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気になる存在
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凛花はダニエルの腕から逃れられないかと手を伸ばしたところですぐにあきらめた。ダニエルの顔がすぐ背後にあるのが気になってどうにも動けない…。
「まだ私を試す気?」
「違う。そんなんじゃない。」
「だったらこれ以上私に関わっても貴方には何も得るものはないわ。」
「リンカ…。」
ダニエルは凛花が少し落ち着いたのを見ると抱きしめていた手を離し、ソファーの前に回り込んで跪いた。
「少しは俺の言葉を聞く気になった?」
ダニエルは胸ポケットからハンカチを出すと凛花の涙をそっと拭った。
「詐欺師。そうやっていつも女の人を騙してるの?」
「騙していないし君に嘘はついていない。」
「騎士団の副団長がそんなんでいいの?それとも取り調べの為なら何やっても許される訳?」
ダニエルは一度深くため息を着くと、凛花の手にハンカチを握らせた。
「随分辛辣だな。」
「……」
「今朝出会ったばかりの記憶のない女性の事で今俺の頭の中は一杯だ。そんなの当たり前の事だろう?それに──」
ダニエルは凛花の目を覗き込む様に見上げた。
「君は俺が近寄って見つめても、腰に手を回しても、抱き上げても…顔色一つ変えない。」
──いや、心の中では悲鳴あげてましたが…。
「道で倒れているリンカを初めて見た時、胸騒ぎがしたのはきっと騎士としての直感ではなかったんだ。」
──やばい展開になってきたかも…。これ何のイベント?
「俺は──」
「ちょっと待って?ね?」
凛花はダニエルの言葉をやんわりと遮ると最後までそのセリフを言わせなかった。
「…」
「ほら、さっきセリーナ夫人から聞いたばかりなのよ?ダニエル様はカタリーナ殿下と婚約をする予定なんだって。だからね、私はあなたの言葉にもう騙されないわ。」
「リンカ、俺は嘘はつかない。カタリーナ殿下と婚約をする気はない。」
「でも──」
ダニエルは有無を言わさず凛花の手を取ると、手の甲にそっと唇を寄せた。
「リンカ、俺は君のことをもっと知りたい。」
──やばい、やばい!イケメンが過ぎる!なんだろうこの感じ?今朝はあんなに無表情で何考えてるのか分かんない人だったのに。まさか私そっち系の大人な世界に来ちゃったの?
「また何か考えているのか?」
ダニエルは寂しそうに微笑むと、凛花の手をぎゅっと握った。
ダニエルの態度の変わり様についていけない凛花は、ソファーの上で放心状態に陥っていた。
一方のダニエルは今度は正面から真っ直ぐな琥珀色の瞳で射抜いてくる。
「リンカ、伯爵には先程伝えておいたが、準備が整い次第君には場所を移してもらうことにした。」
やっとこちら側に意識が戻ったように凛花はダニエルに目を向けた。
──なんか嫌な予感がする…。
「騎士団副団長の邸だ。」
──ビンゴ!殿下は?カタリーナ殿下はどうするのよ?私このままじゃ恨まれるじゃん?確実に。
「それ、行かないと駄目?」
「……ここにリンカを置いておく意味がない以上は来てもらうしかない。」
「意味って…貴方の邸に行く方が意味わかんないでしょ?それに騎士団の偉い人にも言ってないじゃない?」
ダニエルはここにきて初めて凛花に笑顔を見せた。
「意味なら持たせる。リンカは俺と婚約をするんだ、明日にでも。」
「婚約?」
危うく笑顔に騙されて聞き流す所だった。
「ソウマ・リンカの名はこの国には存在していない。ならば記憶が戻らず、両親が見つからなくても陛下の許可さえあれば婚姻は結ぶことが出来る。」
「えぇ~っと…。ちょっと待って?急すぎて理解が追い付かないんだけど?」
「どの辺が理解できない?」
「いつの間に戸籍を調べたの?」
「そんな事、当然だろう?記憶のない失踪人が名前だけはハッキリと覚えていると言えば騎士団が真っ先に国に籍があるかを調べる。」
凛花は頭を抱えた。そうだった。相手は騎士だと言う事を忘れていた。でも捜査内容を私的に使うなんて職権濫用ではないのか?いや、この婚約は私的な物ではなく、何か別の理由があるとしたら?
「そういう事?ダニエル様はカタリーナ殿下と婚約をしたくないから私を利用したいと?」
「っ!そんな事は!」
「殿下と婚約をしたら第一騎士団に引き抜かれるのよね?そして顔だけの騎士だと言われるのが嫌だ…と?」
「リンカ?」
「そういう事なら……私婚約者になってあげる、ダニエル。」
ダニエルは瞬時に険しい顔になると凛花が何を言い出すのかと身構えた。
「その代わり私にも協力して欲しいの。私、この国の事を何も知らない。だから全部貴方に教えて欲しいの。」
「国の事を…全部?」
凛花はここぞと言わんばかりにニヤリと笑って見せた。
「国の機密を漏らせなんてそういう話ではなくて。普通に暮らせるだけの知識と一般常識が欲しいの。どう?」
──本当はこの国だけではなくこの世界の事全般を教えて欲しいんだけど。
「……いいだろう。それならば俺が教えられる事は全部教えると約束しよう。」
ダニエルはどこかほっとした様子で凛花の提案を了承した。
「まだ私を試す気?」
「違う。そんなんじゃない。」
「だったらこれ以上私に関わっても貴方には何も得るものはないわ。」
「リンカ…。」
ダニエルは凛花が少し落ち着いたのを見ると抱きしめていた手を離し、ソファーの前に回り込んで跪いた。
「少しは俺の言葉を聞く気になった?」
ダニエルは胸ポケットからハンカチを出すと凛花の涙をそっと拭った。
「詐欺師。そうやっていつも女の人を騙してるの?」
「騙していないし君に嘘はついていない。」
「騎士団の副団長がそんなんでいいの?それとも取り調べの為なら何やっても許される訳?」
ダニエルは一度深くため息を着くと、凛花の手にハンカチを握らせた。
「随分辛辣だな。」
「……」
「今朝出会ったばかりの記憶のない女性の事で今俺の頭の中は一杯だ。そんなの当たり前の事だろう?それに──」
ダニエルは凛花の目を覗き込む様に見上げた。
「君は俺が近寄って見つめても、腰に手を回しても、抱き上げても…顔色一つ変えない。」
──いや、心の中では悲鳴あげてましたが…。
「道で倒れているリンカを初めて見た時、胸騒ぎがしたのはきっと騎士としての直感ではなかったんだ。」
──やばい展開になってきたかも…。これ何のイベント?
「俺は──」
「ちょっと待って?ね?」
凛花はダニエルの言葉をやんわりと遮ると最後までそのセリフを言わせなかった。
「…」
「ほら、さっきセリーナ夫人から聞いたばかりなのよ?ダニエル様はカタリーナ殿下と婚約をする予定なんだって。だからね、私はあなたの言葉にもう騙されないわ。」
「リンカ、俺は嘘はつかない。カタリーナ殿下と婚約をする気はない。」
「でも──」
ダニエルは有無を言わさず凛花の手を取ると、手の甲にそっと唇を寄せた。
「リンカ、俺は君のことをもっと知りたい。」
──やばい、やばい!イケメンが過ぎる!なんだろうこの感じ?今朝はあんなに無表情で何考えてるのか分かんない人だったのに。まさか私そっち系の大人な世界に来ちゃったの?
「また何か考えているのか?」
ダニエルは寂しそうに微笑むと、凛花の手をぎゅっと握った。
ダニエルの態度の変わり様についていけない凛花は、ソファーの上で放心状態に陥っていた。
一方のダニエルは今度は正面から真っ直ぐな琥珀色の瞳で射抜いてくる。
「リンカ、伯爵には先程伝えておいたが、準備が整い次第君には場所を移してもらうことにした。」
やっとこちら側に意識が戻ったように凛花はダニエルに目を向けた。
──なんか嫌な予感がする…。
「騎士団副団長の邸だ。」
──ビンゴ!殿下は?カタリーナ殿下はどうするのよ?私このままじゃ恨まれるじゃん?確実に。
「それ、行かないと駄目?」
「……ここにリンカを置いておく意味がない以上は来てもらうしかない。」
「意味って…貴方の邸に行く方が意味わかんないでしょ?それに騎士団の偉い人にも言ってないじゃない?」
ダニエルはここにきて初めて凛花に笑顔を見せた。
「意味なら持たせる。リンカは俺と婚約をするんだ、明日にでも。」
「婚約?」
危うく笑顔に騙されて聞き流す所だった。
「ソウマ・リンカの名はこの国には存在していない。ならば記憶が戻らず、両親が見つからなくても陛下の許可さえあれば婚姻は結ぶことが出来る。」
「えぇ~っと…。ちょっと待って?急すぎて理解が追い付かないんだけど?」
「どの辺が理解できない?」
「いつの間に戸籍を調べたの?」
「そんな事、当然だろう?記憶のない失踪人が名前だけはハッキリと覚えていると言えば騎士団が真っ先に国に籍があるかを調べる。」
凛花は頭を抱えた。そうだった。相手は騎士だと言う事を忘れていた。でも捜査内容を私的に使うなんて職権濫用ではないのか?いや、この婚約は私的な物ではなく、何か別の理由があるとしたら?
「そういう事?ダニエル様はカタリーナ殿下と婚約をしたくないから私を利用したいと?」
「っ!そんな事は!」
「殿下と婚約をしたら第一騎士団に引き抜かれるのよね?そして顔だけの騎士だと言われるのが嫌だ…と?」
「リンカ?」
「そういう事なら……私婚約者になってあげる、ダニエル。」
ダニエルは瞬時に険しい顔になると凛花が何を言い出すのかと身構えた。
「その代わり私にも協力して欲しいの。私、この国の事を何も知らない。だから全部貴方に教えて欲しいの。」
「国の事を…全部?」
凛花はここぞと言わんばかりにニヤリと笑って見せた。
「国の機密を漏らせなんてそういう話ではなくて。普通に暮らせるだけの知識と一般常識が欲しいの。どう?」
──本当はこの国だけではなくこの世界の事全般を教えて欲しいんだけど。
「……いいだろう。それならば俺が教えられる事は全部教えると約束しよう。」
ダニエルはどこかほっとした様子で凛花の提案を了承した。
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