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二章「魔法」
#3
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「死ぬって、どういうこと?」
カナが真剣な顔をして訊いてくる。
「この先にモンスターが固まって待ち受けている。数が多い。気を抜いたお前たちでは倒せないだろうな」
それを聞いたケンゴが顔を青くする。
「た、倒せないとどうなる?」
「食われる。当たり前だ」
「危ないじゃん!」
「モンスターだぞ? 雑魚でも数で攻めてくればそれなりの脅威なのは当たり前だろう」
呆れたように言うと、
「じゃあ、最近モンスターの数が増えてきているのは私たちを食べるためってこと?」
なるほど、説明しておいたほうが良さそうだな。
「モンスターには固有の意思がない。生物ではないからな。自我はないと言われている」
「言ってたね、だから殺しても気に病まなくていいって」
それでも進んで殺したいとは思わないけど、とカナが呟いた。
「そうだ。モンスターは基本的にダンジョンの意思に従って動くだけだ」
「ダンジョンの意思?」
「ダンジョンの……というより、ダンジョンに込められた製作者の意思だよ。自らの魔力を増幅させモンスターを生み出し、それらが持つ魔石を餌に、集まってきた人間の上質な生命力を奪う。それを使ってダンジョンを拡張させる。ダンジョンは捕食装置の役割を持っている」
「「「「…………」」」」
皆が黙り込む。この様子だと全く理解していなかったらしい。
「チームでダンジョンに挑むと、あえてギリギリ倒せる程度のモンスターで奥へ奥へと呼び込み、一気に数で押してきたりする。戦略としては一番メジャーだが、他にもいろいろやってくるぞ」
「だから、少しずつモンスターが強くなってきたのか……」
「まるで、ぼくたちが成長するのにあわせてるみたいだったもんね……」
常勝パターンができて、舐めてかかってたな。
「初心者にありがちなパターンだな。簡単に勝てるから舐めていただろ?」
「正直、舐めてたわ」
アリサがため息をつく。
「反省する」
「そうだな。大いに反省しろ。ダンジョンの仕掛ける心理戦にまんまと嵌って踊らされていたわけだしな」
ちょっと挑発してやると、アリサがキッと睨んでくる。
「性格悪いわね」
「当たり前だ。ダンジョン製作者なんて人間をエネルギーとしか考えてないぞ」
「ダンジョンじゃなくてダイチに言ってるのよ。わざわざそんな言い方しなくてもいいでしょ?」
「ダンジョンの怖さを理解して貰う必要があるからな。必要なら挑発くらいする」
「ま、まぁまぁ……」
コータが慌てて間に入る。
「いや、コータ。アリサはこうやって挑発してやると二度と同じ失敗を犯さないタイプだ。大いに怒らせてやれ」
「それはぼくたちの精神衛生上やめて欲しいかな……」
コータが肩を落とす。
まだオレを睨んでいるアリサをなだめるように、カナが言う。
「でも、ダイチ君はあたしたちを育てようとしてくれてるんでしょう?」
「ん、まぁ、そうだな」
「なぜ、そんなことをしてくれるの?」
「ん? オレたちは仲間だろ?」
何を当たり前のことを言ってるんだ?
「何か目的があるのかな、と思って……」
ああ、そういうことか。
「目的か。当然ある」
「訊いてもいい?」
「そうだな。一言で言うと、お前たちを強くして、今度こそ仲間を死なせないようにするためだ」
オレの言葉の何が引っかかったのか、全員が驚いたようにオレを見た。
「な、仲間が死んだことがあるの?」
「ある。ほとんどの冒険者が経験することだ。仕方ないとはいえ、あれだけは慣れない」
「お、オレ達も死ぬのか」
ケンゴが震えながら言う。
「いや、死なん」
「どうしてそんなことが言えるのさ!」
コータも震えている。
「オレがお前たちを守るからだ」
「でも、強い敵が現れたら?」
「心配するな、カナ。出現するモンスターは無制限じゃない。ダンジョンの、その階層に満ちた魔力以上のモンスターは生まれない。生まれることができないんだ。材料不足で」
モンスターについて、軽く説明してやる。
「材料は限られてる。だから弱いモンスターをある程度の数生み出すか、多少マシな程度のモンスターを2~3匹生み出すか……この階層だとそのあたりが限界だ」
「でも、数は脅威よね。この先にはモンスターがたくさんいて、あたしたちを殺そうと待ってるのよね?」
「そうだな」
「勝てるの?」
「当たり前だろう。オレは油断するなとは言ったが、勝てないとは言ってない。どんな雑魚でもモンスターはモンスターだ。油断してると食われるのは当たり前だ。そういうものだと思え」
そう言うと、アリサがため息をつく。
「ダイチがいないときは、ダンジョンに潜るのはやめておいたほうがよさそうね……」
「何を言ってる。お前たちとケンゴだけでも、今ならこの先のモンスター溜まりくらいなら無傷で勝てる」
そういい切ってやると、アリサとケンゴが顔を見合わせる。
「そうなの?」
「油断さえしなければ。ただ、お前たちは怪我をしたことがない。仲間を失ったこともない。仲間を失う経験は――できればしない方がいいが、つまり何が言いたいかというと――」
頷く戦える二人と、オロオロする戦えない二人。
「覚悟がない」
オレが言うと、皆が悔しそうな顔をする。だが、同情はしない。
「それに、コータとカナは位階が低いから足手まといになる。早めに位階を上げておいたほうがいい」
チームの弱点についても軽くふれておく。
「じゃあやっぱりダイチがいないと……」
アリサが言うので、安心材料を投下する。
「今はな。もう少し位階が上がれば、そもそもこの階層の敵には、お前たちに傷をつけることすらできなくなる」
「え、それどういうこと?」
「位階が上がると、魔法生物であるモンスターの攻撃が効かなくなるんだ」
「こ、鋼鉄の体が手に入る、みたいな感じ?」
ケンゴが少し興奮気味に言うので
「ちょっと違う。相手はモンスターに限る。それ以外の怪我は普通にするぞ」
と勘違いを正してやる。ケンゴが目に見えてがっかりする。
「でないと、日常生活もままならないぞ? 子供の頭を軽く叩いたつもりが殺してしまった、なんてことになったら困るだろう」
「そ、それもそうね…………」
アリサが震えるように言う。
「まぁそういうわけで、少なくともこの先にいるモンスター溜まりくらいなら何も問題はない」
皆を見回す。
「行くか?」
そう言うと、まだ皆は迷っているようだ。
「ぼくとカナちゃんは足手まといなんだよね?」
「そうだな。現時点では間違いなく足手まといだ」
「……大丈夫なの?その……ダイチの足を引っ張ったり」
「いや」
きっぱりと言い切る。
「大した枷にもならん。それに、コータは索敵が上手い」
「そんなこと……」
「いや、才能がある。今は位階の問題でケンゴのほうが上手いが、同じ位階まで上がれば、かなりの広さの索敵ができるようになるだろう」
そう言うと、コータはゴクリと喉を動かし、ぐっと手を握りしめる。
「それと、カナ」
「何?」
「お前は、現時点では戦いに向いていない。なら、他のことで役に立て」
「他のことって……?」
「ケンゴとアリサは前衛で、戦うの仕事だ。コータはおそらく、優秀な斥候になるだろう」
「斥候?」
「敵を探したり、周りの状況を見たり……探索係といえばわかるか?」
「わかる。でも、じゃああたしは何をすればいい?」
「決まっているだろう。ラックだ」
「ラック?」
「気づいていないのか? お前は運がいい」
「運?!」
カナが驚いて声を上げる。
「馬鹿者。ダンジョンにおいて運がどれほど重要かわかってないな。初めて歩くルートで右に行くか左に行くか。何本もの分かれ道。罠が多かったり、あるいは楽に踏破できるルート、宝箱の発見……」
指折り数えてやる。
ダンジョンにおける、運が絡む要素は多い。
「正直、ダンジョン攻略は半分以上運に左右される」
「でも、運なんて曖昧なもの、役に立つの?」
「立つ。外界と違って、ダンジョンでは、運も含めてその人間の持つ性質は、全てステータスとして数値化される。曖昧どころか、覆すことのできない差といっていい」
「ステータス……?」
