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【29】ビバノーム研!
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ヒマリは涙をぬぐいながら、狭いカーゴの前へと振り返った。
ヒマリら二人が飛び込んだせいで、もう窮屈で仕方がない。
そこには興奮気味のノームが三人。彼らは一斉にわっと寄ってくる。
「ヒマリ、作ったぞヒマリ!」「どうだヒマリ!どうだ!作れたぞ!」「すごいだろヒマリ!」
彼らはいつものように周りの状況など、ヒマリの落ち込む様子も爆発炎上した砦すらも気にもせずに喚き散らした。ガタガタと激しく揺れるカーゴの中、ヒマリは舌を噛みそうになりつつ、ノームらに答える。
「え?何、何が?何を?」
「ヒマリ、これです。完成しました。これを使ってください」
「なんだよシリアリス…、―え?」
ノーム達の後ろから小柄な少女が姿を見せる。それは、白い肌に赤い瞳―アルビノの少女。
彼女は粗雑で大きいショットガンのようなものを持っている。彼女は全くの無表情にヒマリを見つめていた。目線はそのまままっすぐかち合う。ヒマリが目をぱちくりとしばたく。
…何故自分はシリアリスと答えてしまったのか。頭が上手く働かない。少女とは、ずっと目線がぶつかったままだ。なぜなら少女は視線をそらさないし、ヒマリもそうだったから。
「逆位相音波銃が完成しました」
「えー、…音域変更の問題が…位相の固定が解決したの?」
「はい。ヒマリの魔力総量でも最大34発発射できる計算となっています」
「…うん…」
アルビノの少女が無表情に差し出す魔法銃には目をやらずに、不思議そうにその少女だけを見つめたままヒマリはそれを受け取った。
夢遊病さながらの動きだった。
「魔導士呼べたのが良かった!」「カガクと魔法と職人の技術だ」「ほめろ、ヒマリ!ヒマリ!」
「…まさか…」
バギーのすぐ横で、追撃するUFOからの光線がさく裂した。場の空気を読まないコメディのように、バギーは跳ね上がる。運よくそのまま着地するが、受け取った魔法銃をヒマリはそのまま床に落としてしまう。
銃は激しく揺れ続ける車内で派手にガシャンと跳ねているが、それでもヒマリは落とした事にも気づけず、ただ呆然と少女を見つめていた。
「しっかりしてください、ヒマリ。大事なプロトタイプです。まだ2丁しか作られていないのですから」
遠くでの爆発音と閃光が、アルビノの少女を照らした。
彼女は無表情のまま、床で跳ねる銃を拾い上げ、またヒマリへと差し出す。
―それはあまりにも迷いのない機械的な動きだった。
―そして、ヒマリと少女の会話は、全て日本語だった。
「ヘイ!シリアリス!!」
「はい、ヒマリ」
ヒマリが、少女にとびかかるように抱き着く。抱きしめる。強く強く抱きしめる。
「う」
「ノクライマントさん!ルイネポリトさん!テングストームさん!!」
「ゴーレム魔導士が素体を設計した」「ドワーフに作ってもらった」「ドワーフたった三日で作った、ドワーフすごい」「中身は我々だ、仕上げは我々だ」「そう、なによりカガクのスマホの中身を移せた」「どうだ、ヒマリ」「ゴーレムの動きとネクロマンシーの操作技術を応用してみた」「面白かった、初めてだ」
ノーム達がいつもと比べ物にならないほど興奮気味に、そして早口にまくしたてる。
自慢げな顔も含めて、それはヒマリには愛おしくてたまらない、光り輝くものに見えた。
「デザインはうちが担当しましたんえ。シリアリスはんならこんな感じやろう思いまして」
「エルマリさん…!!だからノーム研に預けてくれたの?!スマホ!」
「へえ。でも治るとは思えしまへんでしたよってに。ガッカリさせとお無くてヒマリはんには言えまへんでした」
ヒマリは体当たりするようにエルマリにと飛びつき、全力でハグをした。外での爆音と閃光が、彼女らを照らし出す。
「ありがとう!!ありがとう!!」
「あらあら、まあ」
「エルマリさんヤバい、好きすぎる、ムラムラする。ちんこ生やしたいんじゃが!シリアリス訳さないでね!」
「―ヒマリは本当にすごいです。最悪のさらに先をこれほどあっさり更新するとは。最悪発言カテゴリーのトロフィー100%を狙ってるんですか?」
「シリアリスだ!間違いない、やっぱりシリアリスだ!」
「大体ヒマリ、壊れた道具は捨てるように言ったじゃないですか。逃げてください。砦での思い出と心中してどうする気なんですか。それにヒマリ、最初からそうやってエスペラント語を覚えていればよかったんですよ。そうしたら私もエールマリルスュールさん達と会話ができ―」
「めっちゃ言う!めっちゃ言うこやつ!ヘイ!こやつ!ヘイ!シリアリス!」
「私を叩かないでください。精密機器です。不要な衝撃を与えないでください」
「ヘイ!シリアリス!ヘイ!ヘイ!返事ヘイ!」
「与えないでください。与えないでください。与えこのバカ」
「え?バカつった?今バカつった?」
「言っていません、バカじゃないでしょうか」
「…ノクライマントさん、なんかこの子口悪くなってない?」
「言っていません」
「ヘイシリアリス、再生、さっきの会話」
「さっきの定義が曖昧なため再生できません。曖昧検索の意味を間違えてませんか?」
「ほら!!またバカにした!!」
「言っていません」
「言ったよお…しゃべってくれたよぉ…シリアリスぅ…ぐしゅうぅ…」
一気に、ヒマリは滝のような涙をあふれさせる。
止まる事なくぼろぼろとあふれさせながら、シリアリスを強く抱きしめた。
「良かったですね、私が修理できて。私に鼻水をつけないでください。精密機器です」
「うん…」
ヒマリは布団の中の時のように涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をしゃくりあげ、ノームたちに向き合う。
「みんな…エルマリさん…本当にありがとう…シリアリスを知っててくれて…今度からノーム研のことサポセンって呼ぶよぉ…。あ、いい意味でね?いい意味でだよ?」
そんなヒマリにツッコミを入れるように、急ハンドルでバギーはカーゴごと激しく揺さぶられ、ヒマリが転ぶ。
「ほら、やりますえヒマリはん、ピンチやよってに」
「あ、うん!やろう!」
現実に戻り、やっと収まってきた涙をぬぐいながらヒマリはシリアリスに向き合う。
―本当に人間にしか見えない、とヒマリは感心した。
「ヒマリ、銃を持ってください」
改めてシリアリスがヒマリへと手渡す銃。
それは宇宙人が使っていた突撃銃のパーツやこちらで作った部品をごちゃごちゃとくっつけた、いかにも即席のシロモノだった。
「うん、でも予測魔術の魔力消費量問題どうなったの。今のボクにもエルマリさんにも1発分も魔力残ってないよ」
「いいえ、外部デバイスによる解析さえできれば音域予測による調整の魔力は不要になります」
「―そうだ、シリアリス!」
「はい。リアルタイムでのノイズキャンセルは私の標準インストールアプリにお任せください。
―だから何度も言ったじゃないですか。人類はその全てを我々スマホに委ねればいいんですよ」
「だからソレ怖いってば!」
楽しそうに笑いながら、ヒマリはバギーから身を乗り出す。
周りには先行していた部隊の荷馬車や騎馬騎士がちらほらと見え始めている。
「ヒマリ、戦闘機タイプを狙い、引き金を引いた状態で音声を強く発してください」
「なんかゲームのチュートリアル始まった。よーし…」
すうう、と大きく息をすいながらヒマリは銃を構える。
「ほいさ!!!!」
光るBB弾のような、3ミリほどの光球がわずかな音と共に射出される。
それは実弾のような速さのため、光る線となってUFOを掠めて消えた。
「―外れた。難しいな…
よいやさ!!!!」
ずっと願っていたその光景。
誰もが願っていた光景は、かなう瞬間にはあっけなくもあっさりと達成された。
その光球の直撃を受け、戦闘機UFOを包む光の膜が粉々に砕け散った。高速飛行するUFOの慣性を無視し、割れたバリアーがその場にとどまり続ける。
それに気づいた、周りを走る脱出部隊の兵士らがどよめき声を上げた。
「ヘイシリアリス、びっくりファイアー3!」
「ヒマリ、ここで残念なお知らせがあります」
「え?何それ」
「私はスマホではないボディになった事で、ヒマリの代理詠唱ができなくなりました。今後ヒマリ本人の詠唱以外の魔法は使えません」
「え、そうなの?まあいいけど」
「―マギアフォアイビールティペネートリ・ラマラミィークオ!」
エルマリのすらすらとした詠唱で発射された光速の矢が、それも12本もの魔法の矢が戦闘機タイプのUFOを、無防備なUFOをめった刺しに貫通する。
そして―いともあっさりとそれを撃墜させた。
失速しそのまま地面へと接触、暴れ独楽のように跳ねながら砕け散り、後方へと消え去っていった。
「…ヒマリはん!それ…ほんによろしおすなあ!」
エルマリはヒマリの肩をつかみ、口に手を当てて喜びに満ちた声を上げる。
目の前での出来事が、撃墜した本人からしてにわかに信じられないのだ。
「ご機嫌エルマリ魔法こえーよ。ガチにするとマジこえーんだよこの人」
「しかし宇宙人もほいさ、よいやさで死にたくなかった事でしょう」
ヒマリとシリアリスの軽口もすっかり戻ってきていた。
しんがりの馬車に混じって走るバギーは、歓声に包まれる。
砦を壊滅させられ、壊走している軍隊が、あろうことかたった一機のUFOの墜落を見て歓声を上げている。
だがそれは、少しも間違っていない感情だ。
「ヒマリはん!お手柄どすえ!」
「ううん、作ったのはノーム研のみんなだよ」
「ふふっ。そうどすな、ヒマリはんは普通のジェエケエどしたな」
エルマリは笑う。うれしそうに笑う。
当然だろう。バリアーの破壊こそが異世界軍全員の夢だったのだから。
マザーシップの出現、砦の破壊。それでもなお、この新しい希望はあまりにも大きな物だった。
それは異世界人を代表してエルマリの笑顔が、周りの生き残り兵士らの雄たけびが物語っていた。
ヒマリら二人が飛び込んだせいで、もう窮屈で仕方がない。
そこには興奮気味のノームが三人。彼らは一斉にわっと寄ってくる。
「ヒマリ、作ったぞヒマリ!」「どうだヒマリ!どうだ!作れたぞ!」「すごいだろヒマリ!」
彼らはいつものように周りの状況など、ヒマリの落ち込む様子も爆発炎上した砦すらも気にもせずに喚き散らした。ガタガタと激しく揺れるカーゴの中、ヒマリは舌を噛みそうになりつつ、ノームらに答える。
「え?何、何が?何を?」
「ヒマリ、これです。完成しました。これを使ってください」
「なんだよシリアリス…、―え?」
ノーム達の後ろから小柄な少女が姿を見せる。それは、白い肌に赤い瞳―アルビノの少女。
彼女は粗雑で大きいショットガンのようなものを持っている。彼女は全くの無表情にヒマリを見つめていた。目線はそのまままっすぐかち合う。ヒマリが目をぱちくりとしばたく。
…何故自分はシリアリスと答えてしまったのか。頭が上手く働かない。少女とは、ずっと目線がぶつかったままだ。なぜなら少女は視線をそらさないし、ヒマリもそうだったから。
「逆位相音波銃が完成しました」
「えー、…音域変更の問題が…位相の固定が解決したの?」
「はい。ヒマリの魔力総量でも最大34発発射できる計算となっています」
「…うん…」
アルビノの少女が無表情に差し出す魔法銃には目をやらずに、不思議そうにその少女だけを見つめたままヒマリはそれを受け取った。
夢遊病さながらの動きだった。
「魔導士呼べたのが良かった!」「カガクと魔法と職人の技術だ」「ほめろ、ヒマリ!ヒマリ!」
「…まさか…」
バギーのすぐ横で、追撃するUFOからの光線がさく裂した。場の空気を読まないコメディのように、バギーは跳ね上がる。運よくそのまま着地するが、受け取った魔法銃をヒマリはそのまま床に落としてしまう。
銃は激しく揺れ続ける車内で派手にガシャンと跳ねているが、それでもヒマリは落とした事にも気づけず、ただ呆然と少女を見つめていた。
「しっかりしてください、ヒマリ。大事なプロトタイプです。まだ2丁しか作られていないのですから」
遠くでの爆発音と閃光が、アルビノの少女を照らした。
彼女は無表情のまま、床で跳ねる銃を拾い上げ、またヒマリへと差し出す。
―それはあまりにも迷いのない機械的な動きだった。
―そして、ヒマリと少女の会話は、全て日本語だった。
「ヘイ!シリアリス!!」
「はい、ヒマリ」
ヒマリが、少女にとびかかるように抱き着く。抱きしめる。強く強く抱きしめる。
「う」
「ノクライマントさん!ルイネポリトさん!テングストームさん!!」
「ゴーレム魔導士が素体を設計した」「ドワーフに作ってもらった」「ドワーフたった三日で作った、ドワーフすごい」「中身は我々だ、仕上げは我々だ」「そう、なによりカガクのスマホの中身を移せた」「どうだ、ヒマリ」「ゴーレムの動きとネクロマンシーの操作技術を応用してみた」「面白かった、初めてだ」
ノーム達がいつもと比べ物にならないほど興奮気味に、そして早口にまくしたてる。
自慢げな顔も含めて、それはヒマリには愛おしくてたまらない、光り輝くものに見えた。
「デザインはうちが担当しましたんえ。シリアリスはんならこんな感じやろう思いまして」
「エルマリさん…!!だからノーム研に預けてくれたの?!スマホ!」
「へえ。でも治るとは思えしまへんでしたよってに。ガッカリさせとお無くてヒマリはんには言えまへんでした」
ヒマリは体当たりするようにエルマリにと飛びつき、全力でハグをした。外での爆音と閃光が、彼女らを照らし出す。
「ありがとう!!ありがとう!!」
「あらあら、まあ」
「エルマリさんヤバい、好きすぎる、ムラムラする。ちんこ生やしたいんじゃが!シリアリス訳さないでね!」
「―ヒマリは本当にすごいです。最悪のさらに先をこれほどあっさり更新するとは。最悪発言カテゴリーのトロフィー100%を狙ってるんですか?」
「シリアリスだ!間違いない、やっぱりシリアリスだ!」
「大体ヒマリ、壊れた道具は捨てるように言ったじゃないですか。逃げてください。砦での思い出と心中してどうする気なんですか。それにヒマリ、最初からそうやってエスペラント語を覚えていればよかったんですよ。そうしたら私もエールマリルスュールさん達と会話ができ―」
「めっちゃ言う!めっちゃ言うこやつ!ヘイ!こやつ!ヘイ!シリアリス!」
「私を叩かないでください。精密機器です。不要な衝撃を与えないでください」
「ヘイ!シリアリス!ヘイ!ヘイ!返事ヘイ!」
「与えないでください。与えないでください。与えこのバカ」
「え?バカつった?今バカつった?」
「言っていません、バカじゃないでしょうか」
「…ノクライマントさん、なんかこの子口悪くなってない?」
「言っていません」
「ヘイシリアリス、再生、さっきの会話」
「さっきの定義が曖昧なため再生できません。曖昧検索の意味を間違えてませんか?」
「ほら!!またバカにした!!」
「言っていません」
「言ったよお…しゃべってくれたよぉ…シリアリスぅ…ぐしゅうぅ…」
一気に、ヒマリは滝のような涙をあふれさせる。
止まる事なくぼろぼろとあふれさせながら、シリアリスを強く抱きしめた。
「良かったですね、私が修理できて。私に鼻水をつけないでください。精密機器です」
「うん…」
ヒマリは布団の中の時のように涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をしゃくりあげ、ノームたちに向き合う。
「みんな…エルマリさん…本当にありがとう…シリアリスを知っててくれて…今度からノーム研のことサポセンって呼ぶよぉ…。あ、いい意味でね?いい意味でだよ?」
そんなヒマリにツッコミを入れるように、急ハンドルでバギーはカーゴごと激しく揺さぶられ、ヒマリが転ぶ。
「ほら、やりますえヒマリはん、ピンチやよってに」
「あ、うん!やろう!」
現実に戻り、やっと収まってきた涙をぬぐいながらヒマリはシリアリスに向き合う。
―本当に人間にしか見えない、とヒマリは感心した。
「ヒマリ、銃を持ってください」
改めてシリアリスがヒマリへと手渡す銃。
それは宇宙人が使っていた突撃銃のパーツやこちらで作った部品をごちゃごちゃとくっつけた、いかにも即席のシロモノだった。
「うん、でも予測魔術の魔力消費量問題どうなったの。今のボクにもエルマリさんにも1発分も魔力残ってないよ」
「いいえ、外部デバイスによる解析さえできれば音域予測による調整の魔力は不要になります」
「―そうだ、シリアリス!」
「はい。リアルタイムでのノイズキャンセルは私の標準インストールアプリにお任せください。
―だから何度も言ったじゃないですか。人類はその全てを我々スマホに委ねればいいんですよ」
「だからソレ怖いってば!」
楽しそうに笑いながら、ヒマリはバギーから身を乗り出す。
周りには先行していた部隊の荷馬車や騎馬騎士がちらほらと見え始めている。
「ヒマリ、戦闘機タイプを狙い、引き金を引いた状態で音声を強く発してください」
「なんかゲームのチュートリアル始まった。よーし…」
すうう、と大きく息をすいながらヒマリは銃を構える。
「ほいさ!!!!」
光るBB弾のような、3ミリほどの光球がわずかな音と共に射出される。
それは実弾のような速さのため、光る線となってUFOを掠めて消えた。
「―外れた。難しいな…
よいやさ!!!!」
ずっと願っていたその光景。
誰もが願っていた光景は、かなう瞬間にはあっけなくもあっさりと達成された。
その光球の直撃を受け、戦闘機UFOを包む光の膜が粉々に砕け散った。高速飛行するUFOの慣性を無視し、割れたバリアーがその場にとどまり続ける。
それに気づいた、周りを走る脱出部隊の兵士らがどよめき声を上げた。
「ヘイシリアリス、びっくりファイアー3!」
「ヒマリ、ここで残念なお知らせがあります」
「え?何それ」
「私はスマホではないボディになった事で、ヒマリの代理詠唱ができなくなりました。今後ヒマリ本人の詠唱以外の魔法は使えません」
「え、そうなの?まあいいけど」
「―マギアフォアイビールティペネートリ・ラマラミィークオ!」
エルマリのすらすらとした詠唱で発射された光速の矢が、それも12本もの魔法の矢が戦闘機タイプのUFOを、無防備なUFOをめった刺しに貫通する。
そして―いともあっさりとそれを撃墜させた。
失速しそのまま地面へと接触、暴れ独楽のように跳ねながら砕け散り、後方へと消え去っていった。
「…ヒマリはん!それ…ほんによろしおすなあ!」
エルマリはヒマリの肩をつかみ、口に手を当てて喜びに満ちた声を上げる。
目の前での出来事が、撃墜した本人からしてにわかに信じられないのだ。
「ご機嫌エルマリ魔法こえーよ。ガチにするとマジこえーんだよこの人」
「しかし宇宙人もほいさ、よいやさで死にたくなかった事でしょう」
ヒマリとシリアリスの軽口もすっかり戻ってきていた。
しんがりの馬車に混じって走るバギーは、歓声に包まれる。
砦を壊滅させられ、壊走している軍隊が、あろうことかたった一機のUFOの墜落を見て歓声を上げている。
だがそれは、少しも間違っていない感情だ。
「ヒマリはん!お手柄どすえ!」
「ううん、作ったのはノーム研のみんなだよ」
「ふふっ。そうどすな、ヒマリはんは普通のジェエケエどしたな」
エルマリは笑う。うれしそうに笑う。
当然だろう。バリアーの破壊こそが異世界軍全員の夢だったのだから。
マザーシップの出現、砦の破壊。それでもなお、この新しい希望はあまりにも大きな物だった。
それは異世界人を代表してエルマリの笑顔が、周りの生き残り兵士らの雄たけびが物語っていた。
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