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二匹目!+一羽目
23・モフモフわんことコロッケ食べるよ。
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帽子を配り終わったので、タロ君と散歩に出る。
ソフィアさんと顔を合わせたくないので、『ダンジョン冒険者協会』とは逆方向に歩を進める。
故郷を思い出させる公園と、便利なコンビニや電車の駅もあるしで、この一年半弱は買い物も遊びもほとんど向こう側で済ませていたため、こちら側に来たのは初めてだ。
「タロ君、神社だよ」
「わふ?」
古びた神社の前で足を止める。
来たのは初めてだが、あることは知っていた。
去年の秋、ハル君ふー君が地域のお祭りでお神輿を担いだときの集合場所だ。お祭りのとき以外は神主も来ない無人の神社だと聞いている。
「お賽銭くらいは集めに来るのかな?」
「わふー」
鳥居を入ってすぐの錆びた看板に、「犬のフンは持ち帰りましょう」と書いてある。
ということは、犬が入ること自体はOKってことだね!
看板の先にある小さな手水舎には柄杓も置かれていないので、本当に普段は放置されてるみたいだな。
「わふ?」
「今日はもうちょっと歩いて、引き返して来た時に入ってみようか」
「わふわふ!」
人気がないので、ダンジョンに『転移』するポイントとしてちょうどいい。
同行しているボタンに待っていてもらったら、帰りもここに『転移』できる。
奥に石のベンチがあるので、座って水分補給をしてもいいね。
そんな話をしながら歩いていたら、古びた商店街に出た。
タロ君以外にも散歩している犬がいる。距離があるからお漏らしはしないよね?
地元の個人商店は、わたしがもの心ついたときにはもう大手スーパーのローラー戦略で潰されていたから、こういう空間はテレビやネットでしか見たことがない。なのに、どこか懐かしいところが不思議だ。
「いらっしゃい! コロッケが揚げたてだよ」
美味しそうな匂いを漂わせているお肉屋さんのおばさんに声をかけられた。
「わふ!」
そういえば、まだコロッケはあげたことなかったっけ。
ウエストバッグからお財布を取り出して一個購入。後で神社に戻ったときに食べよう。
ナイロン袋に入ったコロッケを受け取ると、タロ君にふんふんさせてあげた。
(美味しそうなのだ!)
(一緒に食べようね)
「わふ!」
商店街には八百屋も魚屋もあった。
ここなら店内に入らなくても買い物ができそう。
タロ君にお留守番させなくても良くなるな。アパートまでの距離は向こう側のスーパーより近いくらいだ。
この辺りには学校もあるらしい。
制服姿の少年少女達が、わたしに続いてコロッケを買っている。
わたしの大学もこれくらい近くにあると楽なのに。……自転車直して通うのと電車で通うの、どっちのほうが安くつくかな。
どちらにしろ大学が始まったら、タロ君にはお留守番をしてもらわなくてはならない。
お留守番=番犬は、犬の大事なお役目だ。
……でも大丈夫かなあ? タロ君は相変わらず、わたしのトイレが長いときは洗濯籠に籠っている。
入ってきたのとは逆方向の商店街の出入り口まで来て引き返す。
神社に戻ったわたしは、おそるおそる鳥居をくぐった。
「……お邪魔しまーす……」
「……わっふう……」
木製の社の隣に稲荷もある。
実家近くにも似たような神社あったな。
一応両方にお賽銭を入れて、石のベンチに座らせてもらった。
ウエストバッグからタロ君用のお皿を出して、半分に千切ったコロッケを入れる。
このコロッケは玉ネギを使っていなかったので、いつものように悩むこともない。
「ボタンも食べる?」
「……オォォ……」
遠慮された。というか、好みじゃなかったみたい。
水分の少ないものは得意ではないようだ。
アパートに帰ったら炭酸水でも出してあげようかな。
本当はネットチャンネルでホラー映画を見せると一番喜ぶんだろうけど、ボタンの意見で選んだ映画は怖過ぎてわたしが眠れなくなる。
音を小さくすると余計気になるし、ゴーストはヘッドホンつけられないからなあ。
ホラー映画でよく出てくる扉を開け閉めしたり物体を浮かせたりする『騒霊』は、ボスモンスターのタロ君にはできても下級モンスターのゴーストにはできない。
「……」
「……あ、ごめん」
「わふ」
犬の階級社会は絶対だ。
オヤツのジャーキーのようにタロ君にだけあげたとき以外は、マスターであるわたしが食べるまで自主的に待てをしてくれるタロ君なのである。
「いただきまーす」
「わふー」
ほんのりお肉が混じったポテトコロッケは美味しかった。
今度は、今日は売り切れていた唐揚げを買ってみよう。
自分で揚げ物するのって怖いからなあ。
ソフィアさんと顔を合わせたくないので、『ダンジョン冒険者協会』とは逆方向に歩を進める。
故郷を思い出させる公園と、便利なコンビニや電車の駅もあるしで、この一年半弱は買い物も遊びもほとんど向こう側で済ませていたため、こちら側に来たのは初めてだ。
「タロ君、神社だよ」
「わふ?」
古びた神社の前で足を止める。
来たのは初めてだが、あることは知っていた。
去年の秋、ハル君ふー君が地域のお祭りでお神輿を担いだときの集合場所だ。お祭りのとき以外は神主も来ない無人の神社だと聞いている。
「お賽銭くらいは集めに来るのかな?」
「わふー」
鳥居を入ってすぐの錆びた看板に、「犬のフンは持ち帰りましょう」と書いてある。
ということは、犬が入ること自体はOKってことだね!
