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一匹目!
15・モフモフわんこは影(シャドウ)を倒す。
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ゲームか映画を見ているような気持ちで、わたしは調査会社DSSSの戦闘を観察していた。
もちろん向こうはこちらに気づいていない。
下級モンスターだからか、マッドゴーレムはあっさりと倒されていく。でも……
「ポーションがドロップしないねー」
「しないのだ」
「百体いるマッドゴーレムの半分はもう倒されてるよね」
「倒されてるのだ」
ポーションのドロップ率は二十五パーセントだから、五十体倒されたら十回はドロップしてても良さそうなんだけど。
そういえば、去年猫好きの友達に借りた海外のミステリードラマのDVDで言ってたな。
千回の実験のうち、最初の百回で結果が出ても十パーセント、最後の百回で結果が出ても十パーセント、十回ごとに結果が出ても十パーセントだって。本当のランダムは、人間の都合には合わせてくれないものなのだ。
「マスター大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
わたしはステータスボードを表示した。
消費DPと違い、生産DPは訪問者が入ってきた時点で加算されていた。
本日の加算DPは12000、わたしとタロ君の寿命が二日延びた。
「そういえば新しい特殊スキル覚えたんだよね」
パラメータは不動のオールFだけど、特殊スキルの項目に『アイテムコア作成』というのが増えている。
ダンジョンマスターのレベルが上がると、こうしてスキルが増えていくのかな。
人間の種族レベルが上昇してもスキルは覚えないらしいから、ジョブレベルはモンスターのレベルと同じシステムなのかもね。
「あー。試してみようかと思ったのに、モンスターコアがないとできないのか」
「マスター、モンスターコア欲しいのか?」
タロ君がエントランスを見た。
そこには無数のモンスターコアが転がっている。
DSSSはマッドゴーレムを倒してもドロップしたモンスターコアを拾わず、そのまま戦い続けているのだ。最後に回収するつもりなのだろう。
「拾いに行ったりしなくていいからね。見つかったら大変だもの」
「隠密を使えば大丈夫なのにー。……あ、吾はいいこと思いついたのだ」
「いいこと?」
わたしの質問に頷いて、黒いオルトロスは巨体を震わせた。
天井のスライムに照らされて地面にできていた彼の影が、不意に濃くなる。
濃くなった影は起き上がり、オオォォォン、と吠えた。ステージの上が一面黒く染まる。
「タロ君の分身?」
「んーん。ただの影だ。だから吾の百分の一の力しかないし、作るためのMP消費も1000で済むしDPも必要ないのだ」
1000で済むし、か。
レベルが上がっても増える気配のない、わたしのMPの十倍だよ?
まあ日本人はMPが多いほうなんだけどね。日本人はHENTAIだから、M(妄想)Pが多いんだ、なんて言われてる。失礼しちゃう。
「わふ」
説明が終わると、タロ君は片手で影を叩いた。
きゃうん、と鳴いて影が消える。
タロ君は顔を落とし、影のいた場所からなにかをくわえて持ち上げた。
(はい、マスター。モンスターコアなのだ)
念話で呼びかけてきたのは、口が塞がっているからだろう。
影のモンスターコアは、わたしの心臓と融合したダンジョンコアと同じ八面体で、ダンジョンコアよりもひと回り小さかった。
それでもエントランスに転がっている小指の先ほどのモンスターコアと比べると、かなり大きい。
「あ、ありがとう?……自分の影なんか倒して大丈夫?」
「ただの影なのだ。普通の犬猫が自分の抜け毛で作ったぬいぐるみで遊ぶようなものだぞ」
「そっかー」
タロ君はマッドゴーレムが倒されるのを見ても、気にせずアクビをしてたもんね。
影は吠えたけど意識はなさそうだったし……うん、まあ、いいか。
わたしは出したままだったステータスボードに手を伸ばし、アイテムコア作成という単語をタップした。影のモンスターコアが浮かび上がり、小型のステータスボードのようなものが出現する。
【影のモンスターコア】
【攻撃:*】
【防御:*】
【魔法攻撃:*】
【魔法防御:*】
【集中:*】
【敏捷:*】
【魅力:*】
【精神:*】
【光属性:*】
【闇属性:D】
【炎属性:*】
【大地属性:D】