「そうだ。オレは鑑定魔法が使えないので今は数値まではわからんが、カナ。お前のラックは異常だ」
何しろ、初めてダンジョンに潜った日、いきなり魔力炉の近くまでたどり着くところだったからな。あんなことはオレにもできん。
「異常っていうのはちょっと……」
カナが困った顔をするので、肩を叩いてやる。
「だから、基本的にどこへ向かうかは、お前が決めろ」
そう言うと、ケンゴが慌てて飛び出してきた。
「待て待て待てーい! リーダーはオレ! オレだから!」
何を言ってるんだ。
「一番攻撃力があるお前がリーダーなのは当然だろう。楽な進路をラックの加護持ちのカナがやるだけだ」
「だ、だよな!? だよな?! ホッとした~」
ケンゴが胸をなでおろす。
「それで言ったら、リーダーはダイチってことになるんじゃないの?」
アリサがアホなことをいい出した。
「な?!」
ケンゴも慌てるな。
「何を言ってるんだ。見ての通りオレの体は鍛えられてない。ケンゴは無知だが、相当強いぞ」
「ええー、ダイチくんより強いってことはないんじゃない?」
「いや……正直同じ武器で向き合って勝てる気はしないな。経験値こそオレのほうが上だから、モンスターとの戦いなら遅れを取る気はないが、リーダーはケンゴが一番向いてる」
そう言うと、
「え、そう?やっぱり?」
とケンゴがニヤける。
ふぅん、とアリサがニヤりと笑った。
「じゃあ、あたしがトップに立って、リーダーの座を受け渡してもらおうかな」
「な、なんだと?!絶対させねー」
「首洗って待ってなさい」
二人がギャーギャー言い出したので、コータとカナの二人へ向き合う。
「そういうわけだ。二人ともこのままじゃ危ないから、位階は上げろ」
「それってモンスターを倒すってことだよね」
「そうだ。そして長所を伸ばせ。このチームはバランスがいい。よろしく頼む」
その分、誰か一人でも欠けるとバランスが崩れてしまうのが欠点かもしれない、とは言わなかった。
欠けるようなことには絶対にさせないからだ。
カナが真剣な顔をして訊いてくる。
「この先にモンスターが固まって待ち受けている。数が多い。気を抜いたお前たちでは倒せないだろうな」
それを聞いたケンゴが顔を青くする。
「た、倒せないとどうなる?」
「食われる。当たり前だ」
「危ないじゃん!」
「モンスターだぞ? 雑魚でも数で攻めてくればそれなりの脅威なのは当たり前だろう」
呆れたように言うと、
「じゃあ、最近モンスターの数が増えてきているのは私たちを食べるためってこと?」
なるほど、説明しておいたほうが良さそうだな。
「モンスターには固有の意思がない。生物ではないからな。自我はないと言われている」
「言ってたね、だから殺しても気に病まなくていいって」
それでも進んで殺したいとは思わないけど、とカナが呟いた。
「そうだ。モンスターは基本的にダンジョンの意思に従って動くだけだ」
「ダンジョンの意思?」
「ダンジョンの……というより、ダンジョンに込められた製作者の意思だよ。自らの魔力を増幅させモンスターを生み出し、それらが持つ魔石を餌に、集まってきた人間の上質な生命力を奪う。それを使ってダンジョンを拡張させる。ダンジョンは捕食装置の役割を持っている」
「「「「…………」」」」
皆が黙り込む。この様子だと全く理解していなかったらしい。
「チームでダンジョンに挑むと、あえてギリギリ倒せる程度のモンスターで奥へ奥へと呼び込み、一気に数で押してきたりする。戦略としては一番メジャーだが、他にもいろいろやってくるぞ」
「だから、少しずつモンスターが強くなってきたのか……」
「まるで、ぼくたちが成長するのにあわせてるみたいだったもんね……」
常勝パターンができて、舐めてかかってたな。
「初心者にありがちなパターンだな。簡単に勝てるから舐めていただろ?」
「正直、舐めてたわ」
アリサがため息をつく。
「反省する」
「そうだな。大いに反省しろ。ダンジョンの仕掛ける心理戦にまんまと嵌って踊らされていたわけだしな」
ちょっと挑発してやると、アリサがキッと睨んでくる。
「性格悪いわね」
「当たり前だ。ダンジョン製作者なんて人間をエネルギーとしか考えてないぞ」
「ダンジョンじゃなくてダイチに言ってるのよ。わざわざそんな言い方しなくてもいいでしょ?」
「ダンジョンの怖さを理解して貰う必要があるからな。必要なら挑発くらいする」
「ま、まぁまぁ……」
コータが慌てて間に入る。
「いや、コータ。アリサはこうやって挑発してやると二度と同じ失敗を犯さないタイプだ。大いに怒らせてやれ」
「それはぼくたちの精神衛生上やめて欲しいかな……」
コータが肩を落とす。
まだオレを睨んでいるアリサをなだめるように、カナが言う。
「でも、ダイチ君はあたしたちを育てようとしてくれてるんでしょう?」
「ん、まぁ、そうだな」
「なぜ、そんなことをしてくれるの?」
「ん? オレたちは仲間だろ?」
何を当たり前のことを言ってるんだ?
「何か目的があるのかな、と思って……」
ああ、そういうことか。
「目的か。当然ある」
「訊いてもいい?」
「そうだな。一言で言うと、お前たちを強くして、今度こそ仲間を死なせないようにするためだ」
オレの言葉の何が引っかかったのか、全員が驚いたようにオレを見た。
「な、仲間が死んだことがあるの?」
「ある。ほとんどの冒険者が経験することだ。仕方ないとはいえ、あれだけは慣れない」
「お、オレ達も死ぬのか」
ケンゴが震えながら言う。
「いや、死なん」
「どうしてそんなことが言えるのさ!」
コータも震えている。
「オレがお前たちを守るからだ」
「でも、強い敵が現れたら?」
「心配するな、カナ。出現するモンスターは無制限じゃない。ダンジョンの、その階層に満ちた魔力以上のモンスターは生まれない。生まれることができないんだ。材料不足で」
モンスターについて、軽く説明してやる。
「材料は限られてる。だから弱いモンスターをある程度の数生み出すか、多少マシな程度のモンスターを2~3匹生み出すか……この階層だとそのあたりが限界だ」
「でも、数は脅威よね。この先にはモンスターがたくさんいて、あたしたちを殺そうと待ってるのよね?」
「そうだな」
「勝てるの?」
「当たり前だろう。オレは油断するなとは言ったが、勝てないとは言ってない。どんな雑魚でもモンスターはモンスターだ。油断してると食われるのは当たり前だ。そういうものだと思え」
そう言うと、アリサがため息をつく。
「ダイチがいないときは、ダンジョンに潜るのはやめておいたほうがよさそうね……」
「何を言ってる。お前たちとケンゴだけでも、今ならこの先のモンスター溜まりくらいなら無傷で勝てる」
そういい切ってやると、アリサとケンゴが顔を見合わせる。
「そうなの?」
「油断さえしなければ。ただ、お前たちは怪我をしたことがない。仲間を失ったこともない。仲間を失う経験は――できればしない方がいいが、つまり何が言いたいかというと――」
頷く戦える二人と、オロオロする戦えない二人。
「覚悟がない」
オレが言うと、皆が悔しそうな顔をする。だが、同情はしない。
「それに、コータとカナは位階が低いから足手まといになる。早めに位階を上げておいたほうがいい」
チームの弱点についても軽くふれておく。
「じゃあやっぱりダイチがいないと……」
アリサが言うので、安心材料を投下する。
「今はな。もう少し位階が上がれば、そもそもこの階層の敵には、お前たちに傷をつけることすらできなくなる」
「え、それどういうこと?」
「位階が上がると、魔法生物であるモンスターの攻撃が効かなくなるんだ」
「こ、鋼鉄の体が手に入る、みたいな感じ?」
ケンゴが少し興奮気味に言うので
「ちょっと違う。相手はモンスターに限る。それ以外の怪我は普通にするぞ」
と勘違いを正してやる。ケンゴが目に見えてがっかりする。
「でないと、日常生活もままならないぞ? 子供の頭を軽く叩いたつもりが殺してしまった、なんてことになったら困るだろう」
「そ、それもそうね…………」
アリサが震えるように言う。
「まぁそういうわけで、少なくともこの先にいるモンスター溜まりくらいなら何も問題はない」
皆を見回す。
「行くか?」
そう言うと、まだ皆は迷っているようだ。
「ぼくとカナちゃんは足手まといなんだよね?」
「そうだな。現時点では間違いなく足手まといだ」
「……大丈夫なの?その……ダイチの足を引っ張ったり」
「いや」
きっぱりと言い切る。
「大した枷にもならん。それに、コータは索敵が上手い」
