21 / 60
第21話 妹様
しおりを挟む
◇◇◇◇
「おいおい随分と帰りが遅いじゃないか」
マンションの家に帰れば、中学のセーラー服にエプロン姿の妹様が仁王立ちで僕を迎え入れる。
苛立ちを含んだ声音に聞こえるのは気のせいだと信じたい。
僕はスっとカバンを持ち上げる。
キョトンとした妹様は差し出された僕のカバンを手に取ると高々と持ち上げた。
僕は靴を脱ぎ、妹様を横目に部屋の中へ入る。
リビングに差し掛かるドアを開けてる最中にお呼びがかかる。
「もしかしてプレゼント!」
僕は振り返りニッコリと微笑みながらリビングに入る。
そんなもの鼻から用意してない。
カバンの中を確認し終えたのか妹様は足早にリビングに入ってくる。
豪華な手料理を前に僕はあぐらをかいて座る。
「そんな気はした」
一言妹様は呟いて、ムスッとしたまま僕の隣に座った。
「学校どう? また一人でお昼ごはん食べてるの?」
妹様は誕生日なのにテキパキと僕の皿に料理を盛り付けていく。
最近は赤星さんや黒川がちょこちょことやってくる。
ぼっち飯は卒業したと告げると「ホントに!」と、ムスッとした機嫌を突破らって嬉しそうにニコニコと笑顔を振りまいてくる。
交わす言葉も跳ねているようだ。
「どこか隠れスポットを見つけて、また鍋とかしてるんじゃないかって不安だったの。高校ではそんな奇行からは卒業したんだね」
僕は妹様から視線を逸らす。
「え? もしかしてまだしてるの?」
僕は食べたい時に食べたい物を食べてるだけだ。
可哀想な者を見る目はやめてくれ。
僕の最近はリア充要素が強い。
「最近のお兄ちゃんは登校デートや放課後デートをした」
僕が自慢話を口にすると妹様はふーんと相槌を打ちながら料理を食べ始めた。
信じてないな。
僕も妹様が盛り付けた皿に箸を運ぶ。
「で?」
ん? 僕が唐揚げを口にした所で妹様が一言呟く。
「で?」
口いっぱいに含んでいた唐揚げを消化する前に追い打ちとばかりに妹様は僕の言葉を急かす。
「で?」
ごくんと唐揚げを消化して妹様の待ってる言葉を言う。
「最近新しい技を練習中だ!」
妹様はもっと僕の自慢話を聞きたいんだろう。
「そんなどうでもいい事じゃなくて、誰とデートしたのかを聞きたいんだけど」
どうでもいい事なのか。
「白井さんと赤星さんかな」
僕はしょんぼりとしながら僕とデートをしてくれた人の名前を口にする。
「その人達は陽華より可愛い?」
妹様は天真爛漫で誰からも好かれる才能がある。僕と違って沢山の人に囲まれて育って来た。
おばあちゃんの溺愛っぷりも異常な程だ。
そして容姿も良く、頭もいい。
中学の時は僕の同級生からも告白されていたぐらいだ。
「贔屓目で見てもお前より赤星さんと白井さんの方が可愛い」
だが僕は妹様だからと言って容赦しない男だ。
「そっか、料理美味しい?」
「美味い!」
「そっか」
僕は料理をパクパクと頬張っていく、皿が開きそうになるとすかさず妹様は料理をよそってくれる。
デザートのケーキまで頬張り満腹だと腹を撫でる。
「じゃ、もう帰るね」
送っていこうかと僕も腰を上げる。玄関でおばあちゃんが迎えに来るから大丈夫だと言ってきた。
僕は妹様をエレベーターまで見送る。柵から下を見るとおばあちゃんの車が僕のマンションの前に止まっていた。
妹様の心配はしなくていいなと、僕は家に入る。
早く寝よ。
欠伸をしながら寝室に入り、布団に潜り込んだ。
◇◇◇◇
マンションをエレベーターで降りると、玄関口に一台の車が止まっている。
「料理もできて、可愛くて、そしてお兄ちゃん大好きなのに、私に全然振り向いてくれない。もう少し頑張ろっかな」
車のドアが開くとおばあちゃんが私を迎えてくれる。
お兄ちゃんの部屋を睨みつけて舌打ちすると、私に笑顔を向けてくるおばあちゃん。
本当にお兄ちゃんが嫌いなんだろう。
お兄ちゃんはおばあちゃんが好きなようだけど、ここまで好意がこじれてる親族関係も稀だと思う。
「陽華! アイツに何かされたら私に言うんだよ! 直ぐに処分するからね」
私はおばあちゃんを宥めながら車に入る。
私が一人部屋が欲しくて、お兄ちゃんをおじいちゃんの部屋にと言ったら、お兄ちゃんが出て行くなんて考えもしなかった。
私の馬鹿だ。
あの時のお兄ちゃんを思い出す。
「え? 一人暮らし? やったぜ!」
やったぜ! って何よ、私と離れられて良かったの?
阻止しようとしたけどいつもは噛み合わないおばあちゃんとお兄ちゃんの意見が合致したのか、直ぐに引越しまでの運びになった。
もしお兄ちゃんのデート話が真実だったら、お兄ちゃんの魅力に気づいた人が二人もいるのかな。
嬉しいような悲しいようなだよ全く。
「でも負けない」
私は新たな決意を固めた。
「おいおい随分と帰りが遅いじゃないか」
マンションの家に帰れば、中学のセーラー服にエプロン姿の妹様が仁王立ちで僕を迎え入れる。
苛立ちを含んだ声音に聞こえるのは気のせいだと信じたい。
僕はスっとカバンを持ち上げる。
キョトンとした妹様は差し出された僕のカバンを手に取ると高々と持ち上げた。
僕は靴を脱ぎ、妹様を横目に部屋の中へ入る。
リビングに差し掛かるドアを開けてる最中にお呼びがかかる。
「もしかしてプレゼント!」
僕は振り返りニッコリと微笑みながらリビングに入る。
そんなもの鼻から用意してない。
カバンの中を確認し終えたのか妹様は足早にリビングに入ってくる。
豪華な手料理を前に僕はあぐらをかいて座る。
「そんな気はした」
一言妹様は呟いて、ムスッとしたまま僕の隣に座った。
「学校どう? また一人でお昼ごはん食べてるの?」
妹様は誕生日なのにテキパキと僕の皿に料理を盛り付けていく。
最近は赤星さんや黒川がちょこちょことやってくる。
ぼっち飯は卒業したと告げると「ホントに!」と、ムスッとした機嫌を突破らって嬉しそうにニコニコと笑顔を振りまいてくる。
交わす言葉も跳ねているようだ。
「どこか隠れスポットを見つけて、また鍋とかしてるんじゃないかって不安だったの。高校ではそんな奇行からは卒業したんだね」
僕は妹様から視線を逸らす。
「え? もしかしてまだしてるの?」
僕は食べたい時に食べたい物を食べてるだけだ。
可哀想な者を見る目はやめてくれ。
僕の最近はリア充要素が強い。
「最近のお兄ちゃんは登校デートや放課後デートをした」
僕が自慢話を口にすると妹様はふーんと相槌を打ちながら料理を食べ始めた。
信じてないな。
僕も妹様が盛り付けた皿に箸を運ぶ。
「で?」
ん? 僕が唐揚げを口にした所で妹様が一言呟く。
「で?」
口いっぱいに含んでいた唐揚げを消化する前に追い打ちとばかりに妹様は僕の言葉を急かす。
「で?」
ごくんと唐揚げを消化して妹様の待ってる言葉を言う。
「最近新しい技を練習中だ!」
妹様はもっと僕の自慢話を聞きたいんだろう。
「そんなどうでもいい事じゃなくて、誰とデートしたのかを聞きたいんだけど」
どうでもいい事なのか。
「白井さんと赤星さんかな」
僕はしょんぼりとしながら僕とデートをしてくれた人の名前を口にする。
「その人達は陽華より可愛い?」
妹様は天真爛漫で誰からも好かれる才能がある。僕と違って沢山の人に囲まれて育って来た。
おばあちゃんの溺愛っぷりも異常な程だ。
そして容姿も良く、頭もいい。
中学の時は僕の同級生からも告白されていたぐらいだ。
「贔屓目で見てもお前より赤星さんと白井さんの方が可愛い」
だが僕は妹様だからと言って容赦しない男だ。
「そっか、料理美味しい?」
「美味い!」
「そっか」
僕は料理をパクパクと頬張っていく、皿が開きそうになるとすかさず妹様は料理をよそってくれる。
デザートのケーキまで頬張り満腹だと腹を撫でる。
「じゃ、もう帰るね」
送っていこうかと僕も腰を上げる。玄関でおばあちゃんが迎えに来るから大丈夫だと言ってきた。
僕は妹様をエレベーターまで見送る。柵から下を見るとおばあちゃんの車が僕のマンションの前に止まっていた。
妹様の心配はしなくていいなと、僕は家に入る。
早く寝よ。
欠伸をしながら寝室に入り、布団に潜り込んだ。
◇◇◇◇
マンションをエレベーターで降りると、玄関口に一台の車が止まっている。
「料理もできて、可愛くて、そしてお兄ちゃん大好きなのに、私に全然振り向いてくれない。もう少し頑張ろっかな」
車のドアが開くとおばあちゃんが私を迎えてくれる。
お兄ちゃんの部屋を睨みつけて舌打ちすると、私に笑顔を向けてくるおばあちゃん。
本当にお兄ちゃんが嫌いなんだろう。
お兄ちゃんはおばあちゃんが好きなようだけど、ここまで好意がこじれてる親族関係も稀だと思う。
「陽華! アイツに何かされたら私に言うんだよ! 直ぐに処分するからね」
私はおばあちゃんを宥めながら車に入る。
私が一人部屋が欲しくて、お兄ちゃんをおじいちゃんの部屋にと言ったら、お兄ちゃんが出て行くなんて考えもしなかった。
私の馬鹿だ。
あの時のお兄ちゃんを思い出す。
「え? 一人暮らし? やったぜ!」
やったぜ! って何よ、私と離れられて良かったの?
阻止しようとしたけどいつもは噛み合わないおばあちゃんとお兄ちゃんの意見が合致したのか、直ぐに引越しまでの運びになった。
もしお兄ちゃんのデート話が真実だったら、お兄ちゃんの魅力に気づいた人が二人もいるのかな。
嬉しいような悲しいようなだよ全く。
「でも負けない」
私は新たな決意を固めた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる