32 / 55
第32話 全知の盾
しおりを挟む私とお兄様の結婚式の三日前に妖精の国へ、お兄様が戦争をしに行くことになりました。
事の発端は妖精の国の者からソフィアさんが殺されたからだそうです。お兄様からソフィアさんが殺されたことを聞いた私は、メイド服から外着に着替えて城に向かいました。
ソフィアさんの殺された現場は死体を置かれていなく、部屋は血が飛び散っていました。飛び散った血は赤黒い血に変わり、この惨状を成した場面を想像するだけで、残忍で惨たらしく殺されたんだと思いました。
何故ソフィアさんをお兄様が殺したのか、何故知らないお兄様をお兄様と言っているのか、何故知らないお兄様と結婚式をあげないといけないのか。
何故お兄様に言われた時のように、知らないお兄様の言うことを聞いてしまうのか。
記憶操作のスキルを掛けられていると思うのに、相当強力なスキルなのか、記憶の誤差があるのに解ける気がしない。
お兄様がお兄様と違うと分かるほどなのに、お兄様をお兄様と思ってしまう。
これだけの強力なスキルなのに、素人が使っているような違和感が拭えない。
壊れた指輪を拾う。
ソフィアさんがお兄様から貰った指輪が私も欲しくて、お兄様にねだったのは遠い昔のことなのに鮮明に思い出す。
ソフィアさんは勝ち誇ってましたね。
そんな指輪を捨てたということは、ソフィアさんは知らないお兄様をお兄様と思っていましたし、知らないお兄様がこの惨状を創り出したことは間違えないはずです。
本当のお兄様だったらフェニックスの指輪のことも、私が嘘を見抜く目を持っていることも、わかるでしょう。
お兄様は教会の女の人が現れてから、用があると何処へ行くとも言わないで、城へ行きました。何処へ行くかは嘘を見抜くよりも簡単です。
お兄様が帰ってきて、服は同じでしたが、私がお洗濯している服じゃないことで怪しいと思い、城が慌ただしいですねと言ったら、ペラペラと妖精の国と戦争がしたいと話してくれました。
「おいノエル! ソフィアさんはどうした!」
お兄様がもう一度死んだのを確認したいのか、私に遅れてやって来ました。
「もう片付けられた後みたいですね。あっ! ソフィアさんは死んだ時に自分の身体がマナ還元される指輪を嵌めてはしたね。自分の身体が人の敵に渡らないように」
この部屋で拾いましたと、お兄様にフェニックスの指輪を見せます。
「そうなのか」
「えっ、お兄様がソフィアさんに上げたんですよ、覚えていないのですか?」
「そ、そうだったな」
お兄様はポーチから弓を持って目を閉じる。
「何をやっているのですか?」
「いや、なんでもない」
集中されないように声を掛けるとお兄様は弓をポーチにしまい、ぎこちない笑顔で私を見てくる。
お兄様はお兄様とは次元が違いすぎる武器を持っている。弓や盾、それに剣を、まだまだ持っているかもしれない。
その武器はムーリク王国の教会で見たヒビの入った剣の偽物に似ている。お兄様が持っているのが神が持っていたという武器、神器じゃないかと思っている。
「ソフィアさんを殺した人はどこに行ったのでしょう」
「僕が殺しといた!」
「そうですか、さすがお兄様ですね」
ソフィアさんにこんなこともあろうかと妖精の国の入り方を教えてて良かったと思う。私の友達と言って木にシフルちゃんと会いたいと問いかけたら良いと。
「お兄様が屋敷から出た頃に教会の女の人が来たんですが。お兄様が失敗した時に私を殺すとか不穏なことを言っていましたね」
「ホントかそれは!」
「はい」
お兄様は心底心配したように眉を下げ、私の両肩を掴む。
「私は殺されるんですか?」
「そんなことはさせない!」
あっ! お兄様は何かを思い付くと、ポーチから金色の盾を私に渡す。
金色の盾は白と黒の装飾が付けられて、懐かしい感じがする。
「これは絶対防御の盾だ! これがあれば教会の人はノエルを殺すことは不可能」
「お兄様が使ってください。お兄様がこの盾で自分を守ってください!」
「いいや、これはノエルのだ」
私はわかりましたと言って、神器を貰う。
盾に触れているだけで、私の真眼以上の情報が頭に流れた。クラっとふらつく。
「ノエル! 大丈夫か」
「は、はい」
お兄様が心配してくれている、佐藤さんが。
この盾は絶対防御の盾じゃない、これは私の力を最大限に引き出す盾だ、全知の盾。
記憶が戻っていく、回復している? 神器の銃で記憶を破壊されて、違う記憶と呪いが付与されていた。呪いは佐藤さんの言うことを聞く呪い、そして佐藤さんをお兄様と思い想う呪い。
こんな素人が考えた呪いでも、解くことが出来なかった。神器の銃は相当に恐ろしい。でも呪いを無効にして、記憶も回復させる神器の盾も相当だと思います。
佐藤さんが敵になった時に守れる武器が欲しかったんですけど、それ以上の物を手に入れてしまいました。
可愛がれている内に次の手を考えておけ、はお兄様からの教えです。
盾をポーチに入れ、血なまぐさい部屋を後にして、佐藤さんに
「妖精の国へ攻めるのはいいですが、結婚式までには終わらしてくださいね」
「あぁ、任せておけ!」
「私は屋敷でお待ちしております」
ラクゼリアとノエルはお兄様をお待ちしております。
妖精の国へ行って、テトナちゃんとお兄様を困らしてしまおうか。
0
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる