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一匹目!
4・モフモフわんこはボスモンスター
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ダンジョンマスターという単語をタップしたら、ステータスボードの横に同じような光るウインドウ、ダンジョンの説明書が浮かび上がった。
説明書に記された単語をタップすると説明が現れ、それに関するダンジョン運営の処理もできる。
処理を始める前に【YES/NO】の選択が出るので、間違って実行してしまうことはなさそうだ。
ダンジョンマザーツリーがこの世界で得た知識を活用して作ったダンジョン運営システムは、すごくゲームじみていてわかりやすかった。
そこまで改良できるなら自分でこの世界の人間向けのダンジョンを作ればいいのに、と思わないでもないが、たぶん『感覚』が理解できないのだろう。
同じこの世界の人間でも国が違うだけで色の感覚がまるで違うと聞いたことがある。
それにほかの世界でもダンジョン運営は現地の人間に任せていたんだもんね。
ダンジョン運営を任されたほかの世界の魔法使い達には、ダンジョンコアを構成する濃い魔力自体が報酬になっていたらしい。
後、ダンジョンマザーツリーの蓄えたデータベースへのアクセス権。
わたしは魔法のない世界の人間なので、直接ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスしても、魔力で構成された大量の情報を処理できない。
下手すると精神が壊れて死んでしまう可能性もあるという。
それでわたしの代わりに、魔力でできたモンスターであるオルトロス犬がアクセスしてダンジョン運営のナビをしてくれているのだった。
この世界に挿し木した異世界のコピーダンジョンは、オリジナルのダンジョンコアに蓄えられていたデータをもとに自動運営されている。
倒されまくったモンスターがストレスを感じて進化することはあっても、ドロップ品の設定はこれまでの前例に準じていて変化しないとのことだ。
「ポーションが設定できるんだ!」
説明書を見ていて、わたしは思わず声を上げた。
下級モンスターなら二十五パーセント、中級モンスターなら五十パーセント、上級モンスターなら七十五パーセントのドロップ率で設定可能だ。
この世界の人間も体内には魔力を蓄積している。飲んで効果が出るポーションなら、ダンジョン外でも役に立つ可能性が微レ存?
「どうしてこれまでのダンジョンではドロップしなかったのかな?」
犬が目を瞑り、ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスする。
「マスター。異世界の人間は魔法が使える。薬草と下級モンスターのコアが一個あれば十本のポーションが作れるのだ」
「それは……ドロップしてもだれも喜ばないね」
でもモンスターコアを活用できない、この世界の人間にとっては貴重なアイテムだ。
ポーションは全HPの三十パーセントを回復し、一瞬で怪我を治す。
ダンジョン外でも使えればいうことないがダンジョン内でしか使えなかったとしても、効力を確認するまでの間は実験用に採取しに来てくれるに違いない。
しばらくの間通ってDPを稼がせてくれたら──
「ハイポーションは設定できないんだね。異世界にも存在しなかったの?」
「欠損や状態異常をも治すハイポーションは熟成されたポーションなのだ」
「熟成?」
「ポーションをドロップ品に設定されたモンスターが人間や敵モンスターに倒されることなく何十年も生き延びると、ポーションが熟成されてハイポーション化する。だから異世界でもハイポーションは貴重なのだ。エリクサーなら数百年の熟成が必要になる。軽い状態異常を解くミドルポーションなら数年だな」
「熟成されるとドロップ率は上昇するの?」
「それはない」
「そっかー」
じゃあせっかくハイポーションをドロップするモンスターがいても、倒した人間のリアルラックが低ければ気づくこともないんだ。
なんだかもったいないね。
……敵モンスター、かあ。
モンスターは種族や属性が違うと敵対し、縄張り争いを繰り広げる。
そして実は、モンスター同士の戦闘によってもDPが発生するのだった。
種族や属性を調整して食物連鎖のような状態を作り出せたら、外から人間を呼び込まなくてもDPを維持できるようになるかもしれない。
アクアリウムみたいな感じの閉じた世界。
ダンジョンマザーツリーは喜ばないだろうけど、調査員が来なくなるまでに十分なDPを稼いでバランス良くモンスターを配置したいな。
ちなみにオルトロスはボスモンスターなので、この体育館(ボス部屋?)が縄張りです。
人間に倒されたボスモンスターは記憶を持ったままリポップするらしいが、それはなんとしても回避したい。
……あ、そうだ。
「タロ君!」
「マスター?」
「あなたの名前、タロ君でいい?」
運命共同体なのに犬やオルトロスと呼んでいたのでは距離がある。
「吾はタロクン……」
「タロが名前で、君は……おまけ?」
「吾はタロ!」
ぴこーん♪
レトロゲームの電子音のような音が辺りに響いた。
【オルトロス『タロ』は名前を得てレベルアップしました!】
【オルトロス『タロ』はレベル3になりました】
【オルトロス『タロ』は闇属性の制限が解除されました】
【オルトロス『タロ』は闇属性の魔法スキルを習得しました】
「お、おう……」
タロ君のステータスボードを開いて確認する。
普通は鑑定眼や魔眼の付与効果を持つアイテムコアでも使わない限り、自分以外のステータスボードを見ることはできない。
わたしはダンジョンマスターなので、自分のダンジョンのモンスターならステータスを確認できるのだった。
【タロ/0歳/雄/オルトロスLV3/ボスモンスターLV1】
【HP:30000】
【MP:10000】
【状態:健康】
【攻撃:A】
【防御:S】
【魔法攻撃:A】
【魔法防御:S】
【集中:A】
【敏捷:A】
【魅力:A】
【精神:A】
【光属性:*(未設定です)】
【闇属性:S(制限が解除されました)】
【炎属性:*(未設定です)】
【大地属性:S】
【風属性:*(未設定です)】
【水属性:*(未設定です)】
【魔法スキル:索敵・石礫・遠吠え・硬化・大地の祝福・咆哮】
【 NEW!→隠密・弱体化・HP吸収・催眠・騒霊・影】
【特殊スキル:モンスター作成(DPを消費)】
……解せぬ。
なんで魅力がAなんだろう? SSSだよね?
それはともかく、最初は喜んでいるように見えたタロ君が項垂れていた。
「どうしたの、タロ君?」
「……吾、レベルが上がって一日の消費DPが3000に増えてしまったのだ」
「そっかー。じゃあ頑張ってDP稼がないとね」
名前をつけただけでレベルアップするとは驚いた。
確かにゲームとかだとネームドモンスターは別格だもんね。
だけどレベルアップで魔法属性の制限が解除されたってことは、モンスターのレベルアップは人間のレベルアップとはシステムが違うのかもしれないな。
説明書に記された単語をタップすると説明が現れ、それに関するダンジョン運営の処理もできる。
処理を始める前に【YES/NO】の選択が出るので、間違って実行してしまうことはなさそうだ。
ダンジョンマザーツリーがこの世界で得た知識を活用して作ったダンジョン運営システムは、すごくゲームじみていてわかりやすかった。
そこまで改良できるなら自分でこの世界の人間向けのダンジョンを作ればいいのに、と思わないでもないが、たぶん『感覚』が理解できないのだろう。
同じこの世界の人間でも国が違うだけで色の感覚がまるで違うと聞いたことがある。
それにほかの世界でもダンジョン運営は現地の人間に任せていたんだもんね。
ダンジョン運営を任されたほかの世界の魔法使い達には、ダンジョンコアを構成する濃い魔力自体が報酬になっていたらしい。
後、ダンジョンマザーツリーの蓄えたデータベースへのアクセス権。
わたしは魔法のない世界の人間なので、直接ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスしても、魔力で構成された大量の情報を処理できない。
下手すると精神が壊れて死んでしまう可能性もあるという。
それでわたしの代わりに、魔力でできたモンスターであるオルトロス犬がアクセスしてダンジョン運営のナビをしてくれているのだった。
この世界に挿し木した異世界のコピーダンジョンは、オリジナルのダンジョンコアに蓄えられていたデータをもとに自動運営されている。
倒されまくったモンスターがストレスを感じて進化することはあっても、ドロップ品の設定はこれまでの前例に準じていて変化しないとのことだ。
「ポーションが設定できるんだ!」
説明書を見ていて、わたしは思わず声を上げた。
下級モンスターなら二十五パーセント、中級モンスターなら五十パーセント、上級モンスターなら七十五パーセントのドロップ率で設定可能だ。
この世界の人間も体内には魔力を蓄積している。飲んで効果が出るポーションなら、ダンジョン外でも役に立つ可能性が微レ存?
