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一章【なんとか平和に暮らしたい】
【五話目 嵐の前の賑やかし】
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【五話目 嵐の前の賑やかし】
ここは迷いの森と呼ばれる、道の入り組んだ森である。
この森には悪魔が住まう場所とも呼ばれている。
サテン・フォードリオンの孤児院がある街の、南へずっと行ったところにある。
「マッカーレン…許さぬぞ、マッカーレン家め」
「もうすぐ当主継承の日だ」
「今年の生贄は一人か?」
「いいえ、今年は居ないわよ」
「どういう事だ?コヒル・マッカーレンが当主を継ぎ、妹のエリシア・マッカーレンが生贄だろう」
「知らないの?コヒルは亡くなったのよ、不治の病でね」
「マッカーレン家はウンディーネのヒーラーを雇っていたはずだが。あの忌まわしき精霊に治せぬ病など有るのか」
「…さぁ、そこら辺は分からないわね」
「ならば今年の生贄は無しか」
「半端者のエリシア・マッカーレンが当主とはな。堕ちたものよ、マッカーレン家め」
「そういう事だから、エリシアは生贄にはなりえないって事よ」
「……成程。取り敢えず今日の会合を終わろう」
この世には様々な種族が居るが、その中でも災厄の種族は悪魔である。
街ごとに何人かの悪魔が隠れて暮らし、悪事を働いている。
週に一度の会合で、取り締まる街の
状況報告などを行っている。
魔物を操り、邪神を奉る悪の権化である。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「ルイ、一緒に街へ行かない?サテン姉様と買い物に行くの」
それは、最近元気の無いエリシアからの誘いだった。
丘の下にある街は少し物騒だ。
元いた世界も誘拐やら強盗やらと連日事件が絶えなかったが、危険度が違う。
何せこの世界には魔法と言う概念があるのだ。
私も早く魔法を使ってみたいものだけど、知識が無いから当分は無理そうだ。
魔法学院なるものがあるが、孤児院の出が入れるほど良心的なものでは無いだろう。
まぁ、兎に角私は平和であればそれでいいのだ。
エリシアが元の元気な少女に戻らないと、平和と言えないと思うが。
一応、精神年齢的には私の方がお姉さんだしね。
「三人で街に出るのは初めてね。そう言えば、ルイは街に来るのは初めてだったかしら?」
サテン姉様は相変わらず、と言った感じだ。
でも、サテン姉様がエリシアの事に気付いてないとはどうしても考えずらい。
それに、エリシアの父親は領主なのだから噂くらい立つものだろう。
「うん。サテン姉様は最近よく街に出かけてるよね」
「サテン姉様は忙しいのよ。なんて言ったって、聖女のような人だもの」
「ふふ…エリシア言い過ぎよ。ほら、冒険者が集うギルドってあるでしょう?」
ギルド。
それは冒険者があらゆる依頼をこなす為の場だ。
酒場も隣接していて年中盛り上がっているらしい。
まぁ、前の世界ではファンタジーにありがちなものだったが。
「それがどうかしたの?」
「冒険者達が孤児を発見した場合、連絡が行くようにギルドに取り合って貰っているのよ」
どうやらサテン姉様は何処までも優しい人らしい。
丘下の街は思った以上に賑わっていた。
孤児院では想像出来ないような華やかさだ。
前の世界でもこんな所へは行ったことが無かった。
行けなかった、の間違いかもしれないが。
「さてと。食料も買えましたし、帰りますか?」
「そうねぇ…服屋に寄りたいのだけど、いいかしら」
「服屋に何しに行くの?」
「ふふ、内緒よ」
サテン姉様が子供のように無邪気に笑う所を初めて見た。
何やら企んでいるように見える。
そうして私達三人はサテン姉様御用達の店へと向かった。
ここは迷いの森と呼ばれる、道の入り組んだ森である。
この森には悪魔が住まう場所とも呼ばれている。
サテン・フォードリオンの孤児院がある街の、南へずっと行ったところにある。
「マッカーレン…許さぬぞ、マッカーレン家め」
「もうすぐ当主継承の日だ」
「今年の生贄は一人か?」
「いいえ、今年は居ないわよ」
「どういう事だ?コヒル・マッカーレンが当主を継ぎ、妹のエリシア・マッカーレンが生贄だろう」
「知らないの?コヒルは亡くなったのよ、不治の病でね」
「マッカーレン家はウンディーネのヒーラーを雇っていたはずだが。あの忌まわしき精霊に治せぬ病など有るのか」
「…さぁ、そこら辺は分からないわね」
「ならば今年の生贄は無しか」
「半端者のエリシア・マッカーレンが当主とはな。堕ちたものよ、マッカーレン家め」
「そういう事だから、エリシアは生贄にはなりえないって事よ」
「……成程。取り敢えず今日の会合を終わろう」
この世には様々な種族が居るが、その中でも災厄の種族は悪魔である。
街ごとに何人かの悪魔が隠れて暮らし、悪事を働いている。
週に一度の会合で、取り締まる街の
状況報告などを行っている。
魔物を操り、邪神を奉る悪の権化である。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「ルイ、一緒に街へ行かない?サテン姉様と買い物に行くの」
それは、最近元気の無いエリシアからの誘いだった。
丘の下にある街は少し物騒だ。
元いた世界も誘拐やら強盗やらと連日事件が絶えなかったが、危険度が違う。
何せこの世界には魔法と言う概念があるのだ。
私も早く魔法を使ってみたいものだけど、知識が無いから当分は無理そうだ。
魔法学院なるものがあるが、孤児院の出が入れるほど良心的なものでは無いだろう。
まぁ、兎に角私は平和であればそれでいいのだ。
エリシアが元の元気な少女に戻らないと、平和と言えないと思うが。
一応、精神年齢的には私の方がお姉さんだしね。
「三人で街に出るのは初めてね。そう言えば、ルイは街に来るのは初めてだったかしら?」
サテン姉様は相変わらず、と言った感じだ。
でも、サテン姉様がエリシアの事に気付いてないとはどうしても考えずらい。
それに、エリシアの父親は領主なのだから噂くらい立つものだろう。
「うん。サテン姉様は最近よく街に出かけてるよね」
「サテン姉様は忙しいのよ。なんて言ったって、聖女のような人だもの」
「ふふ…エリシア言い過ぎよ。ほら、冒険者が集うギルドってあるでしょう?」
ギルド。
それは冒険者があらゆる依頼をこなす為の場だ。
酒場も隣接していて年中盛り上がっているらしい。
まぁ、前の世界ではファンタジーにありがちなものだったが。
「それがどうかしたの?」
「冒険者達が孤児を発見した場合、連絡が行くようにギルドに取り合って貰っているのよ」
どうやらサテン姉様は何処までも優しい人らしい。
丘下の街は思った以上に賑わっていた。
孤児院では想像出来ないような華やかさだ。
前の世界でもこんな所へは行ったことが無かった。
行けなかった、の間違いかもしれないが。
「さてと。食料も買えましたし、帰りますか?」
「そうねぇ…服屋に寄りたいのだけど、いいかしら」
「服屋に何しに行くの?」
「ふふ、内緒よ」
サテン姉様が子供のように無邪気に笑う所を初めて見た。
何やら企んでいるように見える。
そうして私達三人はサテン姉様御用達の店へと向かった。
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