異世界の孤児院でただ平和に暮らしたいだけだった。

汐桜

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一章【なんとか平和に暮らしたい】

【十話目 尾行と遊びは紙一重?】

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【十話目  尾行と遊びは紙一重?】


「サナ、今日はありがとう。街まで付き合ってもらって」

私は今、街に来ている。
つい先日来たばかりだが、街は変わりなく賑わっていた。

「いいよ。サナも気になってたし、ね。アナとエリシアの事」

サナと街に来たのには理由がある。
それは決して遊びに来たのではなく、アナとエリシアを尾行しているのだ。

「サナが協力してくれて心強いよ。サナとは一歳しか変わらないのに、凄いお姉さんみたい」

「まぁ、種族によって歳の感じ方は違うからね」

「どういう事?」

「サナは人間で言うと十歳だけど、種族的に言えば百歳を超えてる。それでも種族の中では子供」

「え!?百歳超えてる!?」

「そう。でもずっと恐ろしい場所で暮らしてたから知能は十歳と同じ。そこでサナはサテン姉様に拾われた」

「そうなんだ…」

サナの種族は精霊だ。
精霊はこの世界でも珍しく、精霊の中でも光と水を司っているらしい。
水や火、光や闇などの事を属性と言うらしいが、二つの属性を持つ精霊は少ないそうだ。

そんな貴重な精霊でも人間の子供とそう変わらなく見える。

「わぁ…綺麗な氷菓子だね、サナ」

所謂、棒アイスに生花を閉じ込めたものである。
前世ではこう言う洒落たものに疎かったので、新鮮な気持ちになる。

「買う?お小遣いあるし」

「うん!買う!」

断じて遊びに来た訳では無い…筈。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

「サナは孤児院卒業したら何処に行くか考えてる?でもサナは百歳だからもう卒業できるのか…?」

「そうだね。基本的に里親が見つかれば自然と卒業の流れになるから。自立出来ればそれが何よりだけど」

うちの孤児院は里親が見つかり次第卒業、二十歳になれば自立して卒業、一人で生活が出来るようになれば卒業。
この三つが主だ。

アイクの様に親から預かっている者も居る。
アイクはかれこれ七年居るが、未だに迎えが来ない。
鬼族の内部紛争は続いてるそうだ。

「ルイ、エリシア達のこと忘れていない?」

「お、覚えてるよ」

つい別の事を考えてしまったが、今は備考中だ。
アナとエリシアが路地裏へ入って行ったが、一体何があるのだろう。

「サナは昔…孤児院に入る前は光と水の精霊として悪魔を払ってきた。だからサナは今回の件、怪しんでる」

「今回の件、悪魔が関係してるの?」

「領主の本当の事情、まだ分からないけどルイがアナに聞いた話は嘘がある。エリシアの姉が亡くなったのは事実。でもこの件には悪魔が裏で動いてる、絶対に」

何故サナはそう言いきれるのだろう?
これも精霊の力なのだろうか。

悪魔がこの世界の最大の悪なのは何となく分かった。
悪魔を倒せるのは聖属性を持つ人種だけ、そうサナが言っていたのを思い出す。
聖属性はかなり珍しく、サナもあったことが無いそうだ。
裏で悪魔が動いている以上、この問題はかなり最悪かもしれない。

「…アナとエリシアが止まったね」

「恐らくサナ達…他の人間には知られたくない情報を話すと思う。アナとエリシアは昔から二人の秘密事を作っていた」

アナとエリシアは昔から仲がよかった。
今もそうだ。
きっと二人の絆は海よりも深いのだろう。
でも…平和に暮らす為にはアナとエリシアについて知らなければならない。

私とサナは声が聞こえる陰から二人の会話の盗み聞きを始めた。






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