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最終話 ロドリゲス
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「やあイザベル。婚約解消おめでとう」
「来てくれたんですね、ロドリゲス様!」
ロドリゲス商会のロドリゲスは創立者の名前で、代々跡取りがその名前を受け継いでいます。
ラミレス様と婚約解消した日に王都の伯爵邸へ私を訪ねてきてくださったロドリゲス様は、今の女性会頭の年齢の離れた弟です。
彼の姉は船で世界を回って貿易をしていたご両親が亡くなった後、ひとりで商会を切り盛りしながら弟を育て上げたのです。
いいえ、本当はひとりではありませんでした。
彼女には愛する男性がいました。彼女の元夫で元役者の指名手配犯ペカドではありません。
ペカドは、ずっと彼女を支えていた婚約者がご両親と同じように海で行方不明になったときに、悲しみ案じる心に忍び込んだだけなのです。
残念なことに婚約者が帰って来たのは、彼女がペカドと結婚した後でした。
「来るに決まってるだろ? ちゃんと君が婚約解消する前に会ったりしたら、僕達のほうが不貞扱いされちゃうから、この日をずっと待っていたんだよ!」
「会っても不貞扱いされるようなことをしなければ良いのではないですか?」
「我慢出来るわけないじゃん!」
ロドリゲス様は笑って、私を抱き締めてキスを落としてきました。
この一年間、前回の記憶を活かして彼の姉と交渉し、ペカドが横領している証拠を探しつつ、脅されている取り引き相手を調査してきました。ロドリゲス様はいつからか、そんな私に力を貸してくださるようになりました。
そして、私達は恋に落ちたのです。
もちろんラミレス様と婚約していたので、不貞扱いされるようなことはしていません。
キスしたのも今が初めてです。
ロドリゲス様の姉は、婿のペカドによる不祥事の責任を取るという形で、商会の会頭を辞める予定です。実際は本来の婚約者と再婚して蜜月を楽しむだけですが。新しい会頭はロドリゲス様で、私は彼の妻となります。
「……侯爵子息さあ、明日辺り君との再構築を願いに来たりしてね」
「どうしてですか?」
「いや、時間が戻ってるのってさ、たぶん侯爵子息の母君の力だろう」
「そうですね、形見の蛇の目が色を失っていましたもの。でも二度目のときのラミレス様は一度目のことを覚えていなかったと思いますよ?」
「イザベルは自分が幸せになるためだから忘れなかったけど、侯爵子息は記憶がなくても真面な行動を取れるようになりなさいって、母君が制限かけてるんじゃないかなあ。制限があるとしたら愛人関係だと思うし、ギリョティナとかいう女、ペカドともつながってたからアイツが指名手配されてる今、なんかありそうだし」
ロドリゲス様には、私が時間を繰り返していることはお伝えしています。
「どうでしょうね。でも来られたとしても、ラミレス様が、私に愛される日は来ないです、と言ってお断りするだけですよ。だって今の私が愛しているのはロドリゲス様だけですもの」
「ありがとう! 僕もイザベルを愛してるよ!」
「うふふ」
「でも心配だから明日も訪ねてきて良い?」
「はい、嬉しいです」
「なんならもう結婚しちゃう?」
「それも素敵ですね」
三度目の私は、きっと幸せになれることでしょう。
後は色を失った蛇の目が時間を戻さないでいてくれることを祈るだけです。
まあ本当は心のどこかで、大丈夫だと確信しているのですけれどね。お義父様はペカドの悪事から解放されましたし、お義母様もこれ以上はラミレス様を甘やかさないと思うのです。
「来てくれたんですね、ロドリゲス様!」
ロドリゲス商会のロドリゲスは創立者の名前で、代々跡取りがその名前を受け継いでいます。
ラミレス様と婚約解消した日に王都の伯爵邸へ私を訪ねてきてくださったロドリゲス様は、今の女性会頭の年齢の離れた弟です。
彼の姉は船で世界を回って貿易をしていたご両親が亡くなった後、ひとりで商会を切り盛りしながら弟を育て上げたのです。
いいえ、本当はひとりではありませんでした。
彼女には愛する男性がいました。彼女の元夫で元役者の指名手配犯ペカドではありません。
ペカドは、ずっと彼女を支えていた婚約者がご両親と同じように海で行方不明になったときに、悲しみ案じる心に忍び込んだだけなのです。
残念なことに婚約者が帰って来たのは、彼女がペカドと結婚した後でした。
「来るに決まってるだろ? ちゃんと君が婚約解消する前に会ったりしたら、僕達のほうが不貞扱いされちゃうから、この日をずっと待っていたんだよ!」
「会っても不貞扱いされるようなことをしなければ良いのではないですか?」
「我慢出来るわけないじゃん!」
ロドリゲス様は笑って、私を抱き締めてキスを落としてきました。
この一年間、前回の記憶を活かして彼の姉と交渉し、ペカドが横領している証拠を探しつつ、脅されている取り引き相手を調査してきました。ロドリゲス様はいつからか、そんな私に力を貸してくださるようになりました。
そして、私達は恋に落ちたのです。
もちろんラミレス様と婚約していたので、不貞扱いされるようなことはしていません。
キスしたのも今が初めてです。
ロドリゲス様の姉は、婿のペカドによる不祥事の責任を取るという形で、商会の会頭を辞める予定です。実際は本来の婚約者と再婚して蜜月を楽しむだけですが。新しい会頭はロドリゲス様で、私は彼の妻となります。
「……侯爵子息さあ、明日辺り君との再構築を願いに来たりしてね」
「どうしてですか?」
「いや、時間が戻ってるのってさ、たぶん侯爵子息の母君の力だろう」
「そうですね、形見の蛇の目が色を失っていましたもの。でも二度目のときのラミレス様は一度目のことを覚えていなかったと思いますよ?」
「イザベルは自分が幸せになるためだから忘れなかったけど、侯爵子息は記憶がなくても真面な行動を取れるようになりなさいって、母君が制限かけてるんじゃないかなあ。制限があるとしたら愛人関係だと思うし、ギリョティナとかいう女、ペカドともつながってたからアイツが指名手配されてる今、なんかありそうだし」
ロドリゲス様には、私が時間を繰り返していることはお伝えしています。
「どうでしょうね。でも来られたとしても、ラミレス様が、私に愛される日は来ないです、と言ってお断りするだけですよ。だって今の私が愛しているのはロドリゲス様だけですもの」
「ありがとう! 僕もイザベルを愛してるよ!」
「うふふ」
「でも心配だから明日も訪ねてきて良い?」
「はい、嬉しいです」
「なんならもう結婚しちゃう?」
「それも素敵ですね」
三度目の私は、きっと幸せになれることでしょう。
後は色を失った蛇の目が時間を戻さないでいてくれることを祈るだけです。
まあ本当は心のどこかで、大丈夫だと確信しているのですけれどね。お義父様はペカドの悪事から解放されましたし、お義母様もこれ以上はラミレス様を甘やかさないと思うのです。
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