59 / 201
さいきようの敗北
しおりを挟む「地獄で後悔しろよ」
触れ合う黒剣が徐々にトウマの首もとに迫る。
「俺の妹に手を出そうとしたことを」
トウマはクレスの低い声とプレッシャーに一歩後退する。
「うるせぇぇぇぇぇ!」
触れ合っていた黒剣を弾き、二人の戦闘が始まる。
トウマとクレスがぶつかり合う度に周囲が弾け飛び。
金色と虹色のオーラが後から二人を追っていく。
トウマは剣を真上に掲げ、無属性の魔力を剣に溜める。
歴代勇者最高火力の一撃を繰り出すために。
『無の一閃』
無属性の透明な光と虹色のオーラが混じりあい、キラキラと空を彩るように真っ直ぐに伸びていく。
これで勝利は決まるとニヤついた笑みを浮かべながら振り下ろすトウマ。
上から振られた大振りの剣を下からクレスが弾き飛ばす。
弾き飛ばされた虹色の剣は粒子を残しながら消えていく。
トウマは呆気なく『無の一閃』を弾かれ、無防備になった。
クレスの斬撃がトウマの左肩に深々と刺さり、そこから斜めに斬り下ろす。
さらにクレスの黒剣が左下から右肩にかけて深い斬り傷を残す。
また一撃、一撃、一撃、乱舞の様に振るわれる無音の黒剣。
乱舞が終わると。
トウマは砂浜に膝をつき、トウマを中心に赤い水溜まりが出来る。
痛い、怖い、強い。トウマは久しぶりに味わう痛みや想いで恐怖する。
相手は自分を殺せる力を持っていると。
そして最狂は思う、もう油断はしないと。
『リミ、テッド、アビリ、ティー』
右手に虹色の剣が姿を現す。
「うぉぉぉぉぉ!」
トウマは雄叫びを上げると全身にどす黒い虹色のオーラルを纏う。
『進化』
トウマが立ち上がると致命傷だったダメージが嘘の様に無くなる。
『自己治癒』
クレスはその異様な回復力に驚くが油断なく黒剣を構える。
『ダークインパクト』
トウマは無詠唱で闇属性神級魔法を放つ。
『ホーリーバースト』
光属性神級魔法の同時発動。
クレスの真上で闇が圧縮され、クレスの周りに光の玉が複数現れる。
圧縮された闇が放たれ衝撃波を生み、光の玉からクレスを貫こうと光線が出る。
クレスは円の様に黒剣を振るう。
無音の斬撃が全てを無効にする。
魔法を纏っていない剣が魔法を無力化したことにトウマは驚きの顔を見せる、だが戦闘を止めることはない。
トウマはオーラル、精霊化の奪ったスキルも固有スキルと同じように使える。
トウマは今出来る全ての力をこの魔法に注ぎ込む、剣の勇者に勝つために。
『自動回復』
魔力を最大まで回復する能力。
『リミットブレイク』
魔法のリミットを上げる能力。
『リミット・アップ』
魔法にどれだけの魔力を込めても発動が出来る能力。
『属性同調』
属性の概念を捨て、全ての魔力を統合する能力。
『神の調律』
どの魔法のコントロールも完璧にする能力。
『魔力光』
全ての魔力の質を最大まで上げる能力。
『特定』
範囲魔法、魔法を確実に特定した者に当てる能力。
『神の領域』
一定時間、魔法による干渉を受けないエリアを作る能力。
『シャイニング・フレア』
光属性神級魔法。
スキルで強化された空を多い尽くす程の太陽がクレスに向かって放たれる。
トウマは全ての力を出したのか『神の領域』の能力で出していた緑色の膜の中で膝をつき、虹色の纏っていたオーラルも姿を消す。
クレスの真上に現れた太陽は周りを焼き、触れてもないのに木は灰になる。
海は瞬く間に蒸発していき、砂浜の砂も溶けたように無くなっていく。
そんな魔法を越えた魔法を放たれたクレスは強化された魔法を見上げながら一人言を呟く。
「魔法も纏っていない魔力抵抗のない人間は魔法を纏っている魔力抵抗のある人間には到底かなわない」
トウマは笑うことは出来ない、クレスは自分を殺せる敵だと認識しているのだ。
クレスから目を離す事が出来ない。
「じゃあなぜ魔力もない俺がこの世界で最強だと言われてるか分かるか?」
トウマもそれは初めから気になっていた、だがこの世界の奴が弱いんだろうと決めつけていたのだ。
だが今は違う、クレスは同等以上に強い。
「答えは決まっている」
トウマはゴクリと喉を鳴らす。
クレスは黒剣を太陽に向かって投げる。
熱を斬り裂きながら進む黒剣。
黒剣は太陽に突き刺さるが粒子になり消えようとしている。
『リミテッド・アビリティー』
何もない空間からもう一本の黒剣を召喚する。
クレスは太陽と距離を詰めるように飛ぶと刺さっている黒剣を押し込めるように斬撃を叩き込む。
一本の金色に煌めく黒剣が太陽を貫く。
太陽は辺りに熱と衝撃波を撒き散らしながら貫いていった黒剣と共にキラキラと粒子になり消えていく。
『俺に魔法は効かない』
魔法も纏えない、魔力もない人間が、自分が今出来る最大の魔法を打ち破った事にトウマは動揺を隠せない。
『俺は剣の勇者だからだ』
地面に着地してクレスの一人言が終わる。
クレスは今までのどんな魔法よりも強力な魔法を消し去るのに全ての力を使い立っているのもやっとだ。
右腕は火傷を負って右目は熱にやられたのか見えていない。
左目は微かに見えるがモヤがかかっているように見えづらい。
虚勢を張るのがやっとだ。
あんな魔法を無力化なんて出来るはずがない。ダメージを見た目にあまり残さないように軽減することは出来た。
「俺の負けだ、だが……」
トウマは負けを認める。
今、自分に向かって剣を振られたら死ぬかもしれない恐怖でガクガクと震えながら立ち上がるトウマ。
トウマは空気中の魔力を吸収する。
『魔力吸収』
あれだけの魔法が放たれた後だ、空気中には魔力が溢れているだろう。神級魔法を『リミット・ブレイク』で強化させてもお釣りがくる位の魔法を放てる。
残念だがクレスにはトウマとの距離を詰める程の力は残っていない。
「魔法が効かない? 触れる事が出来ない魔法ならどうだ!」
クレスは現象していない魔法は斬れない。
それを直感で確信し安堵したのかトウマの震えがなくなる。
『ごめんなリリア』
クレスは目をつむりトウマの魔法を受け入れる。
『世界から消えろ』
クレスの真下に巨大な魔法陣が現れる。
『パラドックス・タイムテーブル』
魔法陣が虹色の光に輝きクレスを包み込む。
次元、時間軸を歪める魔法がクレスに向かって放たれるのだった。
0
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?
シトラス=ライス
ファンタジー
漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。
かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。
結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。
途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。
すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」
特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。
さすがは元勇者というべきか。
助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?
一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった……
*本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!
KeyBow
ファンタジー
日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】
変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。
【アホが見ーる馬のけーつ♪
スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】
はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。
出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!
行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。
悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!
一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる