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記憶
しおりを挟む告白に応えてくれたリリアに話した。
全てを。
「じゃあ私を助ける為に……みんな」
全てを聞き終わったリリアが口を開ける。
「死んじゃったの」
トウマは無言。
「ねぇ、なんとか言ってよ! ねぇ」
大粒の涙を流すリリアにトウマは言葉を交わすことが出来なかった。
突如リリアの様子が激変する。
「あは、ははは、ははは」
狂ったように笑いだすリリア。
『まずい、その娘を殺せ!』
邪心がトウマの中から語りかける。
『どうした』
「ハハハ」
リリアの魔力が膨大に膨れ上がる。
『魂が安定していない、殺すのじゃ』
『俺にリリアを殺せと!』
『心が壊れる前に殺さないと生き返らせることが出来ないぞ』
トウマは落ちた剣を拾う。
このままでは魔力暴走でリリアが死ぬ。
「ごめん」
トウマはリリアを剣で貫く。
「ごめん」
トウマは何度も謝罪する。
するとリリアはトウマを抱き寄せる。
『もう誰も殺さないで』
リリアの最後の言葉がトウマの心に深々と突き刺さる。
トウマはとうとう大切な人の命まで奪ってしまった。
『デスキャンセル』
剣を引き抜くと能力を発動する。
剣を捨て寝息をたてるリリアを両手で抱える。
「邪神、俺達が安心して暮らせるようにするにはどうしたらいい?」
「圧倒的な力じゃな」
「それを俺にくれ」
「いいじゃろう」
『代価は圧倒的な力』
『代価は下僕の心』
契約が完了すると。
黒だった瞳が虹色に変化する。
「はは、ハハハ」
「気分はどうだ?」
『あぁ、サイコーの気分だ!』
トウマは心も奪われた。
「長々と聞いてやったが……だから?」
クレスは邪神に問いただす。
「その心の隙間にずっと我がいたということじゃ」
「弱味とかよくわからなかったんだが?」
「弱味は契約を破棄すると我との契約を全てを無くす事じゃな」
「という事は今までコイツは別次元のリリアを守るためにずっと契約を続けていたという事か?」
「まぁそういうことじゃな」
「圧倒的な力ね、あの力は奪った力だけじゃなかったのか」
「我と契約した下僕が貴様に負けことが予想外だったのじゃ、貴様はなんなのじゃ! 本当に人なのか? 化物が!」
化物と言われたクレスは真実を告げてやるこたにした。
「あっ! 言っとくがお前も誰かを殺そうとしたら死ぬからな」
「えっ?」
邪神は固まりクレスをみる。
「精霊の能力は絶対だ、復活も出来ないぞ」
邪神は立ち上がる事も出来ず、その場から動けない。
「はい皆んな解散」
クレスは手をパチパチ叩くと解散を表明する。
『覚えておれよ、貴様だけは絶対後悔させてやる!』
邪神がクレスに向けて叫ぶ。
『手加減してやるから何時でもかかってこいよ』
クレスは黒剣を空中に放るとキラキラと粒子を放ちながら消えていった。
邪神はトウマの中から出ると次元の裂け目から出ていく。
「見逃してよかったのですか?」
アリアスがクレスに近寄る。
「あぁ、アイツはまだ引き返せる場所にいる」
「そこの最強さんはどうします?」
「心を取り戻したらしいからな、少し教育したら面白そうだ」
「それ、さっきの邪神と変わら……」
『お兄ちゃん!』
リリアが勢いよくクレスに抱きつく。
アリアスを牽制するように。
「むぅ」
アリアスも負けじと抱きつこうとするがボンと音がして。
「キュイ!」
チビドラゴンの姿に戻ってしまった。
「残念だったね~こっちは僕が貰うことにするよ」
アリアスが抱きつこうとしていた左腕にユウカが抱きつく。
「キュイ~!」
アリアスは残念そうにクレスの肩に乗る。
「お前らも帰っていいぞ」
精霊達は光輝くと。
『『『絶対何かあったら呼んでよ!』』』
精霊達はクレスに直接語りかけた後に消えていった。
「お兄ちゃん帰っちゃうの?」
リリアは抱き締める腕に力が入る。
「また会えるさ、それじゃ女神やってくれ」
クレスは小さく呟く。
「はい」
「何をやるのじゃ?」
「私たち以外の記憶消去ですよ」
フィリアの問いに女神が応える。
「なんでですか?」
ミミリアも疑問そうに間に入る。
「俺が関わりすぎたからだよ」
「そうです、ユウ君が関わり過ぎましたからそれを都合よく矯正します」
『パラドックスメモリー』
女神が魔法を放つと虹色の衝撃が世界を覆う。
「あれ? 私たち何してたんだっけ?」
リリアはフィーリオンの前の草原にいた。
「何って……」
ユウカの直感が発動する。
「クレス君が最狂を倒したんじゃないかい?」
「クレス? あっ思い出した!」
リリアは思い出したと笑う。
「私達が剣の勇者を倒して世界を救ったんだよね!」
「何を言ってるんだい?」
ユウカはリリアの勘違いっぷりに驚きを見せる。
「リリアちゃんのお兄ちゃんのクレス君だよ!」
「ユウカちゃん何を言ってるの?」
リリアは真面目な顔で応える。
『私にお兄ちゃんなんて居ないよ?』
「本当にこれでよかったのかな?」
「全ての人の記憶を操作するのに微調整とか出来ないしな」
「それもそうだけど……」
「キュイ!」
草原を見下ろしながらクレスと女神は語り合っていた。
アリアスはクレスの肩に乗って、気絶しているトウマはクレスの隣で寝かされていた。
「さすがチート、ユウカは直感で記憶を呼び覚ましたみたいだな、ふぅそれよりも……」
クレスは顔を伏せる。
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クレスは途方にくれたのだった。
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