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<<008 リンゴ飴食べたい
しおりを挟む俺はどこか心待ちにしていたのかも知れない。
フミカが誘ってくれる事を。
自分は嫌われようと努力してるって言うのに、相手からは好きでいて欲しいという矛盾。
いや、わかってるんだ......。
俺が間違ってることぐらいはとっくに。
全ての授業が終わり、全校生徒が武道館に移動する。
ただの学校行事。
シーンと静まり返った武道館の会場では既に薄暗く、カチャカチャとパイプ椅子が揺れる音だけ。
怖い先生が見張っているという事もあるが、私語は厳禁を皆守っている。
フミカとの放課後を少しだけ期待している自分に嫌気がさすが、早くこの行事を終わらせてくれという俺の考えは皆一緒だろう。
「え~と......」
キーンと反響音が鳴り響き武道館の舞台へと皆の視線が向かう。
会長 (仮)のイケメン君がマイクを握っていた。
「鈴木です、毎朝見てるから流石に顔は覚えてくれたよね、忘れた人は挙手を」
軽いジョーダンを交えながら話すイケメン君。
支持率100パーセントなんて言われているのが良くわかるぐらいだ。
俺はそんなのに賛成した覚えはないから、支持率99パーセントだけどな。
「前置きは置いといて......恋愛自由化に向けての運動を僕はずっと考えていました、ですがこの学校は恋愛を許してくれません! だから僕は先生方に聞きました」
マイクが乗る台を力強く叩くイケメン。
まぁ、様になってるよ。
「不純異性交遊は勉強する所には相応しくないと......可笑しくないですか? 付き合っても隠れて付き合うしかない、その分勉強にも支障が出たり、毎日相手の事を想って勉強が手につかない、思春期のあるあるですよね?」
シーンと静まり返ってたはずの会場がイケメンムードに包まれる。
小さな呟きから始まり、今では皆が不満を言いまくってうるさい。
波のような不満を一身に受けたイケメンはまたも机を叩く。
「だったら相応しい者同士が付き合えば丸く収まるんじゃないですか? 不純など、どこにもない互いを高めあって行ける純粋な者同士が付き合えば」
周りを見ると救世主でも見たように皆の目が輝き、先程まで不満を叫んでいた奴等が一斉に口を紡ぐ。
「それでは置いておいた本題です」
これがアイツの手だ、昔の俺を追い込んだように全てを自分が得をするように持っていくやり方。
周りを味方につけ、言いなりにさせる、これが人間の世界で1番強い力。
イケメン君はニヤリと笑う。
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