1 / 11
一章【なんとか平和に暮らしたい】
【一話目 在り来り?な異世界転生】
しおりを挟む
【一話目 在り来り?な異世界転生】
私は七町楓。
歳は二十六で現在無職。
元孤児で施設で育った。
そこは思い出したくもない腐った沼のような場所だ。
そんな人間の働く場所も糞だと決まっていたのかもしれない。
春。
マンションの自室の窓辺で新生活に希望を抱くスーツ姿の人々を見ながらお茶を啜って居た時だ。
桜が鬱陶しい程舞っていたのを記憶している。
その時のお茶は酷く苦かった。
そして心臓が発作を起こし、私は__七町楓は死亡した。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「__うゎあーん!_うわぁーん!」
赤ちゃんの甲高い泣き声がする。
「よしよしルイ。もう大丈夫よ」
優しそうな女性な声がする。
暖かな陽に包まれているような…
「サテン姉様、もう赤ちゃん用の寝床が足りません…」
今度の声は先程の女性より少し若い声だ。
「あら…この前の子でいっぱいになっちゃったのね。仕方ないから、今日は私と寝ましょ」
何の話をしているのかよく分からないが、この感覚はとても心地好い。
微睡みに落ちていくような、そんな感覚だ。
どこか懐かしいこの感覚は一体なんだろう_?
心臓を何者かに握り締められているようだ。
息ができなくて、苦しい。
床に倒れるように横たわると血が逆流するような感覚に陥る。
苦しい、痛い、辛い___
あ、死んだ。
目が覚めた。
感じていたはずの苦しみや痛みは無くなっていた。
その代わり、喉が痛い。
声を出しているつもりは無いのに叫ぶ時のような痺れと痛みが喉を襲っている。
そして視界も暗い。
身体は思うように動かない。
そして赤子の泣く声が聞こえる。
今度は一体、なんだと言うんだ。
「あら、ルイ起きちゃった?ふふ…良く泣くいい子ね」
ルイ?さっきから聞こえる声の本人だろうか。
そして話しかける女性の声…どこか聞き覚えがあるような。
「うわぁーん!あわぁん!」
「お腹空いたでしょう?ミルクを用意するわね。エリシア、ミルクを持ってきて」
「はい!ただいま!」
エリシア、とは返事をした少女の名前だろうな。
「ルイ、さっきから目を開けないわね…泣き止んで、また眠ってしまったの?」
気が付くと赤子の泣き声は消えていた。
そして喉の痛みも治まってきた。
段々、体の感覚が出てきた。
痛みと聴覚以外にも重力の感覚や、平衡感覚が出てきた。
そう言えば私は一体どうなってしまっているのだろう。
未だに視界は明けない。
「持ってきました、サテン姉様」
「ありがとう、エリシア。さ、ルイ。ミルクの時間よ」
エリシアと言う少女が戻って来たようだ。
ここには私以外にルイという赤子とサテン姉様と呼ばれる女性、エリシアと呼ばれる少女が居るようだ。
「あう!」
声が出た。
口の中に突然生暖かい液体が入ってくるのを感じた。
「あらあら、美味しくなかったかしら?」
その時、初めて瞼が持ち上がった。
「初めての事にびっくりしたのかも知れませんね」
「ええ。ほら、目を開けたわ。綺麗な金色の瞳ね」
久しぶりの瞳に映るのは、真白な髪で薄く微笑む女性と、哺乳瓶だった。
あれ、これってもしかして…
「暴れちゃダメだよ、ルイ」
「なぁうあうー!!」
もしかしなくても私、赤子になっちゃった?
私は七町楓。
歳は二十六で現在無職。
元孤児で施設で育った。
そこは思い出したくもない腐った沼のような場所だ。
そんな人間の働く場所も糞だと決まっていたのかもしれない。
春。
マンションの自室の窓辺で新生活に希望を抱くスーツ姿の人々を見ながらお茶を啜って居た時だ。
桜が鬱陶しい程舞っていたのを記憶している。
その時のお茶は酷く苦かった。
そして心臓が発作を起こし、私は__七町楓は死亡した。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「__うゎあーん!_うわぁーん!」
赤ちゃんの甲高い泣き声がする。
「よしよしルイ。もう大丈夫よ」
優しそうな女性な声がする。
暖かな陽に包まれているような…
「サテン姉様、もう赤ちゃん用の寝床が足りません…」
今度の声は先程の女性より少し若い声だ。
「あら…この前の子でいっぱいになっちゃったのね。仕方ないから、今日は私と寝ましょ」
何の話をしているのかよく分からないが、この感覚はとても心地好い。
微睡みに落ちていくような、そんな感覚だ。
どこか懐かしいこの感覚は一体なんだろう_?
心臓を何者かに握り締められているようだ。
息ができなくて、苦しい。
床に倒れるように横たわると血が逆流するような感覚に陥る。
苦しい、痛い、辛い___
あ、死んだ。
目が覚めた。
感じていたはずの苦しみや痛みは無くなっていた。
その代わり、喉が痛い。
声を出しているつもりは無いのに叫ぶ時のような痺れと痛みが喉を襲っている。
そして視界も暗い。
身体は思うように動かない。
そして赤子の泣く声が聞こえる。
今度は一体、なんだと言うんだ。
「あら、ルイ起きちゃった?ふふ…良く泣くいい子ね」
ルイ?さっきから聞こえる声の本人だろうか。
そして話しかける女性の声…どこか聞き覚えがあるような。
「うわぁーん!あわぁん!」
「お腹空いたでしょう?ミルクを用意するわね。エリシア、ミルクを持ってきて」
「はい!ただいま!」
エリシア、とは返事をした少女の名前だろうな。
「ルイ、さっきから目を開けないわね…泣き止んで、また眠ってしまったの?」
気が付くと赤子の泣き声は消えていた。
そして喉の痛みも治まってきた。
段々、体の感覚が出てきた。
痛みと聴覚以外にも重力の感覚や、平衡感覚が出てきた。
そう言えば私は一体どうなってしまっているのだろう。
未だに視界は明けない。
「持ってきました、サテン姉様」
「ありがとう、エリシア。さ、ルイ。ミルクの時間よ」
エリシアと言う少女が戻って来たようだ。
ここには私以外にルイという赤子とサテン姉様と呼ばれる女性、エリシアと呼ばれる少女が居るようだ。
「あう!」
声が出た。
口の中に突然生暖かい液体が入ってくるのを感じた。
「あらあら、美味しくなかったかしら?」
その時、初めて瞼が持ち上がった。
「初めての事にびっくりしたのかも知れませんね」
「ええ。ほら、目を開けたわ。綺麗な金色の瞳ね」
久しぶりの瞳に映るのは、真白な髪で薄く微笑む女性と、哺乳瓶だった。
あれ、これってもしかして…
「暴れちゃダメだよ、ルイ」
「なぁうあうー!!」
もしかしなくても私、赤子になっちゃった?
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる