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【6】あいつらのがガチチートじゃんね
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「副団長!!UFOから鎧を着た戦士が!!」
ついに。
UFOから、パワードスーツらしき宇宙服を着た者が姿を見せる。
人間と大差ない身長。胴体の上にはヘルメットをかぶった頭部、二本の腕に二本の足。
地球人型宇宙人。
ヒマリはずっとUFO騒動全てが、もしかしたらこの異世界の人間では、はるかに離れた場所にある進んだ文明の攻撃では、とも考えていた。
そしてこの宇宙人の姿はそれを補強する姿に思えた。
「―違う、シリアリス、違う。あれは宇宙人だよ、二足歩行だけど四足だ」
「はい。地球やこの異世界の脊椎動物とは別進化を見てとれます」
その足は、二足歩行に見えるその足の膝にあたる場所から先が枝分かれしていた。
逆Y字型の奇妙だが安定感のある足で、その異星人は不思議な歩き方で宇宙船から出てきた。
「シリアリス、とうとう宇宙人見ちゃったよ」
「いいえ、ヒマリ。ヒマリが最初に見た宇宙人はゴブリンです」
「え?
あ、や、そういやそうか。って言ってる場合じゃない。
―みんな、注意して!あいつらが手に持ってるやつはすごく強いクロスボウみたいなやつだから!!」
両手が自由に使える知的生命体は当然手で扱える飛び道具を開発する。それはやがて銃に至る。
まして戦闘機に熱線砲を積載する宇宙人だ。これもハリウッド知識そのままの宇宙人だった。
UFOの墜落対策構造はよほどしっかりしているらしい。墜落したUFO全てからそれぞれ2人ずつの宇宙人が出てくる。
その手に抱える突撃銃のようなものから熱線が放たれる。
交渉の余地など、無論なかった。
オークの戦士たちはソフィエレの合図を待たず、先手必勝とばかりに飛び込む。
ドワーフの勇者たちも斧を振り上げて突き進む。取り囲むようにして人間の兵士たちも確実に襲い掛かった。
出てきた8人の宇宙人も優秀な兵士らしい。すぐに円陣を組み、周りを取り囲む異世界軍の猛者へと対応する。
彼らが手に抱える熱線銃は機関銃のように連射はしない。しかしその攻撃が盾や鎧に当たると爆発し、巨体のオークでも重装備の騎士でも弾き飛ばされた。
1秒に1発ずつ放たれるその破壊力は、十二分に弾幕として役立っている。
「シリアリス、あれはレーザーじゃない、やっぱりUFOの熱線砲と同じ技術だ。
レーザーみたいに焼いてない、貫通もしない。なにかのエネルギーを弾にしてるんだ。だから当たると爆発する。でもそのおかげで重装備だとみんなダメージだけで済んで即死はしてないっぽい」
「はい。しかしその分近づけない状態になっています」
「うん、近寄ってチャンバラしたいボクら側と相性が悪い」
ヒマリの観察する通り、たった数人相手に、囲んだ戦士団は近づけないまま10人も20人もやられていた。
それでもやはり、異世界の戦士たちの士気は高い。怯むことなく進む。
「弓兵はUFOは無視!下がって敵兵だけを狙ってください!」
ソフィエレのよく通る声が響く。
これほどの戦闘になれば日本の女子高生にすぎないヒマリには口出しする余地はなかった。しかし、みんなで飛び込んでいく個人主義的なところはまずそうだとはわかる。こればかりは別文化の混成部隊の欠点なのだろう。
なんとか接近して振り上げたドワーフの斧も、人間の兵士のクロスボウの矢も魔法の矢も、しかし全てが弾かれていた。
