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予感

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 クレスの身体が虹色の光に包まれる瞬間に六色の光がクレスを包む。

 そしてこの世界からクレスは消えた。

『こ、これで俺を倒せる奴はもういない』

 トウマは安堵し、その場で倒れる。

『は、はは、ハハハハハハハハハハハ』

 狂ったような笑いが辺りに響き渡るのだった。




 精霊界。


「ユウ様」

 光の精霊神シロが呟く。

「シロ集中して!」

 水の精霊神アオイがシロを注意する。

 炎、水、風、土、闇、光の精霊神が泣きながら回復魔法を全力でかけている。

「全然治らないよぉ」

 強力な魔法がクレスの全身を覆っていて、回復魔法を受け付けない。

「アカメ、ユウ様がいなくなればこの世界はトウマという人物に壊されます。救えるのはユウ様だけです」

 闇の精霊神クロが炎の精霊神アカメに声をかける。

「なんで私達を呼んでくれなかったのかな」

 ショートの明るい黄色の髪のロリっ娘美少女、土の精霊神ハナが疑問を出すと精霊神が全員魔力乱す。

「それは私達が一番良く知ってるでしょ、あのトウマという方は違う世界で他人のスキルを奪って来たのでしょう。そして他の勇者様達のスキルを持っていたということは『精霊の恩恵』を持っていても不思議じゃないです」

 シロがハナの疑問に答える。

「あの膨大な魔力で『精霊の恩恵』を発動されてしまうと私達には逆らうすべがない」

 シロの言葉に精霊神達は歯ぎしりする。

「そうね、私達にできる事はユウ君を回復させてあげること」

 緑の髪を腰まで伸ばしたふんわりとした印象を持っている風の精霊神ミドリはシロの言葉に同意する。

『『『そして次こそは私達も一緒に戦う』』』

 精霊神達は一斉に回復魔法に送る魔力を上げる。




 ピシッ!

 ミミリアがグランゼルを鞘から抜くとグランゼルに少しヒビが入る。

「嫌な予感がする」

「どうしたのお姉ちゃん」

 ミミリアが呟いた言葉にリリアが疑問を口にする。

「クレスに何かあっ……」

「ミミリアちゃん!」

「すまない」

 ユウカの声にミミリアはハッとなり謝罪する。

「クレス君なら大丈夫だよ、すぐに何もかも終わらせて平気な顔して帰ってくるから」

 馬車を走らせながらユウカはクレスを信じてると言葉に乗せる。

「うん、私も信じてる! ユウカちゃんは直感で何を感じたの?」

「それは……」

 ユウカは言うか言わないかで迷うが、リリアの信じてるという言葉で言うことにした。

「クレス君が負けるという感じじゃなかったけど、クレス君が消えてしまうような、そんな感じかな?」

「お兄ちゃんが消える?」

「気にしないでもいいよ、クレス君に僕の直感なんてあてにならないしね」

 

「気になってたんだけどさ、あの銀髪の少年は誰なの?」

 ミライは気になっていた疑問を訪ねる。

「剣の勇者様だよ」

 リリアの言葉にミライは驚きの顔を見せる。

「剣の勇者! あの少年が!」

「うん! 私のお兄ちゃんは最強なんだよ!」

「僕も前から気になってた事があるんだけど嫌な雰囲気を壊すために教えて貰えるかな?」

「何を聞きたいの?」

「リリアちゃんがクレス君を好きな理由かな」

「ッ!」

 リリアは頬を朱に染める。

「い、いきなりだね」

「ダメかい?」

「もうミライちゃん以外、みんな私がお兄ちゃんを好きな事知ってるからいいよ」

「禁断の愛!」

 ミライはリリアの話に興奮している。

「ミライちゃんこの世界では家族での恋愛は禁断じゃないんだよ」

「そ、そうなの!」

「私は何時の間にか好きになってたんだけど、お兄ちゃんが家族から異性として好きになったのって、考えてみるとあの時かな」

「わくわく」

「私ね、小さい頃からお兄ちゃんに稽古をつけて貰ってたんだ、そして……」




『『『化け物~』』』

 リリアを囲んで、少女と少年達が『化け物』と罵る。

「リリア化け物じゃないもん」

「おまえ人を殺したんだろ!」

 一人の少年がリリアに向かって石を投げる。

 それに続いて少年達、少女達が石を投げる。

「人殺しの化け物~」

 リリアはメディアルで酔っている大人達を気絶させた事がある。

 それは酔った男達から女の人を守ろうとしての事だ。

 すぐに国中に広まった。

 勇気と強さを持つ少女だと、それを子供達は親から嫌という程に聞かされる。

『リリアちゃんは立派よね』

 子供達は思う、アイツが化け物なんだと自分達にはそんな力はないと。

 子供なのにリリアの力は強すぎた。

「リリアは悪くないもん、お兄ちゃんは人助けをしたら喜んでくれるもん」

「お兄ちゃんだ! 俺達に何かしてみろ、すぐに親に言いつけてこの国では暮らせなくしてやるよ」

 石を投げるのは止まらず、子供達はリリアに木の棒を持って叩き出す。

「ほら助けを呼んでみろよ~お兄ちゃんなんか来ても化け物を僕達が退治してるんだ! なにも悪いことはしてない」

 大好きなお兄ちゃんが来たら一緒にいじめられると思ったリリアは必死で我慢した、うずくまりながら。

 心の中でリリアは思った。

(誰か助けてよ)



「ぐへ」

 一人の少年が頭に石を投げつけられて気絶した。

『俺の妹になにしてんだ? 殺すぞ』

「お兄ちゃん」

 リリアはクレスのもとに駆け寄る。

「お、おまえ! 僕達に手を出したらこの国で住めなくなるぞ!」

「お前さ、自分がこの世から消えるって選択肢が抜けてるぞ? 安心しろ、皆んな仲良く殺してやるから」

 その少年に木刀を持ったクレスが近づく。

 一歩また一歩、詰め寄られた少年は失禁する。

「お兄ちゃんやめて」

 振り向くとリリアが泣いていた。

「しょうがない、半殺しにしてやるよ」

「ぼ、僕達に手を出した……」

「やってみろ、その時はお前のせいでこの国が消えるからな? お前の家はどこだ? 言え」

 少年は自分の家を指差す。

 その指差した家に木刀を振る。

 すると木刀は耐えきれなくなり粉砕するのと同時にその家も跡形もなく消える。

「今日はリリアのおかげで助かった命だ、でも次はないからな? 今日の事は内緒だぞ」

 少年はコクコクと何度も頷くと涙を流しながら家に向かって走っていった。

 それに続いて他の少年や少女達も逃げるように走って行く。

 クレスはリリアに近づくと頭に手をのせる。

『助けて欲しかったら誰でもない、俺を呼べ』

 ニカリとクレスは笑う。

『お兄ちゃんがいつでも助けてやるからな』

 リリアは何時の間にか涙が止まり、クレスに見られていると身体中が熱くなるような心が暖かくなるような気持ちになった。





「……って事があったかな、お兄ちゃんの思い出なら沢山あるんだけどね」

「クレス君はやっぱりカッコいいね」

「あの勇者って人も今頃はお兄ちゃんが倒してるよ」

「……そうだといいね」

 リリア達は嫌な予感を感じながらクレスの帰りを待つのだった。





『ここどこだ?』

 懐かしい雰囲気の部屋。

「あっ! 寝る準備をしてたんだっけな?」

 なんでついさっきの事を忘れるんだよ、ボケたか?

 俺はすぐに寝る準備を終える。

 目覚ましを七時にセット。

 俺はベットに入り寝る。

 何故か心にぽっかりと穴が空いたような感覚を覚えながら。


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