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二匹目!+一羽目
41・モフモフわんこは帰ってきた。
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アパートへ戻ると、大家さんはいつものように家庭菜園の世話をしていた。
「お帰りなさい、晴ちゃん。……あら、タロ君のお友達?」
「えっと、あの……す、すいません! この子も飼っていいでしょうか?」
「わふ!」
「……きゅうん……」
お願いと同時に下げた頭を上げてみれば、大家さんは困惑した表情だ。
「晴ちゃんはタロ君のお散歩に行ったと思ってたんだけど、その子をもらいに行ってたの?」
「あ、いえ、急遽もらうことになって、飼い主がいなくなって、そこではこれ以上飼えないって言うので……」
ウソは言ってない。
飼い主がダンジョンマスターで、そこがサンゴのダンジョンだということを伏せているだけだ。
「そうなの。わかったわ、いいわよ」
「わふ!」
「きゃふ!」
「……お、大家さん。ありがたいですけど、そんなに簡単に許していいんですか?」
「うちは最初からペット可よ?」
「そうですけど」
「それにね」
大家さんはにっこり笑って、麦わら帽子を軽く上げた。
この前わたしがプレゼントした帽子を被っている。
春人君や冬人君にあげたものよりシンプルになっているものの、よく見るとやっぱり犬に見える帽子だ。
「この前袖の下、じゃなかった、帽子の下ももらったし、晴ちゃんはお部屋も綺麗に使ってくれてるからねえ。反対する理由はないわ。反対してお引越しされたら、寂しくなってしまうし」
「わふわふ」
「きゃふきゃふ」
「ありがとうございます! お部屋は大事に使わせてもらいますので」
「信じてるわ。……この子はスピッツ? ポメラニアンかしら?」
狼とは言えないので「よくわからないんです」と誤魔化す。
「初めまして。お隣の大家ですよ」
麦わら帽子を降ろし、大家さんがニコちゃんに顔を近づけた。
ちょっとドキドキする。
ニコちゃんはちょっと狂暴、というか臆病なのだ。
五年間の暴走生活のせいかもしれない。
アパートに帰りつくまで、人とすれ違うたびに歯茎を剥き出して唸るから困ったよ。
大家さんと会ってからは歯茎を剥き出してないし、唸り声も上げてないから大丈夫だろう。
「きゃふ」
「あらやだ」
「ご、ごめんなさい!」
吠えたり噛みついたりはしなかったが、ニコちゃんは大家さんの鼻の頭をぺろりと舐めた。
「いいのよ。ふふふ、ご近所さんとして認めてもらえたみたいね」
「わふわふ(大家は群れの仲間なのだ)」
「きゃふきゃふ(タロ兄様の言うことに間違いはないのですわ)」
大家さんを認めた理由を念話で教えてくれる。
「えっと、名前はニコちゃんです。二匹目なので」
「ニコちゃんなの。可愛いお名前ねえ。晴ちゃん、撫でてもいいかしら」
「は、はい」
「きゃう」
差し出された大家さんの手の甲に、ニコちゃんが前脚を乗せる。
賢いわねえと褒められて、タロ君がドヤ顔をしていた。
いやタロ君、今のはお手じゃなくて撫でようとしてたから。
「ふふっ」
改めてニコちゃんを撫でて、大家さんは相好を崩した。
いつもタロ君のことも撫でてくれているが、こんなに嬉しそうな顔は初めてだ。
もしかして大家さんは、短毛よりも長毛派だったのだろうか。わたしは犬ならどちらでも派だ。
「すべすべでフワフワねえ」
タロ君はさらにドヤ顔になった。
妹分のニコちゃんが褒められると嬉しいみたい。
「きゃふきゃふ」
しばらく撫でられているうちに、ニコちゃんはすっかり大家さんに懐いた。
この分なら、明日動物病院へ行っても大丈夫かな。
春人君冬人君に紹介するのは、明日動物病院へ行ってからに──
「あたらしい、わんこ?」
視線を感じて振り向くと、冬人君に見上げられていた。
「こら、ふー。勝手に外に出ちゃ……ハルちゃん、その子新しい犬?」
「あらまあ、あらまあ」
……後でちゃんと手を洗ってもらえばいいかな。
本当は抜け毛もないモンスターだから普通の犬とは違うしね。
ニコちゃんは葉山さん一家にも懐きました。あ、お父さんも勤務先のケーキ屋さんの定休日で家にいたのです。
「お帰りなさい、晴ちゃん。……あら、タロ君のお友達?」
「えっと、あの……す、すいません! この子も飼っていいでしょうか?」
「わふ!」
「……きゅうん……」
お願いと同時に下げた頭を上げてみれば、大家さんは困惑した表情だ。
「晴ちゃんはタロ君のお散歩に行ったと思ってたんだけど、その子をもらいに行ってたの?」
「あ、いえ、急遽もらうことになって、飼い主がいなくなって、そこではこれ以上飼えないって言うので……」
ウソは言ってない。
飼い主がダンジョンマスターで、そこがサンゴのダンジョンだということを伏せているだけだ。
「そうなの。わかったわ、いいわよ」
「わふ!」
「きゃふ!」
「……お、大家さん。ありがたいですけど、そんなに簡単に許していいんですか?」
「うちは最初からペット可よ?」
「そうですけど」
「それにね」
大家さんはにっこり笑って、麦わら帽子を軽く上げた。
この前わたしがプレゼントした帽子を被っている。
春人君や冬人君にあげたものよりシンプルになっているものの、よく見るとやっぱり犬に見える帽子だ。
「この前袖の下、じゃなかった、帽子の下ももらったし、晴ちゃんはお部屋も綺麗に使ってくれてるからねえ。反対する理由はないわ。反対してお引越しされたら、寂しくなってしまうし」
「わふわふ」
「きゃふきゃふ」
「ありがとうございます! お部屋は大事に使わせてもらいますので」
「信じてるわ。……この子はスピッツ? ポメラニアンかしら?」
狼とは言えないので「よくわからないんです」と誤魔化す。
「初めまして。お隣の大家ですよ」
麦わら帽子を降ろし、大家さんがニコちゃんに顔を近づけた。
ちょっとドキドキする。
ニコちゃんはちょっと狂暴、というか臆病なのだ。
五年間の暴走生活のせいかもしれない。
アパートに帰りつくまで、人とすれ違うたびに歯茎を剥き出して唸るから困ったよ。
大家さんと会ってからは歯茎を剥き出してないし、唸り声も上げてないから大丈夫だろう。
「きゃふ」
「あらやだ」
「ご、ごめんなさい!」
吠えたり噛みついたりはしなかったが、ニコちゃんは大家さんの鼻の頭をぺろりと舐めた。
「いいのよ。ふふふ、ご近所さんとして認めてもらえたみたいね」
「わふわふ(大家は群れの仲間なのだ)」
「きゃふきゃふ(タロ兄様の言うことに間違いはないのですわ)」
大家さんを認めた理由を念話で教えてくれる。
「えっと、名前はニコちゃんです。二匹目なので」
「ニコちゃんなの。可愛いお名前ねえ。晴ちゃん、撫でてもいいかしら」
「は、はい」
「きゃう」
差し出された大家さんの手の甲に、ニコちゃんが前脚を乗せる。
賢いわねえと褒められて、タロ君がドヤ顔をしていた。
いやタロ君、今のはお手じゃなくて撫でようとしてたから。
「ふふっ」
改めてニコちゃんを撫でて、大家さんは相好を崩した。
いつもタロ君のことも撫でてくれているが、こんなに嬉しそうな顔は初めてだ。
もしかして大家さんは、短毛よりも長毛派だったのだろうか。わたしは犬ならどちらでも派だ。
「すべすべでフワフワねえ」
タロ君はさらにドヤ顔になった。
妹分のニコちゃんが褒められると嬉しいみたい。
「きゃふきゃふ」
しばらく撫でられているうちに、ニコちゃんはすっかり大家さんに懐いた。
この分なら、明日動物病院へ行っても大丈夫かな。
春人君冬人君に紹介するのは、明日動物病院へ行ってからに──
「あたらしい、わんこ?」
視線を感じて振り向くと、冬人君に見上げられていた。
「こら、ふー。勝手に外に出ちゃ……ハルちゃん、その子新しい犬?」
「あらまあ、あらまあ」
……後でちゃんと手を洗ってもらえばいいかな。
本当は抜け毛もないモンスターだから普通の犬とは違うしね。
ニコちゃんは葉山さん一家にも懐きました。あ、お父さんも勤務先のケーキ屋さんの定休日で家にいたのです。
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