44 / 127
一匹目!
38・モフモフわんこと取り返しのつかない過ち……
しおりを挟む
「わ!」
「ん?」
わたしの叫びにタロ君が振り向く。
ちなみにタロ君は、お昼に取り込んだ洗濯物を重ねて座布団代わりにしてヒーロードラマの続きを見ています。
畳んでいる隙にこっそり持ち去られちゃったんだよね。タロ君曰く、
マスターはせっかくの服を洗濯しちゃうから、これからは吾が管理するのだ!
だ、そうです……育て方間違えた?
「あーあ、取り返しのつかないことになっちゃった」
「なにがー?」
なにもない手のひらをタロ君に向ける。
洗濯物を奪われてから、わたしはずっとアイテムコアを作成していたのだ。
ヒーロードラマは面白いけど、去年も観たヤツだしね。
「マッドゴーレムキングのモンスターコアが消滅しちゃったの」
「なにしたのだ?」
「えーとね……」
今日のアイテムコア作成はなかなか実りがあった。
MPを少しずつ注入したことで、攻撃がFになると武器(このレベルだと尖った石止まりだけど)、防御は前と同じで陶器の指輪、魔法攻撃は植物製の武器(そのせいかほかは1で*→Fなのに10注入しないとFにならなかった)、魔法防御は金属の指輪(魔法攻撃と同じ)、集中と敏捷は糸、魅力と精神は宝石に変化することが明らかになったのだ。
これは個々にのみMPを注入したときで、複数に注入したときはまた変わる。注入したMPが多いほうの特性が優位になるようだ。
注いだMPは削除することもできる。
わたしに戻るんじゃなくて消えてしまうのが残念だけど、注入による変化を確認するにはちょうど良かった。マッドゴーレムキングのコアだけで実験ができたからね。
タロ君の影コア×8まで使うのはなんかもったいない気がする。
魔法属性のほうもいろいろ興味深い。
マッドゴーレムキングは最初から大地属性がDのせいか、MPを注入したときに上がりやすい属性と上がりにくい属性がある。
上がりにくい風属性を上げたくて大地属性を減らそうとしたら──
「モンスターコア自体が割れて消えちゃったんだよね」
取り返しのつかないことになってしまった。
「そうかー。コアを具現化する最低量の魔力がなくなったので存在できなくなったのだな」
タロ君は洗濯物座布団から降りて、空になったわたしの手のひらをふんふんする。
洗濯物を奪い返して押し入れの収納ケースに片付けるのは無理そうだ。
『隠密』を解いてタロ君と一緒にヒーロードラマを観ていたウメ子達に視線を送ったが、ゴーストは下級モンスターなので物体を動かす『騒霊』は使えない。上級のスペクターに進化すれば使えるんだって。
「マスターはなにを作る予定だったのだ? 苺の腕輪か?」
「ううん、タロ君のマントだよ」
「……吾のマント?」
「うん。オルトロス星人のマント気に入ってたでしょ? 防御と敏捷を組み合わせたら布っぽくなったけど、敏捷の値が上昇する効果がなかったから風属性上げて試してみようと思って」
大地属性を減らそうとしていたというわけだ。
敏捷=風属性というのはただの想像である。
タロ君は飛び跳ねた。
「吾のマント! 吾の影コアで作ったらどうだ? あれなら大地属性を削除しても闇属性が残るから消滅しないぞ。足りなければ、ダンジョンでまた影を倒すぞ!」
「ありがとう。でもMPももうないから、今日は無理だよ」
「……そうなのか」
「わたしのMPはMAXでも100しかないからね」
「うーん。異世界の魔法使い達はモンスターコアから魔力を吸収してMPを回復するが、マスターはできないからな」
タロ君が目を閉じる。
ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスしているわけではなく、なにかを考えているようだ。
……あ! 今の隙に洗濯物片付けよう!
「……マスター……」
「ひゃいっ?」
ぐぬぬ。洗濯物を持ち上げたものの、収納ケースを入れた押し入れまでたどり着けなかった。
タロ君が真剣な表情でわたしを見る。
モンスターだから抜け毛とかはないけれど、だからってせっかく洗った服の上に座られてたら困るんだよー。
「吾に植物魔法を設定して欲しいのだ」
「植物魔法?」
「ん。吾のMPを2000消費することで、マスターのMPを1000増やすことができる『MP譲渡』を習得したいのだ」
「『MP譲渡』……」
それは、魔力の霧を放出することで仲間にMPを譲渡する魔法だった。
「ん?」
わたしの叫びにタロ君が振り向く。
ちなみにタロ君は、お昼に取り込んだ洗濯物を重ねて座布団代わりにしてヒーロードラマの続きを見ています。
畳んでいる隙にこっそり持ち去られちゃったんだよね。タロ君曰く、
マスターはせっかくの服を洗濯しちゃうから、これからは吾が管理するのだ!