「ああもう、こんな、ここでもバリアーだよ!携帯用のバリアー装置まで作ってるよ、あいつら!」
ヒマリはたまらずに砦の壁から駆け出していた。
今や制空権は完全に押さえられていた。
戦闘機UFOからの熱線が、砦の壁や地上の兵士を狙い、宇宙人戦士を確実に援護している。
それでも地上部隊は包囲網を狭め、宇宙人戦士の目の前へと迫り剣、槍での攻撃を開始している。
壁上からも戦闘機UFOへの雷撃、火球攻撃をしている。少しでも速度を落としたり隙を見せたUFOへと攻撃を当て、ようやく2機撃墜する。
「ソフィエレさん、個人バリアは最長でも4.21秒までしか持たない!魔法で集中砲火を…」
「ヒマリさん?!下がって!安全な場所…なんて無いかもしれませんが、下がって!」
「ボクも魔法使えるから!」
「大丈夫、4.21秒ですわね!」
その言葉を合図に女騎士はマントをはためかせ、一瞬で宇宙人の戦士へと間合いを詰めつつそのまま突きを放つ。
勿論バリアーではじかれるが、そのまま激しく斬り、突きを放ち続ける。
その時やっとヒマリはソフィエレがいつの間にか左手にもショートソードを抜いて二刀流になっていたのに気づく。ガトリングのように放たれる秒間12発もの斬撃全てが宇宙人のアーマーの隙間を狙っていた。反撃もバリアーを解くことも出来ないまま、その宇宙人は身動きすら出来ずにバリアーのエネルギーを尽きさせる。
「わかってしまえば!」
ソフィエレの剣が宇宙人の喉を突き刺し、さらに体幹を使って手首を返すとそのままアーマースーツを着た宇宙人を合気道さながらぐるりと回転させ、頭から地面へと叩きつける。
「みなさん!単発の大振りではなく連続で!動きを固めてくださいまし!」
ソフィエレは剣をつるりと引き抜きながら、力強く聞く者を励ます声で指示を出した。
その足元に倒れる宇宙人。
ヘルメットが壊れ、中の顔をヒマリは見た。
見てしまった。
薄暗いバイザーの中のそれは、ぬるりとした灰色のヘビが何匹も蠢いて見えた。
それは、顔から生えた何本もの灰色の触手だった。
毛穴も凹凸もない、ウナギのような質感の灰色がかった肌。そこに無数に浮かぶ緑の斑点は両生類を彷彿とさせ、ヒマリにも異世界人にも嫌悪感しか感じさせない、やけに有機的な体表。見ただけで吐き気をこらえるのが難しいものだった。
ひい、とヒマリの口から小さな悲鳴が漏れる。
「無理無理、せめて虫系宇宙人のがまだ良かった…」
ヒマリをしてやっと言えた軽口がその程度な程に、その姿はショックだった。
そんな彼女の周りをドカドカと走り回る甲冑の戦士たちに、ヒマリもいつまでも悠長に茫然とはしていられない。気づけばそのまま3人ほど宇宙人は倒されている。あとは一気に崩せれば、と思ったタイミングだ。
「騎士隊、今!」
ソフィエレの合図で、砦の内部に隠していた最後の歩兵が飛び出してくる。中庭中央で円陣を組む宇宙人戦士らへと直線で突撃を開始した。
「…やべえ、ソフィエレさん鬼ヤバいね、シリアリス。あんなの相手に冷静だ。何よりよく挫けないな」
「はい。それよりも下がってください、ヒマリ」
「うん、でも」
「下がってください、ヒマリ。上空に大型UFOが出現しました」
シリアリスの声に、ヒマリは目と口を見開いて空を見上げる。そこには、絶望が浮いていた。
今飛んでいる戦闘機UFOはもちろん、その前のドローンUFOをはるかにしのぐ大きなUFOが浮いていた。
全長40メートルはあろうかという円盤を見上げるヒマリの脳裏には、学校のグラウンドがそのまま浮いているイメージがよぎった。空を覆うというのはこの事だろう。
「シリアリス…あれ、底に戦闘機UFOがはまってる…
戦闘機UFOの母船になってるんだよ、まだあんなのが出てくるとか」
「下がってください!ヒマリ!」
呆然とつぶやくヒマリに、シリアリスの警告が大きく響く。
はっと我に返り慌てて逃げようとするが、逃げ場が見つからない。
「ヒマリはん、下がりよし!」
重さを持たない羽根のようにエルマリが空中を滑りヒマリへと向かいつつ、3本の矢を一度に放った。
その全てがヒマリを狙っていた最後の宇宙人戦士に当たる
―いや、そのバリアーにはじかれる。
「猪口才!」
彼女に珍しい激しい口調。エルマリは腰の矢筒から銀の矢を抜きつがえながら魔導詠唱を唱え、矢を摘まむ以外の3本の指が別の生き物のように踊る。
色とりどりの小さな魔法陣が5つ矢の前に浮かび、それを貫通するように銀の矢が放たれた。
―それが一呼吸の間で行われた。
エルマリをより美しく虹色に照らす輝く矢はしかし、宇宙人戦士のバリアーに弾かれ―
いや、それをエルマリのしかしが上回る。
光る矢がパキンという高い音を立てて光る壁を貫通した。絶対の防御に守られていたパワードスーツの戦士の胸に深々と突き刺さる。冬の薄氷さながらに粉々になったバリアーは空中に舞った。
周囲の異世界の兵士ら全員がどよめき、歓声に沸く。
「ワイバーンスレイヤーだ、と驚いています。
彼女の有名な技のようです」
「すごい、やっぱり割る事は可能なんだ、薄いとはいえ。
でもなんだ、パワードスーツに付随してたのに割れた瞬間にその場に残ったぞ。バグ画面みたい。
―てかエルマリさん、矢でワイバーン倒しちゃうんだ。ヤバいね」
「ヒマリ、今のうちに下がってください」
「あ、うん!」
地上の宇宙人戦士は全て倒せたものの、上空からの攻撃は無論まだ続いている。
ヒマリは砦の中をめざして走りながらちらりと見上げ、そしてそこにある物に驚き、走る足が鈍る。
「―シリアリス、何あのバリアー!ずるい!もう転移火球対策された!
まさか転移距離で魔力が減衰する事まで気づいた?!」
見ただけでもわかる程に、大型UFOのバリアーはドローンUFOのそれとは違っていた。
そのバリアーは大型UFOの外側数メートルはマージンを開けて大型UFO全体を包み込んでいた。すなわち直径数十メートルもの常時展開のバリアー。
今までの法則性から、余程出力のあるジェネレーターかそれに類するものが搭載されている事がわかる。
「ほら!今!爆発したけども!!あれでもアイマル先生の転移火球だよ!
本体外側でやっと爆発だ!あれじゃあ撃墜なんて―」
「ヒマリ!今は黙って!前だけ見て走ってください!」
「うんごめん!走る!
…あ、まずい」
今度こそ走り出したヒマリが、砦全てが真っ白に照らし出された。
仰ぎ見るまでもなかった。
大型UFOの底、中央が強く強く閃光を放っていた。
それはあたかも、超高出力ジェネレーターの力を見せつけるようだった。
何キロも先まで照らす灯台のような光が、砦中庭を白く染め上げる。
大型UFOが浮く真下を白く染め上げる。
そこは、敵の宇宙人戦士らが円陣を組んでいた場所。
そして今は、ソフィエレ、エルマリをはじめ多くの異世界軍が集まっている場所だった。
その彼ら全員が、今まで中庭全てを白くしていた降り注ぐ光は急速に収束し、彼らの中央の一点のみへと細く強くなっていく。
これもまた、ヒマリがアニメやハリウッド映画で見知った光景―
収束するビーム兵器の光―
「みんな!!逃げて!!!」
「ヒマリ駄目です!!戻らないでください!!逃げてください!!」
仲間に向かって叫びながら駆け出すヒマリに、シリアリスも叫ぶ。
今や降り注ぐ光は一筋のサーチライトのように中庭中央一点を刺している。にもかかわらず、目が眩むほどの光として存在しる。しかしその明かりは違い照らす事が目的ではない。その強烈な光はあくまでこれから生まれる衝撃の副産物にすぎず―
光の線ははじけ、闇へと反転した。
一つの塊となったその白い闇の真下に、ヒマリは見た。
全てを焼き尽くす闇の光の真下その場に突然現れた魔導士を。
杖を振り上げ、全員の上に、大型UFOの放つ光にも負けない巨大な虹色の魔法陣を発生させる様子を。
線となった光が再び、全てを包み込んだ。
光が音を飲み込む。
無音の中、静寂の中、虹色の魔法陣が直径20メートルもの光りの筒を受け止めた。
轟音と衝撃波。
誰もが目を開けられないほどの閃光が砦を包み込む。
ヒマリははじけ飛び、砦の壁へとぶつけられた。
その衝撃とは裏腹に、突風は一瞬で吹き止む。
あまりの痛さに泣きそうになりながら、生きている証拠を感じながら、ヒマリはすぐに飛び起きて周りを見る。
「―無事だ、みんな無事みたいだよ!シリアリス!」
「ヒマリ、上を見てください。大型UFOが上昇します」
「ホントだ、あのエネルギーでバリアーが張れなくなったんだ、当然だ。逃げ足の早い―。
あ、そうか、戦闘機UFOも今のID4の極太ビーム撃つ間だけ離れてたのか!」
「はい、そのようです。今のうちに態勢を立て直すことをお勧めします」
「うん、みんなは―」
ヒマリの動きが、また止まった。
UFOの攻撃が止んでいる今。爆発が止まっている今。中庭中央で、誰もがその中心を見下ろしているのが見えた。
「…シリアリス…。アイマル先生が―」
中央で倒れる魔導士を、誰もが見下ろし、この激戦の中で動けなくなっている。
さっきの光の中での光景と、その様子からヒマリは覚る。
あんな奇跡のような巨大なシールド魔法を発動するにはどれほどの無茶が必要なのか。
魔力だけではなく、全ての生命エネルギーが必要だったであろう事を。
「―先生が―」
ヒマリは自分がいる場所が物語の中ではなく現実なんだと強く感じた。
さらに、その現実はより残酷だと思い知らされる。
宇宙人側もここが勝負所と判断したのだろう。砦の兵力半分以上を消耗して、こちらの切り札であった鷲鳥人を壊滅してまでやっと倒した小型の戦闘機UFO数機は、大型UFOから新たに発進した8機の戦闘機UFOにより、さらに数を増やした。
砦を守り続けてきた勇敢な兵士らがそれをただ茫然と見上げ、立ち尽くしている。戦闘機UFOは一斉に、再び砦へと襲い掛かる。
その様子に―
とうとうソフィエレさえ立ち尽くし、言葉を失った。
攻撃の要である、魔術師隊の中心人物魔導士アイマルまで倒れた今。皆に何を言えばいいか、どう動けばいいのか―浮かばなくなった。
常に前へと掲げられていた輝く剣がゆっくりと地面を指すが誰が彼女を責められるのか。
彼女の脳裏に撤退という言葉が浮かんでも、他に作戦などあっただろうか。
「なんだよこんなの!ただの地獄じゃん!余裕だってソフィエレさん!!」
「ヒマリさん…」
信じられないという顔。
そして、きっと閉じられる口。指揮剣を握る彼女の手に力が戻った。
「―倒れたものを担ぎ、全軍砦内に下がって!態勢を立てなおします!」
兵士らは、重い足を動かし、仲間を引きずり、行動を始める。
「ヒマリ、北北西上空を見てください!」
どんな場面でも聞き取りやすい、シリアリスの声がヒマリの耳に入る。
壁に叩きつけられ痛む体を無理やり動かし、砦に入ろうとしていたヒマリが、シリアリスの声に空を見上げた。
「―何?まさかまた援軍…
うわシリアリス!