「どうしてこれまでのダンジョンではドロップしなかったのかな?」
犬が目を瞑り、ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスする。
「マスター。異世界の人間は魔法が使える。薬草と下級モンスターのコアが一個あれば十本のポーションが作れるのだ」
「それは……ドロップしてもだれも喜ばないね」
でもモンスターコアを活用できない、この世界の人間にとっては貴重なアイテムだ。
ポーションは全HPの三十パーセントを回復し、一瞬で怪我を治す。
ダンジョン外でも使えればいうことないがダンジョン内でしか使えなかったとしても、効力を確認するまでの間は実験用に採取しに来てくれるに違いない。
しばらくの間通ってDPを稼がせてくれたら──
「ハイポーションは設定できないんだね。異世界にも存在しなかったの?」
「欠損や状態異常をも治すハイポーションは熟成されたポーションなのだ」
「熟成?」
「ポーションをドロップ品に設定されたモンスターが人間や敵モンスターに倒されることなく何十年も生き延びると、ポーションが熟成されてハイポーション化する。だから異世界でもハイポーションは貴重なのだ。エリクサーなら数百年の熟成が必要になる。軽い状態異常を解くミドルポーションなら数年だな」
「熟成されるとドロップ率は上昇するの?」
「それはない」
「そっかー」
じゃあせっかくハイポーションをドロップするモンスターがいても、倒した人間のリアルラックが低ければ気づくこともないんだ。
なんだかもったいないね。
……敵モンスター、かあ。
モンスターは種族や属性が違うと敵対し、縄張り争いを繰り広げる。
そして実は、モンスター同士の戦闘によってもDPが発生するのだった。
種族や属性を調整して食物連鎖のような状態を作り出せたら、外から人間を呼び込まなくてもDPを維持できるようになるかもしれない。
アクアリウムみたいな感じの閉じた世界。
ダンジョンマザーツリーは喜ばないだろうけど、調査員が来なくなるまでに十分なDPを稼いでバランス良くモンスターを配置したいな。
ちなみにオルトロスはボスモンスターなので、この体育館(ボス部屋?)が縄張りです。
人間に倒されたボスモンスターは記憶を持ったままリポップするらしいが、それはなんとしても回避したい。
……あ、そうだ。
「タロ君!」
「マスター?」
「あなたの名前、タロ君でいい?」
運命共同体なのに犬やオルトロスと呼んでいたのでは距離がある。
「吾はタロクン……」
「タロが名前で、君は……おまけ?」
「吾はタロ!」
ぴこーん♪
レトロゲームの電子音のような音が辺りに響いた。
【オルトロス『タロ』は名前を得てレベルアップしました!】
【オルトロス『タロ』はレベル3になりました】
【オルトロス『タロ』は闇属性の制限が解除されました】
【オルトロス『タロ』は闇属性の魔法スキルを習得しました】
「お、おう……」
タロ君のステータスボードを開いて確認する。
普通は鑑定眼や魔眼の付与効果を持つアイテムコアでも使わない限り、自分以外のステータスボードを見ることはできない。
わたしはダンジョンマスターなので、自分のダンジョンのモンスターならステータスを確認できるのだった。
【タロ/0歳/雄/オルトロスLV3/ボスモンスターLV1】
【HP:30000】
【MP:10000】
【状態:健康】
【攻撃:A】
【防御:S】
【魔法攻撃:A】
【魔法防御:S】
【集中:A】
【敏捷:A】
【魅力:A】
【精神:A】
【光属性:*(未設定です)】
【闇属性:S(制限が解除されました)】
【炎属性:*(未設定です)】
【大地属性:S】
【風属性:*(未設定です)】
【水属性:*(未設定です)】
【魔法スキル:索敵・石礫・遠吠え・硬化・大地の祝福・咆哮】
【 NEW!→隠密・弱体化・HP吸収・催眠・騒霊・影】
【特殊スキル:モンスター作成(DPを消費)】
……解せぬ。
なんで魅力がAなんだろう? SSSだよね?
それはともかく、最初は喜んでいるように見えたタロ君が項垂れていた。
「どうしたの、タロ君?」
「……吾、レベルが上がって一日の消費DPが3000に増えてしまったのだ」
「そっかー。じゃあ頑張ってDP稼がないとね」
名前をつけただけでレベルアップするとは驚いた。
確かにゲームとかだとネームドモンスターは別格だもんね。
だけどレベルアップで魔法属性の制限が解除されたってことは、モンスターのレベルアップは人間のレベルアップとはシステムが違うのかもしれないな。
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