だ、そうです……育て方間違えた?
「あーあ、取り返しのつかないことになっちゃった」
「なにがー?」
なにもない手のひらをタロ君に向ける。
洗濯物を奪われてから、わたしはずっとアイテムコアを作成していたのだ。
ヒーロードラマは面白いけど、去年も観たヤツだしね。
「マッドゴーレムキングのモンスターコアが消滅しちゃったの」
「なにしたのだ?」
「えーとね……」
今日のアイテムコア作成はなかなか実りがあった。
MPを少しずつ注入したことで、攻撃がFになると武器(このレベルだと尖った石止まりだけど)、防御は前と同じで陶器の指輪、魔法攻撃は植物製の武器(そのせいかほかは1で*→Fなのに10注入しないとFにならなかった)、魔法防御は金属の指輪(魔法攻撃と同じ)、集中と敏捷は糸、魅力と精神は宝石に変化することが明らかになったのだ。
これは個々にのみMPを注入したときで、複数に注入したときはまた変わる。注入したMPが多いほうの特性が優位になるようだ。
注いだMPは削除することもできる。
わたしに戻るんじゃなくて消えてしまうのが残念だけど、注入による変化を確認するにはちょうど良かった。マッドゴーレムキングのコアだけで実験ができたからね。
タロ君の影コア×8まで使うのはなんかもったいない気がする。
魔法属性のほうもいろいろ興味深い。
マッドゴーレムキングは最初から大地属性がDのせいか、MPを注入したときに上がりやすい属性と上がりにくい属性がある。
上がりにくい風属性を上げたくて大地属性を減らそうとしたら──
「モンスターコア自体が割れて消えちゃったんだよね」
取り返しのつかないことになってしまった。
「そうかー。コアを具現化する最低量の魔力がなくなったので存在できなくなったのだな」
タロ君は洗濯物座布団から降りて、空になったわたしの手のひらをふんふんする。
洗濯物を奪い返して押し入れの収納ケースに片付けるのは無理そうだ。
『隠密』を解いてタロ君と一緒にヒーロードラマを観ていたウメ子達に視線を送ったが、ゴーストは下級モンスターなので物体を動かす『騒霊』は使えない。上級のスペクターに進化すれば使えるんだって。
「マスターはなにを作る予定だったのだ? 苺の腕輪か?」
「ううん、タロ君のマントだよ」
「……吾のマント?」
「うん。オルトロス星人のマント気に入ってたでしょ? 防御と敏捷を組み合わせたら布っぽくなったけど、敏捷の値が上昇する効果がなかったから風属性上げて試してみようと思って」
大地属性を減らそうとしていたというわけだ。
敏捷=風属性というのはただの想像である。
タロ君は飛び跳ねた。
「吾のマント! 吾の影コアで作ったらどうだ? あれなら大地属性を削除しても闇属性が残るから消滅しないぞ。足りなければ、ダンジョンでまた影を倒すぞ!」
「ありがとう。でもMPももうないから、今日は無理だよ」
「……そうなのか」
「わたしのMPはMAXでも100しかないからね」
「うーん。異世界の魔法使い達はモンスターコアから魔力を吸収してMPを回復するが、マスターはできないからな」
タロ君が目を閉じる。
ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスしているわけではなく、なにかを考えているようだ。
……あ! 今の隙に洗濯物片付けよう!
「……マスター……」
「ひゃいっ?」
ぐぬぬ。洗濯物を持ち上げたものの、収納ケースを入れた押し入れまでたどり着けなかった。
タロ君が真剣な表情でわたしを見る。
モンスターだから抜け毛とかはないけれど、だからってせっかく洗った服の上に座られてたら困るんだよー。
「吾に植物魔法を設定して欲しいのだ」
「植物魔法?」
「ん。吾のMPを2000消費することで、マスターのMPを1000増やすことができる『MP譲渡』を習得したいのだ」
「『MP譲渡』……」
それは、魔力の霧を放出することで仲間にMPを譲渡する魔法だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
232
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる