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第44章 真琴、出口へ向かう
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真琴たちは、エスピラールの天辺に居た。
エスピラールの屋上から、遥か遠くを見渡す。
小さな白い球体が、空に放たれた風船の様に上がっていく。
どこに行くのだろうと球体を眺めていた。
屋上の中央には、煙突のようなでっぱりがあった。
そこから、下に居た赤ん坊は浮かんでいく。
そして、別世界を目指し上っていく。
小さな白い球体には、赤ん坊が入っている。
上空から自分を生んでくれる親を探す。
そして、その親の元へと向かう。
幸せになれればいいねと願わずにはいられない。
絢音と響介が並んでそれを見ていた。
「私たちも、ああやって生まれるのかしら」
「そうだな……きっと、会えるよ……そう信じているから」
「わたしも……」
二人ともお互いの顔を忘れない様に見つめ、再び、天空の白い球体を見つめる。
「バルバルスだ!」響介が叫ぶ。
バルバルスは、エスピラールのまわりを飛び回り、こちらの様子を伺っている。
「大丈夫です。
彼は、エスピラールに近付くことはできないのです。
真琴に追いつくことはできない」
と、パイロが教えてくれた。
その言葉を真琴は、聞き逃さなかった。
僕に追いつくことができない?
真琴の頭の中に何だろうと疑問符が浮かぶ。
僕は、ここに居るし、飛んでいない。
僕が飛ぶのか?
ここから?
真琴が考えている間、響介と絢音は、バルバルスを目で追っていた。
「さてと、君を元の世界に戻しとするか」
パイロは真琴を見つめる。
「お願いします……どうすればいいのですか?」と真琴。
「ここから、飛び降りなさい」パイロは、下を指さした。
「ハァ?……飛び降りる?……」真琴は、下を見つめた。
先ほど考えていたことが、現実になった。
「そう、君は生きてるからね。上から出られない」
パイロが天空を指差す。
真琴は指差された天空を見上げる。
真琴は動こうとはしない。
実は、動けない。
真琴は、高所恐怖症なのだから。
「俺が先に……アレ?」
と言って響介が屋上から飛び降りようとしたが、浮いている。
絢音も飛び降りようとしたが、響介と同じ様に浮いていた。
「降りられないよ……
君たちは、死んでいるんだから……
まだ準備が出来ていないんだ。
もう少しすると上に行けるさ。あの赤ん坊と同じにね」
パイロは、白い球体を指さす。
「あっ、赤ん坊に見えるけど、実際は別の姿をしている。
君たちにわかりやすいように、イメージとして赤ん坊に見えるようにしておいたよ。
別の世界では、身体を得ることが出来るが、選べないんだ。
初めて別の世界に行く赤ん坊は、頭の中に宇宙を入れられる。
分かりやすく言えば、得意なものだな。
スポーツとか音楽や小説とかさ。
生まれた時、頭の中の何が入っていたか忘れてしまう。
生まれる時は、苦しいからね。
育って間に、気づくかもしれない。
それに気づけた者は、すばらしい力を発揮するようだ。
君たちは、初めてじゃないので、宇宙は頭の中に入ってるよ。
なんとなく自分に向いているもの分かってるだろ」
パイロは、わかった?と真琴たちを見た。
「準備が出来てないからか……」響介と絢音は、呟く。
跳ねてみたり、寝そべってみたり、色々試していた。
確かに落ちない。
バルバルスもこちらに近づけないようだ。
真琴は、響介と絢音を見ていて、自分も出来るではないかと思った。
「えい」と真琴が屋上から、外にジャンプした。
「あああ!」
パイロが叫んだが間に合わなかった。
真琴は、そのまま落ちて行った。
「お前は、ダメだって……生きてるんだから」パイロが叫ぶ。
「真琴ぉ!何やっているんだぁ!」響介が真琴に手を伸ばすが届かない。
「だいじょうぶぅー!」絢音も慌てて声をかけたが、真琴はすごい勢いで落ちて行く。
「あいつ、何かってにやってるんだ。挨拶もしないで」と響介。
「バカっ」絢音も落ちて行く真琴を目で追った。
「ああ、行っちゃった。話を聞かずにさ」パイロが響介と絢音の顔を見た。
「真琴は、大丈夫か?
