1 / 20
プロローグ
しおりを挟む
突発の任務でくたくたにくたびれて、戻ってきたばかりだってのに。
帰還用のゲートをくぐった途端、私は数人のキラキラしい男達に囲まれていた。
「貴様っ! この泥棒猫がっ!」
「姫様のいらっしゃらない間に、こそこそと……下賤な平民らしい姑息な所業だな」
「おとなしくどぶ掃除でもしていればいいものを、よくも我らの領分へと踏み込んでくれたものだ。覚悟はできているだろうな?」
はい? 何をおっしゃっておられるのかわかりません。
みたところ完全装備ですが、今から任務でしょうか?
だったら、私なんかに構わずにさっさと行かれたらいいんじゃないかと思うんですけど……。
「ね、ねぇ、ルイス、もういいわ……いいのよ、私が至らなかったのがいけないのです……だから、どうかその方を許して差し上げて……?」
「ああ、姫様、なんとお優しい――貴様、この姫様の御恩情をありがたく思うのだな」
少し離れたところには、やはり完全装備の女性が一人。その側には同じ隊と思しき男性が控えているが……この人たち、なんか見たことある。
だが、私のこの推測が当たっているとしても、その方々になじられる理由に全く思い当たりません。
何やら私が悪いことになってるみたいなんだけど――とりあえず、その理由を教えていただけませんかね?
「……何だ、その顔は? もしや、これ以上、姫様に狼藉を働く気か?」
「なんだとっ!? おい、貴様。俺が、その腐った性根を叩き直してくれる!」
さらには、状況がわからないせいで私が何も言わないのをいいことに、冤罪までかけられてるし。
っていうか、狼藉ってなに? 私、まだ何にもアクション起こしてないんですがねぇ。
けど、この調子では何か言ったら言ったで、その揚げ足取りというか、明後日の方向に悪くとらえてくれるのは目に見えてる。だから黙ってるんであって……って、そんなことを考えてるうちに、目の前で三文芝居が始まった。
おいおい……。
「まぁ、待て、ファビアン。ここに姫様がいらっしゃるのを忘れるな」
「ディモスの言うとおりだ。やるなら別の場所にしろ、ファビアン」
「姫様の御前を汚すようなことは、このエリエスが許さん――それよりも、姫。下賤なものをお目にされて、ご気分を悪くされているのではありませんか?」
「何だとっ!? 姫っ、大丈夫ですか?」
「どうか、遠慮なく私にもたれかかられてくださいっ」
「おい、抜け駆けは許さんぞっ! 姫、宜しければ私がお部屋までお運びいたします」
「みんな……それほどまでに私の事を案じてくれるのですね」
出来れば、こういうのは他所でやってくれないかなぁ。
ダメだってのなら、私が場所を移す――と、後でまたごちゃごちゃとうるさいだろうし……ほんとに、何でこんなことになってるんだろう?
思わず、遠い目になりながら、こうなった顛末を思い返す。
そう、あれは、私がのんびりと自分の部屋でくつろいでいた時だった。
帰還用のゲートをくぐった途端、私は数人のキラキラしい男達に囲まれていた。
「貴様っ! この泥棒猫がっ!」
「姫様のいらっしゃらない間に、こそこそと……下賤な平民らしい姑息な所業だな」
「おとなしくどぶ掃除でもしていればいいものを、よくも我らの領分へと踏み込んでくれたものだ。覚悟はできているだろうな?」
はい? 何をおっしゃっておられるのかわかりません。
みたところ完全装備ですが、今から任務でしょうか?
だったら、私なんかに構わずにさっさと行かれたらいいんじゃないかと思うんですけど……。
「ね、ねぇ、ルイス、もういいわ……いいのよ、私が至らなかったのがいけないのです……だから、どうかその方を許して差し上げて……?」
「ああ、姫様、なんとお優しい――貴様、この姫様の御恩情をありがたく思うのだな」
少し離れたところには、やはり完全装備の女性が一人。その側には同じ隊と思しき男性が控えているが……この人たち、なんか見たことある。
だが、私のこの推測が当たっているとしても、その方々になじられる理由に全く思い当たりません。
何やら私が悪いことになってるみたいなんだけど――とりあえず、その理由を教えていただけませんかね?
「……何だ、その顔は? もしや、これ以上、姫様に狼藉を働く気か?」
「なんだとっ!? おい、貴様。俺が、その腐った性根を叩き直してくれる!」
さらには、状況がわからないせいで私が何も言わないのをいいことに、冤罪までかけられてるし。
っていうか、狼藉ってなに? 私、まだ何にもアクション起こしてないんですがねぇ。
けど、この調子では何か言ったら言ったで、その揚げ足取りというか、明後日の方向に悪くとらえてくれるのは目に見えてる。だから黙ってるんであって……って、そんなことを考えてるうちに、目の前で三文芝居が始まった。
おいおい……。
「まぁ、待て、ファビアン。ここに姫様がいらっしゃるのを忘れるな」
「ディモスの言うとおりだ。やるなら別の場所にしろ、ファビアン」
「姫様の御前を汚すようなことは、このエリエスが許さん――それよりも、姫。下賤なものをお目にされて、ご気分を悪くされているのではありませんか?」
「何だとっ!? 姫っ、大丈夫ですか?」
「どうか、遠慮なく私にもたれかかられてくださいっ」
「おい、抜け駆けは許さんぞっ! 姫、宜しければ私がお部屋までお運びいたします」
「みんな……それほどまでに私の事を案じてくれるのですね」
出来れば、こういうのは他所でやってくれないかなぁ。
ダメだってのなら、私が場所を移す――と、後でまたごちゃごちゃとうるさいだろうし……ほんとに、何でこんなことになってるんだろう?
思わず、遠い目になりながら、こうなった顛末を思い返す。
そう、あれは、私がのんびりと自分の部屋でくつろいでいた時だった。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる