38 / 127
一匹目!
33・モフモフわんこはミドルポーションを運ぶ。
しおりを挟む
突然停止したマッドゴーレムキングは、動かぬままHP0になった。
巨大な体躯が薄れていく。
ドロップ品はなんだろうか。基本のマッドゴーレムと同じでポーションなのか。
いや、もしやもっと素晴らしい……と思っていた人がいたら大当たり。
マッドゴーレムキングのドロップ品は、ポーションより上位のミドルポーション。それも千五百瓶です。
(今よ!)
勝利に歓声を上げていた自衛隊員達は、突如暗闇に閉ざされた。
わたしの命令で、エントランスの天井に張り付いたスライム達が光を消したのだ。
こんなことはこれまでなかった。人々の間に不安げなざわめきが広がる。
(タロ君! アジサイ達!)
(わかったのだ!)
(((マスターの仰せのままに!)))
今だけボス部屋の出入り口に張った結界を解く。
タロ君は魔法スキル『騒霊』で、アジサイ達スライムは体で抱えて、ミドルポーションを運んでいく。
百人の自衛隊員の間をすり抜けて、マッドゴーレムキングが消えた場所まで。
『うわっ! なにか動いたぞ。新しいモンスターか?』
『気をつけろ、冷静に対処するんだ』
うちのタロ君は優秀なボスモンスターなので、『騒霊』を使いながらでもわたしに聴覚を貸すことができる。
双頭だし生まれながらの複数魔法属性持ちだから、マルチタスクはお手のものだ。
(攻撃されたら危ないから、無理に人込みをかき分けたりせず遠くから投げ入れたのでいいからね)
(((マスターの仰せのままに)))
ミドルポーションを運ぶボス部屋所属のスライム達とは逆に、エントランスから入って来るスライムもいる。
スライム達が計画について情報を交換したときに、生息地域を変えたいという意見が出たのだという。
感覚を共有していても個々の意識は違うらしい。
(((私どもスライム、全員ボス部屋に入りました。エントランスにいるのはそちらで暮らしたいもの達です)))
(わかったわ)
報告を受けて、わたしは結界を張り直した。
スライムが放つ光については、ミドルポーションを運び終わった後、全員が天井に戻ってから再開した。
明るくなったダンジョンの床には千五百の瓶が転がっている。マッドゴーレムキング本来のドロップ品、モンスターコアはスライムリレーによってボス部屋に運ばれていた。
『明るくなったな。なんだったんだ、今のは』
『天井のスライムがほかのモンスターに襲われたのだとしたら、こんなに早く復活するとは思えませんね』
『この地面に転がっている瓶は変異種のドロップ品でしょうか?』
鑑定の付与効果を持つアイテムコアで瓶を確認していた隊員が震えながら叫んだ。
『この瓶はミ、ミ、ミドルポーションです!』
『ミドルポーション? ポーションとは違うのか?』
『確かに瓶の中の液体の色が違いますね。ゲームならポーションより上の回復薬なのではありませんか?』
『は、はい。全HPの五十パーセントを回復し、軽い状態異常をも治療します』
『軽い状態異常か、どこまでのものを指すんだろうな』
六時間ごとに交代しているので、会話しているのは以前DSSSの隊長と話していた自衛隊員とはまたべつの人物だ。
変異種は出現しにくく、ダンジョンマザーツリーにすら制しきれない。……イレギュラーな存在だからダンジョンマスターのレベルが上がらなかったのかな?
モンスターのドロップ品は必ず同じものを落とすとは限らないので、今回は運が良かったのだと思ってくれると良いのだけれど。
『……五十……百……千はあるのではないでしょうか』
『できて一週間も経たないダンジョンで変異種、おまけにこれまでほかのダンジョンでドロップしたことのないポーションのさらに上位のミドルポーションが千以上か……このダンジョン、バグってんじゃないか?』
こっちもいろいろあるんですよー。
ミドルポーションの使い道とおまけの厄介ごとの処理はお願いします、と心の中で思いながら、わたしはタロ君とスライム達を撫でて計画の成功を喜んだ。
なおアジサイは今日からエントランスのほうで暮らすそうです。スライムは感覚を共有してるから、どの子に話しかけても大丈夫みたいだけどね。
巨大な体躯が薄れていく。
ドロップ品はなんだろうか。基本のマッドゴーレムと同じでポーションなのか。
いや、もしやもっと素晴らしい……と思っていた人がいたら大当たり。
マッドゴーレムキングのドロップ品は、ポーションより上位のミドルポーション。それも千五百瓶です。
(今よ!)