落ちちゃったけど……どこに向かっているんだ?」響介がパイロに詰め寄る。
「地下鉄。君たちは、地下鉄から来ただろ。
元の世界に行きの電車に向かって落ちて行ったんだ。
ホームは反対側だけど」
パイロは、慌てている二人と逆に落ち着いた口調だった。
落ちていく真琴を影が覆った。
「バルバルスだ!」響介が叫ぶ。
「大丈夫、バルバルスには、追いつく事は出来ない」
パイロが呟く。
真琴をバルバルスが追いかける。
パイロが言うように真琴の方が早かった。
バルバルスがどんどん離されていく。
「ほらね、追いつけないだろ」パイロが言う。
響介と絢音は、その様子を拳を握りながら眺めていた。
自分たちには、何もできない。
「君たちもそろそろ準備した方いい……消えかかっている」
パイロの言葉に、響介と絢音がお互いに姿を確認した。
確かに、透けてきている。
「さぁ、下に戻ろう」
パイロは、扉を開けた。
響介と絢音もオッコーンと言う声のする方に下りて行った。
エスピラールの屋上から、遥か遠くを見渡す。
小さな白い球体が、空に放たれた風船の様に上がっていく。
どこに行くのだろうと球体を眺めていた。
屋上の中央には、煙突のようなでっぱりがあった。
そこから、下に居た赤ん坊は浮かんでいく。
そして、別世界を目指し上っていく。
小さな白い球体には、赤ん坊が入っている。
上空から自分を生んでくれる親を探す。
そして、その親の元へと向かう。
幸せになれればいいねと願わずにはいられない。
絢音と響介が並んでそれを見ていた。
「私たちも、ああやって生まれるのかしら」
「そうだな……きっと、会えるよ……そう信じているから」
「わたしも……」
二人ともお互いの顔を忘れない様に見つめ、再び、天空の白い球体を見つめる。
「バルバルスだ!」響介が叫ぶ。
バルバルスは、エスピラールのまわりを飛び回り、こちらの様子を伺っている。
「大丈夫です。
彼は、エスピラールに近付くことはできないのです。
真琴に追いつくことはできない」
と、パイロが教えてくれた。
その言葉を真琴は、聞き逃さなかった。
僕に追いつくことができない?
真琴の頭の中に何だろうと疑問符が浮かぶ。
僕は、ここに居るし、飛んでいない。
僕が飛ぶのか?
ここから?
真琴が考えている間、響介と絢音は、バルバルスを目で追っていた。
「さてと、君を元の世界に戻しとするか」
パイロは真琴を見つめる。
「お願いします……どうすればいいのですか?」と真琴。
「ここから、飛び降りなさい」パイロは、下を指さした。
「ハァ?……飛び降りる?……」真琴は、下を見つめた。
先ほど考えていたことが、現実になった。
「そう、君は生きてるからね。上から出られない」
パイロが天空を指差す。
真琴は指差された天空を見上げる。
真琴は動こうとはしない。
実は、動けない。
真琴は、高所恐怖症なのだから。
「俺が先に……アレ?」
と言って響介が屋上から飛び降りようとしたが、浮いている。
絢音も飛び降りようとしたが、響介と同じ様に浮いていた。
「降りられないよ……
君たちは、死んでいるんだから……
まだ準備が出来ていないんだ。
もう少しすると上に行けるさ。あの赤ん坊と同じにね」
パイロは、白い球体を指さす。
「あっ、赤ん坊に見えるけど、実際は別の姿をしている。
君たちにわかりやすいように、イメージとして赤ん坊に見えるようにしておいたよ。
別の世界では、身体を得ることが出来るが、選べないんだ。
初めて別の世界に行く赤ん坊は、頭の中に宇宙を入れられる。
分かりやすく言えば、得意なものだな。
スポーツとか音楽や小説とかさ。
生まれた時、頭の中の何が入っていたか忘れてしまう。
生まれる時は、苦しいからね。
育って間に、気づくかもしれない。
それに気づけた者は、すばらしい力を発揮するようだ。
君たちは、初めてじゃないので、宇宙は頭の中に入ってるよ。
なんとなく自分に向いているもの分かってるだろ」
パイロは、わかった?と真琴たちを見た。
「準備が出来てないからか……」響介と絢音は、呟く。
跳ねてみたり、寝そべってみたり、色々試していた。
確かに落ちない。
バルバルスもこちらに近づけないようだ。
真琴は、響介と絢音を見ていて、自分も出来るではないかと思った。
「えい」と真琴が屋上から、外にジャンプした。
「あああ!」
パイロが叫んだが間に合わなかった。
真琴は、そのまま落ちて行った。
「お前は、ダメだって……生きてるんだから」パイロが叫ぶ。
「真琴ぉ!何やっているんだぁ!」響介が真琴に手を伸ばすが届かない。
「だいじょうぶぅー!」絢音も慌てて声をかけたが、真琴はすごい勢いで落ちて行く。
「あいつ、何かってにやってるんだ。挨拶もしないで」と響介。
「バカっ」絢音も落ちて行く真琴を目で追った。
「ああ、行っちゃった。話を聞かずにさ」パイロが響介と絢音の顔を見た。
「真琴は、大丈夫か?
落ちちゃったけど……どこに向かっているんだ?」響介がパイロに詰め寄る。
「地下鉄。君たちは、地下鉄から来ただろ。
元の世界に行きの電車に向かって落ちて行ったんだ。
ホームは反対側だけど」
パイロは、慌てている二人と逆に落ち着いた口調だった。
落ちていく真琴を影が覆った。
「バルバルスだ!」響介が叫ぶ。
「大丈夫、バルバルスには、追いつく事は出来ない」
パイロが呟く。
真琴をバルバルスが追いかける。
パイロが言うように真琴の方が早かった。
バルバルスがどんどん離されていく。
「ほらね、追いつけないだろ」パイロが言う。
響介と絢音は、その様子を拳を握りながら眺めていた。
自分たちには、何もできない。
「君たちもそろそろ準備した方いい……消えかかっている」
パイロの言葉に、響介と絢音がお互いに姿を確認した。
確かに、透けてきている。
「さぁ、下に戻ろう」
パイロは、扉を開けた。
響介と絢音もオッコーンと言う声のする方に下りて行った。
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