上 下
1 / 65
プロローグ

プロローグ

しおりを挟む
「コータ! そっち! そっち行った!」
「わ、わ、わ!? え、えい!」
「ヘッタクソね! こう、やんの、よ!」

 今日は水曜日。恒例のモンスター狩りの日だ。
 魔石を使えば自分たちも『魔法』を使えるらしいと知ったぼくたちは、こうして週に一度ダンジョンに潜ることにした。
 始めはなかなか見つからなかったモンスターも、探索を続けるうちに遭遇率が上がってきた。
 
 ちなみに、今は角の生えたコウモリと戦っている。

 今のところ、一番モンスターを倒しているのがケンゴ、次にアリサ、ぼく、コータと続いて、ビリはカナちゃんだ。
 
 カナちゃんは魔石のためとはいえ、モンスターを「殺す」という行為に、抵抗があるんだそうだ。
 みんなが言うところの「大人おとなダイチ」が言うには、モンスターは生き物ではなく、魔法で作られた疑似生命体らしい。
 だから殺すことを嫌悪する必要はないとのことだけど、ゲームのキャラクターにだって感情移入することはある。
 生き物じゃないといっても、見た目は動物(凶悪だけど)なので、そう簡単に割り切れるものでもない。

 アリサの持つ金属バットが、コウモリを粉砕した。
 ギャッと悲鳴が上がって壁に激突して、すぐに溶け始めるコウモリ。哀れ。
 カツン、と床に転がる魔石。色は赤だ。

「やった! これであと1匹でケンゴに追いつく」

 アリサが飛び跳ねて喜ぶ。
 後ろで、カナちゃんがちょっと困ったような顔をしている。可愛い。

「雑魚は良いんだよ、オレは大物狙いだから」

 ケンゴがそう言って、魔石を拾い上げる。

「あら、負け惜しみ?」
「うるせーな。それでもまだオレのほうが勝ってるんだからな。偉そうにすんなっての」

 そう言って、魔石を袋にしまう。

「うー」

 悔しそうに唸っているのはコータだ。
 手に持つ武器は、鉄パイプである。
 コータは運動神経があまり良くない。それに、弱い敵でもビビってしまい、動作がワンテンポ遅れるのだ。
 そのため、今のところ勝ち星は1。カナちゃんのゼロと大差ない。
 カナちゃんは、護身用だといって、包丁を持ち歩いているけれど、今のところ出番はない。

 ちなみに、ぼくの勝ち星はいまのところ3つだけ。
 武器はシャベルだ。
 勝ち星が少ないのは、思い切りのないぼくの性格では、ノリノリでモンスターを狩りまくるケンゴ・アリサ組にはどうしても遅れを取ってしまうからだ。
 途中までいい感じで戦えていても、殺すのが怖くて、ついトドメを周りに譲ってしまう。
 ケンゴとアリサは、それぞれ10匹以上倒している。ジェノサイドだ。

「そろそろ戻ろうか」

 ケンゴが言う。
 
「もう2時間くらいやってるだろ。疲れて動けなくなってからジャイアントナンタラとかと出会ったらまずいしな」
「そうね」
「賛成」

 ちなみに、ダンジョンから出ると、入った時から時間がほとんど過ぎてないので、体力が持つなら一晩中でも大丈夫なんだけど。

 さて――そろそろ元の世界に戻るとしよう。
 運動してお腹がぺこぺこだ。

 今日の晩ごはんはなんだろう?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

オバケでバブルなエリコさん

つづれ しういち
キャラ文芸
「はじめまして。あたし、エリコって言うの。坊やのお察しのとおり、生きてる人間じゃございません」 ぼくはある日道端で、変なかっこうをしたお化けの女の人に出会った。 その人はどうやら幽霊さんで、なにか思い残したことがあってぼくの前に現れたらしいのだけれど。 エリコさんはいじめられていたぼくを助けてくれるが、次第にその謎が明らかになっていき……。 ちょっとオカルティックなハートフルコメディ。そんなに怖くはありません。 ※「残酷な描写あり」は一応の保険です。 ※無断転載は許可しておりません。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

白城(しろぐすく)の槍

和紗かをる
大衆娯楽
痛快サイコパスエンターテイメント開幕。ある少年が出会う普通の世界の裏側の物語。策士の少女に恋をして、因果の反逆者を屠るただ一つの槍として駆け抜けた白城一槍(しろぐすくいちやり)の生とは。異形な暗殺者や超常の力を操る武芸家が織りなすハイテンションストーリーをご覧あれ

処理中です...