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「死ぬつもりで来たのではありませんわ」
ジェイク様に問われて、私は微笑みました。
確かにあの子の後を追いたい気持ちはありますが、ここへは死ぬつもりで来たのではありません。
せめて、ひとつだけでも運命を変えたかったのです。
私は後ろをついてくる従者のことを思いました。
今度はジェイク様を守ってくれとお願いしなかったのに、彼は自分から大暴走討伐に参加したいと言い出したのです。
アマデウスだけは助けます。砂上の楼閣だったジェイク様との幸せと違い、本当の幸せだった結婚前の日々を支えてくれていた彼のことだけは。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
大暴走の中、押し寄せる魔獣に混戦となり、私はジェイク様ともアマデウスとも離れてしまいました。
私は武に長けた人間ではありませんけれど、リュゼ様の毒に対抗するために身に着けた製薬の技術と魔獣馬たちの活躍でなんとか生き延びています。
死にたくないとは思っていません。でも死んでしまってはアマデウスを助けることが出来ません。
「お嬢様!」
「アマデウス!」
魔獣の大群の向こうに、黒い髪の従者の姿が見えました。
駆け寄ろうとした私は背中に激しい痛みを感じました。
矢です。流れ矢に当たってしまったのです。いいえ、流れ矢がこんな風にキレイに突き刺さるものでしょうか? 矢じりが胸の間から顔を覗かせています。
最後の力で振り向いた私は、弓を構えたブランシャール大公の姿を視界に捉えました。
ああ、そうですね。
竜殺しの英雄だった父を失った、王国の跡取りとなるお子を得ることを拒む王妃などジェイク様には必要ありません。……いいえ、本当に大公はジェイク様のために動いてきたのでしょうか。
今回リュゼ様の尻尾を掴もうと探っていて、彼女が最初は大公の恋人だったことを知りました。亡くなった彼女の夫には親族がなく、その遺産のほとんどが国庫に入っていたことも。
大公は財務大臣でもありました。国庫は彼の自由になります。彼女をジェイク様の寝所の教師にしたのも大公だったはずです。
でも、もうなにも考えることは出来ません。大公が私の額に二の矢を放ったからです。父の死ももしかしたら──
ああ、こんな状況になっても私の頭に浮かぶのはジェイク様の面影です。
仕方がありません。命ある限り愛すると、女神様に誓ったのですから。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……この誓いを違えぬと、女神様に誓えますか?」
嫌な予感はしていましたが、やっぱり意識が消えてすぐに結婚式に戻っていました。命ある限り愛すると女神様に誓ってしまったからなのでしょうか。
神殿の中には父とアマデウス、リュゼ様とマリー様の姿があります。
司祭様のお言葉に、私は首を横に振りました。
「いいえ」
「カサンドラ?」
「カサンドラ様?」
ジェイク様と司祭様に微笑んで、私は誓いました。
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
ジェイク様に問われて、私は微笑みました。
確かにあの子の後を追いたい気持ちはありますが、ここへは死ぬつもりで来たのではありません。
せめて、ひとつだけでも運命を変えたかったのです。
私は後ろをついてくる従者のことを思いました。
今度はジェイク様を守ってくれとお願いしなかったのに、彼は自分から大暴走討伐に参加したいと言い出したのです。
アマデウスだけは助けます。砂上の楼閣だったジェイク様との幸せと違い、本当の幸せだった結婚前の日々を支えてくれていた彼のことだけは。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
大暴走の中、押し寄せる魔獣に混戦となり、私はジェイク様ともアマデウスとも離れてしまいました。
私は武に長けた人間ではありませんけれど、リュゼ様の毒に対抗するために身に着けた製薬の技術と魔獣馬たちの活躍でなんとか生き延びています。
死にたくないとは思っていません。でも死んでしまってはアマデウスを助けることが出来ません。
「お嬢様!」
「アマデウス!」
魔獣の大群の向こうに、黒い髪の従者の姿が見えました。
駆け寄ろうとした私は背中に激しい痛みを感じました。
矢です。流れ矢に当たってしまったのです。いいえ、流れ矢がこんな風にキレイに突き刺さるものでしょうか? 矢じりが胸の間から顔を覗かせています。
最後の力で振り向いた私は、弓を構えたブランシャール大公の姿を視界に捉えました。
ああ、そうですね。
竜殺しの英雄だった父を失った、王国の跡取りとなるお子を得ることを拒む王妃などジェイク様には必要ありません。……いいえ、本当に大公はジェイク様のために動いてきたのでしょうか。
今回リュゼ様の尻尾を掴もうと探っていて、彼女が最初は大公の恋人だったことを知りました。亡くなった彼女の夫には親族がなく、その遺産のほとんどが国庫に入っていたことも。
大公は財務大臣でもありました。国庫は彼の自由になります。彼女をジェイク様の寝所の教師にしたのも大公だったはずです。
でも、もうなにも考えることは出来ません。大公が私の額に二の矢を放ったからです。父の死ももしかしたら──
ああ、こんな状況になっても私の頭に浮かぶのはジェイク様の面影です。
仕方がありません。命ある限り愛すると、女神様に誓ったのですから。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……この誓いを違えぬと、女神様に誓えますか?」
嫌な予感はしていましたが、やっぱり意識が消えてすぐに結婚式に戻っていました。命ある限り愛すると女神様に誓ってしまったからなのでしょうか。
神殿の中には父とアマデウス、リュゼ様とマリー様の姿があります。
司祭様のお言葉に、私は首を横に振りました。
「いいえ」
「カサンドラ?」
「カサンドラ様?」
ジェイク様と司祭様に微笑んで、私は誓いました。
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
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