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一匹目!
※ダンジョンわんこ日記 八日目
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今日は春人冬人鷹秋と一緒にヒーローショーへ行く日だ。
駐車場で吾のマント姿を見せると、みんな絶賛していたぞ。
くふふ。動画配信で世界中に見せびらかしたいところだが、個犬が特定できるような情報は流してはいけないので我慢なのだ。
このマントはマスターが、吾のためだけに作ってくれたものなのだから。
車に乗って、隣町の港に面した公園へと進む。
キャリーバッグに閉じ込められたのは不快だが、チャイルドシートにベルトでつながれた春人冬人のほうが自由がなさそうだった。マスターや鷹秋もシートベルトをしている。
安全優先とはいえ大変なのだ。
春人冬人が窮屈そうなので、吾はキャリーバッグの上の窓から鼻を出して構ってやった。
車に乗っても、話題は吾のカッコいいマントのことだ。んふー。
マスター、春人と冬人にだったら、吾とお揃いのマントを作ってやってもいいんだぞ。
「タロ君がマントしてると、オルトロス星人みたい」
「わふ?」
「オルトロスせーじん?」
春人はオルトロス星人を知っているようだ。
冬人はまだ知らなかったらしく、ちょっと悲しそうだった。
元気を出せ、今度一緒にマスターに見せてもらったらいいのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
港に面した公園は、潮の香りがした。
ヒーローショーまでは時間があるので、まずは腹ごしらえをする。
マスターは屋台でローストビーフのサンドイッチを買って、吾にちょっとだけ分けてくれた。外では普通の犬の振りをしなくてはいけないので残念だ。
三十分も車に閉じ込められていたら体が硬くなっていたので、サンドイッチを食べた後は春人や冬人と駆けっこをした。
ほかの人間もいるため、吾はリードをつけて春人に持ってもらった。
春人、リードに足を取られて転ばないよう気をつけるのだぞ。マスターはたまにするからな。
「ふー、イッチャクー」
「速いな、ふー」
「ふふふのふー」
「わふー」
何度か芝生を往復して、冬人がマスターにしがみついた。
冬人はまだ小さいから疲れてしまったのだろう。
吾のリードを持つという制限の多い姿勢で走っていた春人の顔にも疲労が見える。
……マスター、ここはアレを出すべきなのだ。
念話まではしなかったが、マスターは吾の心を察したようだ。
マスターが出したタッパーを見て怪訝そうな春人と冬人を見て、吾はニヤリとほくそ笑む。
タッパーの蓋が開くと、ふたりは満面に笑みを浮かべた。
「苺食べる人ー」
「「食(た)べるー」」
「わふ!」
マスターの苺は鷹秋にも好評だった。
当然である。同行していたウメ子のおかげで、苺はほど良く冷えていた。
……春人と冬人にも、ダンジョンで作る大きな苺見せたいなー。
みんなで苺を食べ終わると、ヒーローショーの時間になっていた。
オルトロス星人は出てこないし、今ネットチャンネルで観ているタイトルともまるで違うヒーローだったけど、ショーはとっても面白かった。
冬人はグリーンのファンらしく、「みろりーみろりー!」と応援していたぞ。普段は口が達者なのに、興奮すると赤ちゃん言葉になってしまうのだな。
吾はブラックが気に入った。吾のマントと同じ色だしな。
春人はレッドが好きだという。鷹秋はイエローが好きなんだって。
マスターは吾と同じブラックが好きって言ってたのだ。お揃いなのだ、くふふ。
帰りの車では熟睡した。
春人と冬人も眠っていたので、吾が構ってやる必要がなかったしな。
マスターも寝てた。鷹秋はバックミラーで吾らの姿を見て、なんだか嬉しそうだった。今日は世話になったから、鷹秋にもマントを作ってやったらどうだろう。
そういえば今日は生まれてから八日目だ。
朝、マスターが今日から二週目だね、と言っていた。
マスターと会って、もう一週間以上過ぎたのか。楽しいことばかりの日々だったな……いや、やっぱり服を洗濯したのは許せないのだ!
許さないけどマスターは大好きなんだぞ。
駐車場で吾のマント姿を見せると、みんな絶賛していたぞ。
くふふ。動画配信で世界中に見せびらかしたいところだが、個犬が特定できるような情報は流してはいけないので我慢なのだ。
このマントはマスターが、吾のためだけに作ってくれたものなのだから。
車に乗って、隣町の港に面した公園へと進む。
キャリーバッグに閉じ込められたのは不快だが、チャイルドシートにベルトでつながれた春人冬人のほうが自由がなさそうだった。マスターや鷹秋もシートベルトをしている。
安全優先とはいえ大変なのだ。
春人冬人が窮屈そうなので、吾はキャリーバッグの上の窓から鼻を出して構ってやった。
車に乗っても、話題は吾のカッコいいマントのことだ。んふー。
マスター、春人と冬人にだったら、吾とお揃いのマントを作ってやってもいいんだぞ。
「タロ君がマントしてると、オルトロス星人みたい」
「わふ?」
「オルトロスせーじん?」
春人はオルトロス星人を知っているようだ。
冬人はまだ知らなかったらしく、ちょっと悲しそうだった。
元気を出せ、今度一緒にマスターに見せてもらったらいいのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
港に面した公園は、潮の香りがした。
ヒーローショーまでは時間があるので、まずは腹ごしらえをする。
マスターは屋台でローストビーフのサンドイッチを買って、吾にちょっとだけ分けてくれた。外では普通の犬の振りをしなくてはいけないので残念だ。
三十分も車に閉じ込められていたら体が硬くなっていたので、サンドイッチを食べた後は春人や冬人と駆けっこをした。
ほかの人間もいるため、吾はリードをつけて春人に持ってもらった。
春人、リードに足を取られて転ばないよう気をつけるのだぞ。マスターはたまにするからな。
「ふー、イッチャクー」
「速いな、ふー」
「ふふふのふー」
「わふー」
何度か芝生を往復して、冬人がマスターにしがみついた。
冬人はまだ小さいから疲れてしまったのだろう。
吾のリードを持つという制限の多い姿勢で走っていた春人の顔にも疲労が見える。
……マスター、ここはアレを出すべきなのだ。
念話まではしなかったが、マスターは吾の心を察したようだ。
マスターが出したタッパーを見て怪訝そうな春人と冬人を見て、吾はニヤリとほくそ笑む。
タッパーの蓋が開くと、ふたりは満面に笑みを浮かべた。
「苺食べる人ー」
「「食(た)べるー」」
「わふ!」
マスターの苺は鷹秋にも好評だった。
当然である。同行していたウメ子のおかげで、苺はほど良く冷えていた。
……春人と冬人にも、ダンジョンで作る大きな苺見せたいなー。
みんなで苺を食べ終わると、ヒーローショーの時間になっていた。
オルトロス星人は出てこないし、今ネットチャンネルで観ているタイトルともまるで違うヒーローだったけど、ショーはとっても面白かった。
冬人はグリーンのファンらしく、「みろりーみろりー!」と応援していたぞ。普段は口が達者なのに、興奮すると赤ちゃん言葉になってしまうのだな。
吾はブラックが気に入った。吾のマントと同じ色だしな。
春人はレッドが好きだという。鷹秋はイエローが好きなんだって。
マスターは吾と同じブラックが好きって言ってたのだ。お揃いなのだ、くふふ。
帰りの車では熟睡した。
春人と冬人も眠っていたので、吾が構ってやる必要がなかったしな。
マスターも寝てた。鷹秋はバックミラーで吾らの姿を見て、なんだか嬉しそうだった。今日は世話になったから、鷹秋にもマントを作ってやったらどうだろう。
そういえば今日は生まれてから八日目だ。
朝、マスターが今日から二週目だね、と言っていた。
マスターと会って、もう一週間以上過ぎたのか。楽しいことばかりの日々だったな……いや、やっぱり服を洗濯したのは許せないのだ!
許さないけどマスターは大好きなんだぞ。
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