくる可能性は、あと数千年はないだろうって話でした」
「なるほどね」
カインは頷いて、
「確かに、現実的にはそうだろう。階層は混じり合うことなく独立しているし、この階層には魔力が極端に少ない。つまり、スタンピードは起きない」
「じゃあ……」
「でも、それはあくまで「自然には」ということだ」
カインはそう言って、真面目な顔になる。
「もし、誰かがわざとモンスターを外に連れ出そうとすれば、もちろんモンスターは外に出てくる。まぁ、コウモリや蜘蛛程度ならさほど危険はないけれど、それでも小さな子どもが――キミたちのように戦える子供ではなく、戦う術のない子供が襲われたら?あるいは老人。あるいは女性。妊婦が襲われたら?」
カインの言葉に、皆は蒼白になる。
そこまでは考えていなかったのだろう。
「だから、我々騎士団は、万が一でも王国民が危険に晒される可能性があれば、それを決して見逃さない。これに例外はない」
きっぱりとカインはいい切る。
「さて、そろそろ出口、なのかな?」
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