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第21話 馬鹿の行き先
しおりを挟む私たちはラクセルの街へ来ていた。魔王が出たと聞いて来たら、領主と貴族の内輪揉めだった。勘弁してよ。
でもラクセルの街に来たのは魔王はついでで、お祭りがメインだったりする。サランド・メシュマレーという魔王を倒した私たちはお休みがてら、モーブルとお祭りを覗こうと考えていた。
考えていたのだが、祭りにはノエルがいた。モーブルは記憶喪失と言っても、極度のシスコンだったから、祭りでノエルを見たら一目惚れだったらしくプロポーズをしていた。
モーブルとノエルが会ったらこうなる事は分かってたけど、今回は私もモーブルに付き合って出来る限りの協力をしたのに、ノエルに一目惚れとはショックだった。
ノエルはブラコンを卒業して、兄を捨て、もう誰か知らない男と結婚していた。ノエルが男のことを夫と言っていた、夫なら結婚したということだろう。
花火が終わり、だいぶモーブルとは仲が深まった気がして、頬にキスをした。モーブルは満更でもなさそうだった。
そして、またノエルがいた。先に動いたのはモーブル。
モーブルは俺に勝たないと妹はやらないぞと言って、ノエルの夫に絡んでたけど、呆気なくやられてしまった。
ノエルの夫も普通のイケメンという感じで、モーブルとは比べようも無かったけど、凄く強かった。
そして今は、モーブルの夜間修行を見ている。
一日程度じゃノエルの夫に勝てないのに、なんでそんなに必死になれるのよ。
なんで剣を持ったまま走り込みなのよ。
記憶喪失になったら、性格まで変わって、しまいにはバカになるってどういう事よ。
私が好きなモーブルは、カッコよくて、絶対にどんなに敵が強くても、どんなに負けていても立ち上がれる強い人だった。
そのカッコイイところは、強くなりすぎて見れなくなってしまったと思ったら、記憶喪失になって凄く弱くなって帰って来るんだから、長生きはするものね。
またあのカッコイイところが見れる。そう思って着いてきたけど、ガレッグの街のメシュマレーの倒し方は酷かった。
魔王を倒せたこと、それ自体はいいんだけど、絶対に前のモーブルならトドメを刺さなかったなと思う。
前のモーブルは戦っている最中に強くなっていった、絶対に勝てない相手にも数時間後には勝利の兆しが見えていた。
そういう勇者なモーブルに憧れて、好きになったんだと思う。
前のモーブルと今のモーブルを比べてもどうしようも無い。でも比べてしまう、今のモーブルには勇者の才能がないことに。
気の所為かも知れないけど、モーブルがだんだんと弱くなっているような気さえする。
ノエルが勇者の記憶を呼び覚ますのだったら、私はいらない。今はノエルのお陰でノエルの兄ということを思い出した。
私が妹がいると言った時には、無反応だったのにだ。ノエルを見た瞬間から、好きになり、ノエルが妹だと知ると妹として守らなければいけないという使命感で満たされている。
なんでノエルが妹なのよ、ここまで大切にされるなら私が妹が良かった。
いや、私じゃダメでしょうね。
「モーブル、私宿に帰っているから。今週中には城に帰って、ココネの街に行くわよ」
「分かった!」
私は意味不明の修行には付き合えないし、宿に帰ることにした。
ノエルは旅してい最中だと行っていたし、モーブルもノエルの言葉は一語一句全て暗記しているだろうから、また会えると思っている。
その時にノエルを取り替えせればいいことを。
モーブルも明日の朝一からノエルが泊まっている宿に襲撃したりはしないでしょうし、そこまで馬鹿じゃないはず。
「おはよう」
欠伸をしながら朝の陽射しを浴びて、起床する。
昨日は宿に着いて、ご飯を食べて、モーブルは一時待ったが帰ってこなかったので、私はそのまま眠ったけど。
朝起きたらモーブルはいなかった。
部屋には二つのベットがあり、一つは使用した感じが無かった。あの後、モーブルは宿に帰ってこなかったとみえる。
着替えて、モーブルを探しに宿を出て、浜に向かった。
海についたら、グーグーと寝るモーブルの姿があった。祭りの後で、清掃の方がゴミ拾いに来ていて、笑われている。
私も仲間とは思われたくないけど、城に帰らないといけない。
「モーブル! モーブル!」
身体を揺すりながら、名前を呼ぶ。
モーブルは、むにゃむにゃしながら、起き上がると。
「朝! ノエル!」
ノエルの名前を呼んで、走り出そうとしたところで、私が手を繋ぎ止めた。
「離せ! ソフィアさん!」
「ノエルの宿は? 宿に泊まってなかったら? ノエルの行き先に見当は? 探しても見つかるはずがない、祭りで会ったのは運が良かっただけ」
「僕とノエルは運命で繋がっているから、僕が行くとこにいるんだ!」
記憶喪失してから、モーブルは相当なバカになっていた。
その後はモーブルの運命を信じて、ラクセルの街でノエルを一日中探し回った。
居ないと分かったのは祭りの日から三日後だった。
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