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7・不思議な力で治療を手伝うよ!
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「申し訳ありません、陽菜様」
なにも考えずに莫迦な行動をしたわたしに、ルーカスさんが謝った。
「え? ルーカスさんはなにも悪くありませんよ? わたしが考えなしだっただけです」
「いいえ。こちらの都合でなにも説明できていないのですから、不安で気が焦るのは当たり前です。先ほどご領主殿の前で陽菜様のお力について話してしまいましたし、早く活躍しなくてはと思われたのではないですか?」
このヴァーゲの町へ来るまでの間になにか説明してもらえるかと思っていたのだが、ルーカスさんは無言で一角獣を走らせていた。
たぶんそこここに散らばる穢れとやらを確認して、どう処理するか考えていたのだろう。
それは仕方がない。
穢れが新たな魔獣を生み出すと言っていたし、町にはこうして大切な人達が待っていた。元気なわたしのことなど後回しが当然だ。黒い巨獣から助けてくれて、ここまで連れてきてもらえただけでありがたいのだ。
わかってる。
「……ルーカスさんはなにも悪くありません」
「陽菜様はお優しいのですね」
ルーカスさんが微笑む。
整った顔をしたイケメンは、なにをしてもイケメンだなあ。
わたしの好みとは違うタイプだけれど、ちょっぴりときめいてしまう。
「改めてお願いいたします。私の部下達を治療するのを手伝ってください。陽菜様がひとりひとりを活性化していくと魔力欠乏症が心配ですので、私の活性化をお願いいたします。私の回復魔導なら聖騎士団の団員をすべて癒すことが可能です。私の力が及ばないときだけ、陽菜様のお力を直接注いでいただくということでよろしいでしょうか」
「はい、わかりました。……ルーカスさんと聖騎士団の団員さん達は魔力の相性がいいんですか?」
「相性が悪い者もいましたが、私の魔導で回復できるよう訓練で調整させています」
「そうなんですか」
なんかすごい。
聖騎士って命懸けの仕事みたいだから、そうやって調整しないといけないんだ。
魔力の相性の調整って、どうやるんだろう。思いながらわたしは、歩き出したルーカスさんを追いかけた。
「……お帰りなさい、団長……」
黒い髪を短く刈った厳つい感じの男性の横に、ルーカスさんが膝をつく。
「意識があるようでなによりです、イェルク」
「……団長の扱きに比べたら、魔獣の襲撃が途切れないのなんて屁でもないですよ……」
ルーカスさんがイェルクさんの上に剣を掲げると、剣が光り輝き出した。
黒い巨獣を倒したときとは違う、なんだか温かくて柔らかい光だ。
「ぐっ……痛ぇ。団長の回復魔導は痛いんですが……」
「怪我が回復するときは痛みを伴うものですよ。……はい。あなたも回復魔導を持っているのですから、怪我人を治しに行ってくださいね」
「……うーっす」
イェルクさんは苦痛に顔をしかめながら体を起こした。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。さあ、次へ行きましょう」
「は、はい」
次は茶色い髪の小柄な少年。
「……いーやーだー。団長の回復魔導はいーやーだー……」
消え入りそうな声でボソボソ言っているけれど、体が動かないようだ。
「ルーカスさん、あの、わたし、なにかできませんか?」
「……その子の治療がいい。コルネリウス楽そうだったもん……」
「そうですね。では陽菜様、私を活性化してください。力が高まれば、エーリヒの治療にかかる時間が短くなります。その分苦痛も少なくて済むでしょう」
「え。……はい」
わたしは、ルーカスさんが差し出した手を両手で包んだ。
さっきのイェルクさんの治療で魔力をたくさん使っちゃったってことだよね?
ルーカスさん元気になーれ。
「陽菜様のお力はとても温かくて心地良いです」
ルーカスさんは幸せそうな笑みを浮かべた後、エーリヒさんの上に剣を掲げた。
イェルクさんを治療したときよりも強い光が辺りを包む。
「「「ぎゃーっ!」」」
エーリヒさんとその周辺の人達が苦痛の叫びを上げた。
「陽菜様のおかげでエーリヒだけでなく周りの団員も治療できました」
「痛っ痛っ痛っ! 団長の回復魔導は嫌だって言ったじゃん!」
「黙りなさい、エーリヒ。あなたも早く怪我人の治療を始めなさい」
そんな感じで、わたし達は怪我人の治療を続けていったのだった。
わたし、役に立ってる?
ルーカスさんを活性化させてるんだから、ちゃんと役に立ってるよね?
うーん。自分の魔力とかまだよくわからないけれど、最初のコルネリウスさんと同じ感じで良かったのなら、イェルクさんとエーリヒさんも活性化できたんじゃないかな。
あ、わたしの力がどんなものかは知られないほうがいいって言ってたから、それで?
ちゃんと言われてたのに忘れてたわたしは莫迦だなあ。……反省。
なにも考えずに莫迦な行動をしたわたしに、ルーカスさんが謝った。
「え? ルーカスさんはなにも悪くありませんよ? わたしが考えなしだっただけです」
「いいえ。こちらの都合でなにも説明できていないのですから、不安で気が焦るのは当たり前です。先ほどご領主殿の前で陽菜様のお力について話してしまいましたし、早く活躍しなくてはと思われたのではないですか?」
このヴァーゲの町へ来るまでの間になにか説明してもらえるかと思っていたのだが、ルーカスさんは無言で一角獣を走らせていた。
たぶんそこここに散らばる穢れとやらを確認して、どう処理するか考えていたのだろう。
それは仕方がない。
穢れが新たな魔獣を生み出すと言っていたし、町にはこうして大切な人達が待っていた。元気なわたしのことなど後回しが当然だ。黒い巨獣から助けてくれて、ここまで連れてきてもらえただけでありがたいのだ。
わかってる。
「……ルーカスさんはなにも悪くありません」
「陽菜様はお優しいのですね」
ルーカスさんが微笑む。
整った顔をしたイケメンは、なにをしてもイケメンだなあ。
わたしの好みとは違うタイプだけれど、ちょっぴりときめいてしまう。
「改めてお願いいたします。私の部下達を治療するのを手伝ってください。陽菜様がひとりひとりを活性化していくと魔力欠乏症が心配ですので、私の活性化をお願いいたします。私の回復魔導なら聖騎士団の団員をすべて癒すことが可能です。私の力が及ばないときだけ、陽菜様のお力を直接注いでいただくということでよろしいでしょうか」
「はい、わかりました。……ルーカスさんと聖騎士団の団員さん達は魔力の相性がいいんですか?」
「相性が悪い者もいましたが、私の魔導で回復できるよう訓練で調整させています」
「そうなんですか」
なんかすごい。
聖騎士って命懸けの仕事みたいだから、そうやって調整しないといけないんだ。
魔力の相性の調整って、どうやるんだろう。思いながらわたしは、歩き出したルーカスさんを追いかけた。
「……お帰りなさい、団長……」
黒い髪を短く刈った厳つい感じの男性の横に、ルーカスさんが膝をつく。
「意識があるようでなによりです、イェルク」
「……団長の扱きに比べたら、魔獣の襲撃が途切れないのなんて屁でもないですよ……」
ルーカスさんがイェルクさんの上に剣を掲げると、剣が光り輝き出した。
黒い巨獣を倒したときとは違う、なんだか温かくて柔らかい光だ。
「ぐっ……痛ぇ。団長の回復魔導は痛いんですが……」
「怪我が回復するときは痛みを伴うものですよ。……はい。あなたも回復魔導を持っているのですから、怪我人を治しに行ってくださいね」
「……うーっす」
イェルクさんは苦痛に顔をしかめながら体を起こした。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。さあ、次へ行きましょう」
「は、はい」
次は茶色い髪の小柄な少年。
「……いーやーだー。団長の回復魔導はいーやーだー……」
消え入りそうな声でボソボソ言っているけれど、体が動かないようだ。
「ルーカスさん、あの、わたし、なにかできませんか?」
「……その子の治療がいい。コルネリウス楽そうだったもん……」
「そうですね。では陽菜様、私を活性化してください。力が高まれば、エーリヒの治療にかかる時間が短くなります。その分苦痛も少なくて済むでしょう」
「え。……はい」
わたしは、ルーカスさんが差し出した手を両手で包んだ。
さっきのイェルクさんの治療で魔力をたくさん使っちゃったってことだよね?
ルーカスさん元気になーれ。
「陽菜様のお力はとても温かくて心地良いです」
ルーカスさんは幸せそうな笑みを浮かべた後、エーリヒさんの上に剣を掲げた。
イェルクさんを治療したときよりも強い光が辺りを包む。
「「「ぎゃーっ!」」」
エーリヒさんとその周辺の人達が苦痛の叫びを上げた。
「陽菜様のおかげでエーリヒだけでなく周りの団員も治療できました」
「痛っ痛っ痛っ! 団長の回復魔導は嫌だって言ったじゃん!」
「黙りなさい、エーリヒ。あなたも早く怪我人の治療を始めなさい」
そんな感じで、わたし達は怪我人の治療を続けていったのだった。
わたし、役に立ってる?
ルーカスさんを活性化させてるんだから、ちゃんと役に立ってるよね?
うーん。自分の魔力とかまだよくわからないけれど、最初のコルネリウスさんと同じ感じで良かったのなら、イェルクさんとエーリヒさんも活性化できたんじゃないかな。
あ、わたしの力がどんなものかは知られないほうがいいって言ってたから、それで?
ちゃんと言われてたのに忘れてたわたしは莫迦だなあ。……反省。
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