「そんなこと……」
「いや、才能がある。今は位階の問題でケンゴのほうが上手いが、同じ位階まで上がれば、かなりの広さの索敵ができるようになるだろう」
そう言うと、コータはゴクリと喉を動かし、ぐっと手を握りしめる。
「それと、カナ」
「何?」
「お前は、現時点では戦いに向いていない。なら、他のことで役に立て」
「他のことって……?」
「ケンゴとアリサは前衛で、戦うの仕事だ。コータはおそらく、優秀な斥候になるだろう」
「斥候?」
「敵を探したり、周りの状況を見たり……探索係といえばわかるか?」
「わかる。でも、じゃああたしは何をすればいい?」
「決まっているだろう。ラックだ」
「ラック?」
「気づいていないのか? お前は運がいい」
「運?!」
カナが驚いて声を上げる。
「馬鹿者。ダンジョンにおいて運がどれほど重要かわかってないな。初めて歩くルートで右に行くか左に行くか。何本もの分かれ道。罠が多かったり、あるいは楽に踏破できるルート、宝箱の発見……」
指折り数えてやる。
ダンジョンにおける、運が絡む要素は多い。
「正直、ダンジョン攻略は半分以上運に左右される」
「でも、運なんて曖昧なもの、役に立つの?」
「立つ。外界と違って、ダンジョンでは、運も含めてその人間の持つ性質は、全てステータスとして数値化される。曖昧どころか、覆すことのできない差といっていい」
「ステータス……?」
「そうだ。オレは鑑定魔法が使えないので今は数値まではわからんが、カナ。お前のラックは異常だ」
何しろ、初めてダンジョンに潜った日、いきなり魔力炉の近くまでたどり着くところだったからな。あんなことはオレにもできん。
「異常っていうのはちょっと……」
カナが困った顔をするので、肩を叩いてやる。
「だから、基本的にどこへ向かうかは、お前が決めろ」
そう言うと、ケンゴが慌てて飛び出してきた。
「待て待て待てーい! リーダーはオレ! オレだから!」
何を言ってるんだ。
「一番攻撃力があるお前がリーダーなのは当然だろう。楽な進路をラックの加護持ちのカナがやるだけだ」
「だ、だよな!? だよな?! ホッとした~」
ケンゴが胸をなでおろす。
「それで言ったら、リーダーはダイチってことになるんじゃないの?」
アリサがアホなことをいい出した。
「な?!」
ケンゴも慌てるな。
「何を言ってるんだ。見ての通りオレの体は鍛えられてない。ケンゴは無知だが、相当強いぞ」
「ええー、ダイチくんより強いってことはないんじゃない?」
「いや……正直同じ武器で向き合って勝てる気はしないな。経験値こそオレのほうが上だから、モンスターとの戦いなら遅れを取る気はないが、リーダーはケンゴが一番向いてる」
そう言うと、
「え、そう?やっぱり?」
とケンゴがニヤける。
ふぅん、とアリサがニヤりと笑った。
「じゃあ、あたしがトップに立って、リーダーの座を受け渡してもらおうかな」
「な、なんだと?!絶対させねー」
「首洗って待ってなさい」
二人がギャーギャー言い出したので、コータとカナの二人へ向き合う。
「そういうわけだ。二人ともこのままじゃ危ないから、位階は上げろ」
「それってモンスターを倒すってことだよね」
「そうだ。そして長所を伸ばせ。このチームはバランスがいい。よろしく頼む」
その分、誰か一人でも欠けるとバランスが崩れてしまうのが欠点かもしれない、とは言わなかった。
欠けるようなことには絶対にさせないからだ。
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