看板の先にある小さな手水舎には柄杓も置かれていないので、本当に普段は放置されてるみたいだな。
「わふ?」
「今日はもうちょっと歩いて、引き返して来た時に入ってみようか」
「わふわふ!」
人気がないので、ダンジョンに『転移』するポイントとしてちょうどいい。
同行しているボタンに待っていてもらったら、帰りもここに『転移』できる。
奥に石のベンチがあるので、座って水分補給をしてもいいね。
そんな話をしながら歩いていたら、古びた商店街に出た。
タロ君以外にも散歩している犬がいる。距離があるからお漏らしはしないよね?
地元の個人商店は、わたしがもの心ついたときにはもう大手スーパーのローラー戦略で潰されていたから、こういう空間はテレビやネットでしか見たことがない。なのに、どこか懐かしいところが不思議だ。
「いらっしゃい! コロッケが揚げたてだよ」
美味しそうな匂いを漂わせているお肉屋さんのおばさんに声をかけられた。
「わふ!」
そういえば、まだコロッケはあげたことなかったっけ。
ウエストバッグからお財布を取り出して一個購入。後で神社に戻ったときに食べよう。
ナイロン袋に入ったコロッケを受け取ると、タロ君にふんふんさせてあげた。
(美味しそうなのだ!)
(一緒に食べようね)
「わふ!」
商店街には八百屋も魚屋もあった。
ここなら店内に入らなくても買い物ができそう。
タロ君にお留守番させなくても良くなるな。アパートまでの距離は向こう側のスーパーより近いくらいだ。
この辺りには学校もあるらしい。
制服姿の少年少女達が、わたしに続いてコロッケを買っている。
わたしの大学もこれくらい近くにあると楽なのに。……自転車直して通うのと電車で通うの、どっちのほうが安くつくかな。
どちらにしろ大学が始まったら、タロ君にはお留守番をしてもらわなくてはならない。
お留守番=番犬は、犬の大事なお役目だ。
……でも大丈夫かなあ? タロ君は相変わらず、わたしのトイレが長いときは洗濯籠に籠っている。
入ってきたのとは逆方向の商店街の出入り口まで来て引き返す。
神社に戻ったわたしは、おそるおそる鳥居をくぐった。
「……お邪魔しまーす……」
「……わっふう……」
木製の社の隣に稲荷もある。
実家近くにも似たような神社あったな。
一応両方にお賽銭を入れて、石のベンチに座らせてもらった。
ウエストバッグからタロ君用のお皿を出して、半分に千切ったコロッケを入れる。
このコロッケは玉ネギを使っていなかったので、いつものように悩むこともない。
「ボタンも食べる?」
「……オォォ……」
遠慮された。というか、好みじゃなかったみたい。
水分の少ないものは得意ではないようだ。
アパートに帰ったら炭酸水でも出してあげようかな。
本当はネットチャンネルでホラー映画を見せると一番喜ぶんだろうけど、ボタンの意見で選んだ映画は怖過ぎてわたしが眠れなくなる。
音を小さくすると余計気になるし、ゴーストはヘッドホンつけられないからなあ。
ホラー映画でよく出てくる扉を開け閉めしたり物体を浮かせたりする『騒霊』は、ボスモンスターのタロ君にはできても下級モンスターのゴーストにはできない。
「……」
「……あ、ごめん」
「わふ」
犬の階級社会は絶対だ。
オヤツのジャーキーのようにタロ君にだけあげたとき以外は、マスターであるわたしが食べるまで自主的に待てをしてくれるタロ君なのである。
「いただきまーす」
「わふー」
ほんのりお肉が混じったポテトコロッケは美味しかった。
今度は、今日は売り切れていた唐揚げを買ってみよう。
自分で揚げ物するのって怖いからなあ。
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