泥かぶり治癒師奮闘記

砂城

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プロローグ

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 突発の任務でくたくたにくたびれて、戻ってきたばかりだってのに。
 帰還用のゲートをくぐった途端、私は数人のキラキラしい男達に囲まれていた。

「貴様っ! この泥棒猫がっ!」
「姫様のいらっしゃらない間に、こそこそと……下賤な平民らしい姑息な所業だな」
「おとなしくどぶ掃除でもしていればいいものを、よくも我らの領分へと踏み込んでくれたものだ。覚悟はできているだろうな?」

 はい? 何をおっしゃっておられるのかわかりません。
 みたところ完全装備ですが、今から任務でしょうか?
 だったら、私なんかに構わずにさっさと行かれたらいいんじゃないかと思うんですけど……。

「ね、ねぇ、ルイス、もういいわ……いいのよ、私が至らなかったのがいけないのです……だから、どうかその方を許して差し上げて……?」
「ああ、姫様、なんとお優しい――貴様、この姫様の御恩情をありがたく思うのだな」

 少し離れたところには、やはり完全装備の女性が一人。その側には同じ隊と思しき男性が控えているが……この人たち、なんか見たことある。
 だが、私のこの推測が当たっているとしても、その方々になじられる理由に全く思い当たりません。
 何やら私が悪いことになってるみたいなんだけど――とりあえず、その理由を教えていただけませんかね?

「……何だ、その顔は? もしや、これ以上、姫様に狼藉を働く気か?」
「なんだとっ!? おい、貴様。俺が、その腐った性根を叩き直してくれる!」

 さらには、状況がわからないせいで私が何も言わないのをいいことに、冤罪までかけられてるし。
 っていうか、狼藉ってなに? 私、まだ何にもアクション起こしてないんですがねぇ。
 けど、この調子では何か言ったら言ったで、その揚げ足取りというか、明後日の方向に悪くとらえてくれるのは目に見えてる。だから黙ってるんであって……って、そんなことを考えてるうちに、目の前で三文芝居が始まった。
 おいおい……。

「まぁ、待て、ファビアン。ここに姫様がいらっしゃるのを忘れるな」
「ディモスの言うとおりだ。やるなら別の場所にしろ、ファビアン」
「姫様の御前を汚すようなことは、このエリエスが許さん――それよりも、姫。下賤なものをお目にされて、ご気分を悪くされているのではありませんか?」
「何だとっ!? 姫っ、大丈夫ですか?」
「どうか、遠慮なく私にもたれかかられてくださいっ」
「おい、抜け駆けは許さんぞっ! 姫、宜しければ私がお部屋までお運びいたします」
「みんな……それほどまでに私の事を案じてくれるのですね」

 出来れば、こういうのは他所でやってくれないかなぁ。
 ダメだってのなら、私が場所を移す――と、後でまたごちゃごちゃとうるさいだろうし……ほんとに、何でこんなことになってるんだろう?
 思わず、遠い目になりながら、こうなった顛末を思い返す。

 そう、あれは、私がのんびりと自分の部屋でくつろいでいた時だった。
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