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第零夜
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「なあ、この小説の結末はどうなるんだ? なんで、主人公が死ななければならないんだよ?」
「あなたが読んだ通り。その通りなのよ」
「どういうことだよ」
「つまり、彼は最後の最後で間違いを犯して、死んだ。それがこの物語の全て。それ以上でもそれ以下でもないの」
「それで終わりなのか? 本当にそれだけなのか?」
「ええ、そうよ。他に何があるというの?」
「いや……その……」
僕は言おうとした言葉を口に出せず、口ごもってしまう。
「わたしにもよく分からないのよ」
幼馴染の彼女は実に素っ気なく、言う。
いつも冷めたような感情の色を表さない瞳と整った顔立ちから、クール系美少女として、男子から密かに人気を集めているのを本人は知らないんだろう。
「わたし達が出会ってから、何年経ったと思うの? 分かるでしょ」
「あっ……うん。そうだね」
彼女は立ち上がると腰に手をやり、私を見下ろした。
その位置だとスカートの中が……とは言えない。
言ったが最後、そのきれいな足が僕のお腹に振り下ろされる未来が見えるからだ。
お腹なら、まだいいがその下だったら、再起不能になるかもしれない。
「もう帰ったら、どうなの? パパが帰ってくる前に部屋を片付けておかないといけないのよ」
取り付く島もないとはこのことだろう。
諦めた僕はのそのそと立ち上がり、ドアまで歩いていき、少しばかりの希望を胸に抱き、振り返った。
「また来てもいいかな?」
「いいわよ。でも、本をちゃんと持ってきてね」
「ああ、もちろんさ」
彼女の家を出た僕は門を潜り、誰も見ていないのを確認してから、懐から本を一冊取り出す。
『大いなる銀河への冒険』だった。
この本には僕の知らないエピソードが数多く、載っているに違いない。
読むのが楽しみだ。
「あなたが読んだ通り。その通りなのよ」
「どういうことだよ」
「つまり、彼は最後の最後で間違いを犯して、死んだ。それがこの物語の全て。それ以上でもそれ以下でもないの」
「それで終わりなのか? 本当にそれだけなのか?」
「ええ、そうよ。他に何があるというの?」
「いや……その……」
僕は言おうとした言葉を口に出せず、口ごもってしまう。
「わたしにもよく分からないのよ」
幼馴染の彼女は実に素っ気なく、言う。
いつも冷めたような感情の色を表さない瞳と整った顔立ちから、クール系美少女として、男子から密かに人気を集めているのを本人は知らないんだろう。
「わたし達が出会ってから、何年経ったと思うの? 分かるでしょ」
「あっ……うん。そうだね」
彼女は立ち上がると腰に手をやり、私を見下ろした。
その位置だとスカートの中が……とは言えない。
言ったが最後、そのきれいな足が僕のお腹に振り下ろされる未来が見えるからだ。
お腹なら、まだいいがその下だったら、再起不能になるかもしれない。
「もう帰ったら、どうなの? パパが帰ってくる前に部屋を片付けておかないといけないのよ」
取り付く島もないとはこのことだろう。
諦めた僕はのそのそと立ち上がり、ドアまで歩いていき、少しばかりの希望を胸に抱き、振り返った。
「また来てもいいかな?」
「いいわよ。でも、本をちゃんと持ってきてね」
「ああ、もちろんさ」
彼女の家を出た僕は門を潜り、誰も見ていないのを確認してから、懐から本を一冊取り出す。
『大いなる銀河への冒険』だった。
この本には僕の知らないエピソードが数多く、載っているに違いない。
読むのが楽しみだ。
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