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二匹目!+一羽目
37・モフモフわんこと可愛い妹
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「タロ君、どうする?」
暴走するフェンリルを前にして、わたしはタロ君に尋ねた。
彼は自信に満ちたドヤ顔で答える。
「マスターが名付けをすればおとなしくなるのだ」
「よそのダンジョンのモンスターをテイムしちゃっていいのかな?」
ちらりと目をやると、このダンジョンのコアであるカラスに恭しく頷かれた。
(むしろこちらからお願いいたします。ワタシが彼女に呼びかけても届きません)
「彼女……女の子なんだ」
男の子だったらタロ君の弟分だからジロ君にするつもりだったんだけどな。
一、二、ONE、TWO、UN、DEUX……よし決まった!
わたしはボス部屋のステージの上で唸っているフェンリルに呼びかける。
「ニコちゃん」
「……ぐるう?」
「あなたはニコちゃんよ」
「きゃう!」
【フェンリル『ニコ』は名前を得てレベルアップしました!】
【フェンリル『ニコ』はレベル2になりました】
白銀のフェンリルがシュルシュルと縮んで、真っ白でフワフワのスピッツとポメラニアンを合わせたような犬になる。
大きさはタロ君より少し小さいくらい。
タロ君もオルトロスモードと豆柴モードじゃ全然違うものね。
「……」
白フワモードのニコちゃんは、虚ろな目とヨロヨロした足取りで近づいて来る。
「え、これ大丈夫? テイムして良かったの?」
「我に帰ったけど、五年も暴走してたから空腹と寝不足で朦朧としてるのだ」
「大変! これ食べるかな?」
わたしは防具の下の黒いズボンのポケットに隠していたジャーキーを取り出した。
タロ君の顔色が変わる。
「ジャーキー!」
「後でタロ君にあげようと思って、岸隊長に許可をもらって一本隠し持ってたんだよ。半分こしてタロ君も食べる?」
「……んー」
ちょっと考えて、タロ君は首を横に振った。
「吾はお腹いっぱいだから、ニコに食べさせて欲しいのだ。吾はニコの兄だから大丈夫なのだ」
「そっか、お兄ちゃんだもんね」
オルトロスモードのタロ君の頭を背伸びして撫でると、彼は嬉しそうに目を細めた。
それからわたしはしゃがみ込み、ニコちゃんにジャーキーを差し述べた。
一本じゃお腹いっぱいにはならないだろうけど、モンスターの場合食事は量じゃないってタロ君が言うし。
「……きゃふ?」
「いいよ、お食べ」
「がるるるっ、がふっ、がふふっ!」
ジャーキーに気づいたニコちゃんに許可を出した途端、虚ろな瞳に光が戻った。
いつものタロ君と同じように、野性に戻って齧りつく。
気のせいかタロ君より声が低くて野太い。……サクラもオッサン声だったなあ。
「きゃ……ふ……くー……」
ジャーキーを食べ終わったニコちゃんは、こてんと転がって眠り始めた。
わたしはその場に座って、膝の上にニコちゃんを抱き上げる。
黒い豆柴モードになったタロ君がわたしの膝に前足を乗せ、優しい瞳でニコちゃんを見つめていた。
「いつくらいに目覚めるかな?」
「明日には起きると思うのだ!」
「五年も寝てなかったのに? 早くない?」
(モンスターですのでそれくらいでしょう)
(((マスター、私どもはこれからいかがいたしましょうか?)))
アジサイ、あなた代表スライムなんだから、子株と念話を揃えなくても一体で話しかけてくれていいんだよ。
なんだか複数の念話を一度に送られると、頭がクワンクワンするんだよね。
「んー……カラスさんはこれからどうしたい? ニコちゃんはわたしが連れてっちゃってもいいのかな?」
(フェンリルはお連れいただいたほうがよろしいかと思います。ダンジョンコアに過ぎないワタシが管理するにはモンスターとしての格が高過ぎるのです)
ものすごく念が籠ってそうな氷の剣持ちだしね。
(ダンジョンイーターが発生することを考えますと、もう一度モンスターを作って管理していくのが一番でしょう。たとえ複製に過ぎないとしても、自殺する気はありませんので)
ダンジョン入り口の結界を力尽くで壊されると、ダンジョンコアは壊れてしまうらしい。
(しかし、そうなりますと、訪問者がどれだけ来るのかが重要な問題になるのですが)
「一応民間開放される予定なんだけど……」
このダンジョンの今後も気になるものの、わたしにはほかにも心配なことがあった。
ダンジョンイーターのことだ。
海外で目撃されている酸を吐くスライムって、ダンジョンイーターに寄生されて胃液を排出してるスライムなんじゃないのかな?
タロ君の言葉から考えると、健康なスライムならダンジョンイーターを退治できるけど、人間の死体を食べて弱ったスライムだとできなくなっちゃうんだよね?
だれもそれを知らないし、そもそもダンジョンイーターの存在自体気づいてない。
どこかのボスモンスターを倒したダンジョンイーターがダンジョン入口の結界を壊して外に出たりしたらスタンピードが起こるんでしょ?
モンスターに効かない重火器しかない、魔法を使えない地球人類の町で。
……この世界、危機を迎えてる気がするんですが。
それはそれとして、タロ君に可愛い妹ニコちゃんができました!
レイスやスライムは家族っていうより部下って感じだからね。
なお、ニコちゃんのステータスボードは、
【ニコ/5歳/雌/フェンリルLV2/ボスモンスターLV1】
【HP:20000】
【MP:10000】
【状態:健康】
【攻撃:A】
【防御:A】
【魔法攻撃:A】
【魔法防御:A】
【集中:S】
【敏捷:S】
【魅力:A】
【精神:A】
【光属性:*(未設定です)】
【闇属性:*(未設定です)】
【炎属性:*(未設定です)】
【大地属性:*(未設定です)】
【風属性:S】
【水属性:*(制限されています)】
【魔法スキル:俊足・鈍足・疾風・風刃・暴風・突風・凪・竜巻】
【特殊スキル:吹雪】
こんな感じです。……攻撃系の魔法スキルが多い。
水属性は、タロ君みたいにレベル3に上がったら解放されるのかな?
暴走するフェンリルを前にして、わたしはタロ君に尋ねた。
彼は自信に満ちたドヤ顔で答える。
「マスターが名付けをすればおとなしくなるのだ」
「よそのダンジョンのモンスターをテイムしちゃっていいのかな?」
ちらりと目をやると、このダンジョンのコアであるカラスに恭しく頷かれた。
(むしろこちらからお願いいたします。ワタシが彼女に呼びかけても届きません)
「彼女……女の子なんだ」
男の子だったらタロ君の弟分だからジロ君にするつもりだったんだけどな。
一、二、ONE、TWO、UN、DEUX……よし決まった!
わたしはボス部屋のステージの上で唸っているフェンリルに呼びかける。
「ニコちゃん」
「……ぐるう?」
「あなたはニコちゃんよ」
「きゃう!」
【フェンリル『ニコ』は名前を得てレベルアップしました!】
【フェンリル『ニコ』はレベル2になりました】
白銀のフェンリルがシュルシュルと縮んで、真っ白でフワフワのスピッツとポメラニアンを合わせたような犬になる。
大きさはタロ君より少し小さいくらい。
タロ君もオルトロスモードと豆柴モードじゃ全然違うものね。
「……」
白フワモードのニコちゃんは、虚ろな目とヨロヨロした足取りで近づいて来る。
「え、これ大丈夫? テイムして良かったの?」
「我に帰ったけど、五年も暴走してたから空腹と寝不足で朦朧としてるのだ」
「大変! これ食べるかな?」
わたしは防具の下の黒いズボンのポケットに隠していたジャーキーを取り出した。
タロ君の顔色が変わる。
「ジャーキー!」
「後でタロ君にあげようと思って、岸隊長に許可をもらって一本隠し持ってたんだよ。半分こしてタロ君も食べる?」
「……んー」
ちょっと考えて、タロ君は首を横に振った。
「吾はお腹いっぱいだから、ニコに食べさせて欲しいのだ。吾はニコの兄だから大丈夫なのだ」
「そっか、お兄ちゃんだもんね」
オルトロスモードのタロ君の頭を背伸びして撫でると、彼は嬉しそうに目を細めた。
それからわたしはしゃがみ込み、ニコちゃんにジャーキーを差し述べた。
一本じゃお腹いっぱいにはならないだろうけど、モンスターの場合食事は量じゃないってタロ君が言うし。
「……きゃふ?」
「いいよ、お食べ」
「がるるるっ、がふっ、がふふっ!」
ジャーキーに気づいたニコちゃんに許可を出した途端、虚ろな瞳に光が戻った。
いつものタロ君と同じように、野性に戻って齧りつく。
気のせいかタロ君より声が低くて野太い。……サクラもオッサン声だったなあ。
「きゃ……ふ……くー……」
ジャーキーを食べ終わったニコちゃんは、こてんと転がって眠り始めた。
わたしはその場に座って、膝の上にニコちゃんを抱き上げる。
黒い豆柴モードになったタロ君がわたしの膝に前足を乗せ、優しい瞳でニコちゃんを見つめていた。
「いつくらいに目覚めるかな?」
「明日には起きると思うのだ!」
「五年も寝てなかったのに? 早くない?」
(モンスターですのでそれくらいでしょう)
(((マスター、私どもはこれからいかがいたしましょうか?)))
アジサイ、あなた代表スライムなんだから、子株と念話を揃えなくても一体で話しかけてくれていいんだよ。
なんだか複数の念話を一度に送られると、頭がクワンクワンするんだよね。
「んー……カラスさんはこれからどうしたい? ニコちゃんはわたしが連れてっちゃってもいいのかな?」
(フェンリルはお連れいただいたほうがよろしいかと思います。ダンジョンコアに過ぎないワタシが管理するにはモンスターとしての格が高過ぎるのです)
ものすごく念が籠ってそうな氷の剣持ちだしね。
(ダンジョンイーターが発生することを考えますと、もう一度モンスターを作って管理していくのが一番でしょう。たとえ複製に過ぎないとしても、自殺する気はありませんので)
ダンジョン入り口の結界を力尽くで壊されると、ダンジョンコアは壊れてしまうらしい。
(しかし、そうなりますと、訪問者がどれだけ来るのかが重要な問題になるのですが)
「一応民間開放される予定なんだけど……」
このダンジョンの今後も気になるものの、わたしにはほかにも心配なことがあった。
ダンジョンイーターのことだ。
海外で目撃されている酸を吐くスライムって、ダンジョンイーターに寄生されて胃液を排出してるスライムなんじゃないのかな?
タロ君の言葉から考えると、健康なスライムならダンジョンイーターを退治できるけど、人間の死体を食べて弱ったスライムだとできなくなっちゃうんだよね?
だれもそれを知らないし、そもそもダンジョンイーターの存在自体気づいてない。
どこかのボスモンスターを倒したダンジョンイーターがダンジョン入口の結界を壊して外に出たりしたらスタンピードが起こるんでしょ?
モンスターに効かない重火器しかない、魔法を使えない地球人類の町で。
……この世界、危機を迎えてる気がするんですが。
それはそれとして、タロ君に可愛い妹ニコちゃんができました!
レイスやスライムは家族っていうより部下って感じだからね。
なお、ニコちゃんのステータスボードは、
【ニコ/5歳/雌/フェンリルLV2/ボスモンスターLV1】
【HP:20000】
【MP:10000】
【状態:健康】
【攻撃:A】
【防御:A】
【魔法攻撃:A】
【魔法防御:A】
【集中:S】
【敏捷:S】
【魅力:A】
【精神:A】
【光属性:*(未設定です)】
【闇属性:*(未設定です)】
【炎属性:*(未設定です)】
【大地属性:*(未設定です)】
【風属性:S】
【水属性:*(制限されています)】
【魔法スキル:俊足・鈍足・疾風・風刃・暴風・突風・凪・竜巻】
【特殊スキル:吹雪】
こんな感じです。……攻撃系の魔法スキルが多い。
水属性は、タロ君みたいにレベル3に上がったら解放されるのかな?
応援ありがとうございます!
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