12 / 59
1
溶けたチョコレート
しおりを挟む
「レジナルド、お前も一緒に来い!」
「はいっ!」
早朝、レジナルドは父であるスコール団長と共に騎士団の訓練所に急いだ。もともと早朝訓練に参加する予定だったが、緊急の呼び出しがあったからだ。
ステーリアの王太子はジークフリートよりも前にセシリアを手に入れようとあれこれ画策しているようだが、昨夜候爵邸の者と密かに連絡を取ったとの報告だった。セシリアは未だ王宮に留まっているので、恐らくは候爵夫人と接触したのだろう。しかし今更候爵夫人に何の用があるというのだろうか?
緊急に集まり対応を話し合った結果、レジナルドは引き続きセシリアの護衛につき警戒を強め、騎士団の方で候爵邸とステーリア王太子の周りを探ることになった。
その日の夜、レジナルドが遅くになってようやく公爵邸に戻ると、つい先程戻ったばかりのような父親が待っていた。
「レジー、少し話せるか?」
「はい。」
二人で父の書斎に入ると、疲れた様子の父親から手短に説明を受ける。
「候爵夫人が首飾りを?」
「あぁ。候爵夫人はもともと商家の嫡男に嫁いでいたんだ。だがその男が盗賊に襲われて亡くなってしまって、今はその義弟が跡を継いでヴィルヘルムでも有数の商いをするようになっている。」
「その商家から首飾りを取り寄せて、それがステーリア側に渡ったと…」
「あぁ、かなり大きな取引だったようだ。」
──ステーリア王太子がヴィルヘルムで何故そんな大きな取引を?
「狙いは?」
「さぁな。まぁ、ステーリアでは手に入れることの出来ないような珍しい宝石でも出たのかもしれないな。」
「珍しい宝石…ですか。」
結局、その件に関しては怪しい取引と言う訳でもないのでそのまま様子を見ることになった。
「しかし、高価な首飾りなんて、お前には一生縁のない話だな。この前の見合いも断った事だし。どうせ渡すような相手もいないんだろう?」
「…」
「──まだ甘い夢を見ているのか?」
「…なんですか、それは。」
「ビューロー候爵家の甘い菓子に心奪われて居るんだろう?」
「ち、違います!」
「そうか、それならいいが…。」
「あ、や、良くは無いです。候爵家の料理人が作るチョコレートクッキーは確かに美味いので…。」
「チョコレートクッキー?」
「そうだ、今度ビューロー候爵に頼んでみてくれませんか?」
「…お前、気は確かか?まさかその頭の中身は溶けているんじゃ…?」
「なっ?!」
「違うと言うならばチョコレートでも詰まってるんだろ?」
「いくらなんでもその言い方はないでしょ!」
「はいっ!」
早朝、レジナルドは父であるスコール団長と共に騎士団の訓練所に急いだ。もともと早朝訓練に参加する予定だったが、緊急の呼び出しがあったからだ。
ステーリアの王太子はジークフリートよりも前にセシリアを手に入れようとあれこれ画策しているようだが、昨夜候爵邸の者と密かに連絡を取ったとの報告だった。セシリアは未だ王宮に留まっているので、恐らくは候爵夫人と接触したのだろう。しかし今更候爵夫人に何の用があるというのだろうか?
緊急に集まり対応を話し合った結果、レジナルドは引き続きセシリアの護衛につき警戒を強め、騎士団の方で候爵邸とステーリア王太子の周りを探ることになった。
その日の夜、レジナルドが遅くになってようやく公爵邸に戻ると、つい先程戻ったばかりのような父親が待っていた。
「レジー、少し話せるか?」
「はい。」
二人で父の書斎に入ると、疲れた様子の父親から手短に説明を受ける。
「候爵夫人が首飾りを?」
「あぁ。候爵夫人はもともと商家の嫡男に嫁いでいたんだ。だがその男が盗賊に襲われて亡くなってしまって、今はその義弟が跡を継いでヴィルヘルムでも有数の商いをするようになっている。」
「その商家から首飾りを取り寄せて、それがステーリア側に渡ったと…」
「あぁ、かなり大きな取引だったようだ。」
──ステーリア王太子がヴィルヘルムで何故そんな大きな取引を?
「狙いは?」
「さぁな。まぁ、ステーリアでは手に入れることの出来ないような珍しい宝石でも出たのかもしれないな。」
「珍しい宝石…ですか。」
結局、その件に関しては怪しい取引と言う訳でもないのでそのまま様子を見ることになった。
「しかし、高価な首飾りなんて、お前には一生縁のない話だな。この前の見合いも断った事だし。どうせ渡すような相手もいないんだろう?」
「…」
「──まだ甘い夢を見ているのか?」
「…なんですか、それは。」
「ビューロー候爵家の甘い菓子に心奪われて居るんだろう?」
「ち、違います!」
「そうか、それならいいが…。」
「あ、や、良くは無いです。候爵家の料理人が作るチョコレートクッキーは確かに美味いので…。」
「チョコレートクッキー?」
「そうだ、今度ビューロー候爵に頼んでみてくれませんか?」
「…お前、気は確かか?まさかその頭の中身は溶けているんじゃ…?」
「なっ?!」
「違うと言うならばチョコレートでも詰まってるんだろ?」
「いくらなんでもその言い方はないでしょ!」
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

【完結】元強面騎士団長様は可愛いものがお好き〜虐げられた元聖女は、お腹と心が満たされて幸せになる〜
水都 ミナト
恋愛
女神の祝福を受けた聖女が尊ばれるサミュリア王国で、癒しの力を失った『元』聖女のミラベル。
『現』聖女である実妹のトロメアをはじめとして、家族から冷遇されて生きてきた。
すっかり痩せ細り、空腹が常となったミラベルは、ある日とうとう国外追放されてしまう。
隣国で力尽き果て倒れた時、助けてくれたのは――フリルとハートがたくさんついたラブリーピンクなエプロンをつけた筋骨隆々の男性!?
そんな元強面騎士団長のアインスロッドは、魔物の呪い蝕まれ余命一年だという。残りの人生を大好きな可愛いものと甘いものに捧げるのだと言うアインスロッドに救われたミラベルは、彼の夢の手伝いをすることとなる。
認めとくれる人、温かい居場所を見つけたミラベルは、お腹も心も幸せに満ちていく。
そんなミラベルが飾り付けをしたお菓子を食べた常連客たちが、こぞってとあることを口にするようになる。
「『アインスロッド洋菓子店』のお菓子を食べるようになってから、すこぶる体調がいい」と。
一方その頃、ミラベルを追いやった実妹のトロメアからは、女神の力が失われつつあった。
◇全15話、5万字弱のお話です
◇他サイトにも掲載予定です
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる