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第7話 もう一つの破れ

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 ボクは金貸しの拓……

 金貸しの拓こと安田 拓朗です。

 ええ……今ちょうど早乙女 瞳さんの所へ向かっているところです。

 この早乙女って人なんですけどね……この業界じゃ有名人なんですよ。お金返さないってんで……。

 それなのに……なんでボクがそんな人のとこに……。 社長も貸さなければいいのにそんな人に。この辺の金融業やってる人なら彼には貸さないってのに……。
 そういうわけで、このあたりじゃ有名なんですよ『ヤバイヤツ』がいるって……それが早乙女さんなんです。

 まあ、実のことを言うとですね……まだ直接会ったことはないんですよ。

 いつ行っても留守なもんで……あ、でも電話では話した事あるんですよ。

 その時に……怖い人だなぁ……って。

 だってね? ボクがいくら広島弁で脅してもまったく引かないんですよ。

 普通はね? お金借りといて返してない引け目みたいなものがあるから、ちょっと声を荒げたら下手に出てくるもんなんですけど。あの人ボクが声を荒げたら……電話の向こう側で発狂したように猛り狂ってたんですよ。
 あ、もう着いちゃったよ。早乙女さんち……

 はぁ……気が重いなぁ。えっと……ここのボロアパートの2階かぁ。

 ギシギシギシ……

 うわっ……ここの階段今にも底抜けちゃいそうだよ……。
 って、お……ここだな? 表札に『早乙女たんてい事務所』って書いてあるし……。うん……。

『たんてい』って平仮名なんだ。

 しかし、どうするかな? ここはもう1発目からガツンと行ったほうがいいよね? ドア蹴破るくらいの勢いで……

 いやいや、やっぱノックくらいはした方がいいよね? マナーとして。

 よし! 行くぞ!

 すぅーー……



 ドンドンドンドン!



「ワレコラ!! 早乙女ぇー! 金返せ、コラぁ!! 今日は居らんでも関係ないぞ! ドアぶち破っちゃるけえの!!」



 よーし、行っくぞー!



「ゴラァ!!」



 ドガァン!
 よし!! 早乙女さんは……って……



「うわわ……う、うおおおおおおおおお!!!」



 ガシャーーーン!



 ええええ!!?



 窓、突き破って飛び降りちゃったよ!? 大丈夫なの? ここ2階だよ!?

 もし、死んじゃってたら……ぼ、ボクのせいになっちゃうのかな? やっぱり。

 うわわ……大変だ!


 ボク急いで窓の外を確認したんですが、そこから見えたのは逃げていく早乙女さんらしき人物の後ろ姿でした。

 あ……大丈夫そうだな……ちょっと足引きずってるけど……
 しかし、開いてる窓があるのになんでわざわざ閉まってる窓の方からわざわざガラス割ってまで飛び降りたんだろ? やっぱハードボイルドだから?

 危険だよぉ……やっぱこの人怖いよぉ……とてもじゃないけどボクの手には……。

 うーん……ここに金目のモノがありそうには見えないし……あれ? なんだこれ?
 犬? 犬探しのビラ? 今やってる仕事なのかな? しかし、かわいいコなぁ……このチワワ。うふふ
 ん? このチワワがつけてる赤いリボンどっかで見たことが……どこだっけ?
 えっと……

 ……。

 あ! 鈴木さんとこだ!!
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