泥かぶり治癒師奮闘記

砂城

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天災がやってきた その7

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 とはいえ、正面から当たるような無謀な真似はしない。
 戦意をみなぎらせた金や銀のお歴々がそこを占拠してるというのもあるし、盾もちがいない私たちは、弱ってはいるとはいえドラゴンの攻撃を真正面から受け止める手段がない。
 だから、ドラゴンの右側面のやや後方、そこに前面からの攻撃にドラゴンが気をとられている間にこっそりととりついた。
 銅の数隊が、私たちと同じようにこちら側やら反対側やらにいるのは、自分たちの実力のほどを思い知っているからだろう。ずるい、とか、卑怯とかでは絶対にない。
 こうやって自分たちにできる範囲で、少しずつでもいいからドラゴンの体力を削るのも大事なことだ。
 ってことで、私たちも小手始めとして、まずは各自がドラゴンの鱗の固さを確認しはじめた。
 何しろ、今まで見物するだけで、まだ一度も攻撃してないんだよねぇ。

 しかし、近くで見ると、本当にドラゴンって大きい。
 普段は四つ足歩行だが、さっきブレスを吐いた時みたいに後ろ脚だけ直立もできるらしく、当然その分、前よりも後ろ足の方が太くて大きい。
 体全体でちょっとした豪邸くらいはあるのだから、その足も樹齢数百年の大木くらいは楽にある。

「どっせぇいっ! ……って、固ってぇっ!?」

 その右後ろ脚のつま先に近い部分に、メレンさんが、大槌を力いっぱい振り下ろす。が、固いうろこに阻まれて、ほとんどダメージを与える事はできない。

「ちっ! 通常の矢じゃ、全部はじき返しやがるっ!」
「……くそっ、かすり傷をつけるのが精いっぱい、かっ……っ!」
「わかってたっスけど、火属性魔法、全く効きませんっ」
「固い……刃が、先に壊れる……」

 今まで見物に徹してたから、改めて攻撃を仕掛けてドラゴンの固さを実感したみたいだ。
 ドラゴン自体も、何の痛痒も感じていない様子で、前面の金銀の攻撃に集中してる。
 その光景に、私もさすがの不安になる。
 これで、本当に作戦がうまくいくんだろうか……?

「くそがっ……シエル!」

 そんな不安が頭をもたげそうになっていたところに、パランさんから声がかかる。

「は、はいっ」
「弱体化をかけろ――ただし、範囲は絞って中威力でだ」
「はいっ!」

 やっとこ私の出番のようだ――本来の『治癒師』としての役割じゃないんだけど、そっちの出番はない方がいいに決まってる。

「この世にあまねくマナよ、我が杖に宿り、かの者の守りを弱めよっ――ウィーケン!」

 きっちり詠唱し、さっきメレンさんたちが攻撃していた部分を中心に、直径一メートルくらいの範囲で弱体化をかける。

「隊長! いけっ!」
「おうっ!」

 ……なんか立場が逆な気がするが、これがうち(泥かぶり)の通常です。
 その部分に、気合を入れて隊長が斬りかかる。
 すると、先ほどとは違い、明らかに『傷』と言えるものがうろこの上に浮かび上がる。

「っ! ……さっきよりは柔い感じだが、まだ固い」
「シエル! もう一回だ!」
「はいっ!」

 出来るだけ正確さを心掛けて、同じ場所に、同じ強さで『弱体化』をかける。
 そこに隊長がまた攻撃をし、三回目にやっと――。

「せぃっ……割れた、が一枚だけか……」
「一枚でいいんだろうがよ! だが、これで目途はついたな」

 パランさんがものすごく満足そうだが、私は三回の『中程度の弱体化』でどれくらいの防御力がおちているかの計算で忙しい。
 私が出せる最高出力一回でいけるかどうか……もっと範囲を絞って魔力を集中させたにしても、正直、ギリギリだが仕方がない。
 しかも今、攻撃をしていたのは、ドラゴンがふんばっていたからか、ほとんど動いていない部分だった。正面の騎士団員に注意を向けていたからだが、『本番』ではもっと動いている場所への付与――当たり前の話だが、そう何回もかけさせてはもらえないだろう。私の魔力量からしても、乱戦のど真ん中での一発勝負。しかも、失敗は許されない正確さが要求される。

 ……ヤバい。プレッシャーで吐きそう……

「よし! それじゃ、後はチャンスを待つだけだ――周りの連中に不審がられねぇように、ちっとずつドラゴンの前面に移動しろ」

 そんな私の不安をよそに、パランさんが次の指示を下しつつ、私に向かって手を出してくる。
 何? と思ったが、直ぐに気が付いた。さっきもらった高級活力ポーションだ。
 二本ともとりだすして渡すと、それを自分と隊長で飲み干す――本来は傷を負って(癒してもらった後)、減った体力を補うためのものなんだが、体力が十分に残ってる状態で服用すると、一時的にものすごい力が出せるようになる。要するにドーピングだね。
 ただ、その後の反動が怖いので滅多にやらない――というか、高級ポーションが目の飛び出るようなお値段なのでできないんだけど、今は状況が状況だしね。

「隊長は、俺と先に行って場所どりだ。テキトーに剣をぶん回して場所を作れ。残りの連中も攻撃しながら――こっちはフリでいい。手前ぇらの最大の任務は、シエルを無傷で俺たちのとこに連れてくることだ。いいか? かすり傷一つつけさせんじゃねぇぞ!」

 パランさん……私の事、心配してくれて――とかは、間違っても思わない。だって――。

「こいつには、弱体化に専念させなきゃならねぇ。傷なんぞで集中力をそがせるわけにゃいかねぇんだからな!」

 はい、予想通りの理由です。
 わかってたことですし、これで凹んだりはしませんよ。だって、現状、最優先なのは『ドラゴンを倒すこと』なのだから。


 最初にドラゴンを見たときの感想は『は? これ倒すなんて無理じゃない? どうやったってたかが人間がどうこうできる存在じゃないでしょう?』だった。
 何しろ、こっちの大陸で最大の魔物は、数年に一度、目撃情報が得られるかどうかな『飛竜(ワイバーン)』だ。
 一応は、今目の前にいるでかぶつと同じ『竜(ドラゴン)』というくくりに入るんだが、大きさは段違い。被膜のある翼はたしかに大きいが、本体はといえば馬数頭分でしかない。高速で空を飛び回るという厄介な奴だが、その翼を攻撃して地面に叩き落すことができれば討伐は不可能じゃない。
 騎士団にも、『倒した』って記録があるからね。
 あれ? 今、気が付いたんだけど、ワイバーンもやっぱり魔法で飛び回ってたのかしら?
 図鑑に載ってるのを見る限り、翼と本体の対比が普通の鳥なんかと同じくらいだったから、気付かれなかったのかもしれないな。
 ……それはさておき、それが『最大の魔物』だったんだから、家一軒以上の大きさの『本物のドラゴン』を見たときの驚きというか、絶望感はわかってもらえると思う。
 いくら討伐騎士団を総動員したからといっても、相手が悪すぎる。
 御伽噺――もう神話といっていいくらい古い話だ――の中の存在のソレを相手に、神様から力を授かった勇者でもない、普通の人間たちが何ができるっていうのか?
 でも、そう思っていたとしても逃げるわけにはいかない。
 私たちは『魔物討伐騎士団』なのだ。その身を挺して、国を、民を魔物たちから守るのが職務だ。それは騎士だけではなく、私のような治癒師も同じ。だからこそ、他ではないような高給をもらえてるんだからね。
 それが『自分の命』に見合う額かどうかは知らんが、少なくともその覚悟がない人は騎士団付き治癒師にはなれない――そういうことなので、私もまじめに死を覚悟してここにいる。
 だけど、死なないに越したことはないから、頑張ってるわけですよ。私も、皆も。
 だからこそ――。

「最初はどうなる事かと思ったけど……なんか、いい感じっスね」
「だねー、やっぱ騎士団ってすごいや」
「……油断、ダメ……気を、引き締める」

 隊長とパランさんが先行したため、私の側にいるのはサーフェスさん、メレンさん、ザハブさんの三名だ。
 パランさんから言いつけられた通り、攻撃するふり(怪しまれないように、たまにほんとに当ててるけど)をしつつ、合流地点へと向かっている。
 そういや、姫様たちどうしたんだろな? ちょっと見まわしてみたけど、どこにもいない感じだった。もしかしたら、ゲートで送り返されたのかもしれない。もう完全に役には立たないし、だからと言って王族や高位貴族な彼らを、そこらに転がしておくわけにもいかないからねぇ。

「……シエル、大丈夫? 速度……体力?」
「大丈夫ですよ」

 さすがに一直線に目的地に向かうと目立ちすぎるから、ヒットアンドアウェイを繰り返すフリをしながら、ジワジワと隊長たちの方へと近づいてますが、その分、余分に動かないといけない。
 泥かぶりと一緒の訓練で、私の体力も上がってるけど、何しろ長丁場だから、それがもつか心配してくれてるんです。優しいよなぁ、ザハブさん。サーフェスさんとメレンさんも、口には出さないけど、できるだけ移動が激しくならないように気を使ってくれてる模様。
 ありがたいです。ホント、良い人(除く・パランさん)ばっかりだよ、泥かぶりって。

 そして、改めてドラゴンの様子を伺えば――最初の余裕はすでにない。懸命に騎士団の攻撃を防いでいるが、その体は傷つき、ところどころ赤い血――ドラゴンの血も赤なのね――を流しているところさえある。全体の大きさに比べれば微々たるものでしかないが、確実にダメージを与えられているとみていいだろう。
 奥の手のブレスも、姫様の尊い犠牲(?)で騎士団に致命的な損害を与えることはできなかったし――でも、残念なことに、今すぐ倒せる、なんて状態ではない。
 体力的(ドラゴンのね)には、まだまだ余裕はありそうだし、例の逃げ癖もある。今はまだ、魔術師さんたちが張った飛翔防止の結界があるが、もし私たちが全滅したら当然ながらそれも消える。そして、翼に受けた傷が治った後は、どこにでも行き放題だ。
 それで、元居た東の大陸に戻ってくれるならいいが、その確証がない以上、ここできちんと息の根を止めないとダメだ。

 ……ほんと、こんなこと、うちの国だけ、というか、討伐騎士団だけでやる事じゃないよねぇ。けど、他の国に応援を求める暇はなかったし、他にも騎士団は居るにはいるが対人特化というか、普通の騎士団だし、あまりに大勢をここに集めても指揮系統に混乱が起きても困るんだろう。
 ってことで、私達だけで、何とかここで仕留めないといけない――最初からわかってることだが、最終局面に近い今、もう一度、その事を肝に銘じているわけですよ。

「えっと、隊長たちは……あ! いたっ!」

 ドラゴンの正面、やや右より。
 金銀のお歴々の間に、見慣れた鎧姿が見えた。
 最前線の最前線ってことで、ドラゴンからの攻撃だけじゃなく、それを狙った矢や、魔法のとばっちりが降り注ぐような危険な場所だが、幸いにも無事らしい。
 派手に剣を振り回し、ちょっとずつだけど、自分の周囲に隙間を作っていく。パランさんはその側で、弓を構えて撃つフリをしながら――こっちも役者だな。撃とうとして、目標が動いた、って感じで何度もやめて、けどきっちり弓を引き搾るスペースだけは自分の周りに確保してる。
 なんで遠距離攻撃な弓がこんなところ(最前線)にいるのかと不審に思われてるかもしれないけど、皆、攻撃するのに忙しいから咎められることもないみたいだね。
 ただ、私たちはまだ隊長のところには行けない。
 そこに行くには、条件が整ってない。
 だから、隊長達(というか、パランさん)も私たちに気が付いても、自分のところに来い、とは合図してこない。
 その『条件』とは――。


「どりゃぁぁぁっ!!」

 裂帛の気合とともに、金らしい重騎士が、ドラゴンの右前足に戦槌を叩き込む。元々、そこだけを重点的に狙っていたのか、その分の鱗はぐしゃぐしゃにつぶれており、大漁の血がにじんでいた。そこへ、更に全力で打ち込まれた衝撃に、流石のドラゴンも踏ん張りがきかなくなったんだろう。右側を下にした形で、大きくその体がかしいだ。

「っ! シエルっ! こっちにこいっ!!」

 それを見たパランさんが叫ぶ。
 それに応じて、メレンさんが先頭を切って飛びだした。大槌を振り回して、途中にいる騎士さんたちをけん制し……てか、何発か当たってませんか? 道を作ってくれた後を、私とサーフェスさん、ザハブさんが続く。

「シエル!」
「隊長っ! ど、どこですかっ!?」

 私の問いは、勿論、隊長の位置を尋ねたわけじゃない。

「あそこだっ! ……くそっ、地面すれすれのところだっ!」

 隊長が剣先で指示したのは、ドラゴンの胸の中央、やや上あたり。けど、今言ったように、ドラゴンの体が倒れて斜めになっているために、私たちの位置からはやや見えづらい状況になっている。
 それでも目を凝らし、必死で探すと――お目当ての部分が見つかる。けど、やはり位置がマズい。

「ちっ……」

 それに気が付いたパランさんが、いきなり私たちの側から離れ、弓を構える。
 何をするのかと思ったら、背中に担いでいた矢筒から、一本の矢を取り出し――なんかそれ、普通のよりもかなり太くないですか? 金属製なのか日の光を受けて鈍く輝いてるし、先端には矢じりが付いておらず、その代わりに箆(の)というかシャフトの先が鋭く斜めに切られてる。
 それを弓につがえ、力いっぱい――矢そのものの重量もいつものよりもあるのだろう――限界まで引き絞ったかと思うと、ドラゴンの顔面に向かって射放った。

――Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

 うわ、えぐい……っ!

 パランさんが狙ったのは、ドラゴンの顔面というか『眼』だ。倒れ込んだせいで動きが止まっていたからこそできたんだろうが……見事にその右の目玉に突き刺さる。
 しかも、あの矢――どうやら中空になっているらしく、矢筈の部分からやや薄い血の色をした液体が勢いよくほとばしった。

 ねぇ、知ってる? 目玉って中身、ほとんど液体なんだよ。 

 物凄く痛そう……ついドラゴンに同情してしまう。同情するだけで、手は緩めないけどね。
 しかし、こんな隠し玉をもってたんですね、パランさん。
 そして、それを食らったドラゴンは、これまでにないほどにパニックになってる。そりゃそうだよねぇ。
 倒れていた体が跳ね起きて、必死になってその矢を抜こうとしている。けど、ドラゴンの手(?)に比べて、矢はあまりにも小さいし、ダメージを受けていた側だったこともあり、うまくつかめないらしい。
 とにかく必死で――この瞬間だけは、目の前にいる騎士たちの事も忘れた様子で、矢を抜くことだけに気をとられている。

 千載一遇。
 今が、チャンスだ。

 立ち上がってくれたおかげで、お目当ての部分がよく見えるようになる。私の身長の三倍くらいの高さで、真正面。
 そこに向かって、元々練り上げていた魔力を詠唱によって解放する。

「わが身を満たすマナよ、我が杖に全て宿り、放たれた後、かの者を弱らしめよ――エクストラウィーケン!」

 私にできる最大出力だ。この後、かすり傷の治癒もできないくらいに、全魔力をつかって発動させる。
 範囲は、私の腕の長さ位、目標はドラゴンの胸にある一枚だけ逆さに生えた鱗――逆鱗というらしい。
 隊長曰く、弱点らしい弱点を持たないドラゴンの唯一の泣き所。
 下手に攻撃をすれば、激怒して攻撃力が上がってしまう。だけど、一撃でそれを貫くことができたら――そのとき、私に不思議なことが起こった。
 まるで、時間の進み方が遅くなったような感じ。周りの人たちの動きがひどくゆっくりに感じられ、私だけが速く動いてるみたいな感覚のなかで、これまでにないくらい思考がさえる。魔力を開放するのもいつもよりもスムーズで、狙った場所がまるで自分の方から私の魔力を呼び込んでくれるようなそんな不思議な……。

「メレンっ!」
「はいっ!」
「サーフェスっ!」
「おうっ!」

 狙いは過たず、私の放った弱体化が、間違いなくそこに命中したのを確認して、パランさんが叫ぶ。
 それの声に応じて、メレンさんが大槌を放り出したかと思うと、ドラゴンに背を向けて、腰を低く構えた。前で両手を組んでいる。
 そこに向かい、隊長が走り寄り、メレンさんの組んだ手に足をかけ、反動をつけて高くジャンプする。
 サーフェスさんが、風魔法で空中での姿勢の補助と勢いの後押しをし、隊長の体はまるでパランさんが放った矢のような勢いで、ドラゴンの胸に向かって飛んでいった。

「うぉぉぉぉっっ!」

 隊長の気合の入った叫びが、なぜかひどく鮮明に聞こえた。

 そして――その手に持った剣が深々と、ドラゴンの鱗を貫き、その下にある肉へと突き刺さったのを見た記憶を最後に、私は魔力の欠乏により意識を失った。
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