11 / 140
魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて
深窓の麗人 1
しおりを挟む
ちょうど3日前、ノエル・リンデジャックは、ヒュドラというS級の魔物の攻撃を受け、瀕死状態の第1討伐部隊の隊長ランドルフ・ヴィクセンを治療した。
魔物討伐統合部隊に派遣され治療士としての、初めての仕事であった。
その治療の時、図らずもファーストキスをランドルフに捧げてしまったノエルは、王立魔術師団学校で3年間ずっと同じ寮で同室だった、ニック・ハーヴィの言葉を思い出しのだった。
『…やっぱりキスは、ノエルちゃんが本当に好きになった人のためにとっておいた方がいいよ。それ以外は、全部教えてあげるね…』
言葉通り、ニックにキス以外のことを手とり足取り教えてもらったのだが、ノエルは生まれて18年、まだ誰も好きになったことがなかった。
もしかして、自分は人を愛せない人間なのかもしれないと、養父に相談したら
『私もずっとそうだったから、君の気持ちはわからなくもないけどね。でもきっと、すとんと恋に落ちて、愛する気持ちが心の底にわいてくるのを感じることができるよ。魔力を感じるのと同じ塩梅でね』
というアドバイスをもらっていた。
(アーサーは、あの時真剣な目をしていたからきっと嘘は言ってない。でも、本当に僕が誰かを好きになる時なんて来るのだろうか…)
ノエルが廊下を歩きながらふとそんなことを考えていると、先程リッツェンに使用を許可された、討伐第2部隊のラボに到着した。
配属されたばかりではあるが、ラボの場所と救護室の場所はすぐに覚えることができた。
食堂の場所などは、何度地図をみても記憶に定着せず、昨日は休憩時間丸々使って迷い続け、お昼ご飯を食いっぱぐれてしまった。
ラボの入り口前の受付には、黒いマントをつけた魔術士が立っていた。ノエルの深緑のマントをみて明らかに警戒している。
ノエルが受付で名前を告げると、やはりといった顔つきになり、無言で着替えるためのロッカーの鍵を渡す。
通常、ラボで研究する時には、白いローブを着用する決まりになっていた。治療薬などを精製する時には、清潔な衣服で行うのが良いとされているからだ。
ノエルは鍵をみて、白いローブを持ってきていないことを思い出した。
「ごめんなさい…貸出用のローブはありますか?」
ノエルは、受付にいる魔術士に尋ねた。
「治療士なんかに貸し出すローブなんかあるわけないだろ。変なウィルスを持ち込まれてもこまるからな」
魔術士はそう吐き捨てると、受付の奥に引っ込んでいった。
ノエルは、呆然と受付に立ちすくんだ。
魔物討伐統合部隊に派遣され治療士としての、初めての仕事であった。
その治療の時、図らずもファーストキスをランドルフに捧げてしまったノエルは、王立魔術師団学校で3年間ずっと同じ寮で同室だった、ニック・ハーヴィの言葉を思い出しのだった。
『…やっぱりキスは、ノエルちゃんが本当に好きになった人のためにとっておいた方がいいよ。それ以外は、全部教えてあげるね…』
言葉通り、ニックにキス以外のことを手とり足取り教えてもらったのだが、ノエルは生まれて18年、まだ誰も好きになったことがなかった。
もしかして、自分は人を愛せない人間なのかもしれないと、養父に相談したら
『私もずっとそうだったから、君の気持ちはわからなくもないけどね。でもきっと、すとんと恋に落ちて、愛する気持ちが心の底にわいてくるのを感じることができるよ。魔力を感じるのと同じ塩梅でね』
というアドバイスをもらっていた。
(アーサーは、あの時真剣な目をしていたからきっと嘘は言ってない。でも、本当に僕が誰かを好きになる時なんて来るのだろうか…)
ノエルが廊下を歩きながらふとそんなことを考えていると、先程リッツェンに使用を許可された、討伐第2部隊のラボに到着した。
配属されたばかりではあるが、ラボの場所と救護室の場所はすぐに覚えることができた。
食堂の場所などは、何度地図をみても記憶に定着せず、昨日は休憩時間丸々使って迷い続け、お昼ご飯を食いっぱぐれてしまった。
ラボの入り口前の受付には、黒いマントをつけた魔術士が立っていた。ノエルの深緑のマントをみて明らかに警戒している。
ノエルが受付で名前を告げると、やはりといった顔つきになり、無言で着替えるためのロッカーの鍵を渡す。
通常、ラボで研究する時には、白いローブを着用する決まりになっていた。治療薬などを精製する時には、清潔な衣服で行うのが良いとされているからだ。
ノエルは鍵をみて、白いローブを持ってきていないことを思い出した。
「ごめんなさい…貸出用のローブはありますか?」
ノエルは、受付にいる魔術士に尋ねた。
「治療士なんかに貸し出すローブなんかあるわけないだろ。変なウィルスを持ち込まれてもこまるからな」
魔術士はそう吐き捨てると、受付の奥に引っ込んでいった。
ノエルは、呆然と受付に立ちすくんだ。
138
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる