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その4 拓光君は大賢者様になりたい
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あたりが暗くなった頃にようやく街の宿屋に着く。
仲村さんに殴り飛ばされた拓光は結局ここまで失神状態で、オレが抱えて連れてくる羽目になった。
「も、もう無理。こ……腰痛ぇ……」
仲村さんの案内で街道にはすぐ出れたが、そこからが長かった……3、4時間は歩いただろう
街を見つけ、やっと落ち着くことができた。
道中、街道沿いの建物や街を見てみたが文明レベルは中世あたりだろうか……前の世界もそんな感じだったが、世界観はある程度統一されているのか。
天井のランプは火を灯してるにしてはやけに明るいが、電気などあろうはずはない。この世界『にも』魔法というものが存在して、それらを軸にして生活を営む世界であることが伺える。
しかし……助かった。
「よく宿なんてとれましたね。まだ初日で金もなにもないのに」
街に入ると仲村さんは「ちょっと落ち着けるところを探してくるよ」とオレ達から離れていった。
いやいや……そんな簡単に見つかるかよ。と思っていたら「宿がとれたから行こう」と数分後に戻ってきたのだ。
「フフフ……そう! これこそがブルマインのシステムの真骨頂なのだよ。左町さんはブルマインの意味は知ってるかな?」
フフフと不敵に笑っていた仲村さんは振り向いた瞬間に、あることに気付き言葉を止める。
「とりあえず……二人に説明しなきゃだから拓光君起こそっか」
床に乱雑に転がされた拓光を見ながら仲村さんは
「せめてベッドに寝かせるとかさぁ」
と生温いことを言っている。
「初日から屋根のあるとこで休めるだけマシですよ。毎回、2、3日はサバイバルでしたよ、オレ達は」
そう裸一貫で仮想の異世界に放り込まれる。服は着てるが……
「へー……そなんだ。じゃあ最初の2、3日以外は宿屋とかに泊まってたんだ。バイトでもしてお金稼いでた?」
「あー……いやぁ……」
これに関してはあまり答えたくない……あまり褒められた手段ではないからだ
「そういうのは……拓光の担当でして……まあ、どっかから色々と調達してくるんですよ、コイツ……なんというか手段を選ばないっていうか……」
「へー」
そう。拓光は手段を選ばない。この世界の住人達を屁とも思っていない。
以前、あまりのやり口を見かね注意したとき拓光はこんな事を言っていた。
「左町さん。ゲームやります? やったことくらいあるでしょ? ここの奴らは、そのゲームに出てくるNPCですよ。クライムアクションのNPCだと思えば気にならないでしょ?」
その話をよく理解できなかったオレは「クライムアクションのNPCってなによ?」と聞くと
拓光はしばらく考えてから
「んー……マリオのクリボーっすよ」
と言った。
なるほど分かりやすい。
拓光なりにオレの年代を考慮してくれたのだろう。
そうか、クリボーか。なるほどな。
クリボー踏みつけるのを躊躇してちゃゲームにならないものな。オレだってクリボーは踏むからな。踏まずに行けるのにわざわざ踏んじゃうもんな。
と納得しそうになったが……その時、拓光が顔面踏みつけて金巻き上げられてたオッサンはあまりに現実のオッサンと相違がなく……ウーン……クリボーとは違うだろ。と、やはり同意はしかねた。
「そうだろうね。彼のそういう他人への共感力の低さが今回選ばれた要因でもあるからね」
共感力? が低いといいのか? オレが疑問を感じていると仲村さんは
「他人にどう思われても気にしない。手段を選ばないってのはこういう世界じゃ必要でしょ。まあ心配しなくても現実世界でそんなことしてないよ彼は……多分」
最後ちょっとトーンダウンしたな。
まあ、いい。この世界での住人にはともかく拓光はオレに対しては敬意を払ってくれてる。一緒にやっていくなら、それで十分だろう。
「さて、じゃあ話をしよう。拓光君もいいかげん起きてもいい頃でしょ? っていうかもう、起こそうか」
そう言ってオレに起こせと促してきた。
まあ、ここなら起こして気分わるくなっててもそののまま休めるもんな。
「おい拓光。起きろ。もういいだろ。」
頬をペシペシ叩いてみる。
「おい起きろ! 仲村さんが話があるってよ!」
頬をベシベシ叩いてみる。
「おい! いい加減起きろ! 何時間ものびてんじゃねえ!」
頬をバチンバチン叩いてみる。
起きない……これで起きないとなると……ここらで大技を……
おもむろに拓光を抱えてテーブルの上にあがる。
「ちょっと待った! もういい! もういいから!」
ここでレフェリーの止めが入る。
「拓光君には後で説明するから! それでいいから!」
そうか。まあそういうなら、いいか。
テーブルの上から断崖式タイガードライバーを炸裂させるべく抱えていた手を離すと、拓光はそのまま地面に顔面をベシャッとうちつけ元の体勢に戻った。
「ひどい……」
いや、酷くはない。失神した拓光をここまで抱えてきたオレは優しい。むしろ、数時間も失神してしまうような一撃をお見舞いした仲村さんの方が酷い。
「じゃあ説明の方どうぞ」
「あ、ああ……うん」
仲村さんは改めてオレの方に向き直るとオホンと一つ咳払いをしてから話し始めた。
「左町さんはブルマインって言葉がどういう意味を持ってるか知ってるかな?」
「たしかインドネシアの言葉ですよね。『遊ぶ』とか『演じる』とかいう意味だと聞いてます」
「そう! それだよ! 『遊ぶ』『演じる』! ブルマインの本質はまさに仮想世界で違う自分を演じるということにあるんだよ!」
まさにそれだ! と言わんばかりに仲村さんはオレの方指差しながら興奮気味にまくしたてる。
「まあ、それは知ってます。ブルマインの売りはそこですしね」
「そう! まったく違う自分を演じ、仮想世界での非日常を日常にする! これこそがブルマインのコンセプト! ブルマインの世界をよりリアルにする為にNPC達にあたかも人格が宿ったかのような自然な反応を可能にするAIは、私が学生時代から……」ペラペラ
……。
……。
(30分後)
「それでね! リュックベッソンがトータルリコールでマッドマックスすることで実現可能にしてるわけ! でも今の技術じゃヴァルキルマー付近でパーティカルリミットなのよー……」
長いな……なんの話だっけ。
途中から専門用語が多すぎてなに言ってんのか、まるで分からない。映画の話かな……(左町にはそう言ってるようにしか聞こえない)
「ちょっといいですか?」
「お! 質問かい!?」
「いや、質問っていうか……なんで宿屋にこんな簡単に泊まれたかって話だったなー……って思って。リュックベッソンがトータルリコールする話はまた今度にしません?」
「え? なにそれ……そんな映画の話してなくない?」
お、そうか……やっぱりオレの聞き間違いか……
「まあいいか。今回、私が現れる時にある機能が追加されたんだよ。そう! 『演じる』という機能がね!」
「……え、演じる?」
演じるとは? え? お金くれたり身体能力上げたり。すごい道具出したり。じゃなくて演じる?
