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八岐大蛇

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「着いた。ここだよ。」

 俺は、ルーのその口調が戻った言葉を聞き、その背から降りた。すると、直ぐに鬱蒼とした森と、その手前に立つ巨大な鳥居が目に入る。デカイな…大体高さ八メートルってとこか?…そもそも、ここ何処だ?少なくとも人里からは離れている様だな。気配が無い。

「ここの奥に居るはずだよ。ただ、ここからは歩きでね。よっと。」
「こっからはその人間形態で行くのか。…ところで、ここは何処だ?少なくとも俺の知識には無い場所だが。」
「まぁ、逆に人間の知識に此処があるとまずいよ。人を寄せ付けない結界があるのは、人目に入れない為だし。…えっと、此処は何処か、だったよね?レン、素戔嗚尊すさのおのみことって知ってる?」
「ああ。日本の神話に出てくる人だろ?確か、八岐大蛇を倒した。」
「…それは一部間違っている。素戔嗚尊は八岐大蛇を“封印”したんだよ。此処はその封印されている場所で、我…私の友達は、その封印が解けないように監視するのと封印の強化をする役割を担っているんだよ。と言うより、あの化け物八岐大蛇たった一柱の神素戔嗚尊が倒せるわけがないんだよ。アレは、正真正銘の厄災の化け物だからね。出来るならなるべく手を出さない方がいいんだよ。私達、神獣でもかなり手こずるだろうね。もし本当に私たちが戦ったら、300年くらいの睡眠は確定事項だろうしね。」
「なるほどな。八岐大蛇か。聞くだけでも相当厄介なんだろうと思えるのだが。…絶対戦いたくはないなぁ。」

 陰陽師、【楽園エデン】の次は八岐大蛇か。その次は何が出るんだろ。…そういえば、楽園の方は最近これと言ったことはなかったな。ま、そっちの方が面倒ごとが少なくて助かるが。でも、いつかはそっちも対処していかないといけないんだろうな。

「っと。話してる間についたね。此処が我友の居る神宮だ。」
「っ。…これまた立派な神社だな。」

 鳥居の奥にあったのは、巨大な神社だった。柱は赤く塗られており、周囲には、手入れの行き通った芝生が広がっている。右の方には、池があり、鯉の様な気配がある。そして、左には、手水舎ちょうずやがある。その奥には、湧水が流れ出ており、手水舎の水も湧水の様だ。アレで手を洗うのは、気持ちよさそうだな。

 周りには、そこそこ深い森が広がっているが、雰囲気を暗くはしない程度に光が差し込んでいる。神社の壁は白磁の様に綺麗だし、屋根には、一匹の巨大な龍の装飾が厳かにこちらを見下ろしていた。アレも、リアルで今にも動き出しそうな力強さと威圧感がある。そして、無視できないのが、一歩も動かない二つの巨大な気配である。一つは、もう一方寄りも小さいが、ルーとほぼ同じくらいである。恐らく、こちらがルーの友達の神獣だろう。だとすると、もう一方の大きい気配は八岐大蛇だろう。神獣の1.5倍くらいのサイズの気配がある。これは、確かに他の神獣もルーと同じくらいの力だとすると、一人での対処は難しそうだ。それに、少なくない被害をこうむるのは確実だろうな。

 俺達は、そのまま神社の中に入り、神獣のいるであろう部屋に向かった。
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