深窓の異世界転移者2世(聖女の息子)は未だ愛を知らない

仮名山ミムミム

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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて

惹かれる 4 ※メイ視点

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***




パラビナ王国の山の地方ルノールにある、病魔ウィルスとよばれる人体に影響を及ぼすウィルス濃度指数が高い立入制限区域レベル6の奥深くにて、山道を切り開きながら討伐第3部隊隊長メイ・ホルンストロームは数人の魔術騎士を引き連れて進んでいた。


ウィルス濃度が高くなってきたのだろう、段々と息苦しくなってくる。メイ達は手動で操縦する細いバイクのような形状をした小型のローバーを使用して進んでいた。


タイヤの代わりに魔方陣が組み込まれており、ローバーを地上から浮かせて走らせることができる。




先頭を走るメイが、後に続く隊員達に声をかけて停止した。顔には、ウィルスの吸収を防ぐ魔術がかけられたマスクをつけている。





「この辺りで一旦テントを張るぞ」





指示を受けた隊員達は素早く動き、ローバーに積んである荷物を広げて、テントの基礎となる支柱を組み立て始める。その間、メイは聖剣と魔術を使用して、テントを張るスペース確保するため、必要な範囲で草木を切り落とした。




あっという間に、辺りに大きなテントが複数設置された。




「お前ら、ちょっと良いか?古い地図によれば、この道順に従って北に進むと洞窟があるらしい。魔物の気配は感じねぇが、念の為魔物が住み着いてないか調査してこい。ヤバそうならすぐ戻ってきていいからな」




メイは、2名の隊員に声をかけ、地図を渡しながらそう指示をした。指示を受けた隊員はローバーに乗り、洞窟の調査に向かう。




メイは、指示をした後、張られた全てのテントの外側に物理的な防護と、ウィルスの侵入を防ぐ魔術を施した。そして、テントの中に1つ1つ入り、浄化の魔術を施す。




「よし、それぞれ中に入って休んでいい。調査に行った2人組が戻ってきたらそいつらを休ませ、交代で見回りをして欲しい。体調が優れない場合は、持ってきた特効薬を飲んでおけ。後続部隊に追加の特効薬を運ぶように要請を入れるから、遠慮せずに飲めよ」





メイは隊員達の一人一人の顔色を確認する。病魔ウィルスは病魔ストレスを発症させやすい。病魔ストレスが発症すると、魔力が失われ身体が壊死したり、死に至る。


メイは、先行部隊として一緒に動いている隊員達の体調に細心の注意を払っていた。




隊員の体調に問題が無いことを確認した後、メイは自分専用のテントの中に入った。狭いスペースに、圧縮の魔術をかけて持ち運んでいる作業机と椅子を出す。


テントの天井からは寝床となるハンモックが吊り下がっていた。特別機動部隊が発動されてから、ずっと先行して動いているメイは、しばらくベッドで寝れていない。メイは、肩を軽く回して伸びをした。





「――メイ隊長、調査した2人が戻ってきました。すぐに報告したいことがあるそうです!」





「外はウィルス濃度が高い。狭くて悪いが、2人には俺のテントの中で報告するように伝えろ」





間もなく、調査から戻った隊員達が自分の名前を名乗りながら、メイのテントに入ってきた。2人は少し興奮した様子で報告を始めた。




「先程指示を受けて見に行ってきた洞窟ですがっ、魔物は住み着いておらず、それどころか、成熟した聖樹が周りに十数本生えておりましたっ」




「それに…洞窟の入り口付近は、人為的に整備された跡があり…精巧な防護魔術も施されておりました…!」





「なんだって!?それは本当か?戻って来たところで悪いが、すぐに案内をしてくれ」





メイは調査をした隊員2人に案内をされて、洞窟がある場所へとやって来た。





「――これは…完璧な防護魔術だ…」





複数本の聖樹と洞窟を守るように辺り一面には防護魔術がかけられており、魔物の侵入を完全に防いでいた。さすがのメイも驚きを隠せない。





「俺達が容易に踏み入れられるということは…パラビナ王国魔物討伐部隊と認識をしている…つまり、昔ここに討伐部隊に属する何者かが立ち入り、魔物や敵とみなした者を排除する防護魔術を施したということになる…」





メイがそう結論付けると、隊員たちはごくっと唾を飲み込んだ。


 


「しかし、記録では…ここの立入制限区域に討伐部隊が派遣されたことは無いはず…では…?」





隊員は、恐る恐るメイに話しかける。





「意図的に記録に残さなかったか、記録そのものが後で消された可能性が高い…これほどたくさんの聖樹を発見しておきながら、最終的に国に報告しなかったとなると…重大な部隊規律違反となるだろうな」





誰が何のためにここへ来て防護魔術を施したのか…メイは洞窟に向かって思案しながら歩いていく。


辺り一面に広く張り巡らされている魔術からは悪質な意図は一切感じられなかった。むしろこの一帯に生えている聖樹を護ろうとする強い思いを感じた。





メイが洞窟に入ると、中には白い靄が立ち込めていた。身体に害があるものではないと判断し、少し先を進むと、そこには目を疑うものがあった。





「嘘だろ…なんでこんなところに…?」





そこには、岩に囲まれた露天風呂が、綺麗に保護された状態で備えられていた。






***





メイたちが洞窟からテントに一旦戻ったタイミングと重なるように、もう1台のローバーが音を鳴らして到着した。


深紅のマントを纏った菫色の髪を持つ背の高い男が、後ろの座席に乗っていた深緑色のマントをつけた小さな男に手を差し出して、ローバーから降ろさせている。



 



(まさか…本当に来やがったのか…)






深緑色のマントを纏った男がくるっと振り返ると、少しクセのある榛色の髪の毛が揺れる。薄茶色に緑が差し込んだヘーゼルナッツの瞳がこちらに向けられた。





「――メイ隊長!」
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