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一匹目!
24・モフモフわんこは世界のアイドル!
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五体の護衛用ユニークモンスターを除くゴーストは、あっという間に消え失せた。
DSSSと自衛隊が持っているアイテムコアは、ちゃんとゴースト系にも対応する魔法の力が付与されていたのだ。
……ゴーレムしか出現しないと思って油断しないでいてくれて良かった。うちのダンジョンで人死にが出るのは嫌だよう。
『九十五体、ですか』
『五体のゴーストは対峙していた隊員の前から突然消えたようです』
『変異種でしょうか? ジョーカーには瞬間移動の特殊スキルがあると聞きます』
『ジョーカーの瞬間移動は部屋の中のみです』
テントを出てエントランスの中央に立ったDSSSの隊長と自衛隊のお偉いさんらしき人は、ちらちらとボス部屋を見ながら会話をしていた。
五体のゴーストが突然消えたことを訝しんでいるのだ。
わたしはタロ君の肉球を借りて盗み聞き中です。
ちょっと気になったので、説明書を開いて変異種について調べてみる。
訪問者や敵モンスターに倒され続けてストレスの溜まったモンスターがリポップ時に変化する。
変異種への変化はダンジョンマスターにも管理できない。
これまでのデータによると下級なら数十年、中級なら数年、上級なら数ヶ月のスパンで変異種が生まれるようだ。上級のほうが変異しやすいんだね。
変異種には五つのヴァージョンがいる。
攻撃に特化したエース、防御に特化したナイト、回復に特化したクイーン(リポップまでの時間を縮める能力を持つものもいるという)、すべてが基本種より進化したキング、そして──DSSSと自衛隊が話していた瞬間移動の特殊スキルを持つジョーカーだ。
どのような条件で変化するのかは、ダンジョンマザーツリーにもわかっていない。
『ゴーレムはいつも百体出現しているんですがね』
『ゴーストも同じとは限らないでしょう。もっともポーションのドロップ率はゴーレムと同じで十パーセントのようですが』
二十五パーセントですから!
わたしが説明書を見ていた間に進んだ会話に突っ込む。
でもまあ今日のところは、ドロップ品を設定する前に倒されていたゴーストもいるからそんなところかもしれない。
……わたしは、最終的にダンジョンを封鎖してモンスター同士の戦闘で生き延びるためのDPを賄いたいと思っている。
ただその前に必要なDPを訪問者から稼がないといけないし、なにより国有公園を占拠してしまったという罪悪感があるので、公園の代償になるくらいはポーションを提供したい。
どうすればベストなのか……いろいろと難しいところである。ダンジョンマスターだということを公表する気はないです。
というか、リアルラックの高い人を連れてきてください!
個人によるドロップ率の変化に関する研究とかってされてないのかな。
ステータスボードにラックは表示されないから、調べようがないのかもしれない。
ぴらりらりーん♪
「ん?」
突然聞こえてきた電子音に首を傾げる。
レベルアップやダンジョン情報の先触れとは違う音だ。
だけど聞き覚えがある──
「マスター、お電話だぞ」
スマホの着信音だった。乙女ちゃんからだ。
デニム(毎日Tシャツとデニムですが、なにか? 服自体は変えてますよ)のポケットからスマホを抜いて、ふと思う。
……ゴースト作っちゃったから、もうスマホ使えないかも。
『晴、今時間ある?』
普通に使えた!
驚いているわたしを察したのか、タロ君が念話を送ってくる。
(あのな、マスター。ウメ子達はマスターのモンスターなのだから、マスターの邪魔はしないのだ)
(そりゃそうだよねー)
「うん、大丈夫だよ」
ボス部屋には結界があるので、長電話してもエントランスには聞こえない。
『ねえねえタロ君の動画チェックした?』
「タロ君の動画? ううん、チェックしてないよ。もしかして不備があって消されてた?」
「……わふう?」
オルトロス姿のタロ君が、不安そうにわたしの肩に頭を載せてきた。
彼は双頭なので両肩が埋まる。大きいから肩に載り切れてないところがまた可愛い。
……あー! 今の姿自撮りしたいっ!
『逆、逆! チャンネル登録数が千越えてたし! 広告収入入るんじゃね?』
「えー!」
「わふ?」
「タロ君が世界で大人気ってことだよ」
「わふ!」
『そうそう! コメントが日本語だけじゃなかったし!』
うちの犬は世界のアイドルになったようだ。
うむ、当然だね!
「「「「「……オォォ、オォオオオ……」」」」」
ゴーストのウメ子達も祝福してくれている。
……あれ? 結界があるからエントランスには聞こえないけど、電話の向こうには?
『ん? 晴、今どこいるの?』
「え? えーっと……タロ君の散歩中で、電話来たから路地で立ち止まってる、みたいな?」
『近くにお墓とかある?』
「なななな、ないよー?」
目の前のエントランスで九十五体のゴーストが倒されたけど、明日になったらリポップするからお墓じゃないよ!……ね?
『そう?』
「どうしたの? もしかして乙女ちゃん霊感持ちとか?」
『んー……変な音が聞こえた気がしただけだし。ほらお墓って、お供え目当てでカラスが来たりするから、そういうのかなって』
「そっか」
本人が言いたくなさそうだったので、わたしはそれ以上深入りするのはやめた。
わたしだって言いたくないことくらいあるからね。……ダンジョンのこととかさ。
それからわたし達は、しばらくタロ君の世界進出について語り合ってから電話を切った。
……冗談だよ?