そうか、ここはファンタジーだよ!ファンタジー世界だったんだよ!」
遠目でもわかるその姿。
ヒマリにも一目で異世界軍の仲間だとわかるその威容。空を切り裂く、その巨大で真っ赤な翼。
「―ドラゴンだ!ドラゴン飛んでるよソフィエレさん!」
ついに。
UFOから、パワードスーツらしき宇宙服を着た者が姿を見せる。
人間と大差ない身長。胴体の上にはヘルメットをかぶった頭部、二本の腕に二本の足。
地球人型宇宙人。
ヒマリはずっとUFO騒動全てが、もしかしたらこの異世界の人間では、はるかに離れた場所にある進んだ文明の攻撃では、とも考えていた。
そしてこの宇宙人の姿はそれを補強する姿に思えた。
「―違う、シリアリス、違う。あれは宇宙人だよ、二足歩行だけど四足だ」
「はい。地球やこの異世界の脊椎動物とは別進化を見てとれます」
その足は、二足歩行に見えるその足の膝にあたる場所から先が枝分かれしていた。
逆Y字型の奇妙だが安定感のある足で、その異星人は不思議な歩き方で宇宙船から出てきた。
「シリアリス、とうとう宇宙人見ちゃったよ」
「いいえ、ヒマリ。ヒマリが最初に見た宇宙人はゴブリンです」
「え?
あ、や、そういやそうか。って言ってる場合じゃない。
―みんな、注意して!あいつらが手に持ってるやつはすごく強いクロスボウみたいなやつだから!!」
両手が自由に使える知的生命体は当然手で扱える飛び道具を開発する。それはやがて銃に至る。
まして戦闘機に熱線砲を積載する宇宙人だ。これもハリウッド知識そのままの宇宙人だった。
UFOの墜落対策構造はよほどしっかりしているらしい。墜落したUFO全てからそれぞれ2人ずつの宇宙人が出てくる。
その手に抱える突撃銃のようなものから熱線が放たれる。
交渉の余地など、無論なかった。
オークの戦士たちはソフィエレの合図を待たず、先手必勝とばかりに飛び込む。
ドワーフの勇者たちも斧を振り上げて突き進む。取り囲むようにして人間の兵士たちも確実に襲い掛かった。
出てきた8人の宇宙人も優秀な兵士らしい。すぐに円陣を組み、周りを取り囲む異世界軍の猛者へと対応する。
彼らが手に抱える熱線銃は機関銃のように連射はしない。しかしその攻撃が盾や鎧に当たると爆発し、巨体のオークでも重装備の騎士でも弾き飛ばされた。
1秒に1発ずつ放たれるその破壊力は、十二分に弾幕として役立っている。
「シリアリス、あれはレーザーじゃない、やっぱりUFOの熱線砲と同じ技術だ。
レーザーみたいに焼いてない、貫通もしない。なにかのエネルギーを弾にしてるんだ。だから当たると爆発する。でもそのおかげで重装備だとみんなダメージだけで済んで即死はしてないっぽい」
「はい。しかしその分近づけない状態になっています」
「うん、近寄ってチャンバラしたいボクら側と相性が悪い」
ヒマリの観察する通り、たった数人相手に、囲んだ戦士団は近づけないまま10人も20人もやられていた。
それでもやはり、異世界の戦士たちの士気は高い。怯むことなく進む。
「弓兵はUFOは無視!下がって敵兵だけを狙ってください!」
ソフィエレのよく通る声が響く。
これほどの戦闘になれば日本の女子高生にすぎないヒマリには口出しする余地はなかった。しかし、みんなで飛び込んでいく個人主義的なところはまずそうだとはわかる。こればかりは別文化の混成部隊の欠点なのだろう。
なんとか接近して振り上げたドワーフの斧も、人間の兵士のクロスボウの矢も魔法の矢も、しかし全てが弾かれていた。
「ああもう、こんな、ここでもバリアーだよ!携帯用のバリアー装置まで作ってるよ、あいつら!」
ヒマリはたまらずに砦の壁から駆け出していた。
今や制空権は完全に押さえられていた。
戦闘機UFOからの熱線が、砦の壁や地上の兵士を狙い、宇宙人戦士を確実に援護している。
それでも地上部隊は包囲網を狭め、宇宙人戦士の目の前へと迫り剣、槍での攻撃を開始している。
壁上からも戦闘機UFOへの雷撃、火球攻撃をしている。少しでも速度を落としたり隙を見せたUFOへと攻撃を当て、ようやく2機撃墜する。
「ソフィエレさん、個人バリアは最長でも4.21秒までしか持たない!魔法で集中砲火を…」
「ヒマリさん?!下がって!安全な場所…なんて無いかもしれませんが、下がって!」
「ボクも魔法使えるから!」
「大丈夫、4.21秒ですわね!」
その言葉を合図に女騎士はマントをはためかせ、一瞬で宇宙人の戦士へと間合いを詰めつつそのまま突きを放つ。
勿論バリアーではじかれるが、そのまま激しく斬り、突きを放ち続ける。
その時やっとヒマリはソフィエレがいつの間にか左手にもショートソードを抜いて二刀流になっていたのに気づく。ガトリングのように放たれる秒間12発もの斬撃全てが宇宙人のアーマーの隙間を狙っていた。反撃もバリアーを解くことも出来ないまま、その宇宙人は身動きすら出来ずにバリアーのエネルギーを尽きさせる。
「わかってしまえば!」
ソフィエレの剣が宇宙人の喉を突き刺し、さらに体幹を使って手首を返すとそのままアーマースーツを着た宇宙人を合気道さながらぐるりと回転させ、頭から地面へと叩きつける。
「みなさん!単発の大振りではなく連続で!動きを固めてくださいまし!」
ソフィエレは剣をつるりと引き抜きながら、力強く聞く者を励ます声で指示を出した。
その足元に倒れる宇宙人。
ヘルメットが壊れ、中の顔をヒマリは見た。
見てしまった。
薄暗いバイザーの中のそれは、ぬるりとした灰色のヘビが何匹も蠢いて見えた。
それは、顔から生えた何本もの灰色の触手だった。
毛穴も凹凸もない、ウナギのような質感の灰色がかった肌。そこに無数に浮かぶ緑の斑点は両生類を彷彿とさせ、ヒマリにも異世界人にも嫌悪感しか感じさせない、やけに有機的な体表。見ただけで吐き気をこらえるのが難しいものだった。
ひい、とヒマリの口から小さな悲鳴が漏れる。
「無理無理、せめて虫系宇宙人のがまだ良かった…」
ヒマリをしてやっと言えた軽口がその程度な程に、その姿はショックだった。
そんな彼女の周りをドカドカと走り回る甲冑の戦士たちに、ヒマリもいつまでも悠長に茫然とはしていられない。気づけばそのまま3人ほど宇宙人は倒されている。あとは一気に崩せれば、と思ったタイミングだ。
「騎士隊、今!」
ソフィエレの合図で、砦の内部に隠していた最後の歩兵が飛び出してくる。中庭中央で円陣を組む宇宙人戦士らへと直線で突撃を開始した。
「…やべえ、ソフィエレさん鬼ヤバいね、シリアリス。あんなの相手に冷静だ。何よりよく挫けないな」
「はい。それよりも下がってください、ヒマリ」
「うん、でも」
「下がってください、ヒマリ。上空に大型UFOが出現しました」
シリアリスの声に、ヒマリは目と口を見開いて空を見上げる。そこには、絶望が浮いていた。
今飛んでいる戦闘機UFOはもちろん、その前のドローンUFOをはるかにしのぐ大きなUFOが浮いていた。
全長40メートルはあろうかという円盤を見上げるヒマリの脳裏には、学校のグラウンドがそのまま浮いているイメージがよぎった。空を覆うというのはこの事だろう。
「シリアリス…あれ、底に戦闘機UFOがはまってる…
戦闘機UFOの母船になってるんだよ、まだあんなのが出てくるとか」
「下がってください!ヒマリ!」
呆然とつぶやくヒマリに、シリアリスの警告が大きく響く。
はっと我に返り慌てて逃げようとするが、逃げ場が見つからない。
「ヒマリはん、下がりよし!」
重さを持たない羽根のようにエルマリが空中を滑りヒマリへと向かいつつ、3本の矢を一度に放った。
その全てがヒマリを狙っていた最後の宇宙人戦士に当たる
―いや、そのバリアーにはじかれる。
「猪口才!」
彼女に珍しい激しい口調。エルマリは腰の矢筒から銀の矢を抜きつがえながら魔導詠唱を唱え、矢を摘まむ以外の3本の指が別の生き物のように踊る。
色とりどりの小さな魔法陣が5つ矢の前に浮かび、それを貫通するように銀の矢が放たれた。
―それが一呼吸の間で行われた。
エルマリをより美しく虹色に照らす輝く矢はしかし、宇宙人戦士のバリアーに弾かれ―
いや、それをエルマリのしかしが上回る。
光る矢がパキンという高い音を立てて光る壁を貫通した。絶対の防御に守られていたパワードスーツの戦士の胸に深々と突き刺さる。冬の薄氷さながらに粉々になったバリアーは空中に舞った。
周囲の異世界の兵士ら全員がどよめき、歓声に沸く。
「ワイバーンスレイヤーだ、と驚いています。
彼女の有名な技のようです」
「すごい、やっぱり割る事は可能なんだ、薄いとはいえ。
でもなんだ、パワードスーツに付随してたのに割れた瞬間にその場に残ったぞ。バグ画面みたい。
―てかエルマリさん、矢でワイバーン倒しちゃうんだ。ヤバいね」
「ヒマリ、今のうちに下がってください」
「あ、うん!」
地上の宇宙人戦士は全て倒せたものの、上空からの攻撃は無論まだ続いている。
ヒマリは砦の中をめざして走りながらちらりと見上げ、そしてそこにある物に驚き、走る足が鈍る。
「―シリアリス、何あのバリアー!ずるい!もう転移火球対策された!
まさか転移距離で魔力が減衰する事まで気づいた?!」
見ただけでもわかる程に、大型UFOのバリアーはドローンUFOのそれとは違っていた。
そのバリアーは大型UFOの外側数メートルはマージンを開けて大型UFO全体を包み込んでいた。すなわち直径数十メートルもの常時展開のバリアー。
今までの法則性から、余程出力のあるジェネレーターかそれに類するものが搭載されている事がわかる。
「ほら!今!爆発したけども!!あれでもアイマル先生の転移火球だよ!
本体外側でやっと爆発だ!あれじゃあ撃墜なんて―」
「ヒマリ!今は黙って!前だけ見て走ってください!」
「うんごめん!走る!
…あ、まずい」
今度こそ走り出したヒマリが、砦全てが真っ白に照らし出された。
仰ぎ見るまでもなかった。
大型UFOの底、中央が強く強く閃光を放っていた。
それはあたかも、超高出力ジェネレーターの力を見せつけるようだった。
何キロも先まで照らす灯台のような光が、砦中庭を白く染め上げる。
大型UFOが浮く真下を白く染め上げる。
そこは、敵の宇宙人戦士らが円陣を組んでいた場所。
そして今は、ソフィエレ、エルマリをはじめ多くの異世界軍が集まっている場所だった。
その彼ら全員が、今まで中庭全てを白くしていた降り注ぐ光は急速に収束し、彼らの中央の一点のみへと細く強くなっていく。
これもまた、ヒマリがアニメやハリウッド映画で見知った光景―
収束するビーム兵器の光―
「みんな!!逃げて!!!」
「ヒマリ駄目です!!戻らないでください!!逃げてください!!」
仲間に向かって叫びながら駆け出すヒマリに、シリアリスも叫ぶ。
今や降り注ぐ光は一筋のサーチライトのように中庭中央一点を刺している。にもかかわらず、目が眩むほどの光として存在しる。しかしその明かりは違い照らす事が目的ではない。その強烈な光はあくまでこれから生まれる衝撃の副産物にすぎず―
光の線ははじけ、闇へと反転した。
一つの塊となったその白い闇の真下に、ヒマリは見た。
全てを焼き尽くす闇の光の真下その場に突然現れた魔導士を。
杖を振り上げ、全員の上に、大型UFOの放つ光にも負けない巨大な虹色の魔法陣を発生させる様子を。
線となった光が再び、全てを包み込んだ。
光が音を飲み込む。
無音の中、静寂の中、虹色の魔法陣が直径20メートルもの光りの筒を受け止めた。
轟音と衝撃波。
誰もが目を開けられないほどの閃光が砦を包み込む。
ヒマリははじけ飛び、砦の壁へとぶつけられた。
その衝撃とは裏腹に、突風は一瞬で吹き止む。
あまりの痛さに泣きそうになりながら、生きている証拠を感じながら、ヒマリはすぐに飛び起きて周りを見る。
「―無事だ、みんな無事みたいだよ!シリアリス!」
「ヒマリ、上を見てください。大型UFOが上昇します」
「ホントだ、あのエネルギーでバリアーが張れなくなったんだ、当然だ。逃げ足の早い―。
あ、そうか、戦闘機UFOも今のID4の極太ビーム撃つ間だけ離れてたのか!」
「はい、そのようです。今のうちに態勢を立て直すことをお勧めします」
「うん、みんなは―」
ヒマリの動きが、また止まった。
UFOの攻撃が止んでいる今。爆発が止まっている今。中庭中央で、誰もがその中心を見下ろしているのが見えた。
「…シリアリス…。アイマル先生が―」
中央で倒れる魔導士を、誰もが見下ろし、この激戦の中で動けなくなっている。
さっきの光の中での光景と、その様子からヒマリは覚る。
あんな奇跡のような巨大なシールド魔法を発動するにはどれほどの無茶が必要なのか。
魔力だけではなく、全ての生命エネルギーが必要だったであろう事を。
「―先生が―」
ヒマリは自分がいる場所が物語の中ではなく現実なんだと強く感じた。
さらに、その現実はより残酷だと思い知らされる。
宇宙人側もここが勝負所と判断したのだろう。砦の兵力半分以上を消耗して、こちらの切り札であった鷲鳥人を壊滅してまでやっと倒した小型の戦闘機UFO数機は、大型UFOから新たに発進した8機の戦闘機UFOにより、さらに数を増やした。
砦を守り続けてきた勇敢な兵士らがそれをただ茫然と見上げ、立ち尽くしている。戦闘機UFOは一斉に、再び砦へと襲い掛かる。
その様子に―
とうとうソフィエレさえ立ち尽くし、言葉を失った。
攻撃の要である、魔術師隊の中心人物魔導士アイマルまで倒れた今。皆に何を言えばいいか、どう動けばいいのか―浮かばなくなった。
常に前へと掲げられていた輝く剣がゆっくりと地面を指すが誰が彼女を責められるのか。
彼女の脳裏に撤退という言葉が浮かんでも、他に作戦などあっただろうか。
「なんだよこんなの!ただの地獄じゃん!余裕だってソフィエレさん!!」
「ヒマリさん…」
信じられないという顔。
そして、きっと閉じられる口。指揮剣を握る彼女の手に力が戻った。
「―倒れたものを担ぎ、全軍砦内に下がって!態勢を立てなおします!」
兵士らは、重い足を動かし、仲間を引きずり、行動を始める。
「ヒマリ、北北西上空を見てください!」
どんな場面でも聞き取りやすい、シリアリスの声がヒマリの耳に入る。
壁に叩きつけられ痛む体を無理やり動かし、砦に入ろうとしていたヒマリが、シリアリスの声に空を見上げた。
「―何?まさかまた援軍…
うわシリアリス!
そうか、ここはファンタジーだよ!ファンタジー世界だったんだよ!」
遠目でもわかるその姿。
ヒマリにも一目で異世界軍の仲間だとわかるその威容。空を切り裂く、その巨大で真っ赤な翼。
「―ドラゴンだ!ドラゴン飛んでるよソフィエレさん!」
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小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
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太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
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聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
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女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
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そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
全裸ドSな女神様もお手上げな幸運の僕が人類を救う異世界転生
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平凡で平和に暮らしていたユウマは、仕事の帰り道、夜空から光り輝く物体が公園に落ちたのを見かけた。
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名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
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平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
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