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フェンリル

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 王宮に戻ると通路の両脇にずらっと人が並び頭を垂れている。

 正面には女王陛下カラドナが満面の笑みで僕達を迎いれた。

 「お帰りなさい女神様、天使様、皆様
此方へどうぞ。」

 カラドナを先頭に応接間に案内される。



 「その様な事が……申し訳ございません。女王として己の不甲斐なさが悔しいです。」

 「そこまで畏まらなくても。」

 洋一がフォローを入れる。

 「あっ、こらっ!」

 ひまりの手の隙間から抜け出したカジリが出入り口のドアをカリッカリッ引っ掻く。

 早く開けるんじゃボケニンゲン!
と横にいるメイドさんを睨みつけるカジリ。

 「あらあらワンちゃんはお外にいきたいのでちゅねー。」

 赤ちゃん言葉でドアを少し開けたメイドさん。すっと部屋を後にするカジリ。

 「カジリどこいくの!」

 「あっ、申し訳ございません。お犬様を出してしまいました。命だけは……」

 「私は犬将軍綱吉じゃないから、そこまでへりくだらなくて平気よ。」

 「綱吉??」

 「きゃーー!」

 廊下の向こうからの悲鳴!慌ててヒマリが駆け出した。

 「い、い、犬がカーペットの上にう○ち、をひぃーー!!」

 いぬのうん○ぐらいで騒ぐなよ、お前も○んこぐらいするだろうが!

 あっ滅多に出ない人か?

 「カジリ、ウンコ出たの?ウンコしたらお尻を拭かないといけないんだよ。」

 ガシッとカジリの尻尾を持ち上げる必死にお尻を隠そうとするが抵抗虚しく
ヒマリにウエットティシュで丁寧に拭き取られる。

 フェンリルとしての尊厳が……

 カジリのお尻を拭いたティシュをカジリのウンコの上に置き黒い炎で焼き尽くす。一番臭いが出ない炎らしい。

 「ごめんなさいね。もう大丈夫ですわ。」

 オホホホホっ!と笑って誤魔化すヒマリ。カジリを抱っこして部屋に戻る。

 「お騒がせしました。」

 コソッと自分の席に戻るヒマリ。

 「かわいいワンちゃんですね。」

 気を使う女王カラドナ。

 「さっき盗賊のアジトで拾ったんですよ。カジリと名付けました。」

 「そうですか?カジリちゃんかわいい
ですね。」

 「カラドナ!カジリは犬ではないぞ
フェンリルぞ。」

 「えっえー!!!」

 「あのフェンリルなのですか?」

 「そうじゃヒマリ達にはまるっきり歯が立たないから従順なフリをしているが隙を見せると齧るぞ。」

 「大丈夫よカラドナ、カジリはお利口さんだからそんな事しないわ。」

 カジルの頭を撫でるヒマリ、本人は気付いてないが力強く撫ぜた為カジリの頭の皮が引っ張られ目が変顔になっている。

 「ヒマリ私にも抱かせて!」

 亜希子が手を伸ばす、ガブ!

 「カジリなんで齧るのよ!」

 瑞穂は挑戦しない。彼女は利口だ。

 「一度すべての領地をみた方がいいでしょうそれからです改革は時間が掛かりますが手は抜けませんよ覚悟して置いて下さい。」

 「今日は帰ります。蛆虫どもの処罰も決めて下さいね。」

 「それじゃ明日また来ます。」

 と聞こえた瞬間女神様方の姿が消えた。

 ふうーっと息を吐き手足を放り投げ椅子にもたれる。

 自分は何故一つも分からなかった?
上手く隠されていたから?爺を信頼し切ってたから?

 「自分で何もしなかったからだ!」

 悔しくて、情けなくて、涙が溢れ出た。誰もいない応接間に声にならない鳴き声が漏れた。



 「女神様方、旦那様方お帰りなさい!」

 「だから、いいって皆んなやる事あるのでしょう?外まで出なくても。」

 「いいえ、そうは行きません!」

 ナナちゃん、ケイト、かなえ、サリーが立ち塞がり伝える。

 「旦那様はもはや森の家の長だけではありません。ローベル、カラドナの国カベルネ、多分帰省先の国や街、村、里て同じ様な問題を解決している筈です。神界も一つ潰したのですよね。」

 「えー!僕、各方面から狙われているの?全世界指名手配犯!」

 「そこ迄は言ってませんが、良い意味でも悪い意味でも注目され研究されています。」

 「そっか、分かったよ気をつけるよ搦め手で来られたら後手に回る事も有り得るしね。まぁ、そうなったら全てをぶち壊すけど。ありがとうサリー。」

 「旦那様、あの子達がダンジョンを制覇しました。十五分です。」

 「えー!!十五分でクリア?
スゲっな、あいつら!」

 「せっかくわしが一日掛けて作り上げた物を十五分かい!」

 女神様のほっぺが膨れた。

 「じゃ残りのダンジョンは後一つコレを越えれば異世界か、なんかワクワクするね。」

 「ナナちゃん、この子カジリって言うんだ宜しくね。」

 ヒマリがカジリを紹介する。

 「おーかわいいワンコだね。ほれ頭
撫で撫でしてあげる。」

 ガブ!

 「すぐ齧るからカジリって名前なんだ。」

 「そうかい……。」

 「ナナちゃんソヤツ犬じゃねぇ狼、それもフェンリルだ。」

 「フェンリルってあの?」

 「そうだあのだ。」

 「へぇ~。」

 「まぁ、ここに来た時点で犬っころ
だが。」

 「だよな……」



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