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三章「遭遇」
#16
しおりを挟む喜ぶ子どもたち。
しかし、カインはそれを眺めながら、きっぱりと言った。
「でも、一つ質問にまだ答えてもらってないよね」
すなわち。
「君たち、どうやってこの「はぐれ階層」に入り込んだ? ポータルもないし、凶悪なモンスターだらけの深階層を通らないと、この階層には来られないはずだ」
カインの目が光る。
「どうやってここまで来たのか話してもらおう。無認可のポータルでもあるなら大問題だし、もしここまで連れてきた大人がいるのであれば、厳しく罰する必要がある」
カインの追求と容赦のない厳しい目付きに、皆は息を呑む。
おいおい……こいつらは日本育ちだぞ。騎士の視線に晒されちゃあ、震え上がるしかないだろうが。
仕方なく、皆に変わりオレが説明する。
「カインさん誤解です。誰かに連れ込まれたわけでもなければ、無認可のポータルがあるわけでもないです」
「ほほう?」
カインがオレを一瞥する。
「……ダイチ、ポータルってなんだ?」
「仕掛けておくと、何度でもそこまでワープできる魔道具だ」
「ワープ?! すごいじゃん……でも、なんでカインさんは睨んでるわけ……?」
「ポータルは双方向だ。つまりモンスターが引っかかると外に出てきてしまうため、設置には厳しく制限があるんだ」
「そう! ポータルには制限がかけられている。もしも君たちがポータルを使ってここまで来たというのなら、記録にない限りそれは無認可のポータルだ。無認可のポータル設置は重罪だからね、君たちにまで罪に問うつもりはないが……仕掛けた者を野放しにはできないんだ」
わかってほしい、とカインは更に追求してくる。
「正直に話してほしい。君たちは、どうやってここまでたどり着いたんだ?」
「そんなこと言っても……俺達の秘密基地の裏がダンジョンで、そこから入ったとしか……」
ケンゴがオロオロと説明するが、カインは「そんなはずはない」と首を横に振る。
皆困っているな……まぁ無理もない。
「カインさん、仲間たちが言っていることは本当です」
「それを信じろというのかい?ダンジョンの、これだけ深い階層のどこかが、地表とつながっている?そんなことはありえない」
(普通ならな)
仕方ない。
「では、百聞は一見にしかず。カインさんも一緒に、秘密基地までついてきてくれませんか?」
オレがそう言うと、皆がぎょっとした顔をする。
「どうした」
「だって、カインさんって……」
……なんだ?
カナがちょいちょいと手招きするので、耳を近づける。
(カインさんって、ひょっとして異世界人なんじゃないの?)
異世界人?
オレは意味がわらからず、しばらく考えてからようやく理解する。
なるほど。たしかにオレのこの記憶も、カインも、そしてこのダンジョンも。
日本人から見ると「異世界」なのか。
(これは……盲点だったな)
オレの記憶は日本人「仁科 大地」としての記憶と混じり合っている。
だから、ダンジョンやダルジニョン王国を含む「あちらの世界」について、日本とは違う「異世界である」という認識はなかったのだ。
「どうしたんだい?」
「いえ……なんでもない、です」
とはいえ、ここまで来てしまえば仕方ない。
「では、キミたちの言うところの『秘密基地』へ招待してもらおう。それに、はぐれ階層とはいえ、もしダンジョンが我々が認識しているのとは別の場所で地表とつながっているのなら」
カインは僕たちに気を使ったのか、ちょっと困ったような顔を見せて、
「塞がない、というわけには行かないからね」
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