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出発の前の小さな出来事

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◇◇◇◇



 フェリアとエルナと俺ことゴブリンは、草原と森の境で野宿していた。

 フェリアが発情したら俺が、エルナが発情したらフェリアが抑えた。でもエルナもゴブリンの体液中毒には変わりないから、俺のヨダレを飲ませていた。

 エルナは意識が薄い。ハッキリとしないあいだにゴブリンと、もう一度セックスなんてやったら、快楽の渦から意識が戻らなくなってしまう。

 こんなに可愛い俺のママだ。大事にはしてやりたい。

『可愛い我が子』が俺の脳裏にチラつく。



 俺は教会に行き、服やら食料やらと何かしら役に立つ物をリュックに入れて、野宿するところに帰って行ってを繰り返していた。

 そこでわかったのが、ゴブリンの知能はそこまで高くないということ。

 俺も同族だからか、ゴブリンの言葉がなんとなくわかった。たぶんゴブリンは『犯す』『腹減った』しか喋ってない。教会を散策していると、ゴブリンからはそれしか聞こえなかった。



 と、俺は教会から野宿しているところに帰ってきて、パンパンに詰められたリュックを降ろした。俺は成長が悪い子供ぐらいの体格しかないが、筋力は大人10人分ぐらいはあるんじゃないだろうか。

「すげぇなゴブリンって。頭が悪くなかったら人間側には十分脅威になってたな。もしかしたら俺のように知能がある、考えれるゴブリンがいるかもしれない」

 そう一人ごとで呟くと、ゾワリと背筋が震える。こわっ! 俺はもう考えないことにした。人間側からしたら、俺自身も脅威でしかないことに。


 フェリアとエルナはもうちゃんとした修道女の服を着ている。近くに川があって助かった。水浴びも完了して、清潔になっている。これで他の町で入ることになっても、変に止められることもないだろう。

 俺は町に入る前に結界の中に入れるんだろうか? ゴブリンの特徴的な緑色の肌の言い訳は用意してある。フェリアが言うにはエルフがゴブリン病という奇病にかかるんだそうだ。フェリアも見たことはないらしいが、エルフの白い肌が緑色に染まって、小さなエルフならゴブリンと瓜二つになるらしい。

 そのゴブリン病という奇病は人間とあいだでも有名と言っていた。結界を通れたらゴブリン病でゴリ押すことにしている。成功するかは半々だ。


 リュックを開けて、適当に収穫した物を出していく。大半が食料だが、底が深い鍋、木の食器、炭と薪。暇を潰せるように、大量の水風船、チェスみたいなボードゲーム、ただの布のボールも持ってきた。

 ここ数日で教会から盗んで来た物はけっこう貯まった。これで草原を超えられるだろう。

 フェリアが言うには近くに隣の町もあるみたいだが、そこは通り方面でフェリアは犯されたと話していた。ゴブリンがまだいるかもしれない隣の町に行くのはリスクがある。

 俺一人で行けたら行くんだが、ゴブリンが一人で行っても即討伐対象だ。

 それよりも草原を越えてある町に行って助けを呼んだ方がいいとの考えに至った。

 
 
 リュックの中にあった物を全て出し終えて、一息着く。リュックの底でチラリと朝の陽射しで光る物が見えた。

「あっ、まだあった」

 手に取ったのは、リュックの底にあったのは黒い玉。

 これは四人の女の人に囲まれて、大きなベッドに寝ていたゴブリン。そのゴブリンが大事そうに抱えていたソフトボールぐらいの黒い玉だ。

 なんかそのゴブリンは偉そうで、他のゴブリンにはない黒の刺青を両肩、両胸に左右対称に入れていた。教会を襲ったゴブリンたちのボスだろうとは当たりが付く。

「それは!? どこにあったのですかゴブリン様」

 フェリアが黒い玉を見て震えていた。

「え? 大事そうに抱えていたゴブリンから取ってきた」


【【レア度SSS】『冒涜する水晶』を入手。生涯クエスト?を獲得。ワールドクエスト999をクリア】


 なんか俺の頭の中でシステムさんの声がした。

 俺はボスゴブリンから相当大事な物を取ったらしかった。






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