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第三話 私の求婚者様達は諦めない。
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魔力食い目当てなだけでなく、私に惚れている?
シャルラハロート殿下のお言葉に目を見張る。
「魔力食いの力のせいで魔道を使えないお前が、学園の訓練場で体を鍛え体術の型を繰り返している姿はとても……綺麗だった」
シャルラハロート殿下は浅黒い肌を赤く染めて、私から顔を背けた。
そういえば、魔道学園の訓練場でよく彼と会ったっけ。
ゾンネンズゥステーム連邦は魔力が強い実り豊かな大陸にある代わり、モンスターの大氾濫が起こりやすい。グランツ様の魔力を食らうためには、一緒に大氾濫が発生している地域へ行かなくてはならない。魔道を使えない私が足手纏いにならないよう体術の修業をしている姿を見られていたのね。
「アプリル嬢」
「きゃ」
ズィルバー殿下が私の手を取っていた。
この方は接触が多い。
ほかの方なら無礼だと感じ、気味悪くさえ思うだろうに、彼の場合は自然で心地良く感じるのが困ったものだ。ズィルバー殿下が耳元で囁くようにして言う。
「私もあなたを見ていました。近くに陣取って睨みつけてくるシャルラハロート殿が鬱陶しいので校舎の窓からでしたが。体術の修業をしているあなたは踊っているようで、いつか一緒に踊りたいと思っていました。今夜その望みが叶って思ったのです。もっとあなたと踊りたいと。……ベッドの上でもね」
「はいはーい。ズィルバーの言葉なんか聞いてたら耳が腐っちゃうよ、アプリル嬢。僕はねー、自分が魔力食いで魔道が使えないからこそ、すべての属性魔道を学んでいた君が好き。放課後の図書室でよく話したよね? もっと話したい。魔道以外のことも。君の好きなものも嫌いなものも知りたいな」
アメテュスト大公の微笑みは、魔道が使えないことをグランツ様に罵られて、せめて知識だけは得ようと図書室で学んでいた私を導いてくれたときと同じで温かい。
「余はゾンネンズゥステーム連邦六王国の人間として魔道学園に在籍はしていたが、国王としての仕事が忙しくて、ほとんど登校できていなかった。アプリル嬢と顔を合わせて話すのは、今日が初めてだ。この会場に入ったとき、君を見て時間が止まった。息が出来なくて苦しくて、でも信じられないほど幸せな気分になって、見つめているうちに出遅れてダンスに誘うのが最後になってしまった」
ラピスラーツリ陛下の瞳が熱く私を射る。
まさか……そんなはずはない。
魔道学園で女生徒の憧れの的だった、この方達が私を好きだなんて。
ゾンネンズゥステーム連邦の六王国、エーデル様のザトゥルン王国とグランツ様のヴェーヌス王国を除く四王国の重鎮が、私を囲んで再び跪く。
「「「「アプリル嬢」」」」
シャルラハロート殿下が、ズィルバー殿下が、アメテュスト大公が、ラピスラーツリ陛下が立ち上がり手を差し伸べてくる。
「俺を」
「私を」
「僕を」
「余を」
四人が声を揃えた。
「「「「知ってもらうために、まずはラストダンスを踊ってください!」」」」
そんなこと、言われても……
この方達が本当に私を好きなのだとしても私はヴェーヌス王国の民だ。
グランツ様の態度があまりに酷かったので、国王陛下には彼が婚約解消を言い出したときは受け入れてもいいと言われてはいる。でもだからって、ここで他国の重鎮を婚姻相手として選ぶなんてできっこない。いいえ、ラストダンスを踊るだけならいいのかしら。
救いを求めてエーデル様を見たけれど、楽しそうに微笑みながら見ているだけだ。
……ど、ど、どうしよう。幼いころから婚約者のグランツ様には冷たい態度を取られていて、それでも婚約を解消するわけにはいかないことをわかっていたから、すべてを諦めた私は無表情になってしまっていた。
だけど、心の中はただの少女なのだ。恋ひとつしたことのない未熟な少女だ。
溜息もつけないくらい、私は混乱していた。
シャルラハロート殿下のお言葉に目を見張る。
「魔力食いの力のせいで魔道を使えないお前が、学園の訓練場で体を鍛え体術の型を繰り返している姿はとても……綺麗だった」
シャルラハロート殿下は浅黒い肌を赤く染めて、私から顔を背けた。
そういえば、魔道学園の訓練場でよく彼と会ったっけ。
ゾンネンズゥステーム連邦は魔力が強い実り豊かな大陸にある代わり、モンスターの大氾濫が起こりやすい。グランツ様の魔力を食らうためには、一緒に大氾濫が発生している地域へ行かなくてはならない。魔道を使えない私が足手纏いにならないよう体術の修業をしている姿を見られていたのね。
「アプリル嬢」
「きゃ」
ズィルバー殿下が私の手を取っていた。
この方は接触が多い。
ほかの方なら無礼だと感じ、気味悪くさえ思うだろうに、彼の場合は自然で心地良く感じるのが困ったものだ。ズィルバー殿下が耳元で囁くようにして言う。
「私もあなたを見ていました。近くに陣取って睨みつけてくるシャルラハロート殿が鬱陶しいので校舎の窓からでしたが。体術の修業をしているあなたは踊っているようで、いつか一緒に踊りたいと思っていました。今夜その望みが叶って思ったのです。もっとあなたと踊りたいと。……ベッドの上でもね」
「はいはーい。ズィルバーの言葉なんか聞いてたら耳が腐っちゃうよ、アプリル嬢。僕はねー、自分が魔力食いで魔道が使えないからこそ、すべての属性魔道を学んでいた君が好き。放課後の図書室でよく話したよね? もっと話したい。魔道以外のことも。君の好きなものも嫌いなものも知りたいな」
アメテュスト大公の微笑みは、魔道が使えないことをグランツ様に罵られて、せめて知識だけは得ようと図書室で学んでいた私を導いてくれたときと同じで温かい。
「余はゾンネンズゥステーム連邦六王国の人間として魔道学園に在籍はしていたが、国王としての仕事が忙しくて、ほとんど登校できていなかった。アプリル嬢と顔を合わせて話すのは、今日が初めてだ。この会場に入ったとき、君を見て時間が止まった。息が出来なくて苦しくて、でも信じられないほど幸せな気分になって、見つめているうちに出遅れてダンスに誘うのが最後になってしまった」
ラピスラーツリ陛下の瞳が熱く私を射る。
まさか……そんなはずはない。
魔道学園で女生徒の憧れの的だった、この方達が私を好きだなんて。
ゾンネンズゥステーム連邦の六王国、エーデル様のザトゥルン王国とグランツ様のヴェーヌス王国を除く四王国の重鎮が、私を囲んで再び跪く。
「「「「アプリル嬢」」」」
シャルラハロート殿下が、ズィルバー殿下が、アメテュスト大公が、ラピスラーツリ陛下が立ち上がり手を差し伸べてくる。
「俺を」
「私を」
「僕を」
「余を」
四人が声を揃えた。
「「「「知ってもらうために、まずはラストダンスを踊ってください!」」」」
そんなこと、言われても……
この方達が本当に私を好きなのだとしても私はヴェーヌス王国の民だ。
グランツ様の態度があまりに酷かったので、国王陛下には彼が婚約解消を言い出したときは受け入れてもいいと言われてはいる。でもだからって、ここで他国の重鎮を婚姻相手として選ぶなんてできっこない。いいえ、ラストダンスを踊るだけならいいのかしら。
救いを求めてエーデル様を見たけれど、楽しそうに微笑みながら見ているだけだ。
……ど、ど、どうしよう。幼いころから婚約者のグランツ様には冷たい態度を取られていて、それでも婚約を解消するわけにはいかないことをわかっていたから、すべてを諦めた私は無表情になってしまっていた。
だけど、心の中はただの少女なのだ。恋ひとつしたことのない未熟な少女だ。
溜息もつけないくらい、私は混乱していた。
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