上 下
2 / 2

第1話 波乱万丈の日常の始まり

しおりを挟む
 あの事故の後、私は守護兵の読んだ高級な馬車に乗せられた。まだ話の整理がついておらず車内で頭を悩ませた。なぜあの令嬢さんと入れ替わってしまったのか、原因は一つ、令嬢さんと曲がり角で衝突したことだと思われる。しかしそんな事だけで入れ替わるわけないし何かしら外部からの力が加わったのだろうか。理由は不明。

 馬車は突然大きな屋敷の前で停車し、扉が開けられた。多分ここがあの令嬢さんの屋敷なのだろう。屋敷は4階建てで、玄関に向かうまでの道にどこかで見たことのあるような銅像が建てられている。庭は地平線が見えるほど広く、芝が綺麗に整備されている。

 大きな屋敷……ここでこれから有意義に日々生活して行くのかぁ……

 目の前の景色に感嘆していると、兵士に玄関へ促された。履き慣れてないハイヒールに少し足元がもたもたしながら急ぎ足で歩を進めた。

「お嬢様、もう今日のところはご予定はありませんのでごゆっくりお過ごしください。何か先ほどのところで痛められた所がありましたら何なりとお申し付けください。」

 守護兵はそう言うと、家の奥へと行ってしまった。私はボーっとただ家のホールで佇んでいた。そう、私にはとっても重要な問題があったのだ。令嬢さんの執事らしき人に質問してみる。

「あのー…私の部屋ってどこですか?」

 執事は予想外すぎる質問に目を丸くして顔を覗き込んできた。

「お嬢様どうかなさいましたか?今日、あのメイドとぶつかってから何か変ですよ?」

 うぅ、これは面倒くさい展開になってしまったなぁ……

 恐らくここで「私実はあなたの令嬢さんと入れ替わってるんです!」とか言ってみても今さっきの言葉がそっくりそのまま返ってくるだけだろうし、これから今の謙った感じで過ごしてみても、令嬢さんの品格はガタ落ちだろう。ならば、これでいくしかない。

「うるさいっ‼︎つべこべ言わず案内しろっ‼︎」

 これだ。今ある悪い令嬢さんの知識を全て振り絞ってそっくりに演じるのだ。正体がもしバレてしまったら即処される身となってしまう。これからこの身で生きていくにはその方法しかない。

 執事は戸惑った様子で黙りながらニーナを令嬢の部屋に案内した。部屋まで来るのに、色々な骨董品を見てきたが多分どれも数百万、数千万する代物だろう。だが、そんな物を易々と変えるほどこの都市中を牛耳っているのだろう。

 ニーナは案内された部屋の中へ入ると、まず目に入ったのはある一つの写真だった。
それはニーナが目一杯腕を広げた長さくらい大きく、とても綺麗な額縁に埃一つなく飾ってあった。

 そう…それは…

 ニーナが従っていた領主のイケメンさんだった。



 
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

もっちゃん
2018.12.27 もっちゃん

続きを見たいです‼️
お願いしますm(_ _)m

解除
おーいお茶
2018.05.04 おーいお茶

とても読みやすくいいテンポで話が進んでいると思います。次の更新を楽しみに待っています。

解除

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。