ダンジョン運営が軌道に乗るまでは普通のバイトできないだろうから、動画が人気になって少しでも広告収入が入ったらいいなー、とは思ってるけどね。
DSSSと自衛隊が持っているアイテムコアは、ちゃんとゴースト系にも対応する魔法の力が付与されていたのだ。
……ゴーレムしか出現しないと思って油断しないでいてくれて良かった。うちのダンジョンで人死にが出るのは嫌だよう。
『九十五体、ですか』
『五体のゴーストは対峙していた隊員の前から突然消えたようです』
『変異種でしょうか? ジョーカーには瞬間移動の特殊スキルがあると聞きます』
『ジョーカーの瞬間移動は部屋の中のみです』
テントを出てエントランスの中央に立ったDSSSの隊長と自衛隊のお偉いさんらしき人は、ちらちらとボス部屋を見ながら会話をしていた。
五体のゴーストが突然消えたことを訝しんでいるのだ。
わたしはタロ君の肉球を借りて盗み聞き中です。
ちょっと気になったので、説明書を開いて変異種について調べてみる。
訪問者や敵モンスターに倒され続けてストレスの溜まったモンスターがリポップ時に変化する。
変異種への変化はダンジョンマスターにも管理できない。
これまでのデータによると下級なら数十年、中級なら数年、上級なら数ヶ月のスパンで変異種が生まれるようだ。上級のほうが変異しやすいんだね。
変異種には五つのヴァージョンがいる。
攻撃に特化したエース、防御に特化したナイト、回復に特化したクイーン(リポップまでの時間を縮める能力を持つものもいるという)、すべてが基本種より進化したキング、そして──DSSSと自衛隊が話していた瞬間移動の特殊スキルを持つジョーカーだ。
どのような条件で変化するのかは、ダンジョンマザーツリーにもわかっていない。
『ゴーレムはいつも百体出現しているんですがね』
『ゴーストも同じとは限らないでしょう。もっともポーションのドロップ率はゴーレムと同じで十パーセントのようですが』
二十五パーセントですから!
わたしが説明書を見ていた間に進んだ会話に突っ込む。
でもまあ今日のところは、ドロップ品を設定する前に倒されていたゴーストもいるからそんなところかもしれない。
……わたしは、最終的にダンジョンを封鎖してモンスター同士の戦闘で生き延びるためのDPを賄いたいと思っている。
ただその前に必要なDPを訪問者から稼がないといけないし、なにより国有公園を占拠してしまったという罪悪感があるので、公園の代償になるくらいはポーションを提供したい。
どうすればベストなのか……いろいろと難しいところである。ダンジョンマスターだということを公表する気はないです。
というか、リアルラックの高い人を連れてきてください!
個人によるドロップ率の変化に関する研究とかってされてないのかな。
ステータスボードにラックは表示されないから、調べようがないのかもしれない。
ぴらりらりーん♪
「ん?」
突然聞こえてきた電子音に首を傾げる。
レベルアップやダンジョン情報の先触れとは違う音だ。
だけど聞き覚えがある──
「マスター、お電話だぞ」
スマホの着信音だった。乙女ちゃんからだ。
デニム(毎日Tシャツとデニムですが、なにか? 服自体は変えてますよ)のポケットからスマホを抜いて、ふと思う。
……ゴースト作っちゃったから、もうスマホ使えないかも。
『晴、今時間ある?』
普通に使えた!
驚いているわたしを察したのか、タロ君が念話を送ってくる。
(あのな、マスター。ウメ子達はマスターのモンスターなのだから、マスターの邪魔はしないのだ)
(そりゃそうだよねー)
「うん、大丈夫だよ」
ボス部屋には結界があるので、長電話してもエントランスには聞こえない。
『ねえねえタロ君の動画チェックした?』
「タロ君の動画? ううん、チェックしてないよ。もしかして不備があって消されてた?」
「……わふう?」
オルトロス姿のタロ君が、不安そうにわたしの肩に頭を載せてきた。
彼は双頭なので両肩が埋まる。大きいから肩に載り切れてないところがまた可愛い。
……あー! 今の姿自撮りしたいっ!
『逆、逆! チャンネル登録数が千越えてたし! 広告収入入るんじゃね?』
「えー!」
「わふ?」
「タロ君が世界で大人気ってことだよ」
「わふ!」
『そうそう! コメントが日本語だけじゃなかったし!』
うちの犬は世界のアイドルになったようだ。
うむ、当然だね!
「「「「「……オォォ、オォオオオ……」」」」」
ゴーストのウメ子達も祝福してくれている。
……あれ? 結界があるからエントランスには聞こえないけど、電話の向こうには?
『ん? 晴、今どこいるの?』
「え? えーっと……タロ君の散歩中で、電話来たから路地で立ち止まってる、みたいな?」
『近くにお墓とかある?』
「なななな、ないよー?」
目の前のエントランスで九十五体のゴーストが倒されたけど、明日になったらリポップするからお墓じゃないよ!……ね?
『そう?』
「どうしたの? もしかして乙女ちゃん霊感持ちとか?」
『んー……変な音が聞こえた気がしただけだし。ほらお墓って、お供え目当てでカラスが来たりするから、そういうのかなって』
「そっか」
本人が言いたくなさそうだったので、わたしはそれ以上深入りするのはやめた。
わたしだって言いたくないことくらいあるからね。……ダンジョンのこととかさ。
それからわたし達は、しばらくタロ君の世界進出について語り合ってから電話を切った。
……冗談だよ?
ダンジョン運営が軌道に乗るまでは普通のバイトできないだろうから、動画が人気になって少しでも広告収入が入ったらいいなー、とは思ってるけどね。
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