上 下
25 / 65
二章「魔法」

#5

しおりを挟む
「このように」

 オレは皆を見回して言った。

「最初に一番有効そうな魔術を一つ使って、倒しながら得られる魔石を節約しながら利用して殲滅するのがセオリーだ。普通は剣なども使うのでここまで魔石に頼った戦い方はしないが、今回はお前たちに理解してもらうために、わかりやすく魔石戦を見てもらった」

「「「「いやいやいやいや!」」」」

 全員からツッコまれてしまった。

「ちょ、すげぇええええ!! 何が起きたのかさっぱりわからなかった!!」
「ちょーーーっと真似できる気はしないかな!」
「武器を使わず全滅させた……」
「全然わかりやすくないよ、ダイチ君……」

 ふむ……始めて見る魔法戦だし、ちょっと難しかったか。

「何も初めからできるとは言ってない。とりあえずは1匹ずつ、慣れれば2匹と魔術を使って倒せればいい。慣れればこの程度はお前たちもできるようになる。」

 魔石を拾い集めながらオレは言う。

「それにチームなのだから、一人でやる必要はない。ケンゴ」
「な、なんだよ」
「リーダーの役割は、こういう時に役割分担を決めることだ。先ほどの場合なら、最初に『Flamma(炎よ)』を打ち込んだら、あとは状況を見ながら誰がどの敵を倒すかを指示しろ。場合によっては攻撃方法も指示する必要があるな」
「え、ええー、オレにできるかなぁ……」
「できるとも。オレの知っているケンゴは戦いの中でも周りが見えている。戦いの中で一番冷静なのはお前だ。はじめは難しくとも慣れれば問題ない」
「そ、そう?」

 ケンゴが顔を赤らめて、グッと腕を握りしめる。
 自分がまだ強くなれることを知って、嬉しくなったらしい。

「あと、コータとカナは物理戦が苦手なようだから魔術をしっかり覚えろ。ケンゴとアリサは身体能力が高いが、魔法を使いながら戦うとそのメリットが死ぬ。魔術は後衛のお前たちがやるべきだ」
「わ、わかった!」
「やるよ!」

 二人とも力強く頷いた。

「そしてアリサ」
「な、なに?」

 アリサが警戒心丸出しの顔にオレを見る。
 自分だけ役割がないと思って拗ねているのが丸わかりだからな。

「前衛が二人いるのには意味がある。剣道をやっているケンゴは突破力が強い。速度が段違いだ。その分、一対多数の戦いに慣れていない」
「剣道の試合は一対一なんだからしょうがねぇだろ」

 ケンゴが口を尖らせる。

「拗ねるなケンゴ。それは特徴であって欠点ではない。弱点ではあるが」
「……一緒じゃね?」

 ますます不満顔になる。

「同じじゃない。アリサがいる」
「あたし?」

 アリサがキョトンとする。

「そうだ。前衛は二人一組。一人が突撃し、一人がそのの背中を守る。さらに後衛のコータとカナが魔術でサポートする。ケンゴが周りを見て指示を出し、全員が自分の役割に集中する。とてもバランスがいい」
「あたし、ケンゴの背中を守ればいいの?」
「ああ。最初の戦いのときも思ったがケンゴの攻撃力は高い。しかし背中からの攻撃に対して無防備だ。お前が守ってやれ」
「わ、わかった!」

 アリサはフンスと気合を入れる。

「じゃあ、ダイチは?」

 コータが言う。

「ダイチはどんな役割なの?」

 ふむ……とオレは考える。

「ダンジョンの歩き方や、モンスターとの戦い方について教える。あとは……」
「あとは?」
「お前たちに、魔術の使い方を教えよう」

「「「「おおおおおーーー!!!」」」」

オレの言葉に、皆が飛び上がって喜ぶ。
そんなに使いたかったのか、魔術。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

オバケでバブルなエリコさん

つづれ しういち
キャラ文芸
「はじめまして。あたし、エリコって言うの。坊やのお察しのとおり、生きてる人間じゃございません」 ぼくはある日道端で、変なかっこうをしたお化けの女の人に出会った。 その人はどうやら幽霊さんで、なにか思い残したことがあってぼくの前に現れたらしいのだけれど。 エリコさんはいじめられていたぼくを助けてくれるが、次第にその謎が明らかになっていき……。 ちょっとオカルティックなハートフルコメディ。そんなに怖くはありません。 ※「残酷な描写あり」は一応の保険です。 ※無断転載は許可しておりません。

白城(しろぐすく)の槍

和紗かをる
大衆娯楽
痛快サイコパスエンターテイメント開幕。ある少年が出会う普通の世界の裏側の物語。策士の少女に恋をして、因果の反逆者を屠るただ一つの槍として駆け抜けた白城一槍(しろぐすくいちやり)の生とは。異形な暗殺者や超常の力を操る武芸家が織りなすハイテンションストーリーをご覧あれ

処理中です...