「映画の話してます?」
「だから映画の話じゃないってば! ブルマインでは核となってるプレイヤーはみんな理想の自分になりきって演じてるわけでしょ? ただブルマインは本来複数人がプレイ出来るようになってないんだよ。」
へーそうなのか。こういうのって複数人のマルチプレイが面白そうなのに……
「君達二人は本来ブルマインにとって『異物』でしかないんだよね。だからブルマインの目玉機能『演じる』が使えなかったってわけ」
なるほどな。だから対象の被験者は鬼のように強くてオレ達は丸腰一般人なわけか。
「私は今回『宿屋の店主のお母さん』を演じたわけだ。『ちょっとアンタ! この方達は私の恩人だからタダで泊めてもおあげ!』ってね」
また……よく分からんモノになったな。
しかし! なんにでもなれるってんなら凄いぞ! これであの鬼強い連中とも真っ向から……
「これでアイツらに対抗できるようになったわけっすねー?」
振り向くとさっきまで倒れてた拓光が上半身をムクリと起こして、フフフと不適に笑っていた。
「お前いつから目ぇ覚めてたの?」
「ヴァルキルマーがパーティカルリミットしたあたりからっすよー」
へへへと笑いながら話す拓光もやはりオレと同じように聞こえてたようだ。
「これでオレも異世界無双でウハウハなわけっすねー!? ハハハハ! 来た! オレの時代が! で!? 仲村さん! どうやるんです!」
なぜか居る仲村さんに疑問も抱かずに拓光は質問をする。適応力の高いヤツだ。
「え? えーっと……じゃあまず肘と顎をくっつけてくれる?」
仲村さん……それ絶対無理なヤツや……
「えーっと……こうすか?」
いや、くっつかねーから……
「あ、こうっすねー。出来たっす。それで、どうすんすか?」
「くっついてんじゃねーか! 気持ちわりーなオイ!」
どうなってんのそれ。腕折れてんじゃないの。
気持ち悪がっていると仲村さんが
「裏コードだからね。人体が出来ない動きをブルマイン内では可能にして、それをスイッチにしたんだ。なにかの偶然でスイッチ入っちゃマズイと思って」
と説明してきた。
肩から顎の距離より、肩から肘の距離の方が長かったり、肘の可動範囲の都合で肘と顎はくっつかない……とどこかで聞いたことがある。
そうか……つくとこうなるのか。
「じゃあ音声ガイドが流れたんじゃない? それの通りに……」
「ブルマインに要請する! 拓光誠はあらゆる魔法を使いこなす最強の魔法使い! いや! 史上最強の賢者を演ずる!」
拓光には音声ガイドが聞こえたのだろう。仲村さんが説明し終わる前に叫けぶと眩い光に包まれた。
凄い。これで変身してあの化け物みたいな連中とも渡り合えるようになるのか。しかし……けっこう眩しいな……
目の前の眩しさから目をそらして隣へ目をやると
「へー……拓光君の拓光って名字だったんだねぇ」
割とどうでもいいことに気付いたようだった。
いや、名前くらい把握しとけよ。
仲村さんに殴り飛ばされた拓光は結局ここまで失神状態で、オレが抱えて連れてくる羽目になった。
「も、もう無理。こ……腰痛ぇ……」
仲村さんの案内で街道にはすぐ出れたが、そこからが長かった……3、4時間は歩いただろう
街を見つけ、やっと落ち着くことができた。
道中、街道沿いの建物や街を見てみたが文明レベルは中世あたりだろうか……前の世界もそんな感じだったが、世界観はある程度統一されているのか。
天井のランプは火を灯してるにしてはやけに明るいが、電気などあろうはずはない。この世界『にも』魔法というものが存在して、それらを軸にして生活を営む世界であることが伺える。
しかし……助かった。
「よく宿なんてとれましたね。まだ初日で金もなにもないのに」
街に入ると仲村さんは「ちょっと落ち着けるところを探してくるよ」とオレ達から離れていった。
いやいや……そんな簡単に見つかるかよ。と思っていたら「宿がとれたから行こう」と数分後に戻ってきたのだ。
「フフフ……そう! これこそがブルマインのシステムの真骨頂なのだよ。左町さんはブルマインの意味は知ってるかな?」
フフフと不敵に笑っていた仲村さんは振り向いた瞬間に、あることに気付き言葉を止める。
「とりあえず……二人に説明しなきゃだから拓光君起こそっか」
床に乱雑に転がされた拓光を見ながら仲村さんは
「せめてベッドに寝かせるとかさぁ」
と生温いことを言っている。
「初日から屋根のあるとこで休めるだけマシですよ。毎回、2、3日はサバイバルでしたよ、オレ達は」
そう裸一貫で仮想の異世界に放り込まれる。服は着てるが……
「へー……そなんだ。じゃあ最初の2、3日以外は宿屋とかに泊まってたんだ。バイトでもしてお金稼いでた?」
「あー……いやぁ……」
これに関してはあまり答えたくない……あまり褒められた手段ではないからだ
「そういうのは……拓光の担当でして……まあ、どっかから色々と調達してくるんですよ、コイツ……なんというか手段を選ばないっていうか……」
「へー」
そう。拓光は手段を選ばない。この世界の住人達を屁とも思っていない。
以前、あまりのやり口を見かね注意したとき拓光はこんな事を言っていた。
「左町さん。ゲームやります? やったことくらいあるでしょ? ここの奴らは、そのゲームに出てくるNPCですよ。クライムアクションのNPCだと思えば気にならないでしょ?」
その話をよく理解できなかったオレは「クライムアクションのNPCってなによ?」と聞くと
拓光はしばらく考えてから
「んー……マリオのクリボーっすよ」
と言った。
なるほど分かりやすい。
拓光なりにオレの年代を考慮してくれたのだろう。
そうか、クリボーか。なるほどな。
クリボー踏みつけるのを躊躇してちゃゲームにならないものな。オレだってクリボーは踏むからな。踏まずに行けるのにわざわざ踏んじゃうもんな。
と納得しそうになったが……その時、拓光が顔面踏みつけて金巻き上げられてたオッサンはあまりに現実のオッサンと相違がなく……ウーン……クリボーとは違うだろ。と、やはり同意はしかねた。
「そうだろうね。彼のそういう他人への共感力の低さが今回選ばれた要因でもあるからね」
共感力? が低いといいのか? オレが疑問を感じていると仲村さんは
「他人にどう思われても気にしない。手段を選ばないってのはこういう世界じゃ必要でしょ。まあ心配しなくても現実世界でそんなことしてないよ彼は……多分」
最後ちょっとトーンダウンしたな。
まあ、いい。この世界での住人にはともかく拓光はオレに対しては敬意を払ってくれてる。一緒にやっていくなら、それで十分だろう。
「さて、じゃあ話をしよう。拓光君もいいかげん起きてもいい頃でしょ? っていうかもう、起こそうか」
そう言ってオレに起こせと促してきた。
まあ、ここなら起こして気分わるくなっててもそののまま休めるもんな。
「おい拓光。起きろ。もういいだろ。」
頬をペシペシ叩いてみる。
「おい起きろ! 仲村さんが話があるってよ!」
頬をベシベシ叩いてみる。
「おい! いい加減起きろ! 何時間ものびてんじゃねえ!」
頬をバチンバチン叩いてみる。
起きない……これで起きないとなると……ここらで大技を……
おもむろに拓光を抱えてテーブルの上にあがる。
「ちょっと待った! もういい! もういいから!」
ここでレフェリーの止めが入る。
「拓光君には後で説明するから! それでいいから!」
そうか。まあそういうなら、いいか。
テーブルの上から断崖式タイガードライバーを炸裂させるべく抱えていた手を離すと、拓光はそのまま地面に顔面をベシャッとうちつけ元の体勢に戻った。
「ひどい……」
いや、酷くはない。失神した拓光をここまで抱えてきたオレは優しい。むしろ、数時間も失神してしまうような一撃をお見舞いした仲村さんの方が酷い。
「じゃあ説明の方どうぞ」
「あ、ああ……うん」
仲村さんは改めてオレの方に向き直るとオホンと一つ咳払いをしてから話し始めた。
「左町さんはブルマインって言葉がどういう意味を持ってるか知ってるかな?」
「たしかインドネシアの言葉ですよね。『遊ぶ』とか『演じる』とかいう意味だと聞いてます」
「そう! それだよ! 『遊ぶ』『演じる』! ブルマインの本質はまさに仮想世界で違う自分を演じるということにあるんだよ!」
まさにそれだ! と言わんばかりに仲村さんはオレの方指差しながら興奮気味にまくしたてる。
「まあ、それは知ってます。ブルマインの売りはそこですしね」
「そう! まったく違う自分を演じ、仮想世界での非日常を日常にする! これこそがブルマインのコンセプト! ブルマインの世界をよりリアルにする為にNPC達にあたかも人格が宿ったかのような自然な反応を可能にするAIは、私が学生時代から……」ペラペラ
……。
……。
(30分後)
「それでね! リュックベッソンがトータルリコールでマッドマックスすることで実現可能にしてるわけ! でも今の技術じゃヴァルキルマー付近でパーティカルリミットなのよー……」
長いな……なんの話だっけ。
途中から専門用語が多すぎてなに言ってんのか、まるで分からない。映画の話かな……(左町にはそう言ってるようにしか聞こえない)
「ちょっといいですか?」
「お! 質問かい!?」
「いや、質問っていうか……なんで宿屋にこんな簡単に泊まれたかって話だったなー……って思って。リュックベッソンがトータルリコールする話はまた今度にしません?」
「え? なにそれ……そんな映画の話してなくない?」
お、そうか……やっぱりオレの聞き間違いか……
「まあいいか。今回、私が現れる時にある機能が追加されたんだよ。そう! 『演じる』という機能がね!」
「……え、演じる?」
演じるとは? え? お金くれたり身体能力上げたり。すごい道具出したり。じゃなくて演じる?
「映画の話してます?」
「だから映画の話じゃないってば! ブルマインでは核となってるプレイヤーはみんな理想の自分になりきって演じてるわけでしょ? ただブルマインは本来複数人がプレイ出来るようになってないんだよ。」
へーそうなのか。こういうのって複数人のマルチプレイが面白そうなのに……
「君達二人は本来ブルマインにとって『異物』でしかないんだよね。だからブルマインの目玉機能『演じる』が使えなかったってわけ」
なるほどな。だから対象の被験者は鬼のように強くてオレ達は丸腰一般人なわけか。
「私は今回『宿屋の店主のお母さん』を演じたわけだ。『ちょっとアンタ! この方達は私の恩人だからタダで泊めてもおあげ!』ってね」
また……よく分からんモノになったな。
しかし! なんにでもなれるってんなら凄いぞ! これであの鬼強い連中とも真っ向から……
「これでアイツらに対抗できるようになったわけっすねー?」
振り向くとさっきまで倒れてた拓光が上半身をムクリと起こして、フフフと不適に笑っていた。
「お前いつから目ぇ覚めてたの?」
「ヴァルキルマーがパーティカルリミットしたあたりからっすよー」
へへへと笑いながら話す拓光もやはりオレと同じように聞こえてたようだ。
「これでオレも異世界無双でウハウハなわけっすねー!? ハハハハ! 来た! オレの時代が! で!? 仲村さん! どうやるんです!」
なぜか居る仲村さんに疑問も抱かずに拓光は質問をする。適応力の高いヤツだ。
「え? えーっと……じゃあまず肘と顎をくっつけてくれる?」
仲村さん……それ絶対無理なヤツや……
「えーっと……こうすか?」
いや、くっつかねーから……
「あ、こうっすねー。出来たっす。それで、どうすんすか?」
「くっついてんじゃねーか! 気持ちわりーなオイ!」
どうなってんのそれ。腕折れてんじゃないの。
気持ち悪がっていると仲村さんが
「裏コードだからね。人体が出来ない動きをブルマイン内では可能にして、それをスイッチにしたんだ。なにかの偶然でスイッチ入っちゃマズイと思って」
と説明してきた。
肩から顎の距離より、肩から肘の距離の方が長かったり、肘の可動範囲の都合で肘と顎はくっつかない……とどこかで聞いたことがある。
そうか……つくとこうなるのか。
「じゃあ音声ガイドが流れたんじゃない? それの通りに……」
「ブルマインに要請する! 拓光誠はあらゆる魔法を使いこなす最強の魔法使い! いや! 史上最強の賢者を演ずる!」
拓光には音声ガイドが聞こえたのだろう。仲村さんが説明し終わる前に叫けぶと眩い光に包まれた。
凄い。これで変身してあの化け物みたいな連中とも渡り合えるようになるのか。しかし……けっこう眩しいな……
目の前の眩しさから目をそらして隣へ目をやると
「へー……拓光君の拓光って名字だったんだねぇ」
割とどうでもいいことに気付いたようだった。
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