【風属性:*】
【水属性:*】
【好きな項目にダンジョンマスターのMPを注入することでアイテムコアを作成できます】
もちろん向こうはこちらに気づいていない。
下級モンスターだからか、マッドゴーレムはあっさりと倒されていく。でも……
「ポーションがドロップしないねー」
「しないのだ」
「百体いるマッドゴーレムの半分はもう倒されてるよね」
「倒されてるのだ」
ポーションのドロップ率は二十五パーセントだから、五十体倒されたら十回はドロップしてても良さそうなんだけど。
そういえば、去年猫好きの友達に借りた海外のミステリードラマのDVDで言ってたな。
千回の実験のうち、最初の百回で結果が出ても十パーセント、最後の百回で結果が出ても十パーセント、十回ごとに結果が出ても十パーセントだって。本当のランダムは、人間の都合には合わせてくれないものなのだ。
「マスター大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
わたしはステータスボードを表示した。
消費DPと違い、生産DPは訪問者が入ってきた時点で加算されていた。
本日の加算DPは12000、わたしとタロ君の寿命が二日延びた。
「そういえば新しい特殊スキル覚えたんだよね」
パラメータは不動のオールFだけど、特殊スキルの項目に『アイテムコア作成』というのが増えている。
ダンジョンマスターのレベルが上がると、こうしてスキルが増えていくのかな。
人間の種族レベルが上昇してもスキルは覚えないらしいから、ジョブレベルはモンスターのレベルと同じシステムなのかもね。
「あー。試してみようかと思ったのに、モンスターコアがないとできないのか」
「マスター、モンスターコア欲しいのか?」
タロ君がエントランスを見た。
そこには無数のモンスターコアが転がっている。
DSSSはマッドゴーレムを倒してもドロップしたモンスターコアを拾わず、そのまま戦い続けているのだ。最後に回収するつもりなのだろう。
「拾いに行ったりしなくていいからね。見つかったら大変だもの」
「隠密を使えば大丈夫なのにー。……あ、吾はいいこと思いついたのだ」
「いいこと?」
わたしの質問に頷いて、黒いオルトロスは巨体を震わせた。
天井のスライムに照らされて地面にできていた彼の影が、不意に濃くなる。
濃くなった影は起き上がり、オオォォォン、と吠えた。ステージの上が一面黒く染まる。
「タロ君の分身?」
「んーん。ただの影だ。だから吾の百分の一の力しかないし、作るためのMP消費も1000で済むしDPも必要ないのだ」
1000で済むし、か。
レベルが上がっても増える気配のない、わたしのMPの十倍だよ?
まあ日本人はMPが多いほうなんだけどね。日本人はHENTAIだから、M(妄想)Pが多いんだ、なんて言われてる。失礼しちゃう。
「わふ」
説明が終わると、タロ君は片手で影を叩いた。
きゃうん、と鳴いて影が消える。
タロ君は顔を落とし、影のいた場所からなにかをくわえて持ち上げた。
(はい、マスター。モンスターコアなのだ)
念話で呼びかけてきたのは、口が塞がっているからだろう。
影のモンスターコアは、わたしの心臓と融合したダンジョンコアと同じ八面体で、ダンジョンコアよりもひと回り小さかった。
それでもエントランスに転がっている小指の先ほどのモンスターコアと比べると、かなり大きい。
「あ、ありがとう?……自分の影なんか倒して大丈夫?」
「ただの影なのだ。普通の犬猫が自分の抜け毛で作ったぬいぐるみで遊ぶようなものだぞ」
「そっかー」
タロ君はマッドゴーレムが倒されるのを見ても、気にせずアクビをしてたもんね。
影は吠えたけど意識はなさそうだったし……うん、まあ、いいか。
わたしは出したままだったステータスボードに手を伸ばし、アイテムコア作成という単語をタップした。影のモンスターコアが浮かび上がり、小型のステータスボードのようなものが出現する。
【影のモンスターコア】
【攻撃:*】
【防御:*】
【魔法攻撃:*】
【魔法防御:*】
【集中:*】
【敏捷:*】
【魅力:*】
【精神:*】
【光属性:*】
【闇属性:D】
【炎属性:*】
【大地属性:D】
【風属性:*】
【水属性:*】
【好きな項目にダンジョンマスターのMPを注入することでアイテムコアを作成できます】
応援ありがとうございます!
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