君の頭の中にも宇宙が入っているんだ

リュウ

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第36章 援軍あり

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  バルバルス二体が、絢音と響介の前に立ちはだかる。
 大きな拳を振り上げる。
 あの硬い拳をまともに受けてはいけないと咄嗟に手を前に出した。
 出したつもりだった。

「あっ」
 響介が思わず声を上げた。二人の手は消えていた。

 その時、背中に壁からの振動を感じていた。

「来た!」ウビークエが、叫ぶ。
 後ろの壁から、線状の光が次々と漏れ出た。
 放射状の光だ。
 真琴たちの後ろの壁に、直径三メートルの円が、その線状の光で描かれた。
 ゆっくりと壁に穴が開き、部屋の外側に崩れ去った。
 外からの光が眩しい。

 その光の中に、二人の影が見えた。

 絢音と響介に大きな拳を振り下ろし始めたバルバルスの腕を閃光が貫く。
 バルバルスの大きく太い腕がその場に落ちた。

 バルバルスは、煙の出る自分の腕を眺め、自分の身に何が起こったか理解しょうとしていた。

 壁の円形に穴から現れたのは、コロニクスとロブスだった。
「助けに来たぞ!、まかせろ!」
 真琴たちとバルバルスの間に、コロニクスとロブスが立ちはだかる。
 若者は、真琴たちに手を軽く上げて挨拶をした。
 この世界に来た時にも助けてくれた事が思い出された。
 彼は、いつも助けに来てくれる。彼が居るなら大丈夫だ。
「なぜ、この場所がわかった?」と真琴が呟いた。
 それを聞いたウビークエが、真琴に翻訳機を向けた。
 翻訳機の画面のコロニクスのアイコンが、赤く点滅している。
 そうか、お前かと真琴はウビークエとグータッチをした。
 コロニクスの手に、背丈ぐらいの長さの杖が握られていた。
 杖を高くかざすと、杖の上端についている玉が光る。
 コロニクスが、力を込めて杖を床に差し込む。
 玉から、閃光が発せられた。
 その途端、ハエのような小型ドローンは、次々と床に落ちて行った。
 バルバルスは、古代遺跡の石像のように凍り付いたように動きを止めた。
「皆、その穴から出ろ!」若者が叫んだ。
 外には、白い塔で移動に使われる透明な球体が待機していた。
 みんな、次々と乗り込んでいく。
 パイロとオピフが、動きを止めたノウムを見つめていた。
「パイロ、行くぞ!」
 真琴がパイロとオピフの襟に手をかけ、力ずくで引きずって行く。
 二人は、引きずられながら、ノウムを見送る。

 真琴たちは、コロニクスとロブスによって開けられた壁の穴から、白い塔で移動に使われる透明な球体に乗り込んだ。
 部屋には、動きを止めたバルバルスとハエ型ドローンが散らばっている。
 そして、ノウムの残骸。

 球体は、ゆっくりと銀の塔を離れた。
 銀の塔の全体が見える。
 穴が開いた場所は、銀の塔頂上から少し下がったところだった。
 綺麗な銀の塔に開けられた穴だけが目立った。



 その頃、銀の創造主の部屋に伝令が届いた
 バルバルスの奇襲の結果が、銀の創造主に伝えていた。
「バルバルス、小型ドローンが全滅しました。
 白い塔から援軍が来て、全員連れていかれました」
 銀の創造主は、じっとしている。
 膝に置いた拳は、ギシギシと音をたてて強く握られ、煙が出ている。

「創造主様、奇襲は失敗です……バルバルスは」
「分かっている!」銀の創造主は、話を遮った。

「スーパーバルバルスの完成を急げ! 私が直に操縦できるようにしろ!」

「白い塔に攻め込むのですか?それは……」
 銀の創造主は鋭い眼光で睨みつける。
「それは、無理だろう……
 あそこには手出しできないのは、私も知っている。
 あの爺が外界から招待しようとした三人を一人に減らしたのだ。
 我々に出来ないことはない。
 残った一人を外界へのメッセンジャーをこの世界から、出さなければ良いのだ。
 何処でもよい、元の世界に戻してはならぬ。
 阻止するのだ!」
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