勝利に歓声を上げていた自衛隊員達は、突如暗闇に閉ざされた。
わたしの命令で、エントランスの天井に張り付いたスライム達が光を消したのだ。
こんなことはこれまでなかった。人々の間に不安げなざわめきが広がる。
(タロ君! アジサイ達!)
(わかったのだ!)
(((マスターの仰せのままに!)))
今だけボス部屋の出入り口に張った結界を解く。
タロ君は魔法スキル『騒霊』で、アジサイ達スライムは体で抱えて、ミドルポーションを運んでいく。
百人の自衛隊員の間をすり抜けて、マッドゴーレムキングが消えた場所まで。
『うわっ! なにか動いたぞ。新しいモンスターか?』
『気をつけろ、冷静に対処するんだ』
うちのタロ君は優秀なボスモンスターなので、『騒霊』を使いながらでもわたしに聴覚を貸すことができる。
双頭だし生まれながらの複数魔法属性持ちだから、マルチタスクはお手のものだ。
(攻撃されたら危ないから、無理に人込みをかき分けたりせず遠くから投げ入れたのでいいからね)
(((マスターの仰せのままに)))
ミドルポーションを運ぶボス部屋所属のスライム達とは逆に、エントランスから入って来るスライムもいる。
スライム達が計画について情報を交換したときに、生息地域を変えたいという意見が出たのだという。
感覚を共有していても個々の意識は違うらしい。
(((私どもスライム、全員ボス部屋に入りました。エントランスにいるのはそちらで暮らしたいもの達です)))
(わかったわ)
報告を受けて、わたしは結界を張り直した。
スライムが放つ光については、ミドルポーションを運び終わった後、全員が天井に戻ってから再開した。
明るくなったダンジョンの床には千五百の瓶が転がっている。マッドゴーレムキング本来のドロップ品、モンスターコアはスライムリレーによってボス部屋に運ばれていた。
『明るくなったな。なんだったんだ、今のは』
『天井のスライムがほかのモンスターに襲われたのだとしたら、こんなに早く復活するとは思えませんね』
『この地面に転がっている瓶は変異種のドロップ品でしょうか?』
鑑定の付与効果を持つアイテムコアで瓶を確認していた隊員が震えながら叫んだ。
『この瓶はミ、ミ、ミドルポーションです!』
『ミドルポーション? ポーションとは違うのか?』
『確かに瓶の中の液体の色が違いますね。ゲームならポーションより上の回復薬なのではありませんか?』
『は、はい。全HPの五十パーセントを回復し、軽い状態異常をも治療します』
『軽い状態異常か、どこまでのものを指すんだろうな』
六時間ごとに交代しているので、会話しているのは以前DSSSの隊長と話していた自衛隊員とはまたべつの人物だ。
変異種は出現しにくく、ダンジョンマザーツリーにすら制しきれない。……イレギュラーな存在だからダンジョンマスターのレベルが上がらなかったのかな?
モンスターのドロップ品は必ず同じものを落とすとは限らないので、今回は運が良かったのだと思ってくれると良いのだけれど。
『……五十……百……千はあるのではないでしょうか』
『できて一週間も経たないダンジョンで変異種、おまけにこれまでほかのダンジョンでドロップしたことのないポーションのさらに上位のミドルポーションが千以上か……このダンジョン、バグってんじゃないか?』
こっちもいろいろあるんですよー。
ミドルポーションの使い道とおまけの厄介ごとの処理はお願いします、と心の中で思いながら、わたしはタロ君とスライム達を撫でて計画の成功を喜んだ。
なおアジサイは今日からエントランスのほうで暮らすそうです。スライムは感覚を共有してるから、どの子に話しかけても大丈夫みたいだけどね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
232
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる